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8割超の一般社員が「管理職になりたくない」と回答。その理由とは?

2020年3月16日

働き方改革に伴い、労働時間の短縮や年休取得の推進を実施したものの、実態として業務量の削減ができておらず、そのしわ寄せが管理職社員に向けられてしまうというケースが懸念されています。
このような状況で、一般社員は「管理職になること」についてどのように考えているのでしょうか。

そこでマンパワーグループでは、役職についていない正社員20代~50代の男女400名を対象に、「今後、管理職になりたいか」についての調査を実施しました。管理職人材を確保するための環境づくりの参考にしてみませんか?

調査時期
2020年2月
有効回答
400人

目次

20代~30代男性は"比較的"管理職に肯定的

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役職についていない正社員20代~50代の男女400名に、「今後、管理職になりたいか」を聞いたところ、全体の8割超が「なりたくない」(83.0%)と回答しました。

年代別に見ると、「管理職になりたい」と回答をしたのは、20代(28.0%)、30代(23.0%)が最も多く、40代(10.0%)、50代(7.0%)より1~2割多い結果となりました。年代が高くなるにつれ、「管理職になりたくない」という回答の割合が増えることがわかりました。

また、「管理職になりたい」と回答した人の割合を男女別の年代ごとに見ると、女性で「管理職になりたい」と回答した人の割合は男性より低く、特に30代では、男性(30.0%)に対して女性(16.0%)の割合が約半分にとどまっています。

管理職になるなら8割超が「40代まで」と回答

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「管理職になりたい」と回答した人を対象に、「いつまでになりたいか」を質問したところ、最も解答率が高かったのは「30代後半まで」(22.1%)で、「40代前半」「40代後半」が同率(20.6%)で続きます。

「40代まで」との回答が8割超を占めています。体力や気力も充実している30代後半~40代後半のうちに管理職になりたいと考える傾向があるといえそうです。

管理職になりたい理由は「報酬が増える」「自分が成長できる」

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「管理職になりたい」と回答した人に、その理由について聞いたところ、「報酬が増える」(88.2%)、「自分が成長できる」(66.2%)が上位を占めました。
報酬という現実的な面がある一方で、責任ある立場を任されて自己成長していきたい、という思いもあるようです。

3位以降には、「会社から評価されていると思える」(25.0%)、「大きな仕事にチャレンジできる」(23.5%)、「より大きな影響力を周囲に与えることができる」(20.6%)が続きます。

管理職になりたくない理由トップは「責任の重い仕事をしたくない」

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一方、「管理職になりたくない」と回答した人に、その理由について聞いたところ、「責任の重い仕事をしたくない」(51.2%)が最も多い結果となりました。
以降、「報酬面でのメリットが少ない」(40.4%)、「業務負荷が高い」(40.4%)が続きます。責任範囲や業務負荷が増える反面、時間外労働の適用はされないという点が、管理職になりたくない要因といえそうです。

また、年代別で見ると、20代(62.5%)、30代(62.3%)の約6割が「責任の重い仕事をしたくない」を理由に挙げており、全体の回答率よりも1割程度高くなっています。

さらに、20代の回答は、「部下の育成に興味がないから」(31.9%)、30代の回答では、「面倒な調整業務などが増えそうだから」(39.0%)が全体より高い傾向にあることから、若手世代ほど、自身がプレーヤーとして動ける環境を求めているようです。
また、結婚・子育てなどのライフプランが直接影響する可能性も高く、現実問題として「責任の重い仕事ができない」という状況もありそうです。

管理職になるための教育研修やフォローアップ制度がある企業は約2割

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「管理職になるための教育研修やフォローアップ制度があるか」を聞いたところ、何らかの教育制度が「ある」(21.8%)と回答した人は約2割にとどまりました。

管理職になるための教育制度やフォローアップについては、「マネジメント研修」(19.0%)が最も多く、以降は「コンプライアンス研修」(9.5%)、「部下育成研修」(8.5%)、「ハラスメント研修」(7.3%)が1割程度で続いています。
管理職として責任ある立場を任せるために、企業も管理職社員を育てる環境を整える必要がありそうです。

「管理職になりたい」と思える労働・教育環境や報酬制度の整備が重要に

今回の調査では対象者の8割超が「今後、管理職になりたくない」と考えているという結果になりました。
やりがい、報酬など、プラス面には一定の理解をしめしながら、付随する義務や責任については逡巡している図式が見て取れます。「苦労の割に実が少ない損な役割」、そんな風に感じているのかもしれません。

「管理職になる=労働時間が長くなり手当ももらえない」と考えているケースでは、「管理職」と「管理監督者」の違いについての理解不足があるかもしれません。
法律では「管理職=労働時間や休憩、休日に関する規定が適用されない役職」という定義はありません(「管理監督者」については、裁量権が大きい分、労働時間、休憩などに労働法の制限を受けないという定めがあります)。
「管理職」とはあくまでそれぞれの企業が独自に設定する役職・役割であり、すべての「管理職」が「管理監督者」に当てはまるわけではありません。
「管理監督者」に当てはまるかどうかは、役職名ではなく、その職務内容、責任と権限、勤務態様等の実態によって判断されます。

参考:厚生労働省 労働基準法における管理監督者の範囲の適正化のために(PDF)外部リンク

トップダウンが当たり前だったマネジメントスタイルは、新しい経営手法やコミュニケーション形態の登場など、時代の変遷やITの発達につれ、急速に変化しつつあります。
企業が組織である以上、従業員管理の役割は無くならないとした場合、今の時代の従業員意識や価値観に即した管理職の役割を、企業が独自に設計する必要があると考えられます。

従業員の意識としても、企業組織の中でより高いレイヤーを目指すことが、かつての普遍的なキャリア・ゴールでしたが、価値観やライフスタイルの多様化やワークライフバランスやパーソナルキャリアに対する意識の向上により、もはや「管理職になる」ことが共通の目標ではなくなったと言える状況において、「管理職をめざしたくない」という従業員が増加することは避けられない潮流かもしれません。

なりたいと思える管理職の役割や報酬制度を定義しなおす、管理職が無くても運用できる組織を考案するなど、抜本的な組織改革も一考する価値があるでしょう。
また、管理職に期待する人物像についても、さまざまなリーダーシップ理論の中から思い切った新しいスタイルを導入するなど(強制型リーダーシップからサーバントリーダーシップ型に変更する等)、企業側での工夫の余地はまだまだ残されています。

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また、アンケートの結果は調査時点に基づいたものであることにご留意ください。

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