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人材不足解消のカギは「ウェルビーイング」「仕事の満足度」「自信」。働く人の価値観を理解し”働きがいのある職場づくり”に必要なこととは

2025年5月30日

目次

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新型コロナウイルスによるパンデミックを経て、多くの企業で在宅勤務の導入をはじめとする働き方改革が推進されてきました。こうした環境の変化は組織内の制度改革のみならず、働く人々の価値観にも大きな影響を及ぼしています。働き方が多様化している現在、世界の働く人々は何を求め、どのようなことを重要視しているのでしょうか。

今回の記事では、マンパワーグループが実施した労働者への意識調査「グローバル・タレント・バロメーター」の結果について若年層離職問題を専門とする古川 武生コンサルタントが解説します。

グローバル・タレント・バロメーターとは

「グローバル・タレント・バロメーター」は、労働者が求めているものや意識を深く理解することを目的として、世界16カ国の約12,000人の労働者に対して調査しました。グローバル・タレント・バロメーターは、世界の労働者の「ウェルビーイング」「仕事の満足度」「自信」を測定する指標※1です。

※1指標:以下3テーマについての調査4項目の回答割合を平均した値を指数として表示

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2024年グローバル・タレント・バロメーターについての会社発表はこちらからご確認いただけます。

URL: https://www.manpowergroup.jp/company/press/2024/20241112.html

「労働者の意識を知ること」とは

マンパワーグループが2025年1月に発表した「人材不足に関する調査」によると、日本では77%の企業が人手不足を感じています。この結果は、グローバル平均を上回る水準で、多くの企業において深刻な課題となっています。

企業や組織が人手不足解消に向けて具体的な施策を実行していくためには、変わりゆく労働者の心理に影響を与える要因を深く理解することが必要です。労働者の意識調査「グローバル・タレント・バロメーター」は、働く人々の価値観を理解し将来の労働環境の改善につなげることで、組織が抱える課題解決の一助となることを目的に実施されています。

ここからは、古川武生コンサルタントによる解説パートです。

「ウェルビーイング」「仕事の満足度」「自信」の3つのカテゴリーに分けて、それぞれの視点から詳しくご紹介します。

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Z世代・ミレニアル世代のウェルビーイング意識:仕事とプライベートの両立が求められる時代の価値観

ウェルビーイング(心身の健康や幸福)については、現在、多くの企業が実現に向けた取り組みを加速しています。こうした動きの背景には、社員を含めたすべてのステークホルダーのウェルビーイング実現が、自社の成長と経営目標の達成に繋がると捉えていることがあります。社員が自らの「働く意義」を見出し、組織のビジョンや方向性と自身の価値観をすり合わせながら、仕事を通じて周囲に貢献していく。そうした自己実現を果たすことによって、ウェルビーイングは高められると考えられます。

世代とジェンダーの組み合わせによる比較をみると、若手・中堅層といわれるZ世代(年齢:18-27)やミレニアル世代(年齢:28-43)では、ワークライフバランスの指標(ワークライフバランスと自身のウェルビーイングについて会社から「十分な」または「完璧な」サポートを受けていると感じている労働者の割合)において、他の世代よりも高い傾向にあります。特に若手・中堅層の世代においては、「仕事」と「プライベート」の両方を充実させたいという価値観が高まっている傾向にあり、この世代の満足度が高いのは、会社から受けているサポートへの満足度が現れている結果ととらえることもできます。

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仕事の満足度を高める2つの「エンゲージメント」:上司と部下の信頼関係を築く「心理的安全性」の重要性

仕事の満足度は、

  • ワークエンゲージメント(仕事にやりがいや熱意を持ち生き生きとしている状態)
  • 従業員エンゲージメント(社員と会社が信頼して貢献し合う状態)

この両方が高まることによって上昇すると考えられます。

職種と勤務場所による仕事の満足度の違いをみると、職種別では「中間管理職」、勤務場所では「ハイブリッド勤務※」の労働者が、最も上司への信頼感が高いという結果になりました。この項目は、キャリア開発に関して、上司が自分のためを思ってくれていると「非常に信頼している」または「ある程度信頼している」と答えた労働者の割合です。

このテーマにおいて大切なことは、上司と部下の間に心理的安全性が保たれたうえで、キャリア支援を行うことです。何でも話し合える関係性が構築された中でキャリアをテーマにした面談を行い、上司は部下のキャリア観を傾聴して理解を示すことが重要です。そのうえで、彼らの成長に繋がる業務のアサインやフィードバック、助言などの支援を行っていくことで仕事の満足度を高めていくことが可能になります。

※ハイブリッド勤務:出社とリモート勤務を組み合わせた働き方

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「成長実感」に必要なのは強みと成長課題を明確にすること:「ミレニアル世代」の男性・「Z世代」の女性が「成長実感」を得られている傾向

自信の項目については、自身の職務経験を通じて「成長実感」が得られているかどうかが重要です。成長実感を得るためには、所属する組織内で十分なキャリア開発の機会が与えられていることが必要不可欠となります。キャリア開発の指標について年齢と性別の組み合わせによる比較をみると、男性はミレニアル世代で、女性はZ世代でそれぞれ最も数値が高い結果となりました。この項目は、現在の組織には自分のキャリア目標達成のために、必要なスキルと経験を十分に得られる機会があるかについて、「非常にそう思う」または「そう思う」と答えた労働者の割合です。

さらに、キャリア開発の機会を労働者一人ひとりの自信に繋げていくためには、組織からのサポートのみならず社員一人ひとりが自己理解を深めることも欠かせません。自身の強みや成長課題を明確にし、将来のありたい姿を実現するための具体的なキャリアプランを考えます。そして、組織内でのキャリア開発の機会を利用しながら行動を起こしていくことで自己効力感を高め、労働者一人ひとりの自信を高めていくことができます。

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企業に求められるのは「労働者の意識」を理解すること

人々が仕事に何を求めているのかを理解することは、成功に必要な人材を惹きつけ定着させる上で欠かせません。 だからこそ、この「グローバル・タレント・バロメーター」の調査を通じて、労働者が現在、そして将来の仕事のあり方についてどのように感じているのかを知ってもらえることを嬉しく思います。この指標は、雇用主の皆様が従業員のニーズを理解し、競争の激しいグローバルな人材市場で優位に立つための、最善策を明らかにすることにも役立ちます。

プロフィール:マンパワーグループ株式会社 ライトマネジメント事業部
シニアコンサルタント 古川 武生

古川 武生シニアコンサルタント

2002年にマンパワーグループへ入社。派遣社員のキャリアカウンセリング、転職支援、営業部門マネジメント、再就職支援事業の事業責任者を経て、現在はキャリアデザイン研修、管理職研修、コミュニケーション研修などの人材育成、及び雇用調整コンサルティングに従事。国家資格キャリアコンサルタントの資格を持つ。

全編はこちらのURLからご確認ください。
URL:https://www.manpowergroup.jp/company/r_center/w_paper/

調査概要

調査時期:2024年4月15日~5月10日
調査機関:自社調査
調査対象:世界16カ国の労働者
有効回答数:12,062人 (日本は540人)
調査方法:Webアンケートによる調査

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