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デキると思って採用したのに......期待外れの採用を回避するには

掲載日2020年10月20日

最終更新日2024年4月15日

デキると思って採用したのに......期待外れの採用を回避するには

目次

企業の採用プロセスにおいて、もっともポピュラーなものは対面式またはオンラインのインタビューや面接ですが、それに加えて筆記・オンラインでのアセスメントや試験(適性検査・一般常識など)も数多くの企業が取り入れています。

では、採用判断の際、面接の評価と試験の結果のどちらに重きが置かれているでしょうか。
技術者採用のようにスキルの領域や高さに採用基準が大きく影響される場合を除けば、一般的に、面接における評価が高い候補者やインパクトが強い候補者の方を優先的に採用候補に加えるケースが多く、試験の結果は補足情報として活用している企業がほとんどです。

しかし、複数の面接を経て採用された候補者の実際のパフォーマンスが期待や予測にストレートにつながるかというと、残念ながら「必ずしもそうとは言えない」というのが、実態ではないでしょうか。メンター制度をはじめとした、新規採用者の定着と早期のパフォーマンス発揮を目的としたオンボーディング施策をとることで、中途採用者が短期で離職してしまう事態はある程度防ぐことができるかもしれませんが、採用の工数やコストを考慮すると、採用後の支援に注力する前に、採用判断の方の確度をあげたいものです。

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経験は、必ずしも期待したパフォーマンスを約束するものではない

人手不足が深刻化する昨今、中途採用でも未経験の若手を募集するケースが増えています。若手の中途採用の場合、採用担当者はある程度の育成の必要性を視野に入れ、研修プランなども考えながら採用の準備を進めます。

しかし、経験者、特に管理職ポジションの募集の多くでは即戦力が求められます。対象ポジションの部門責任者や現場から「今でさえ人手不足なのに一から育成する余裕なんて無い。自分である程度結果を出せる人を連れてきてほしい」という要望が出ることもあるでしょう。

入社後、早期に成果をあげることを求める傾向が強い外資系企業では、採用した人材が存分に活躍できる土壌づくりにオンボーディング施策を積極的に取り入れるといったケースもありますが、国内企業ではまだ少数のようです。多くは、入社後のケアは現場任せとなり、中途入社した社員が自身の人脈や努力で成果創出に挑むケースもあるのが現状です。

即戦力採用を視野に入れた場合、募集や書類選考の際に、ある程度「求める人材像」を構成する要素を持ち合わせた候補者を絞り込み、複数回の面接を重ねながら採用選考を進めるわけですが、「求める人材像」が具体的に特定できていない場合や、インタビュー時のヒアリングが候補者の表面的な実績の確認にとどめられている場合、"いざ入社したら期待したパフォーマンスが発揮できなくて本人も周りも戸惑う"という事態も懸念されます。

組織心理学の研究に基づく独自のインタビュースキルを確立し、1980年代初めに北米でその採用インタビュー手法のトレーニングを幅広く広めたポール C.グリーン博士はこう語っています。


「過去の行動は将来のパフォーマンスを予測する最高の判断材料である」

"Past Actions are the best predictors of future performance"

つまり「人は自身の行動をそう簡単には変えられない」、「人は往々にして過去に取った行動を同じように将来も繰り返す」という考えです。これを採用インタビューに当てはめてみると、候補者が過去に仕事の中で実際に取った行動(仕事のスキルや仕事における判断)を確認すれば、その人物が採用後に現場で取る行動をある程度予測でき、そこからパフォーマンスの予測もある程度可能になる、というロジックが成立します。

人事コンサルタントがアセスメントの際に行うコンピテンシーインタビューもこの考え方に基づいて組み立てられています。

準備を含め、何を知りたいかを明確にしたうえで、インタビューを丁寧に行うことで、「前職であれだけの実績があるのに、なぜ当社では同じように成果を発揮できないの?」という"パフォーマンス予測"の失敗や、「おかしいなぁ・・・この人、面接の時の印象とぜんぜん違うんだけど」という"期待外れ"に直面する確率は、ある程度下げることができるはずです。

具体的には、候補者の過去の実績に焦点を当てるだけでなく、「過去の実績を導いた行動や判断」と「その行動や判断を導いた候補者の考え方(マインドセット)」を確認するのがポイントです。

これらのポイントを押さえてインタビューを進めると、候補者が自覚している過去の実績が実際には本人の活躍によって得たものではないことや、その候補者が成果を発揮するために必要な環境などが見えてくることがあります。これらを面接時の質問でさらに深堀りできれば、前述の失敗例("なぜ前職と同じような実績を発揮できないのか?"、"面接時の入社後の印象が違う")はある程度回避できることでしょう。

「経験は必ずしも期待したパフォーマンスを約束するものではない」という問題を解決するには、もう1つ意識すべき側面があります。それは候補者の対人面の特徴と価値観です。

