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調査データ

認知率6割のリスキリング、実施・実施予定は2割以下。取り組み内容やその効能・課題とは?

2022年3月 7日

昨今、社員教育の領域で経済産業省が提唱する「リスキリング」が注目されています。
リスキリングとは、「新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること」です。

企業においては、働き方の変化によって新たに発生する業務を見据え、従業員に役立つスキルや知識を習得させることを目的とした取り組みといえるでしょう。DX(デジタルトランスフォーメーション)推進や新型コロナウィルスの影響で、様々なテクノロジー活用が加速的に進む今の時代、働き方も大きく変化しつつあります。

そこでマンパワーグループでは、企業の人事担当者を務める20代~50代の男女400名を対象に、「リスキリング」の実態について調査しました。取り組み内容や効能、課題についてのリアルな声を紹介します。

調査時期
2022年1月
有効回答
企業で人事担当者を務める20代~50代会社員または団体職員 400人

目次

「リスキリング」の認知率は6割

リスキリングという言葉は知っていますか

企業で人事担当者を務める20代~50代の男女400名に、リスキリングという言葉を知っているか聞いたところ、その認知率は全体の6割という結果になりました。その中で、「リスキリングの意味を理解している」(35.3%)は、全体の4割でした。さらに、言葉を認知している回答者のみを対象とした場合でも、その意味の理解率は6割弱にとどまり、リスキリングそのものの認知はまだまだ進んでいないことがわかりました。

「すでに実施している」企業は全体の1割。「実施予定」を含めても2割未満

すでに社員教育の一環としてリスキリングを実施していますか

社員教育の一環としてリスキリングを行なっているかを聞いてみたところ、リスキリングへの取り組みを「すでに行なっている」(10.0%)と回答した人は全体の1割でした。また、「今後、行なうことが決まっている」(9.5%)、「行なうかどうか検討している」(17.5%)を合せたリスキリングの実施に乗り出している企業は、2割に満たない実態が浮き彫りになりました。

一方、「行なう予定はいまのところない」(26.3%)、「行なうことはない」(14.8%)は、4割超、「わからない」(22.0%)という回答も2割超で、現時点では、リスキリングを取り入れることに積極的ではない企業も多いことが見えてきました。

「リスキリング」の成果と効能について

・業務がより効率的に遂行できるようになった(男性・37歳/広島県)

・業務の無駄を省くことができた上、デジタルで処理するため紙の使用が減った(女性・26歳/熊本県)

・新しいシステム導入の際に無駄に費やす時間が減った(男性・59歳/東京都)

・異業種の世界へ飛び込む経験で新しい発見があり、今後の展開に大いに役立つことになった(男性・46歳/愛知県)

・導入して間もないため、効果は不明。知識習得の個人差が大きいと感じる(女性・35歳/東京都)

実施内容は「ITスキルやIT知識を高める社内研修」がトップ

リスキリングとしてどんなことに取り組んでいますか

リスキリングを「すでに行なっている」と回答した人を対象に、「どんなことに取り組んでいるか」を聞いたところ、「ITスキルやIT知識を高める社内研修」(87.5%)が最も高く、以降は、「外部研修やセミナーへの参加」(52.5%)、「社内資格制度の導入」(50.0%)、「必要なスキル・能力を明示化」(50.0%)が続きます。また、「社員自身のスキルの見える化」(45.0%)、検定や資格取得のための教育(42.5%)も4割を超える回答となりました。

「リスキリングを行なうかどうか検討している」と回答した人の中には、「これからの社会には必要だと思うが、全ての業界に効果的だとは思わない」(女性・45歳/愛知県)、「一部には効果があると思うが、全体に対しては懐疑的」(男性・50歳/埼玉県)、「内製での教育に限界があり、社外に頼らざるを得ないが、コストがかかる」(女性・41歳/大阪府)などの声がありました。

業態や確保している人材、教育にかけられるコストなどによっても、リスキリングの取り組みやすさが異なるようです。

「リスキリング」の問題点・課題

・業務が多忙のため、学習の時間が取れない(男性・48歳/千葉県)

・ついて行けない人のフォローをすることが多くなっている(女性・45歳/東京都)

・教育対象が絞られる点(男性・44歳/佐賀県)

・リスキリングを行なう講師や余裕工数が社内で確保されていない(男性・59歳/京都府)

・適性のない人のモチベーションが今まで以上に下がる(男性・58歳/神奈川県)

DX活用が進む中、リスキリング実施に向けた仕組み作りが重要に

今回の調査では、「リスキリング」の認知率は6割、実施(予定も含む)している企業は2割にも満たないことがわかりました。また、すでに実施している企業の取り組み内容は、「ITスキルやIT知識を高める社内研修」がトップで、「外部研修やセミナーへの参加」(52.5%)、「社内資格制度の導入」(50.0%)、「必要なスキル・能力を明示化」(50.0%)が続きます。リスキリングに取り組む企業では、IT関連の業務スキル習得に積極的であるようです。

すでに実施している企業においても、成果・効能について「ソフトウェアを扱い開発できる人材が増えた」(女性・34歳/福岡県)「デジタル人材の不足に対応できるようになった」(男性・24歳/大阪府)「デジタル化が進みやすくなった」(女性・45歳/東京都)など、IT関連のスキルアップや環境整備に言及する声が多くありました。

一方では、「かえって離職を招いてしまった」(男性・37歳/東京都)、「教育対象が絞られる」(男性・44歳/佐賀県)、「高年齢の方はITに関する理解力が根本的に低い人が意外と多い」(男性・59歳/東京都)などの声もあり、一律で実施することに難しさを感じている傾向もありました。

また、実施予定と回答した人の中には、「リスキリングは必要である。やらないと現場の社員はITスキルがほぼない者もいるはずだが、PCで業務効率化していく予定なので学んでもらう」(男性・39歳/東京都)、「業務効率化が進み、要員を削減できる」(男性・57歳/愛知県)「これからの時代に必要なスキルなら、やるべきだと思う」(女性・31歳/大阪府)という声がありました。DXによる業務の変化や、企業経営における効率化、時代の変化への対応などの面で必要性を増していると考えているようです。

急速にデジタル化が進む社会環境に適応するため、企業には、新たな事業戦略としてリスキリングを進めていくことが求められています。今後、少子化による人材不足という課題がつきまとう日本においては、既存の従業員をリスキリングによって活用していくことがより重要になるでしょう。

ITに親和性のない人材をいかに業務に適応させるのか、また、IT活用に適正のある人材をどう活躍させていくのか、それにより、DXを活用した新たな事業展開や業務改善などを積極的に取り入れていけるのかどうか、変化の激しい時代に適応していけるのかどうかが変わってきます。

DX活用が進んでいくこれからの時代には必須となるリスキリング。早い時期から教育体制や人材配置などの仕組み作りに着手し、段階的にでも取り組みをスタートすることが大事といえるでしょう。

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