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派遣元は派遣社員をシフト勤務の条件で受け入れることは可能です。
ただし、シフト制の運用にあたっては、個別契約書への勤務日・時間枠の明記や法定休日・労働時間の適正な管理といった法的ルールの遵守が必須となります。
本記事では、派遣社員をシフト制で受け入れる際の契約やルール、現場でのトラブル回避術などを解説します。現場でのトラブルを未然に防ぎたい派遣先の担当者は最後までご覧ください。

派遣社員をシフト制で受け入れる際は、トラブルを防ぐために事前のルール作りが大切です。
あらかじめ運用方針を固めておくことで、派遣会社との連携がスムーズになり、現場の混乱も防げます。
ここでは、派遣社員をシフト制で受け入れる前に決めておきたい2つのポイントについて解説します。
派遣社員のシフト形態には、大きく分けて「固定シフト」と「変動シフト(シフト制)」の2種類があります。それぞれの特徴を理解したうえで、自社の運用に適した形態を選択しましょう。
| 項目 | 固定シフト | 変動シフト(シフト制) |
| 就業日・ 就業時刻 |
曜日・時間が決まっている (例:月・水・金の9〜18時) |
一定期間(1週間・1か月など)に 就業日・就業時刻を決定する |
| メリット |
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| デメリット | 繁閑への柔軟な対応が難しい | 毎月の調整工数が必要・契約書への記載が必要 |
どちらの形態を採用するかによって、派遣会社への依頼内容や契約手続きが異なるため、事前の決定が必須です。
派遣社員をシフト制で受け入れる場合、まず整理しておきたいのが契約上の就業日数と就業時間です。
派遣社員の給与は基本的に勤務時間に比例するため、契約条件と実際の稼働が大きくずれるとトラブルにつながる可能性があります。
就業開始後に認識のズレを起こさないためにも、派遣会社と次の点を事前にすり合わせておきましょう。
シフト制は、勤務日や勤務時間をシフト表で決めて働く勤務形態です。
一方、変形労働時間制は、1か月や1年など一定期間の平均で週40時間以内に収まれば、繁忙期と閑散期で労働時間を調整できる制度を指します。
シフト制は人員配置の方法、変形労働時間制は労働時間の制度であり、それぞれ別の概念ですが、併用されることもあります。
| 項目 | シフト制 | 変形労働時間制 |
| 内容 | 勤務日・勤務時間をシフト表で決める | 一定期間の平均で週40時間以内にする制度 |
| 法制度 | 特に制度ではない(勤務形態) | 労働基準法の制度 |
| 主な目的 | 人員配置 | 労働時間調整 |
| 例 | 早番・遅番 | 繁忙期10時間勤務 |

派遣会社に派遣を依頼する際は、曖昧な表現を避け、具体的な条件を数字やルールで伝えましょう。
条件が不明確なままだと、提示した勤務日や時間帯に対応できない候補者の紹介を招くほか、就業開始後に認識のズレが生じて早期離職の原因になります。
ここでは、派遣会社へ正確に伝えるべき以下の3つの項目について詳しく解説します。
派遣会社への依頼時には、単に「始業・終業時刻」と「休憩時間」だけでなく、どのようなシフトパターンで運用するのかを具体的に共有することが重要です。
たとえば、以下のような点を整理して派遣会社に伝えましょう。
派遣社員に具体的な勤務イメージを伝えることで、トラブル防止や長期稼働につながります。
毎月のシフト作成において、「希望シフトの提出期限」と「シフト確定日」を明確なルールとして定めておきましょう。
シフト確定のルールが曖昧な状態では、 不満や離職の原因になりかねません。円滑な運用のために、以下のスケジュールと方法を事前に取り決めて合意しておきましょう。
また、労働者派遣法によりシフト表は派遣契約の一部として取り扱われ、派遣先は派遣先管理台帳および勤怠記録とあわせてシフト表を保管する義務があるため、適切に管理しましょう。
休日・休暇に関するルールは、トラブルになりやすい項目の一つです。
とくに、年末年始やGWが休みではない職場では、派遣会社へ休暇に関わる情報を共有し、派遣社員にも事前に伝えておかないとトラブルにつながる可能性があります。
トラブルを未然に防ぐためにも派遣先は、派遣会社に対して次のような点を具体的に提示しましょう。
| 法定休日・所定休日等の考え方 |
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| 長期休暇期間の扱い |
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| 希望休のルール |
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| 固定曜日休み・連休の可否 |
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なお、有給休暇の付与自体は派遣会社の責任で行われますが、派遣先は有給取得に協力する必要があります。

