
そろそろ梅雨が近づいていることが感じられるこの頃。雨は服装や靴にも気を使わなければならず、ちょっと憂鬱という方も多いだろう。ただし、今年は長靴をファッションアイテムとして上手に取り入れている方も多く、雨もまた楽しといったところだろうか。雨を嫌だ嫌だと言っているより、積極的にこのシーズンに活躍する小物を中心にファッションを大いに楽しむ方がずっと素敵かもしれない。
さて今回は、先月の続きの「色彩」のマジックその2。お約束のインテリアのお話。「色彩」の持つメッセージ性は、何も食品のパッケージなどに限ったことではない。コミュニケーションツールとして、生活のあらゆる場面で私たちの心理に大きな影響を与えていることは、前回もお話したとおり。
例えば、室内の色調を例にとってみよう。暖色の中でも、ベージュやたまご色、
薄いオレンジといった淡い色調は、時間の流れをゆるやかなものに感じさせる。
その心理的効果を最大限に利用しているのが、ファミリーレストランだといえる。利用する人は、同じ時間を過ごしても、実際より長く滞在したように錯覚する。つまり回転率が良くなるという仕掛けである。同じように、回転率を上げたいと思っているような店舗が、実際にどのような内装の色を使っているのか、街でチェックするのも面白い。リゾートホテルなどもこの例に入るかもしれない。この時代、なかなか長期滞在は難しいもの。週末を利用した短い滞在であっても、ゆったりと過ごせた感覚から、充分な満足を得ることができるかもしれないからだ。

一方、青や緑といった寒色の中でも、特に濃い色は、時間の流れを速く感じさせるといわれている。長時間の会議を余儀なくされるような場面などでは、会議室のインテリアの色が参加メンバーの疲労度に大きな影響を与えることが実証されている。もちろん、寒色の部屋の方が、疲労度は少ない。
これから自宅や自室を少し変えてみたいと思う方は、この心理的な効果を大いに利用してみてほしい。ちなみに、赤系やピンク系は、アドレナリンの分泌を促すので、元気の素になる。仕事が忙しい方には、元気の素がおすすめ。ただし、あまり濃い色の場合は、興奮しすぎて疲れが増すので、逆効果。ご注意を。
「高級感」と「色彩」も関係が深い。体感重量のところでお話した、黒は高級感をかんじさせる色の代表格。黒にシルバーやゴールドの組み合わせは、高級感を演出する際に、真っ先に頭に浮かぶかもしれない。さらには、クリスタル。これもダイアモンドを連想させるからか、高級感に一役かっている。
しかし、誰もが知っているエルメスのオレンジ、ティファニーのライトブルーのパッケージは、従来の常識を超えている。いわば高級感を演出する際に必須とされていた濃く絞まった色という概念を覆した好例である。
もちろんそれぞれブランドの色を決定するための理由はあった筈であるが、結果としては「色彩」のマジックを逆手にとったじつに見事な差別化作戦といえる。だれもがブランド名を聞いただけで、あの色を思い出す。そしてあの色に憧れる。
常識は常識、どこかでそれを突き抜ける清々しさも素敵。この精神で、梅雨を果敢に乗り切りましょう。
芳賀 日登美
社会言語学修士、国際コミュニケーション修士。
2008、2009年筑波大学大学院システム情報工学研究科(MBA・MPPコース)非常勤講師。
リーダーシップ担当。
経済産業省「アジア消費トレンドマップ研究会」コアメンバー。