企業における戦略的な人材育成のポイントとは?

2020年6月2日

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シリーズ:
これからの時代の人材育成


ビジネスのボーダレス化・グローバル化が進み、ジェンダーや働き方など様々な価値観のアップデートのスパンが飛躍的に短くなってきています。
これまで以上に企業活動にイノベーションが必要とされる現代、人材育成とはどうあるべきかを読み解くためには基礎をしっかりと知っておくことが重要です。
本コラムでは、人材育成の考え方の基本について4回にわたって解説します。


第1回 「企業を悩ませる人材育成の現状と課題 取り組むべき対策もあわせて解説」
第2回 「企業における戦略的な人材育成のポイントとは?」
第3回 「人材育成における適切な目標設定とは?」
第4回 「人材育成とはそもそも何か?次世代人材の育成方法とは」

どれほど力のある企業でも、社員がいなければ存続できません。
労働力減衰の途上にある現代日本において、社員は何よりも重要な経営資源です。
しかし、いくら頭数だけをそろえても、社員一人ひとりがその能力を発揮できないようでは、企業の発展はありません。
人材育成は、企業の未来を決定づける重要な戦略であるといえます。
ここでは人材育成の成功とは何か、またその育成方法と成功へのポイントを解説していきます。

そもそも人材育成における「成功」とは?

「人材育成がうまくいかない」という企業の声はよく聞かれますが、そもそも何をもって人材育成が成功しているといえるのでしょうか。
目指すところが見えないと、方向性が定まりません。最初に成功の定義ともいうべき点について確認しておきましょう。

人材育成の成功により「企業に貢献する社員が永続的に確保される」

人材育成の成功には、一律の定義が明確にあるわけではありません。基本的にはそれぞれの企業のニーズにしたがった結果が得られていれば、成功している人材育成といえるでしょう。

ただ最終的に求められるのは、社員が各人の業務能力を向上させて企業の業績向上につなげられることです。在籍するすべての社員を、企業経営に貢献できる人材に育てられれば、それが最大の成功です。

具体的には、業務のなかでその時々に合わせて適切で柔軟な判断ができ、行動に移せるようになるといった変化が見られれば人材育成の成果が出ているといえます。

人材育成に成功した企業は、次世代にわたる社員のサイクルが強化されます。現在と将来の問題を処理しうる能力を持った社員を数多く擁している企業であれば、将来的にも市場の変化に対応し、競争に打ち勝っていけるでしょう。

成功する人材育成はカスタムメイド

人材育成に成功している事例では、企業によって採用している施策も手法も異なります。ただ共通しているのは、社員の育成を通じて自社の課題を洗い出し、企業全体の成長を図るという視点が成功につながっていることです。

人材育成が自社にとって必要十分であることが重要であり、課題や社員のレベルに合わせた方策の実施により成果が確実なものとなります。

他社がうまくいった方法が、自社にも当てはまるとは限りません。トレンドや周囲に惑わされて、あれもこれも取り入れるようなやり方は失敗を招きます。

人材育成の実施過程において、業績向上のみを成功の証と見るのは賢いといえません。人材育成により企業の競争力が強化され、長期経営が維持できるようになるまでには時間がかかります。

まずは社員が離脱せず、企業で働き続ける意欲が喚起されていること、業務のなかで創意工夫をしながら前向きに取り組めていることに着目していく必要があります。

自社なりのカスタマイズされた人材育成が実施されていれば、社員の定着率は向上し、やる気に満ちた活力のある企業風土が醸成されます。

効果が期待できる人材育成方法とは?

次に、人材育成の種類と方法について見ていきましょう。

人材育成の具体的な方法は主に3種類

人材育成の具体的な方法は、主に以下の3つです。

OJT(On-the-Job Training)

職場のなかで仕事をしながら学んでいくOJTは、人材育成の手法としてもっともポピュラーなものであり、多くの企業が活用しています。しかし、トレーナー役の上司や先輩社員のスキル不足や、時間的な制約、また新人社員とのコミュニケーションの問題など、クリアすべき課題は少なくありません。

OJTは「計画的」「重点的」「継続的」が原則とされていますが、さらに各段階での「見極め」が重要な要素となります。こうした基本的な部分を企業がよく理解し、OJTの成果を正しく見ていくために「1on1ミーティング」などの手法を採用するといった工夫が大切です。

トレーナー役に対してはコーチング研修を実施するなど、OJTを通じて指導役と新人社員双方の成長を促す意識が求められます。

Off-JT(Off-the Job Training)

職場内で業務とともに学んでいくOJTに対し、通常業務外で行われる研修やセミナーがOff-JTです。

2019年の厚生労働省による「能力開発基本調査」の結果では、Off-JTを正社員に対して実施した事業所が75.7%と、「計画的なOJT」の62.9%を大きく上回っています。また派遣社員やパートなどの正社員以外に対してOff-JTを実施した事業所も40.4%あり、企業側にOff-JTを重視している傾向が見られます。

Off-JTは外部講師や、外部の教育訓練機関などによって実施されるのが一般的です。具体的には新入社員に対しての基本的なスキルやマナー研修といったものから、社員全体のスキルのバラつきを平均化するといった内容もあります。

自己啓発・SD(Self Development)

自己啓発は、社員自身が自発的に社外や就業時間外で学びを実施します。

勉強会やセミナーへの参加だけではなく、書籍を購入したり図書館で勉強したりする行為も含まれます。業務に直接関連するもの以外に、将来に向けた資格取得などもこれに該当します。