シフト制で派遣社員を受け入れる際には、通常の案件よりも契約書の記載内容に注意が必要です。
まず、先述のとおり、シフト表は派遣契約の一部とみなされます。
派遣会社は派遣元管理台帳を作成・保管しなければなりません。あわせて派遣先も派遣先管理台帳や勤怠記録などの保管が必要です。
ここでは、シフト勤務の場合の派遣契約の注意点についてさらに詳しく解説します。
派遣会社との間で締結する基本契約は、個々の案件に先立って交わす「取引の基本的なルール」を定めるものです。
主な記載事項は以下のとおりです。
基本契約はあくまでも取引全体の枠組みを定めるものであり、具体的な就業日時や業務内容は労働者派遣契約で決定します。
シフト制の派遣については、基本契約と個別契約の役割分担を明確に理解したうえで、それぞれに必要な事項が適切に盛り込まれているか確認しましょう。
個々の派遣案件ごとに締結する「労働者派遣契約(個別契約)」には、労働者派遣法第26条に基づき、主に以下の事項を記載しなければなりません。
通常の土日祝休みなどの固定勤務の場合は、就業日欄に「月・火・水・木・金」と曜日を指定するだけで問題ありません。
しかし、シフト勤務の場合は曜日が特定できず、勤務時間も日によって変動するため、契約書には必要な情報を具体的に記載しましょう。
シフト勤務表は、個別契約書の一部とみなされ、一緒に保管されることが多く、監査の際に確認される場合があります。そのため、契約書の「就業日」や「就業時間」の欄には、「別紙シフト表に基づく」や「別途シフト表あり」などと記載し、詳細な勤務内容は別紙のシフト表で示す方法が一般的です。
別紙として作成するシフト表は、労働者派遣事業関係業務取扱要領に基づき、以下の要件を満たしている必要があります。
| 要件 | 概要 |
| 就業する日の特定 |
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| 日ごとの始業・終業時刻および休憩時間の明記 |
|
| 労働契約および法令の範囲内である |
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シフト勤務の派遣契約では「契約書本体」と「別紙シフト表」をセットで管理し、いつ・誰が・どのような時間で就業するかを明確にしておきましょう。
参考:労働者派遣事業関係業務取扱要領(令和7年6月1日以降)

