
目次
人材派遣サービスを利用する場合、就業前に「職場見学」が実施されることがあります。本記事では、「職場見学」について、基礎知識および、当日の流れや実施の際の注意事項などを解説します。
職場見学の進め方と注意点
職場見学を担当する方向けにわかりやすく流れと注意点をまとめました。
<この資料でわかること>
人材派遣で実施される職場見学とは、派遣社員が実際に働く職場環境や業務内容を事前に確認する機会を指し、派遣社員の希望があった場合に行われます。
派遣先で詳しい業務内容の説明を直接受けたり、部門の責任者・メンバーとの対面で、就業先や業務の理解を深め、ミスマッチを防止するために行います。
職場見学は基本的に、派遣会社の担当者と派遣社員、派遣先の担当者の三者で行います。
職場見学は、候補となっている派遣社員の希望で実施するものであり、派遣先が「応募者を面接する機会」ではありません。あくまでも、派遣社員が「業務と就業先を深く知るために実施」するものです。
派遣法では「事前面接の原則禁止」が定められています。(労働者派遣法第26条6項)そのため、派遣社員が希望していないのに職場見学を強制したり、選別のための質問をすることはできません。
派遣社員の特定行為については、「派遣社員の特定行為は禁止!指導例や例外をわかりやすく解説」で詳しく解説しています。
※ただし、将来の直接雇用を前提とする紹介予定派遣の場合、面接などの選考を行うことが可能です。
関連資料:派遣法の基礎知識 知っておくべき12項目
職場見学の一般的な流れについて、挨拶や簡単な自己紹介後の流れから説明します。
職場見学では、まず派遣先の現場担当者から業務内容の詳しい説明を行います。
派遣社員は、派遣会社から事前に業務内容に関する説明を受けていますが、指示を受ける、または一緒に働く派遣先からの説明により、業務についての理解を深め具体的にイメージできるようになります。
<説明しておきたいこと>
※以下も該当があれば説明する
派遣社員には契約内容以外の業務を依頼できないため、職場見学時に業務内容を明確に伝えることでトラブルを未然に防げるメリットがあります。
派遣後に、人事担当者または職場見学で聞いていた業務内容と実際に従事する業務内容が異なり、トラブルとなるケースもあるため、この段階でそのような相違がないか確認することが重要です。
次に、派遣社員からの質問を受けます。派遣社員は、「自分の認識と実際の業務内容に相違がないか」「自身のスキルで本当に対応できるのか」といった不安を持っており、その解消のために質疑応答の場が設けられます。
<よくある質問例>
職場見学は面接の機会ではありませんが、業務に必要なスキルや知識を派遣社員自身にきちんと判断してもらうために、派遣社員への質問をすることは可能です。
例えば、以下のような質問ができます。
※資格に関する質問は、業務に関係する場合のみ。興味本位での質問は避けること
派遣後に働く予定の実際の職場環境を見せるかは必須事項ではありませんが、見学をしておくと派遣社員は働くイメージがつきやすくなります。
更衣室や休憩室、給湯室、お手洗い、社員用通用口、社員食堂など、一日の流れの中で使う可能性のある場所も含めて案内することで、就業場所としての魅力が伝わり、就業意欲が高まる可能性があります。
オフィスを案内する際の注意点をいくつかお伝えします。
職場見学を実施するうえで、対応する担当者が注意する点について解説します。注意点については、職場見学に対応するすべての従業員に共有するようにしましょう。
派遣社員は、派遣会社の社員であり自社の社員になるわけではありません。職場見学では、個人情報についての質問は避けましょう。
例えば、以下のような質問はNGです。
ただし、お互いに一般的な挨拶をする中で、派遣社員が自発的に行う自己紹介に含まれる、名前をはじめとする個人情報を伝えることに問題はありません。企業側から質問をしないように気をつけましょう。
繰り返しになりますが、派遣の職場見学は「企業が自社への派遣社員候補を選考する場」ではありません。
「何らかの選別を行っているのではないか?」と誤解してしまう可能性がある質問や言動には注意してください。
一例を挙げます。
採用面接では一般的な質問ですが、職場見学は「選考する場」ではありませんので注意しましょう。
派遣社員の緊張を和らげようとアイスブレイクを挟むこともあると思いますが、不用意にプライベートに関する質問をしないようにしましょう。
例えば、以下のような質問はNGです。
職場見学への履歴書の持参、職場見学当日のエントリーシートなどへの記入や筆記試験の受験を要求することはできません。