対人関係における特徴、具体的には「人との関わり方の傾向」や「リーダーシップ(周囲への影響力)の傾向」は、その人のパフォーマンスに大きく影響します。

単独で行う業務を担う場合であっても、その業務のゴールや目的は必ず組織内の他の業務に関連していますし、周囲とのコミュニケーションは必ず発生します。技術職の場合、コミュニケーションスキルよりも経験・知識・技術の優先度が高いことは事実ですが、組織の中で業務を遂行する際、対人スキルは少なからず必要になってきます。それは、若手であれば、知識や業務の習得スピードに影響がでますし、中堅プレイヤーであれば業績に直結してきます。管理職や重要な役割を担う場合は、他者の強みやチームシナジーを引き出せるかどうかなど、チームや部門全体のパフォーマンスに関わってきます。

価値観におけるチェックポイントは2つです。ひとつは組織の価値観や職場の同僚の価値観とのギャップがあるかどうか。もうひとつは、対象ポジションがリーダー職の場合に特に注意が必要になってきますが、「どういうチームをつくりあげるか/どのような組織づくりをするか」、「どのような無意識の偏見を持っている可能性があるか」です。

候補者の組織への貢献の可能性を長期的視点で捉える場合、パフォーマンス発揮の可能性と同じレベルで、場合によってはそれよりも更に高いレベルで、重要な要素だと言えるかもしれません。

候補者の対人関係における特徴と価値観を採用過程でのコミュニケーションや、インタビューの中で捉えるのは大変難しいものです。一般的に、候補者側は自身の印象を悪くするような言動を面接の際に見せることはありません。また、面接をする企業側も、よほど注意深く、また様々な角度から候補者の考え方を探らない限り、候補者の潜在的な特徴は見抜けないものです。

そのため、対人面や価値観が周囲に大きく影響すると思われる管理職や重要ポジションの採用では、パーソナリティーアセスメント(性格診断)ツールを活用して、候補者が本来持つ対人面の傾向や価値観を確認することがあります。人のパーソナリティーは成人になってから大きく変化することは無いと言われています。

パーソナリティーの診断結果は、対人面や価値観が組織やチームに合わない場合は、その人の採用を見送るべきという判断材料にするのではなく、その人の特徴を知ることで、行動をどう変えることが期待されるかを明確にするという使い方をします。

若手の候補者に関しては、候補者の成長スピードや伸びしろを考慮すると「本人が周囲にどういう影響を与えるか」よりも、「周りの環境に本人がどう反応するか、どう影響されるか」を確認する方が先決であるため、パーソナリティーテストよりも、ジョブフィット(職務特性)や興味や行動傾向、ストレス耐性やレジリエンス(順応力)を診断するアセスメントツールを用いることが多くあります。

参考データ

マンパワーグループ 人材サービス最新情報 調査データ
「面接時にやってしまった」企業に期待させてしまう回答とは?
外部リンク

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「成功」を導く要因を具体化し、
採用判断の確度向上へ

経験やスキル、資格以外の側面も採用の判断基準とする場合、基準を言語化し明確にする必要があります。

対象ポジションに発揮してほしいパフォーマンス(結果)を創出するのに必要な考え方や価値観、行動基準は、特定できていますか。

現場の責任者が対象ポジションにおける成功の姿を具体化し、その成功に必要な要素が何であるかを多面的に分析し、能力面、対人面、価値観のそれぞれの面で期待することを特定しておけば、採用判断の確度は高まります。加えて、現部員の個々の強みや全体的な強みの傾向、また、個々の強みを最大限引き出すために必要な環境も把握できていれば、それも採用判断の確度向上に大きく影響します。

中堅プレイヤー以上のポジションの場合、経験や実績がある中途採用者が、入社後の現場でパフォーマンスを発揮できない理由の1つは、環境と周囲との関係性が前職とは異なるからです。この点を考慮すると、候補者の成功体験や知識も大事ですが、現メンバーとの能力面、性格面の相性やバランスも重要だと言えるでしょう。

加えて、組織を取り巻く環境や労働環境の変化が激しい今日、次のような特徴に注目することも大切だと、マンパワーグループは提言します。

  • 変化対応力、適応性の高さ
  • 他者との協業を通じ、パフォーマンスを発揮できる人材(個人の成功よりもチームの成功を喜ぶ)
  • コミュニケーション能力の高い人材(人を理解できる)
  • 学習意欲が高い人材、幅広い領域でリーダーシップを発揮する意欲が高い人材

上記はいずれも性格面の特徴にあたるため、パーソナリティー診断を通じ、予測することができる項目です。パーソナリティー診断は主に、個人の対人行動の傾向や、特定の能力ではないソフト面の特徴をフィードバックしてくれる役立つツールです。

世の中には様々なアセスメントツールが存在します。前述のパーソナリティー診断の他に、特定の能力を診断する知能テストや認知力テスト、独自のデータベースに基づいて特定の診断結果をフィードバックするツールや、複数の面から総合的に評価を行う手法なども存在します。

