Vol.12 売れる管理部門・管理職

さすらいながら学んだ経理屋の
ノウハウをお伝えします

売れる管理部門・管理職~人事マネージャー~

すみません、「売れる管理部門・管理職」シリーズ、しばらくお休みしてしまいました。

今回は「売れる人事マネージャー」について考えてみたいと思います。毎回お話しさせて頂いていますが、経理・IT・人事のマネージャーに関して、「売れる管理職の条件」としての共通項は、以下の4点だと思っています。

  • ① 自分の上司の意向に沿って話の展開を考えられる
  • ② 業務遂行に必要な知識がある(具体的には、専門領域と英語)
  • ③ アクションプランを創る能力がある(PDCAの輪を回せる)
  • ④ 人材紹介ビジネスの方を4人(=4社)程度、友人として持つ

人事マネージャーも、これら4条件で語る事が出来ると思っていますが、人事マネージャーについては、その前に、「生涯雇用制企業の人事部長(つまり日系企業の多く)」と、「転職系企業の人事部長(=外資系企業の多く)」との違いを明らかにしないと、話が全く通じない事になりかねませんので、まずはそこから入らせて頂きます。

生涯雇用制企業の人事部長に求められる重要な資質はもちろん多岐にわたりますが、転職系企業の人事部長と比較して際立って違うところが二つあります。それは、前者が(1)管理職社員個々人のスキル・能力・適正を把握する事、(2)全社戦略を深く理解した上で、各ラインに適切な人員配置を設計する能力、が期待されている所だと思います。この背景には、生涯雇用された社員の人事権は、各事業ラインのライン長が「預かって」はいるが、人事部が「潜在的最終人事権」を持ち、サラリーマン人生の中で、事業部転換や職種転換の際には、人事部による人事権が発動される、と言うメカがある、と言う「哲学」から来ているのだと思います。そのような職責で要求される人物像は、よっしゃよっしゃ系の大人物、しかし個々人の性格の機微等をよく把握している、従って仕事の中心は夜の社内クラブで多くの社員の話を聞く方、みたいなイメージをお持ちの方が多いのでは、と思います。そんなイメージに加え、全社戦略を深く理解している、となると、人事部長職が社長ポストにも非常に近いポジションとよく言われる事も容易に想像できる所です。

上記のような伝統的日本企業の人事部長像を持った私が、転職系企業に身を投じて最も驚いたのが、人事部の権限、及び人事部長に要求されるスキルセットが大きく違っていた事でした。まず人事部の権限ですが、私の知る限り、すべての外資系企業の人事権は、ビジネスラインに完全に属しています。人事部長が「潜在的な」人事権を持っている、などという発想は、全くありません。更に、マネジメントの人事権は完全に社長が握っています。従って、外資系企業の人事部はサポート部隊、と言う位置付けをされている場合がほとんどです。このような状況の為、外資系企業の人事部は、日系企業の人事部に比べ権限の幅が大幅にせまくなっており、全社戦略に人事部が関与する事は稀なのが現状です。その証拠として、外資系企業では、CFOからCEOになる方が多い一方、日系企業では間違いなくエリートコース、とされる人事部長職が、外資系企業ではそのような扱いをされないどころか、CFOと対等の「人事責任者」と言う単語すらないのが実態です。人材ビジネスを営んでいる我々としては、C「HR」O、CTO (=Chief Talent Officer) と言う単語を使ったりしていますが、残念ながら一般的な概念ではありません。

