増加する叱れない上司 部下への正しい叱り方を知る

2019年11月18日

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シリーズ:
心理学と脳科学から解き明かす 部下の本来の力を引き出す指導法


部下への指導法は「気合と根性」だけでどうにかなるものではありません。
本コラムでは、個人個人が本来持っている力を引き出すための指導法について、心理学と脳科学のフレームを用いながら4回にわたって解説します。


第1回 「守りに入っている?変化を恐れる社員への処方箋
第2回 「増加する叱れない上司 部下への正しい叱り方を知る」
第3回 「部下の成長を促すために、上司が行うべき行動とは
第4回 「仕事への好循環をもたらす、部下とのコミュニケーション方法のポイント

叱れない理由/叱りたくない理由が山積みの時代

叱れない上司が増えています。理由は、上司を取り巻く環境に「叱れない理由/叱りたくない理由」が山積みだからです。

まず挙げられるのは、「パワーハラスメント問題(パワハラ問題)」です。
近年、SNSでのパワハラ告発の社外拡散がニュースとして大々的に多く取り上げられたこともあり、「何を言えば良いか分からない」「めんどくさい」という心理に陥る人が増加しています。

次に「上司/メンバーの多忙」です。
管理職の多くはプレイングマネージャーであることから、自身の業務に追われて部下の指導のための時間を捻出しづらいなどのケースもあるでしょう。
また、採用難の時代が続きチームメンバーが不足しているなか、部下の退職リスクを懸念して部下を叱りづらいと感じてしまう上司もいます。

これらに加えて、長時間労働の抑制/有給取得奨励/テレワーク導入などの「働き方改革」関連の施策によって、対面コミュニケーションの機会が減少したという相談も増えています。

叱るメリットと叱らないデメリット

上司自身も人間なので、「社内に波風を立てたくない(親和欲求)」「変化したくない(脳の一貫性)」という心理が働きます。
部下と対峙するためには、相当のエネルギーが必要です。
そこで、上司には「叱るメリット」と「叱らないデメリット」を理解し、意識変化をしてもらう事が重要です。

■叱るメリット

  • 1 何の為に叱るのか(叱る理由・目的)
  • 2 叱ることでの本人のメリット(チャンス)は?
  • 3 叱らないことでの本人のデメリット(リスク)は?
  • 4 叱ることでの上司自身のメリット(チャンス)は?
  • 5 叱らないことでの上司自身のデメリット(リスク)は?

上記5つを言語化してみることで「叱る」意味付けが整理でき、コミュニケーションのゴールの把握もできます。

■叱らないデメリット

「パワハラが怖いので叱れない/波風を立てないようにそっとしておく」という上司は、むしろその行為がパワハラに該当するリスクがあります。

叱らないことがパワハラになることも

先述した「パワハラが怖いので叱れない/波風を立てないようにそっとしておく」ことが、パワハラに該当するリスクがあるというのはどういうことでしょうか。
パワハラの定義と類型をおさらいしてみましょう。

<パワーハラスメントとは>

■パワーハラスメントの定義

同じ職場で働く者に対し、職務上の地位や人間関係などの職場内での優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為。

■パワーハラスメントの6類型

  • 1  身体的な攻撃:暴行・傷害
  • 2  精神的な攻撃:脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言
  • 3  人間関係からの切り離し:隔離・仲間外し・無視
  • 4  過大な要求:業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害
  • 5  過小な要求:業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと
  • 6  個の侵害:私的なことに過度に立ち入ること

出典:「職場のパワーハラスメントについて」(厚生労働省)

部下を叱りたくないので放置することは、上記6類型の3 人間関係からの切り離し5 過小な要求に該当する可能性があります。

2019年5月に「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(労働施策総合推進法)」が成立しました。
パワハラ防止法、パワハラ関連法案などとも呼ばれていますが、早ければ2020年4月には企業へのパワハラ防止策実施の義務化の適用が開始されます。
法対応はもちろんのこと、きちんと指導する基準と伝え方を理解するためにも、上記の定義と類型は押さえておきましょう。

叱るスキルを身につけ、正しい指導を

「叱るメリット」「叱らないデメリット」を理解できたら、次は「叱り方(スキル)」です。
対応における論理構成は、下記のとおりです。

1 対象者本人は、どうなりたいのか(WILL)

ここが一番のポイントです。
会社の要望を伝える前に、対象者本人の希望を一旦吐き出させます。
上司が誠実な傾聴の姿勢を示し、安心して本音が吐き出せると「カタルシス効果(気持ちを発信して落ち着く)」と「親密化効果(聴いてくれた人に親近感を抱く)」が発揮され、その後のコミュニケーションが受容し易くなります。
また、対象者の希望や将来像を把握すると、指導・育成・目標も適切に設定しやすくなります。

2 上司としては、どうなって欲しいのか(MUST)

「期待役割」を明確に言語化します。
数字だけではなく組織の中で期待したい役割や、こうあって欲しいという人材像も含めて伝えます。
ローパフォーマー対応の相談にこられる企業のなかには、上司側・人事側がこれを明確にできていないケースがよく見受けられます。

3 双方の期待を満たすゴール設定(GOAL)

対象者本人と会社の見解・期待・目標がすれ違っている場合が多いため、双方のすり合わせをきちんと行います。

4 ゴールと現状のギャップは?埋める行動は?(CAN)

刷り合わせたゴールと現状のギャップを知り、達成するための具体的な行動を考えていきます。
「実現可能」で「計測可能」な行動を、しっかり話し合って合意します。

重要なのは、「気合」と「根性」を強制しないこと。

パフォーマンスの高い社員は自発的に気合や根性を発揮している場合が多いですし、そうでなくとも強制するのは逆効果です。
まずは「誠意」と「論理」で向き合うことが、特に重要です。

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