人材育成における適切な目標設定とは?

2020年6月16日

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シリーズ:
これからの時代の人材育成

ビジネスのボーダレス化・グローバル化が進み、ジェンダーや働き方など様々な価値観のアップデートのスパンが飛躍的に短くなってきています。
これまで以上に企業活動にイノベーションが必要とされる現代、人材育成とはどうあるべきかを読み解くためには基礎をしっかりと知っておくことが重要です。
本コラムでは、人材育成の考え方の基本について4回にわたって解説します。


第1回 「企業を悩ませる人材育成の現状と課題 取り組むべき対策もあわせて解説」
第2回 「企業における戦略的な人材育成のポイントとは?」
第3回 「人材育成における適切な目標設定とは?」
第4回 「人材育成とはそもそも何か?次世代人材の育成方法とは」

何のために人材育成をするのか、と問われれば企業の成長や経営の安定のためであることは当然です。しかし自社に必要な人材マネジメントを進めていくうえでは、さらに具体的かつ綿密な目標設定が求められます。

適切な目標のない人材育成では方向性が定まらず、担当者ごとにやり方が変わったり必要な指導ができなかったりといった状況も起こりえます。これでは人材の能力を伸ばすどころか、可能性をつぶすことにもなりかねません。

ここでは企業が人材育成に取り組むうえで参考となる目標設定の例や、その管理方法について解説していきます。

効果的な目標設定をするために押さえるべきポイント

企業にとって社員の目標設定は、人材育成を進めるうえで重要です。効果的な目標設定とするために、留意したいポイントを解説します。

ポイント1:社員にとって意味のある目標であること

「目標設定はさせているが一向にそれらしい成果が見えない」。
多くの企業で聞かれる声ですが、この場合設定されている目標自体に問題があると考えられます。

目標設定が、対象となる社員に業務上の指示としてしか受け止められていない場合、それは「自分が目指すべきもの」ではないのかもしれません。

上司から指示されてとりあえず掲げた数値目標は、その社員にとってのモチベーションとはなりません。社員が「何のために?」「達成するとどうなるのか?」という点について、具体的にイメージできる目標であることが大切です。

目標は、目標設定をするための「道具」ではありません。達成されること、あるいはそれを目指す原動力となることで意味をもちます。また、個人ではコントロール不可能で、努力や工夫なしでは安易に達成できないものであることが、社員にとっての有意義な目標となります。

ポイント2:企業目標との整合性を図る

企業側では人材育成が経営上の重要な戦略・事業のひとつであることを、常に意識して取り組む必要があります。

人材育成の目的を「自律性をもって思考・行動ができる社員」とする企業は多く見られますが、自律的であると同時に、「企業理念に従った行動ができる社員」であるのはいうまでもありません。

個人と企業の最終的な目標がずれていては、何のための人材育成かわからなくなります。人材育成を行うにあたっては、企業の明確なゴールを打ち出し、その方向性と一致することが大切です。

経営戦略を進めていくうえで、具体的に「どのような人材を育成したらいいのか」「どのようなスキルを持つ人材が欲しいのか」「その人材を育成するためには何が必要なのか」「現時点で何を目標とさせるべきなのか」など、ニーズから導かれるものを人材育成の過程に落とし込み、現在企業が手にしている人材と照らし合わせて各人の目標設定の材料としていきます。

ポイント3:一律化しない

働き方改革にも見られるように、現代の企業としてもっとも求められているのが、多様性の容認です。社員の目標設定においても、画一的な「当てはめ型」は通用しない時代となりました。

社員の均一化を求めるのは、古い考え方です。個性をつぶすのではなく、個人の資質が活きる目標となるよう、指導していく意識が必要です。

一人ひとりに達成可能な目標が設定されているのかを精査し、社員自身に気づきを与えながら、その時点でもっとも有効な目標を定められるよう促します。

ポイント4:長期的な視点を持ち継続的に行う

企業の人材育成に終わりはありません。新入社員の育成はもちろんですが、ひとりの人間の成長に完結がないことにも着目していく必要があります。

目標の先には続きがあります。どの年次の社員でも、常に先へと成長できることを意識させていかなければなりません。成長のためには、その時々でチャレンジしがいのある「野心的な」目標であることも重要です。

また、現代は過去の時代とは違い、一度入社すれば会社人生をまっとうできるという安穏なものではありません。ビジネス環境の変化が著しい現代においては、「プロティアン・キャリア(Protean Career)」の考え方が参考になります。
プロティアン・キャリアとはアメリカの心理学者ダグラス・ホールが提唱する理論で、「環境の変化に応じて自分自身も変化させる柔軟なキャリア形成」を指します。

プロティアン・キャリアで主体となるのは社員自身であり、キャリア形成の枠組みを企業内の地位や昇進と捉えず、成長と個人的な満足感と捉えて重視します。

人材育成を企業のものとせず、自身の成長の手段と見なすことができれば、生涯にわたるキャリアのための目標設定へとつながっていくでしょう。

ポイント5:明確な達成度を測れる方法を導入する

適切な目標設定は人材育成の成功のための大きなポイントですが、その達成度の測定方法についても明確に定義されなければなりません。
失敗の多くは設定された目標に到達できたかどうかがあやふやなまま、何となく落としどころを見つけてしまうことにあります。

設定される目標は必ずしも数値的なものばかりとは限りませんが、「頑張った」的な評価とならないための工夫が必要です。目標に対し、定性・定量的評価をどうするのかを設計段階から考えておかないと、消化不良に終わってしまいます。