自己啓発では空き時間の利用や朝活といった方法で柔軟に学びの機会が得られる一方、強制力がなく自律性にまかせるため、継続が難しいといったマイナス面もあります。

最近では自己啓発のサポート策として、eラーニングの提供やテキスト・資料代、セミナー参加費の補助を行う企業もあります。

実現性とコストバランスから選択

人材育成の手法は多種多様です。そのなかから自社の目的に合わせ、成果が期待できて実施が可能な方法を模索していきます。もちろん継続していくためには、コストとのバランスを図ることも重要です。

OJTによる現場教育や外部講師・内部講師が実施する集合研修、部内・課内研修などは、比較的社内でも実施しやすくコスト的にも負担が少ない手法です。

そこに通信教育やeラーニング、経済面・情報提供などによる自己啓発サポートを組み合わせる方法もあります。

国でも企業における人材育成を重視し、職業能力評価シート・キャリアマップなどのツールを提供しています。これらを適宜活用することは、人材育成評価や社員の学びへのニーズを的確に捉えるのに役立ちます。

人材育成は一度きり、短期間で済ませられるようなものではありません。社員の習熟度や成長をしっかりと把握できるシステムを整備し、より有効な方法を探りながら柔軟性をもって進めていく必要があります。

人材育成を成功させるための3つのポイント

人材育成を実施していくにあたり、成功に向けて留意すべきポイントを解説します。

ポイント1:新人から管理職まですべての層を対象にする

人材育成というと新人や若手にばかり目がいきがちですが、生涯を通じて学び続けるリカレント教育という考え方が世界的な流れとなっています。

企業が目指している目的に対しては、すべての年代、ポジションにおいてレベルアップすべき点があるはずです。新入社員、中堅社員、管理職ではそれぞれ人材育成の目標が異なります。

最終的な企業の目的達成への効果を考慮しながら、各層の成長のための方針を検討することが求められます。

特にOJTを行う際の指導側のレベルを高めることは、さらに上に立つ層にも連鎖的に影響し、社員全体のレベル向上につながります。新人の育成に着手する前に、トレーナー役のスキルの充実を図るのが成功への布石となるでしょう。

ポイント2:学ぶ側・教える側の両サイドの自発性向上

学ぶ側と教える側の両サイドの自発性向上により、相乗効果が高まります。

現代社会では、退職に至るまでの長期就労が継続する終身雇用が当たり前だった時代よりも、社員が自発的であることの意味あいが大きくなっています。

企業にとって、社員が経営上の重要なリソースであるのは当然です。しかし今は、過去の時代のように企業が社員の会社人生のすべての面倒をみられない時代です。終身雇用は事実上崩壊し、雇用される側の意識も多様化しています。

そうしたなか、注目されているのがCDP(career development program)と呼ばれる人材育成プログラムです。CDPでは企業が社員の資質や性格に合わせ、長期的な視点で人材育成の施策を実施していきます。

従来の人材育成の手法に加え、育成的な人事異動や社員自らが選択する応募型の研修など、個人が自分自身の「育成」を意識できるような施策も含まれています。社員は自らの成長のためには何が必要なのかを考えながら、主体的に取り組んでいくことができます。

自分らしい生き方を求めて転職に臨むのも珍しくなくなった今日、企業と個人は互いの成長のために歩み寄り、協力や依存をし合う関係となってきています。人材育成についても、そうした関係を背景にし、うまくバランスをとっていくことが求められています。

ポイント3:人材育成の観点を業務や制度に取り入れる

企業主体で一から十までを指導する方法や、形だけを教えてあとは自力に任せる方法など、過去にはさまざまな育成手法がありました。極端な会社主導型も放置型も、時代に合わないことに注意しなければなりません。

現代型の人材育成では、社員のモチベーションの持続が重要です。学ぶ側・教える側それぞれに対しての評価制度を確立し、次のステップへと目を向けられるよう促していきます。

人材育成では、企業と社員がその意味するものを共有しているかどうかで成果が変わってきます。企業側がもっている人材ニーズと、そこに期待される貢献について社員側が自分事として認識できれば、大きなモチベーションとなるでしょう。

そのためにも、企業が目指すもの、そのために必要となる人材、またリーダーに望む資質といった点をことあるごとにわかりやすい形で随時社員に伝え、啓発していきます。

企業は人材育成にあたり、学び続けられるための環境整備を行います。不要なルールを撤廃するなどの見直しを実施し、働きやすい職場環境へと変えていきます。公正な評価制度の提供とともに、チャレンジの奨励と失敗時のフォローも必要です。

学んだことが実際に業務に活かされなければ、意味がありません。社員が自ら実践していけるよう、学んだことに関連性のある業務への配属やプロジェクトへの参加など、機会を与えます。

仕事のなかで行う実践的育成としては、若いうちから部下を持つ経験や複数の職種の経験をさせる、またあえて難易度の高い仕事を体験させるといった思い切った施策の実施も検討に値します。

人材育成は単一の施策ではなく組織全体で遂行する

人材育成を部署や担当者が行う一部の施策と捉えてしまうと、成功への道のりが遠くなります。人材育成は企業内の業務や企業独自のあり方などに、すべて結び付けて考える必要があります。

学ぶ機会が必要なのは、新人や若手社員ばかりではありません。教える立場の側に対しても、キャリアに合わせた人材育成を行っていくことで教わる側との相乗効果が生まれ、企業の力が底上げされていきます。

社員の成長が続くためには、自社で何が必要なのか、今何ができるのか、現状把握と未来への希望を推し量りながら最適な方法を実施していかなければなりません。

参考:
平成30年度「能力開発基本調査」の結果を公表します|厚生労働省

人材育成に関して、より全体的に理解したいという方はこちらの記事をご一読ください。

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