保育士の年収はどのくらい?年齢・地域・公立私立による年収の違いまで解説

保育士の年収はどのくらい?年齢・地域・公立私立による年収の違いまで解説

目次

保育士は給与が低いー保育士として働いていたり、保育士を目指したりしながら、そうなげいている人も少なくないでしょう。しかし2013年以降、保育士の処遇改善が徐々に進められています。勤務地によって給与や待遇にも差があり、必ずしもこれまでのイメージが当てはまるわけではありません。

この記事では、保育士の全国平均年収のほか、年齢別・都道府県別の平均年収、公立保育士と私立保育士の違いなど、皆さんの働く環境を客観的に見直すポイントをご紹介しています。今後保育士の年収は上がっていくのか、年収アップのためにできることなども解説していますので、ぜひ参考にしてください。



保育士の年収はどれくらい?

ここではまず、保育士の年収の全国平均年収、年齢別平均年収、都道府県別平均年収を見ていきましょう。

保育士の全国平均年収

今現在の自分の年収と保育士の平均的な年収との間にどのくらいの差があるのだろう。そんなことが気になっている人もいるでしょう。

内閣府の調査によると、フルタイムの保育士の全国平均年収は、賞与を合わせた年間給与額が約340万円になっています。平均の月収としては、約23万円でした。

※参考
平成29年度保育士及び幼稚園教諭の平均賃金等の実態について 内閣府
(2017年6月時点)


【年齢別】保育士の平均年収

では、保育士の年齢別の平均年収はどのようになっているのでしょうか。
ここでは、2017年の厚生労働省の調査をもとに、20歳から69歳までを5年ごとにグループ分けし、それぞれの平均年収を出しています。

年齢月給賞与年収
20~24歳 20万円 46.2万円 286.2万円
25~29歳 21.6万円 64.1万円 323.3万円
30~34歳 22.5万円 68万円 338万円
35~39歳 23万円 65.3万円 341.3万円
40~44歳 24.2万円 72.66万円 363万円
45~49歳 24.7万円 74.8万円 371.2万円
50~54歳 25.5万円 82.4万円 388.4万円
55~59歳 26.4万円 84.3万円 401.1万円
60~64歳 28.2万円 89.5万円 427.9万円
65~69歳 26.1万円 69.1万円 382.3万円

※参考
「保育士の給与って本当に安いの?」保育士給料・年収の最新事情 保育士求人なら【保育士バンク!】
(2017年6月時点)


保育士の給与額は、どれほど勤務経験があるかによっても差が生じます。徐々にベースアップしていくため、同じ保育園で長年にわたって働き続けた場合は自然と給与額も多くなっていきます。
年齢を重ねるにつれ、役職手当などが含まれるようになりますが、65歳を過ぎてからは現役を引退し、再雇用というかたちになるため、給与額が下がる傾向にあります。

【都道府県別】保育士の平均年収

都道府県ごとに見ると、保育士の平均年収にはどのくらいの差があるのでしょうか。
以下の表は、厚生労働省が発表した「平成29年度 賃金構造基本統計調査」をもとに作成されたものです。ここでの「平均年収」は、給与額に年間賞与額を足したものとお考えください。

順位都道府県名平均年収順位都道府県名平均年収
1 京都府 401.1万円 25 千葉県 327.4万円
2 東京都 394.3万円 26 徳島県 322.3万円
3 愛知県 372.8万円 26 和歌山県 322.3万円
4 岡山県 363.7万円 28 長崎県 321.2万円
5 滋賀県 359万円 29 石川県 394.3万円
6 神奈川県 358.5万円 30 秋田県 320.4万円
7 山口県 355.6万円 31 広島県 320万円
8 大阪府 353.7万円 32 奈良県 317.4万円
9 福岡県 352.4万円 33 山形県 316.8万円
10 兵庫県 346.6万円 34 岐阜県 315.2万円
11 宮崎県 344.8万円 35 北海道 311.3万円
12 群馬県 341.3万円 36 宮城県 307.4万円
13 福井県 339.7万円 37 佐賀県 307.2万円
13 静岡県 339.7万円 37 三重県 303.6万円
15 熊本県 338.3万円 39 福島県 298.4万円
15 岩手県 338.3万円 40 茨城県 297.6万円
17 長野県 337.7万円 41 鳥取県 295.9万円
18 山梨県 337.3万円 42 大分県 295.4万円
19 高知県 332.3万円 43 青森県 294.9万円
20 栃木県 330.9万円 44 鹿児島県 290.1万円
21 新潟県 329.9万円 45 沖縄県 288.7万円
22 埼玉県 328万円 46 愛媛県 284.1万円
23 富山県 327.9万円 47 島根県 279.7万円
24 香川県 327.6万円

※参考
都道府県別 保育士の給料ランキング 地方と都市部はどっちが良い?
(2018年2月時点)

各都道府県の平均年収を見てみると、もっとも順位の高い京都府ともっとも順位の低い島根県との間には、平均年収で約121万円の差が生じています。

また、上位の都道府県には、都市部の地域が多い傾向にあることもわかります。これは、数多くの施設が必要な都市部では比較的多くの補助金が支給される傾向があるからです。実は、保育士の給与はそのほとんどが国や自治体からの助成金でまかなわれています。そのため、人口が多い都市部の地域での保育士の給与に反映されることが多くなります。


公立保育士と私立保育士の年収の違い

公立保育士と私立保育士では、その立場や年収にどのような差があるものなのでしょうか。それぞれの特徴をまとめてみました。

公立保育士・私立保育士とは?

