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障がい者雇用は、企業の義務であると同時にSDGs(誰一人取り残さない、持続可能なよりよい世界を目指す国際目標)などの観点からも注目が集まっています。
しかし、障がい者雇用は一般的な採用とは違い、業務内容やオフィスに配慮が必要であり、人事担当者には障がい者のための労務管理や健康管理などに関する知識も求められます。こうした課題もあってか、障がい者雇用が思うように進まないという企業は少なくありません。
マンパワーグループが2021年4月に行った調査では、障がい者雇用における課題の1位は「受け入れ態勢が不十分」であること、2位は「お願いできる業務がない」でした。
また、障がい者雇用の取り組み状況については、企業規模で差がでています。100人以下の企業の場合、約46%が障がい者雇用の取り組みを実施していないと回答していました。
中小企業の場合、業務量や人員に余裕がなく、オフィス環境の整備もままならないなどの事情から、なかなか取り組みが進まないことが推察されます。
マンパワーグループ調査:企業の「障がい者雇用」、約4割が「受け入れ態勢が不十分」と回答。今後必要な制度・環境の整備とは?
マンパワーグループの特例子会社で障がい者雇用支援を提供しているマンパワーグループ プラス株式会社にも、人事担当者がさまざまな業務を担っていて注力できない、業務の切り出しがうまくできないといった相談を数多くいただきます。
しかし、法的義務の障がい者雇用率は上昇し続けており、民間企業では現在2.3%で43.5人以上の従業員がいる企業が対象とされています。障がい者雇用率は今後も上がると予想され、対策を考えておく必要があります。
障がい者雇用に向けた業務の切り出しができない場合、主に3つの原因があります。
今ある業務をそのまま担当してもらおうとしてしまうと、対応可能な人材がなかなかいないのではという懸念から、「お願いできる業務がない」という結論に至ってしまいがちです。
障がい者雇用の場合、配属先の業務または、ひとりひとりが持っている業務を細分化し、小さな業務単位で検討すると、障がい者雇用向けに切り出し可能な仕事が見えてくることがあります。業務を一気に任せるのではなく、スモールスタートできるよう段階的に仕事を任せるプランで検討するのもよいでしょう。
マンパワーグループの場合、最初は管理部門・営業部門のコア業務以外の仕事を中心に業務を切り出していました。在宅勤務による業務遂行が円滑に行えるようになったところで、徐々に業務そのものを移管し今ではコア業務を担うようになっています。
在宅勤務開始直後の業務
現在の業務
時間がかかるかもしれませんが、丁寧な業務の棚卸が業務の切り出しを可能にし、障がい者雇用の推進に寄与します。
全社的な取り組みとして障がい者雇用を推進すると決定しても、実務を担う部署や社員の協力が得られないという課題は、多くの企業が持っています。
一番の原因は、「障がい者と働くイメージがない」ということです。
「お願いできる仕事が限られている」
「フォローアップが大変なのでは」
「どう接していいかわからない」
といったネガティブなイメージを持っている人は少なくありません。これは知識や体験がないゆえに起こってしまうことでもあります。「ただでさえ自分の仕事で手一杯なのに......」という不安が起きている状態です。
しかし、障がい者雇用に成功している企業では、
「これまで着手できていなかった業務を担ってくれた」
「事務処理を引き受けてもらい、コア業務に集中できた」
「外注していた業務を内製化することになった」
などメリットと効果を実感したことで、障がい者雇用が「事業推進になくてはならないパートナーのような存在である」とした体制を作ることに成功しています。
業務や業務フローの組み立て方と障がい者社員のマネジメントの方法によっては、このような好循環を生むこともできるのです。共に働く意義、得られる効果なども交えて社員の意識改革を促進する教育や社内広報活動を行っていくことが大切です。
障がい者社員の受け入れにあたって、オフィス環境を障がい者向けに整備できず、採用を断念するケースもあります。
特に身体障がい者の受け入れには、オフィスをバリアフリーに改築する、視覚障がい用のPCを用意する、障がいをサポートする機器を用意するなどの準備が必要になることもあります。入居しているビルの規約もあって、オフィスに手を加えることが難しい場合もあるでしょう。
