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東京都では、働き方・休み方の改善に取り組む企業に対して、奨励金・助成金の支給や専門家によるコンサルティングなどの支援を行う「TOKYO働き方改革宣言企業」制度を設け、都内企業の働き方改革を推進しています。
マンパワーグループは、この制度の一端である巡回・助言事業を受託し、「TOKYO働き方改革宣言」を行った企業に対する訪問コンサルティングを実施しています。
コンサルティングの場で経営者の方々から時折、「従業員の残業時間の減少や有休消化率の向上は喜ばしいことである半面、人件費をはじめとした諸々のコストアップに自社が対応しきれるのかどうかが心配」という声を聞くことがあります。
また、「本来の業務がおろそかであるにも関わらず、顧客志向や社内チームワークをなおざりにして自分の権利ばかりを主張する社員の発生に憂慮している......」というご相談を受けることもあります。
働き方改革を推進する際、重要なのは業務の効率化をはじめとした生産性の向上です。
生産性向上の推進を従業員が能動的に行うためには、生産性の向上によって生じた個人・組織としての成果などを適正に評価・フィードバックするための仕組みとその運用が重要であることはもちろんですが、特に重要なことは「組織貢献マインド」の醸成です。
ここで申し上げている「組織貢献」とは、自己犠牲を強いるかつての「滅私奉公」ではなく、自分の能力を自発的に高めて活かす「活私貢献」のマインドを指しています。
「働き方改革」と「組織貢献マインド」は企業の両輪であって、両方が対となって回転して初めて企業は前進します。片方の車輪だけが回転していても、同じ位置でぐるぐる回るだけで前進はしません。
これらの考え方や方針を推し進めるためには、社員のキャリアマインドに訴求することが重要です。
先日、ある企業の人事担当者様から「新入社員と、そのメンター役としてアサインした入社3年目社員との間でさえ、世代間ギャップが生じている」とのご相談を受けました。
「昨今の若手は、いったい何を考えているのか理解に苦しむ」などという声は、いつの時代でもよく耳にするものですが、現代の若手社員層であるミレニアル世代(20~34歳)を理解するヒントは、マンパワーグループのリサーチレポート「ミレニアル世代のキャリア」に記載されています。
要約すると、日本で働くミレニアル世代の多くが、キャリアの将来性について非常に悲観的で自信が無いものの、「60代での定年(リタイア)は出来ないので死ぬまで働かなくてはならない」と考えています。
また、終身雇用はあてにしていないので、現在の仕事がポータブルスキルの習得や成長に繋がる業務でないと思われる、あるいはキャリアパスが不透明であると感じると、迷わず転職も視野にいれるでしょう。
このような考えをもつ傾向にある若手社員層にとって重要なのはラーナビリティであると言えます。ミレニアル世代の93%(日本では63%)が、ラーナビリティを重要視しています。
ラーナビリティとは、今までの知識や経験に依るものではない新たな知識や経験を積むことで習得したスキルを仕事の中で発揮し、成果を出すことで、エンプロイアビリティ(雇用され得る能力)を維持または高める能力を指します。
一方、ミドル以上のバブル世代・シニア世代はというと、団塊世代と同様に自らの終身雇用も保証されている、仕事も教育も会社が与えてくれるもの、今までに培ってきた知識と経験だけを頼りに残りの10~20年を何とかしのごうとしている......というような考えでラーナビリティ、エンプロイアビリティマインドは根付いていないと見受けられる方が数多くいらっしゃいます。
しかし人生100年時代に踏み出すためには、まさに「学び直し」――ラーナビリティによるエンプロイアビリティの維持・向上が必要です。それは社内に残って組織貢献するにしても、または社外にセカンドキャリアを見出すにしても、どちらにしても必要な能力です。
「AIや自動化の波により、多くの職業が無くなってしまうのではないか」との極端な予測がメディアで賑わっていますが、マンパワーグループのリサーチレポート「スキル革命2.0」によれば、世界の雇用主の86%が、オートメーションを受け、今後2~3年間の社員数は変わらないか、むしろ増加すると回答しています(日本単体では76%)。
ただし、どのようなスキルが必要になるのか、企業側も今後の予測ができていません。なぜなら、求められるスキルが急速に変化しているからです。
このことからも、新たな知識習得や経験を積むためのチャレンジ精神、ラーナビリティは全ての世代にとって必携のものです。
従業員に対して、他社でも通用するスキルや知識の向上を促しエンプロイアビリティを高めることは、企業にとって遠心力の作用(人材の流出)になると受け止められるかもしれませんが、向上心のある優秀な人材を引き留めるための求心力として作用します。
企業には遠心力と求心力の均衡が保たれた人事戦略のもとに、キャリア施策や教育体系を整えることが求められています。
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