例えば、数値化できないものについては、行動記録などのエビデンス的な要素を社員にも意識させ、何をもって目標に近づけたのかを明確にするようにします。

人材育成における目標設定の方法と具体例

目標設定を行うときに参考となる手法と、具体例を紹介します。

SMARTの法則の活用

1981年に米国のジョージ・T・ドランが提唱した「SMARTの法則」は、現在でも多くのビジネスパーソンに活用されています。実現するための成功因子となる5つの要素をもとに組み立てることで、現実的な目標設定が可能となります。「SMARTの法則」の成功因子は以下のとおりです。

Specific:具体的である

例えば「向上させる」という表現には客観性がありません。
誰が見ても明らかな向上であるとする、具体的なイメージを目標とします。

Measurable:計測可能である

目標への進捗状況や到達度を可視化するためには、数値化による計測可能な要素が必要です。
定性・定量の組み合わせ、バランスを考えた目標を考えます。

Achievable:達成可能である

個人の技能や性質を無視し、企業本位で達成困難な目標を定めても、逆に成長を妨げるばかりです。
努力次第で必ず手に入るゴールであることが大切です。

Relevant:関連性・何が生み出されるか

モチベーションを上げるためには、目標達成により得られるベネフィットがなければなりません。
チームや企業全体の業績に直接結びつく功績、またボーナスが与えられる、昇格のチャンスが得られるといったものが挙げられます。

Time-bound:期限

期限なしの目標は、単なる夢にすぎません。
短期的、中長期的な目標を期限つきで定めることで、具体的な行動計画が立てやすくなります。

目標設定の具体例

目標設定を実施していく際には「SMARTの法則」にしたがい、いつまでに何をすることで何が得られるのかという道筋を考えていきます。

個人の短期・中期・長期の目標から部署目標、さらに企業目標につなげるといった、ミクロからマクロへの流れで見ると設定しやすくなります。

具体的な目標設定として、採用担当部署の場合を例にしてみましょう。

【例1:広告費削減に向けた目標設定】

1. 今週末までに1年間の採用広告のデータを収集

2. 来週末までにデータを集計

3. 今月末までにデータ分析を完了

4. 来月の会議に結果報告:掲載広告の集約を提案→応募者数を落とさず広告費5%削減の根拠を示す

【例2:内定承諾率100%に向けた目標設定(応募者昨年比30%増のための施策)】

1. 競合他社の採用ページを比較研究:今月末まで

2. サイト制作会社に依頼する修正点の洗い出し:来月上旬

3. 書類通過率の見直し→人数調整の提案:〇月末まで

4. 過去の面接設定率と内定承諾率の分析:〇月×週まで

5. 選考過程の可視化に向けたシステム改善:第1四半期末まで

6. さらに選考時のトラブルをゼロにする

目標管理の重要性とその方法

なぜ目標管理が重要なのか、また設定された目標をどのように管理・運用するのかについて解説します。

目標管理なくして達成はできない

冒頭でも挙げたように目標設定は、単なる上からの指示業務となってしまっては意味がありません。立派な目標設定で満足し、未達の計画で終わっては成果が期待できません。

設定した目標を達成させるためには適切な目標管理が必要ですが、社員個人に任せてしまうのでは人材育成として不備があります。

常に目標を意識できないと、なし崩しになりやすいため、完璧な個人管理・セルフ評価は難しいといえます。たまに様子を聞く程度で、目標をクリアできる社員ばかりそろう幸運な企業であれば目標管理は不要であるともいえます。

目標管理の手法

適切に目標管理を行うためのツールとして今注目されているのが、OKR(Objectives and Key Results)です。OKRは、目標とそれを達成するためのカギとなる指標で構成されます。

企業で活用する場合には、企業側のOKRと各チーム・各個人のOKRを作成して統合・構造化します。個人と企業の目標がリンクすると、自分の目標が企業への直接的な貢献となることが一望できるようになります。

個々の目標管理シートを、直属の上司だけではなくチーム内で共有するという手法もあります。複数の目をとおすことで、目標設定がより客観性と具体性を増し、現実的なものとなります。
個人・チーム・部署ごとの評価システムを構築し、孤立感を抱かずに目標へ前進できるよう図っていくことも大切です。

目標管理にPDCAサイクルを取り入れて行う方法は一般的ですが、変更可能であっても安易な妥協を不許可にするといった制限は必要です。

また1on1スタイルなどを活用しながら面接・面談を計画的に実施する一方で、目標管理を行う側にはコーチング研修を実施するといった多面的な取り組みが求められます。

リーダー制やバディ制など目標管理の仕組みも多々ありますが、自社の社員層に合った方式を採用するようにします。正しい目標設定と組織的な目標管理によって、着実な成果を導ける人材育成となることが期待されます。

人材育成における目標を絵に描いた餅にしないために

人材育成では目標をどこに置くか、どのようにそれを実現していくのかによって成果が大きく異なります。思うように人材が育ってくれないのは、目標設定の仕方に問題があるのかもしれません。

社員の側からすれば、目標設定は決して楽な作業ではありません。目標設定によって何が得られるのかを十分に理解させておかなければ、単なる業務のひとつとして表面的なごまかしで済ませてしまう可能性もあります。
そうなれば目標は絵に描いた餅のようなものです。ただの飾りとなり、人材育成の何の役にも立たなくなるでしょう。

それを避けるためにも、指導する側が効果的な目標設定とその管理法を把握しておく必要があります。成長につながる目標設定としていくためには、企業側の個人への積極的な関与が求められます。

人材育成に関して、より全体的に理解したいという方はこちらの記事をご一読ください。

人材育成とはそもそも何か?次世代人材の育成方法とは 人材育成とはそもそも何か?次世代人材の育成方法とは

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