オフィスの改装・改築が困難ななかで「オフィスでの実施が必須とされる仕事」「毎日の通勤が可能な人」を条件とした業務を探すと、切り出しできる業務がない、または売り手市場で採用は難しいだろう、という結論になってしまいやすいです。この場合、「在宅勤務」を検討してみてはいかがでしょうか。コロナをきっかけに急速に広がった在宅勤務ですが、障がい者雇用の現場ではかなり前から導入されています。
在宅勤務であれば対応できる業務があれば、採用への活路が開けてくる可能性が高まります。障がい者の在宅勤務については、「【障がい者雇用】在宅勤務のメリット・デメリット 導入事例を解説」で詳しく解説しています。 もし、オフィスの改築は可能だが、費用面が課題ということであれば、助成金の活用も検討してみてください。
障がい者雇用を何度か検討したが、業務の切り出しができない、社内の理解が進まない、人員不足で余力がない、などの課題を解消できないこともあります。
その場合は、働く場所と業務がセットで提供される農園型の障がい者雇用支援サービスの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
障がい者社員が農園作業に従事するための専用スペース・設備の提供と、そこで働く障がい者社員の採用サポート・定着支援などの運用支援サービスの提供がセットになった障がい者雇用支援サービスです。
業務・農園設備の管理や、障がい者雇用を適切に行うためのアドバイスなどをサービス提供会社が担います。また、収穫した作物は社内配布などノベルティとして利用可能です。企業の主な役割は、採用した障がい者社員の労務管理(社会保険加入手続きや給与査定など)です。
農園型の障がい者雇用支援サービスには、障がい者の業務を切り出せない、オフィス環境を変えることが難しい企業に対する多くのメリットがあります。
障がい者社員用の業務を既存業務から切り出す必要がなく、就労場所を自社オフィス内に準備する必要がありません。
障がい者雇用には、業務習得への配慮や体調の変化など、個人の障がい特性に合わせたサポートが求められます。それぞれに適したサポートが提供できない場合、早期の離職やトラブルに発展しかねないため、関係者には相応の知識・情報が必要とされます。
社内にノウハウがない、サポートに必要な工数が不足している場合でも、障がい者採用や採用後の定着・業務指導の面で豊富なノウハウを有したサービス提供会社から支援を受けることができ、安心です。
法定雇用率の達成に取り組もうにも「採用したくても採用できない」という課題を抱える企業もあります。
企業の多くが業務内容やサポートの面から身体障がい者の雇用を希望する傾向にあるというのが理由のひとつです。内閣府が発表した令和4年障害者白書においても、働いている障がい者の約6割は身体障がい者です。
しかし、身体障がい者だけでの母集団形成は難しくなっています。就職を希望する障がい者の約45%は精神障がい者であるため、身体障がい者だけを対象にすると採用が難航しやすい傾向にあります。農園型の障がい者雇用の場合、身体障がいだけでなく、知的障害・精神障害・発達障害と幅広い層が母集団となるため、比較的早く人員の採用が可能です。
参照:令和4年版 障害者白書 第3章 第2節 雇用・就労の促進施策(PDF)
図表3-12 ハローワークにおける障害者の職業紹介状況(障害種別ごと)(2020年度)
農園型の障がい者雇用には、デメリットもあるため、自社の状況に合わせた上で導入を検討する必要があります。
農園型の障がい者雇用サービスを利用した場合、農園管理費用や障がい者社員の採用や施設利用料などのサービス利用費が発生します。また、障がい者社員の管理を担う現地の社員も採用しなければいけません。導入時だけに必要な初期費用もあれば、毎月発生する運用費もあるため、利用の際には十分な検討が必要です。
同じオフィスでの勤務ではなく、本業と関係のない業務に就く社員となります。そのため、勤怠管理や就業規則、障がい者社員のキャリアプランなどを新たに検討する必要もでてくることがあります。
また、社員の様子を確認したくても、一般的に農園はオフィスから離れた場所にあります。業務に従事する障がい者社員や管理者の働きぶりや労働環境を直接かつ頻繫に確認することは困難です。 補完する手段として、オンライン会議や電話でのミーティングの実施などツールとルールを設定する必要はでてくるでしょう。
オフィスも異なり、既存業務とは異なる業務を実施するため、農園業務に従事する障がい者社員とほかの社員が共に仕事をするケースはほぼなくなります。
そのため、自社で障がい者社員が働いてることを知らない、または実感できない、といった事態を招きやすく、障がい者社員と共に働くことに対する理解や多様性に適応する機会が失われます。
