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AI(人工知能)の活用は日々私たちの生活の中に広がってきており、その状況はさまざまなメディアを通じて当たり前のように報じられるようになりました。
その影響は特定の業界にとどまることなく、気がつけば社会全体に広がり、意識せずとも何らかの形でその恩恵を受け、よりスピーディーに、より確度の高いものごとの答えや判断材料を入手できる時代を迎えることになるのでしょう。
古来、テクノロジーの発展とは、私たち人類にとってより便利な世の中を提供してくれる夢のあるテーマでした。
しかし、AIが一般社会でも活用されている現代、その発展が人間社会に与える脅威や不安に、人々の関心がより強く向けられるようになっています。
例えば、テクノロジー関連の記事において「シンギュラリティ(技術的特異点)」という言葉を目にするようになりました。
これはコンピューターの能力が人間の能力を超え、社会に変化をもたらす時点を指す言葉です。
この「シンギュラリティ」に、約四半世紀後までには到達すると予測している学者もいるようですが、仮にこれが現実となった場合、「私たちが労働の対価として収入を得るという生活を続ける道は残るのか?」「残ったとしても、どの程度残るのか?」など、人間がAIに仕事を奪われるのではないかと戦々恐々とする人もいるのではないでしょうか。
人工知能が人間を支配するという映画のような世界を迎えることは無いかもしれません。
しかし、働く現役世代や近い将来に社会で活躍することになる世代にこれから求められるのは、テクノロジーの発展を利用しながら、テクノロジーでは網羅できない部分で人間の強みをより効果的に提供し続けるということでしょう。
テクノロジーでは供給することが難しいであろう、ビジネスシーンで発揮できる私たち生身の人間の強みには、どのようなものが考えられるでしょうか?
「テクノロジーでは供給することが難しい能力」とは異なりますが、総務省が平成28年に行った「ICTの進化が雇用と働き方に及ぼす影響に関する調査研究」のなかで、「人工知能(AI)の活用が一般化する時代における重要な能力」を有識者に尋ねた結果を発表しています。
チャレンジ精神や主体性、行動力、洞察力などの人間的資質 | 21 |
企画発想力や創造性 | 21 |
コミュニケーション能力やコーチングなどの対人関係能力 | 19 |
情報収集能力や課題解決能力、論理的思考などの業務遂行能力 | 12 |
語学力や理解力、表現力などの基礎的素養 | 10 |
その他 | 12 |
(人)(n=27)
(出典)総務省「ICTの進化が雇用と働き方に及ぼす影響に関する調査研究」(平成28年)
なお、この調査では、日米の労働者にも同様の調査を行っています。
米国の労働者では「情報収集能力や課題解決能力、論理的思考などの業務遂行能力」が求められると回答した人が圧倒的に多い一方、日本の労働者では「コミュニケーション能力やコーチングなどの対人関係能力」が求められると回答した人が最も多いという結果が出ています。
さきほどの調査結果で挙げられている項目は、多くの人事コンサルティングファームが考える「リーダーや次世代リーダーに求められる資質や基本的能力」の一部と合致しています。
我々がAIを含むテクノロジーの恩恵を幅広く受ける時代を迎えたとしても、主体性、行動力、洞察力のほか、コミュニケーション等の対人関係能力は、いつの時代も求められるでしょう。
これらの能力はリーダーに限らず、働く人材全般に求められる能力であり、各自が「自立」や「当事者意識」といった姿勢をベースに、磨き続けていきたい能力でもあります。
これらの能力を磨くためにも、「多様な価値観や能力を有する他者を理解する力」を支えるための知識や経験を増やし続けることが、我々のように他者と関わり合いながら働く人材に特に求められるといえるでしょう。
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