インタビューでは見えにくい、候補者の潜在的なソフト面の特徴を知るには、このようなツールを活用して判断材料の1つに加えてみてはいかがでしょうか。

採用にアセスメントを活用した事例

ここまで採用に新たな視点を取り入れるということについて考察してきました。
では、実際に採用時にアセスメントをどのように取り入れたのか、事例を二つご紹介します。

活用例1
新任管理職候補になり得る一般社員ポジション

【状況】

当該企業は、一般社員レベルの中途採用を書類選考および面接のみで進め、管理職に関しては外部アセスメントを活用していた。ビジネスの急成長の影響から、一般社員ポジションの採用と平行して、同部署の課長ポジションの採用活動も進めていたところ、課長ポジションの候補者が、最終面接で入社を辞退した。様々な事情が重なり、結果的に一般社員ポジションの採用候補として残った1名を入社後2年以内に課長ポジションに就かせる案が社内で浮上した。そのため、急遽この候補者に対し、入社を辞退した候補者と同じ内容の外部アセスメントを実施することになった。

外部アセスメント実施の目的は2つあった。1つは外部視点で候補者のポテンシャルを観察し、2年以内に課長ポジションに就くためにどれだけのスキルギャップがあるかを確認するため、もう1つの目的は候補者がアセスメントへの参加を通じて課長ポジションの期待役割を体験し、理解することだった。

【結果】

外部アセスメントを実施した結果、スキルギャップは見られたものの、本人の意欲は高く、適切なサポートとモチベーションの維持が叶えば、2年以内に課長の職責を担うことも無理ではない、というのが外部アセッサーの観察結果だった。外部アセッサーの報告を受け、同社は何度か候補者との話し合いを設け、最終的にはその候補者が同社へ入社することが決定した。部署の現責任者と行動を共にすることでOJTを継続しながら、人事部門の支援で外部の教育研修にも参加していくことで、2年以内の課長就任を目指すことになった。

【利用したアセスメントツール】

アセスメントセンター

活用例②
本部長ポジション

【状況】

当該企業は管理系部門の本部長の採用を進めており、書類選考および複数の面接を経て、1名の候補者が最終段階まできていた。過去の経歴も候補者の人となりも申し分なく、採用責任者は早急に採用を進めたかったが、同社はヘッドクオーターを海外にもつグローバル企業だったため、候補者は海外の経営層による最終インタビューを通過する必要があった。またグローバルの社内規定により、最終インタビューの前にパーソナリティー診断および認知力テストを受検する必要があった。

【結果】

社内規定に従い、候補者が2種類のアセスメントを受検したところ、認知力テストの結果に問題が見られた。候補者の前職の実績や評判は申し分ないものだったため、このような結果が出ることを現地採用責任者は予測できなかった。候補者本人に受検の感想を確認したところ、受検言語が英語しかなかったため、本来の力を発揮できなかったかもしれないとの説明はあった。

海外の経営層によるインタビューは予定どおり行われ、その際、経営メンバーは密かに、候補者の認知力テストの結果を考慮しながら、インタビューを行った。候補者本人は、問題なく話をすることができたと感想を述べていたが、結果的には認知力テストの結果を反映するように、問題解決力が期待レベルに達していないというのが、海外の経営層が出した結論だった。その結果、候補者は不採用となってしまった。

【利用したアセスメントツール】

・認知力テスト:問題解決と意思決定のスキルを診断するテスト
・パーソナリティー診断:リーダーシップ傾向の診断

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最後に

採用活動は採用担当者のみならず、対象ポジションの部門責任者やその他のステークホルダーにとっても、大変な労力と工数を要します。

活用例では、紆余曲折ありながらも無事に候補者を採用できた例と、滞りなく採用できると予想していた候補者を採用できなかった例の対照的な2つの事例をご紹介しました。

活用例②の場合、候補者の経歴や実績に注目しすぎて、実態を見抜けなかった点が悔やまれます。また、時間と工数が余計にかかるとしても、早い段階でアセスメントツールを導入していれば、最終面接で候補者の採用をあきらめるような事態は避けることができたはずです。

採用担当者の立場で考えれば、どちらの事例も回避したいと考えて当然ですが、「この採用は失敗だった」と評価されるよりも、プロセスを追加することで、採用判断の確度を向上させる方が、組織にとっても候補者にとっても良い結果につながるのではないでしょうか。

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著者プロフィール

マンパワーグループ株式会社 マーケティング本部 山口薫

マンパワーグループ株式会社 マーケティング本部 山口薫

日系不動産会社、米系人事コンサルティング会社を経て、2011年に株式会社ライトマネジメントジャパン(現マンパワーグループ株式会社)に入社。タレントマネジメント部門にて人事コンサルタントとしてアセスメント、コーチング、リーダーシップ領域を中心とした提案営業およびコンテンツ開発、デリバリーを主に外資系企業を対象に提供。また日系企業、外資系企業の能力開発や採用に関連するグローバルプログラムの実施を多数支援。

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