上記背景があるため、外資系企業の人事マネージャーに要求される資質は、生涯雇用制企業の人事部長に比べ、遥かにテクニカルなスキルが占める比率が高くなります。より具体的には、①給与・評価システム賞与システム(ストックオプション含む)③人事制度構築に関するスキルが転職条件として求められる事が多いと思います。従って、このうち一つでも出来れば、「転職系人事部長」に一回はなれます。二つできれば複数回転職できる可能性が高まり、三つ出来ればかなり長い間食いっぱぐれない可能性が高いと思います。一方、①②③いずれかが「出来る」と言うのは、「具体的な小さなモデル作りから、全社的導入まで」をキッチリ遂行する能力がある、と言う事です。想像してみて下さい。あなたが人事マネージャーとして転職しようとしているその会社は、間違いなくそれら業務を企画・遂行出来る人材がいないので、外から人を雇うのです。完全にゼロから、キッチリ作り込める資質が問われます。中途半端なスキルしかない場合、極めて短命なマネージャーとなる可能性が非常に高い、と思った方が良いと思います。

ところが、生涯雇用制企業育ちの人事系社員で、上記が出来ると言い切れる方は稀でしょう。何故ならば、それらの企業は、給与・評価・賞与システムや社則は「不動の制度」として出来上がっている場合がほとんどだからです。一方、外資系企業は、これらの制度が日系企業とはお話にならないほど、良い言葉でいえば、柔軟性に富み、マネジメントの意向で変化を遂げてゆく制度となっている反面、悪い言葉でいえば、制度化などは全くできていない場合が非常に多いのです。そんな会社に中途半端なスキルで飛び込むのはリスクが高いという事は、お分かり頂けると思います。従いまして、たまたまここをお読みの人事系マネージャーで転職をお考えの皆様、是非、「ご自身の売れるスキル」をキッチリ定義して下さい。それがなく転職し、後で「泣きを見る」方が多いからです。

反面、実務をキッチリ身に付けた方や、体系だって勉強された方にとって、転職系人事マネージャー職は非常に居心地の良いポジションだと思います。経理やIT系マネージャーに比べ、そもそものポジション設定として、経営全般にコミットする事が要求されない場合が多いため、プレッシャーが少ないのです。この点は重要です。プレッシャーが少ない所から始められる事に加え、実際には人材戦略は非常に重要なため、そこで貢献するとプラス評価を取りやすい、という展開になる時が多く、その最初の貢献が勝手知った業務(例:前の会社で導入した評価制度をそのまま持って行く)であれば、成功の可能性が高まるからです。どんな転職も、最初の6ヶ月が勝負。初戦がうまく行けば、生存率は飛躍的に高まります。

その上、人事マネージャー職はかなり市場性もあり、例えば人事制度や評価制度だけで「食ってゆく」事も出来ると思います。ただし、転職系に身を転じる前に、英語が必須である事は是非ご認識下さい。数値やロジックでかなり説明が効く経理やITに比べ、人事関連業務を海外本社に説明するのは遥かに困難です。しかしこれが出来ないと、外資系人事マネージャーの道はとたんに険しくなり、外資系人事マネージャーの道が閉ざされれば、日系人事マネージャーだけで「食いつなぐ」のはハッキリ言って困難だと思います。お勧めしません。

ここまで「転職系・売れる人事マネージャー」の入り口部分を語らせて頂きました。とにかく、人事マネージャーは転職系(=外資系)と生涯雇用系(日系)で要求されるスペックが大きく違う、と言う点を認識して頂くのが重要と思います。そこさえご認識頂ければ、後は大丈夫でしょう。冒頭の①②③④を意識しながら業務を進めて頂ければ、きっと「売れる人事マネージャー」の道は開かれてゆくと思います。

以上、「経理育ちの本社責任者」の目から、人事マネージャーを語らせて頂きました。いつもの通り断定系が多いと思いますがお許し下さい。次回からはまた違った切り口で語っていきたいと思います。

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プロフィール

井筒 廣之
1984年、日系メーカー入社。経理屋として仕事を始める。
1990年、社内ベンチャーに挑戦、一応成功する。
1997年、メーカー退職、本当のベンチャー企業に挑戦。資金難で「胃が口から出そうな」苦しみを味わう。
1999年、大手飲料会社の管理課長として転職。管理部長に昇進。
2004年、商社CFOとして転職。
2007年、マンパワー・ジャパン(現マンパワーグループ)入社。
2014年、取締役代表執行役社長退任。

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