代わりに、派遣会社が用意する「スキルシート」を通じて保有資格やこれまでの実務経験を確認できます。スキルシートとは、一般的な履歴書のフォーマットから住所や連絡先などの個人情報をなくし、保有資格や経験してきた業務内容など「仕事に必要なスキル」だけを記載したものです。
基本的には、こちらのスキルシートを確認しながら質疑応答を行います。スキルシートでは確認できなかった細かい実務経験や業務環境などを質問していきましょう。
なお、紹介予定派遣の場合は、派遣会社を通じて一般的な履歴書やエントリーシートの提出を求めることができます。
派遣社員が、職場見学後に就業を辞退することは珍しいことではありません。複数の派遣会社から仕事の紹介を受けているなど、さまざまな企業の条件を比較しながら就業先を検討している人が多いためです。
働く場所として安心して選んでもらうためにも、利用可能な福利厚生などについても紹介することをおすすめします。
一例
細かいことかもしれませんが、派遣社員に伝わっていない場合、「契約と違う」「聞いていた話と違う」ということにもなりかねません。就業後のトラブルとならないように、社内ルールについては、共有しておくと安心です。
最後に、職場見学で起こりがちなトラブルの事例と、トラブルを防止するために気をつけるべきポイントを解説します。
最もよくあるケースが、人材派遣の依頼をかけた人事担当者が伝えた業務や必要なスキルに関する内容と、現場の話とが異なるケースです。
<トラブルになりやすい相違の例>
認識していた業務内容に相違があると、求めるスキルをそもそも持っていない人が派遣され、業務に支障がでたり、派遣社員の早期離職を起こしてしまいます。また、自身のスキルを活かしたい派遣社員の場合、業務内容の不一致が原因で職場見学後に辞退されることも珍しくありません。
まずは、人材派遣を依頼する前に現場部門と依頼内容に相違がないかを確認することが大切です。職場見学では、採用担当者だけでなく、該当部署で一緒に働く上長や一緒に働くメンバーが同席し、認識にずれがないか確認することで対策しましょう。
勤務条件や契約内容の相違も職場見学で発覚することがあります。特に勤務時間や残業時間は、派遣社員の給与に直結することなので、相違がないように確認しておきたいところです。
<トラブルになりやすい相違の例>
派遣社員のなかには、業務内容や契約内容だけでなく、職場環境を重視する人もいます。派遣会社から聞いていた話と実態が異なる場合、辞退につながることもあります。
<一例>
職場見学では、業務内容だけでなく、確認の意味を含めて勤務条件なども派遣先・派遣社員・派遣会社の三社で確認しておくと安心です。
契約に影響する社内ルールが実はあった、というのもトラブルになります。
<トラブルになりやすい相違の例>
例えば、朝礼が8:55からある場合、「契約時間は8:55から」となります。朝礼は派遣社員に限らず、労働時間とされることが多いです。あらかじめ伝えており、契約も8:55開始となっていれば問題ありません。
ゴミ捨ても業務となるため、事前に伝えていなかった場合、「聞いていない」とトラブルになります。派遣は業務内容を明確に契約に示す必要があるため注意が必要です。
現場が職場見学の意図を理解していない場合、不適切な質問をしてしまい、「面接の場だったのでは」「個人的なことを聞かれて不快だ」とトラブルになる可能性がでてきます。
派遣先が派遣社員を選ぶことは派遣法で禁止されていることをしっかり担当者に伝え、職場見学の本来の目的である「派遣社員の業務理解を深める場」であることを理解してもらうようにしましょう。職場見学の注意点をまとめたリーフレットなどを配布するのもおすすめです。
現場担当者の方を想定した職場見学のガイドブックをご用意しています。
わかりやすく簡潔にまとめていますので、ぜひご活用ください。
⇒「職場見学の進め方と注意点」の資料ダウンロードはこちらから
職場見学は企業の選考のための機会ではなく、派遣社員の希望による業務理解を深めるための場です。
具体的な仕事内容や職場の雰囲気、就業して身に付けられる経験など、就業先選びの参考になる情報を提供できるよう準備しましょう。このような機会を通して、結果的にミスマッチを防ぐことができます。
また、初めての派遣依頼で職場見学を実施する場合は、派遣会社の担当者に事前に流れなどを確認しておくとよいでしょう。本記事で紹介した注意点なども参考に、ミスマッチを事前に防ぎ、トラブルのない職場見学を実施してみてください。
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