
最近、テレビや雑誌で、良く見かけるようになったことばの一つにコミュニケーションがある。度々耳にするわりには、一言で表現するのが難しいのも、コミュニケーションの特徴かもしれない。
コミュニケーションは奥が深いが、日々の生活の中で、味方につけると最強のツールになるので、この機会にさまざまな角度から、コミュニケーションの達人になるためのお役立ちポイントをご紹介したい。
人は好むと好まざるとにかかわらず、絶えず周囲の人々に何らかの影響を与えながら暮らしている。この時、最も重要な役割を果すものが「言葉によらないメッセージ」いわゆる「もの言わぬメッセージ」である。もちろんこれも重要なコミュニケーションツールだ。
この「もの言わぬメッセージ」の例として最適なものの一つが、謎の微笑で知られる「モナリザ」かもしれない。もともと人間の目には、向かって左側にあるものを「印象深く」、反対に右側にあるものを「安定」ととらえる習性がある。
「モナリザ」の絵を思い浮かべてみて欲しい。ポイントは表情と身体の向きである。表情はどのようであっただろうか?喩えようもない微笑を浮かべているのは当然だが、その微笑の中身が問題なのである。
「モナリザ」は左右の顔がわざと異なるように描かれていることは有名な事実。向かって顔の右半分は、見るものに「安定」を感じさせ、理知的で落ち着いた表情という印象を与える。一方、向かって顔の左半分は、「刺激」を感じさせるやや小悪魔的な表情である。少し挑戦的とも感じられる。
では身体の向きはどうだろう。軽く腕を組んでいるけれど、向かって左の肩が後ろに引かれ、反対に右の肩が前方に少し出る感じに組まれていて、しかも腕は左が上になっている。向かって右側の肩が出ているため、一見、「安定」すなわち「穏やか」な印象だ。さらに左手を上にして腕を組むことで、私達の心に強い印象を残すことにも成功している。
これは、まさしく人間の目がとらえる習性を上手に利用した、科学者レオナルド・ダヴィンチならではの、巧みな仕業といえる。彼は、この人間に備わった習性というコミュニケーションツールを最大限に利用し、後世の我々を彼のねらいへと向かわせる天才だといえる。
なにもレオナルド・ダヴィンチだけでなく、私達もこのような人間の習性をおおいに利用し、コミュニケーションの達人になることはできる。交渉や説得といったビジネスの機会はもちろん、日常のちょっとした場面でも、左右の空間を自在に操り、相手に印象深く見せたり、安定を強調したりといったことができる。この人間の習性をコミュニケーションツールとして大いに活用してみては如何だろう。
芳賀 日登美
社会言語学修士、国際コミュニケーション修士。
2008、2009年筑波大学大学院システム情報工学研究科(MBA・MPPコース)非常勤講師。
リーダーシップ担当。