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改正労働契約法の施行により、2018年4月以降、反復更新5年超の労働者に無期雇用転換の権利が発生します。正社員へ登用する・無期転換の社員とする・契約終了とするなど、各社対象者に対する大まかな方向性が出揃ってきたようです。
現状では、処遇に関する方向性は決まったものの、有期契約社員を無期転換した後に、よりモチベーション高く活き活きと働いてもらうために、どのような取り組みが必要なのかについては、あまり議論されていないように思います。
人事制度の面から言うと、やはり契約更新というタイミングがなくなるわけですから、定年までを見据えた評価制度についてしっかり整備しておくべきでしょう。特に、長期的にモチベーションを維持しパフォーマンスを発揮し続けていただくためには、評価に連動して何らかの形で給与を上げ下げする仕組みも必要です。
また、モチベーションのさらなる向上という点では、無期転換後の社員に対して正社員へのキャリアパスを明示することも重要ですが、無期転換後の社員に対して自身の長期的なキャリアについて考察する機会を設けることを忘れてはいけません。そのためには「キャリアデザイン研修の実施」と「キャリア面談の実施」が有効な施策です。
これまで期間を定めた契約更新であったため、当然ながら自身の長期的なキャリアについて考察する機会がほとんど無かった対象者にとっては、無期転換するこのタイミングはまさに"キャリアの節目"であり、これまでのキャリアを棚卸し、これからのキャリアを考える絶好のタイミングです。
「キャリアデザイン研修」では、いわゆる自身の「Will(やりたいこと)」・「Can(できること)」・「Must(すべきこと)」を考察するわけですが、有期契約社員であった対象者は自身の「Can」に対する自己認識は高いと思われるのに「Will」についてはこれまであまり考えてこなかったというのが現実ではないでしょうか。長期的なモチベーションの向上を考えるうえで、一度立ち止まって自身の「Will」が何なのかを考えることは非常に重要です。「Must」についても、会社・上司からの期待がどうなのかについてこのタイミングで改めて考察し、再設定するのが望ましいでしょう。
また、「Can」についても、今できることの視点だけでなく、現在の「Can」にどのように肉付けして自身の「Can」を高めていくかという視点も必要になってきます。このように無期転換のタイミングで「キャリアデザイン研修」を実施することは、本人にとって様々な面で新たな認識を喚起する意義深いものになるでしょう。
「キャリアデザイン研修」と並行して、上司による個別の「キャリア面談」を実施することも非常に重要なポイントです。
有期契約の契約更新時に実施していた短期的な評価のフィードバック中心の面談ではなく、「社内で今後どのようなキャリアを歩んでいこうと考えているのか」をしっかりと話し合い、「上司としてどのような支援ができるのか」「上司から対象者に今後期待する役割はどのようなものか」を伝えることが必要です。
それと同時に、上司は対象者がどのような価値観を持っているのかについて個別に把握しておく必要があります。無期転換の社員においては正社員以上に働く価値観が多様化しており、その価値観にもとづいた仕事の割り振りやコミュニケーションが必要です。対象者がどのような価値観を持っているのかという長期的なキャリア形成に対する上司の認識が不足していては、有効な「キャリア面談」は実施できません。そのためには、無期転換者を受け入れる上司を対象にした「キャリア開発支援研修」を実施することも有効な施策です。この場合、ロールプレイが含まれるものがよいでしょう。
有期契約社員への取り組み施策としては、無期転換した後に会社としてどのような方向性でどのように活用していくのかを検討する次のステップに来ています。長期的なモチベーションの維持という観点から考えるのであれば、会社だけでなく対象者自身も改めて自身のことを振り返り見つめ直すことが必要です。
是非このタイミングで、無期転換後を見据えた対象者への「キャリアデザイン研修」および上司向けの「キャリア開発支援研修」の実施を検討されてみてはいかがでしょうか。
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