農園型の障がい者雇用支援を導入する場合、栽培した野菜などを社員に提供する、社食で利用する、農園での業務の様子を身近に感じられるよう周知を図るなどの施策を講じることをおすすめします。
農園型の障がい者雇用支援サービスは、すべての企業に適したサービスではありません。
導入に向いているのは、以下のような企業です。
雇用すべき障がい者の人数は、法定雇用率で決まります。社員数が増加している場合、障がい者雇用数も増加するため、その分切り出す業務のボリュームが必要になってきます。農園型の障がい者雇用支援サービスは、大人数での依頼も可能なため、導入を検討してみてもよいでしょう。
業務内容的に切り出しが難しい、細かい営業所や支店に分かれていて受け入れるハードルが高い、といった場合も利用するメリットがあります。
農園型の障がい者雇用支援サービスを利用する前に、自社で雇用を検討したほうがいい企業は、以下のとおりです。
農園型の障がい者雇用支援サービスには、「最低4人から」などのミニマム体制の設定があります。採用予定人数が少ない場合は、コストが増える可能性があるため導入可否は慎重に行ってください。
また、業務内容の見直しや在宅勤務などによる対応が可能な場合、そちらでの雇用を先に検討してみてください。自社内で一緒に働くことで、障がい者雇用への理解も進みますし、担当者のノウハウも蓄積されるといった利点があります。
農園型の障がい者雇用サービスは、就業場所・設備の管理や業務管理などを一括で依頼できるサービスではありますが、農園管理者に任せっきりにしてしまうのはNGです。
定期的に人事担当者が、障がい者社員の就業状況をオンラインや訪問などで把握することは必要です。また、「義務だから」「法定雇用率を達成するため」という理由で導入してしまうと、障がい者雇用に関する社員の意識を醸成することはできません。
社会的な意義もあるため、障がい者雇用に関する研修や農園業務でできた農作物などの配布などを通して、障がい者雇用に関する知識を学ぶような機会を持つことが望ましいです。
トライスルみらい農園とは、マンパワーグループの特例子会社 マンパワーグループ プラス株式会社が提供する屋内水耕栽培施設を活用した障がい者雇用支援サービスです。
障がい者雇用は、すでに個々の一企業だけで取り組むのではなく、地域、行政、支援者(支援機関)、企業間などのネットワークを活用して実現していく時代に突入しているといえるでしょう。この時代にマッチした障がい者雇用の仕組みの一つです。
農園での業務に従事する人員の採用・定着の支援サービスのほか、SDGsや感染症予防にも配慮した最新設備の施設および栽培装置を整えています。作業指導者や定着支援サポーターの支援が常時現場で受けられることも特徴のひとつです。また、ICT活用で、訪問しづらい地域の人事担当者も現場の様子を随時確認でき、定期的な面談をスムーズに行うことが可能です。
栽培しているのは、高品質野菜やエディブルフラワーなど市場価値も高い野菜で、地域では既に一部流通しています。
トライスルみらい農園では、業務と就業場所の提供以外にも以下のサービスが付随しています。
トライスルみらい農園で就業可能な障がい者社員の採用代行を行います。母集団形成から会社説明会、書類審査、採用面接サポート、入社に関する手続きなど、必要に応じた支援を提供します。
施設・設備の定期的なメンテナンスと栽培指導を行います。
障がい者雇用で大切なのは、定着です。障がい特性に合わせたコミュニケーションの取り方や管理者へのノウハウ提供やアドバイス、相談などにも対応します。
また、障がい者社員との定期的な面談、企業担当者との情報共有も行います。
導入の大まかな流れは、以下のとおりです。 契約締結後、最短2ヶ月で屋内農園での業務をスタートさせることができます。
トライスルみらい農園のオンラインセミナーを開催しております。サービス内容の詳しい説明から、モデル農園の様子や作業などをご覧いただけます。
お気軽にお申し込みください。
▽詳細・お申し込みはこちらから
https://www.manpowergroupplus.jp/entry-form/future_farm/
(※マンパワーグループ プラス株式会社のサイトへ遷移します)
「障がい者雇用に向けた業務の選定をどうするか」は、どの企業も頭を悩ませる障がい者雇用の最初の課題です。ただ、この課題については、障がい者の就業に対する知識の向上や業務の切り出し方などの工夫で、解決の糸口が見えてくることもあります。それでもなお、業務の切り出しやフォロー体制の構築が困難な場合は、外部サービスの利用を検討してみてはいかがでしょうか。
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