契約を適切に締結した後も、日々の実務運用を正しく行わなければトラブルが発生する可能性があります。
ここでは、派遣社員のシフト管理・実務運用におけるポイントについて解説します。
シフト作成は、派遣個別契約書で定めた就業条件の範囲内で行うのが原則です。
派遣社員から希望休などの要望を収集する際は、あらかじめ「希望申請は月に〇日まで」や「繁忙期の出勤協力の有無」といった運用ルールを明確に提示し、合意を得ておくことが重要です。
作成する際は、以下の点に注意しましょう。
シフトにおいて、一方的な変更や強制は関係悪化やトラブルの原因になります。事前に取り決めたルールに沿って誠実に運用しましょう。
急な欠勤や遅刻、早退が発生する可能性を考慮して、事前に対応ルールを決めておくことが大切です。
当日急な対応が必要になった時のために事前に、次の点を派遣会社と合意しておきましょう。
また、併せて以下の点も必ず確認することで後々のトラブルも防げるでしょう。
シフト制であっても、所定の終業時刻を超えた勤務は残業として扱われます。
前提として、派遣社員に残業を依頼するためには、以下の2つの条件を満たす必要があります。
上記の条件を満たさない状態での残業依頼は、労働基準法違反となる可能性があるため注意が必要です。
また、残業が発生した場合、派遣料金に時間外手当相当分が上乗せされます。
あらかじめ派遣会社に確認しておきましょう。併せて、休日の定義も明確にしておきます。
| 22時〜翌5時の深夜帯を含む残業 (労働時間が8時間以内でも、深夜帯の労働は割り増しになる) |
通常の残業割増賃金(25%以上)に加え、深夜割増賃金(25%以上)も発生するため、 合計50%以上の割増が必要 |
| 休日労働 | 法定休日(週1日または4週4日)に業務を依頼する場合は、 35%以上の割増賃金が発生 |
また、シフト制において、次のシフト開始との間の勤務間インターバルにも配慮することも、派遣社員の健康管理の観点から重要です。
連絡フローが複数に分散していると、現場が混乱する原因になります。トラブル発生時の初動対応をマニュアル化しておくことで、緊急時でも冷静に対応できるでしょう。

ここでは、派遣のシフト制に関するよくある質問について解説します。
労働者派遣法第26条により、派遣個別契約を締結する際には「就業の日」や「始業・終業の時刻」を定めることが義務付けられています。
シフト制の場合、契約期間中の全日程を契約締結時に確定させることは実務上困難であるため、派遣元・派遣先契約に従うこととして、1か月契約の場合は前月上旬頃には用意する旨を決める場合があります。
一般的に1か月前の提示であれば大きなトラブルも発生し難いといえるでしょう。
実務上、派遣社員とのトラブルを避けるために以下のルールを明確にしておきましょう。
直前になってシフトが決まる運用は、派遣社員の生活設計に支障をきたすだけでなく、トラブルにもつながります。
シフト勤務に関わることとして、労働者派遣契約には、以下の3つの記載が求められています。
契約上、勤務すべき日や時間数が定められているにもかかわらず、派遣先の都合でシフトを入れられず待機が発生した場合、原則として派遣料金の請求対象となる可能性があります。
労働基準法第26条により、雇用主である派遣会社が、「使用者の責に帰すべき事由」による休業として、平均賃金の60%以上の休業手当を支払う義務があるためです。
派遣先に直接支払う法的義務はありませんが、派遣会社が負担する分の金額を請求される可能性がある点は把握しておきましょう。契約書に「最低保証日数」や「休業時の補償」に関する条項がある場合は、その内容にしたがって支払い義務が発生します。
事前にトラブルを防ぐためには、繁閑の波を契約条件に織り込んでおくのが最善の対策です。
契約で定めた就業日数や勤務時間を、一方的に減らすのは原則としてできません。
もし、契約で定めた就業日を派遣先の都合で休みにする場合、雇用主である派遣会社には労働基準法第26条により、平均賃金の60%以上の休業手当の支払い義務が発生します。
派遣会社はこの休業手当を請求できる立場にあるため、実質的には派遣先が費用を負担します。
さらに、記載なく派遣先の一方的な判断で出勤回数や就業時間を減らす行為は契約違反となり、派遣会社から損害賠償を請求されるリスクも考えられるでしょう。
繁閑の波が事前にある程度予測できる場合は、それぞれの目安日数を組み込んだ契約条件をあらかじめ派遣会社とすり合わせておくと、トラブルが少なくなります。
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派遣社員の就業をシフト制で運用するのは、適切な手続きと管理体制を整えれば十分に可能です。
しかし、通常の固定勤務と比べて、契約書の記載内容・日々の運用ルール・費用負担の考え方など、注意すべき点が多岐にわたります。
現場でのシフト変更の強要や安易な休業指示は、重大なコンプライアンス違反やトラブルのもとになります。
判断に迷った際は、自己流で進めず、必ず派遣会社の担当者と相談して対応しましょう。
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