公立保育士は、市役所などの職員と同じく、保育園のある自治体が直接採用する地方公務員です。それだけに、社会保険への加入はもちろん、産休などもきちんと整備されており、昇給・賞与制度も整っています。

公立保育園の保育士になるためには、30歳もしくは35歳までに地方自治体の採用試験に合格しなければなりません。これは、ほとんどの自治体に年齢制限が設けられているからです。採用試験は欠員が出た場合にだけ行われるため、倍率が数十倍にもはねあがる地域もあります。採用されたのちは、数年に一度の異動があり、同じ地区の中で転勤があります。

私立保育士は、勤める私立保育園ごとに給与や福利厚生の基準が異なります。大多数の園では、公立保育士と同じく、年功序列型の制度が採用されています。私立保育園にはスポーツや教育に特化するなど特色のある園が多いです。また、異動がないケースもあり、ひとつの園で長年働けるでしょう。

公立保育士と私立保育士の平均年収はどれくらい?

次に、公立保育士と私立保育士の全国平均年収を見てみましょう。

施設長主任保育士保育士保育補助者
公立保育園
(平均勤続年数)
654万円
(33.6年)
596万円
(28.2年)
345万円
(11.8年)
186万円
(3.9年)
私立保育園
(平均勤続年数)
638万円
(24.1年)
460万円
(21.1年)
306万円
(8.5年)
220万円
(4.1年)


※参考
「幼稚園・保育園等の経営実態調査結果」厚生労働省

平均年収だけを見ると、保育士で約39万円、主任保育士で約136万円の差があり、公立保育園の保育士のほうが給与面で優遇されているように感じるかもしれません。しかしこの年収の差は、公立保育士の保育士としての平均勤続年数の長さや定期的な昇給などによるものだと考えられます。

施設長という役職では、私立保育士と公立保育士の平均勤続年数に約10年近い差があるにもかかわらず、平均年収ではさほど差がない状態になっています。これは、私立保育園には実力を重視する傾向があり、年齢が若くても高い水準の年収を得られる証です。


保育士の給与は今後上がる?

保育士の給与は、今後どのように推移していくのでしょうか。今後の見通しについて解説していきます。

保育士の処遇改善は進んでいる

保育士不足に歯止めをかけるため、2013年にできた制度が、「保育士処遇改善等加算」です。これは、保育士の経験や勤続年数に応じて給与を改善したり、キャリアアップのための取り組みを行った保育園に補助金を支給したりするものです。保育園は、この補助金をもとに、保育士の給与のベースアップや給与への上乗せなどを行います。

この制度をさらに押し上げるため、2017年に「保育士処遇改善等加算Ⅱ」がスタートしました。この新制度について、次の項目で詳しく説明します。

2017年スタート「保育士処遇改善等加算Ⅱ」とは

2017年にスタートした「保育士処遇改善等加算Ⅱ」において、注目すべきポイントは以下の2点です。

全職員の給与2%引き上げ

2017年4月からは、保育士の給与が一律2%引き上げられています。これは、保育園に勤める全職員を対象としたものです。2012年から段階的に保育士の給与が引き上げられていますが、2017年4月の引き上げによって、2012年と比べると約10%も引き上げられています。

新しい職種の設置、最大4万円支給

この新制度ではさらに、新たな職種が設置されました。これは、主任保育士に昇格する前に離職する保育士が多数にのぼることを懸念してのものです。

新設されたのは「職務分野別リーダー」「副主任保育士」「専門リーダー」の3つですが、それぞれの処遇改善について、以下の表にまとめていますのでご覧ください。

新設された役職名要件処遇改善手当
職務分野別リーダー ・3年以上の経験
・担当する職務分野を研修ずみ
・研修分野における職務分野別リーダー
月額5,000円
副主任保育士 ・7年以上の経験
・職務分野別リーダーの経験あり
・マネジメント+3つ以上の分野で研修ずみ
・副主任保育士
月額40,000円
専門リーダー ・7年以上の経験
・職務分野別リーダーの経験あり
・4つ以上の分野で研修ずみ
・専門リーダー
月額40,000円


これらの処遇改善手当は、国や自治体から直接保育士へと届くのではなく、保育園経営者のもとにわたることになります。処遇改善手当がどの程度給与に上乗せされるかは、保育園経営者の判断に任せられているため、保育園によって差が出る可能性もあります。

自治体ごとの施策・今後の展開は?

各自治体も、保育士を確保するための施策に乗り出しています。中でも、待機児童問題の改善を急務としている都市部の自治体では、保育士の給与が徐々に上がる傾向にあります。

こうした問題への対策として給与補助を実施している東京都では、2017年度から保育士1人につき44,000円の補助が支給されています。さらに、住宅支援制度を充実させるなど、独自の取り組みを行ってきました。
また、2019年10月からの消費税率引き上げにともなう「2兆円政策パッケージ」のひとつとして、保育士の処遇改善が実施される予定になっています。

保育士が年収アップのためにできること

国や自治体による処遇改善とは別に、保育士個々人が年収アップのためにできることを解説していきます。

現在の職場で役職につく

保育士の場合、リーダーや主任、施設長などの役職に就くことで、給与に役職手当がつきます。しかし、これらの役職のポストは限られており、就任するには時間がかかります。主任や施設長は、保育士としての経験が数十年必要になる場合も少なくありません。

ところが、2017年度から始まった「保育士処遇改善等加算Ⅱ」では3つの役職が新設され、3年以上の経験がある保育士で、一定の条件を満たしたうえで役職についた者には月額10,000円が上乗せされます。

さらに、7年以上の経験があり、一定の条件を満たしたうえで役職についた中堅保育士には月額40,000円の手当が上乗せされています。その分年収アップを目指せることになります。

この制度は、保育士として3年以上の経験があれば、正社員のみならず派遣社員や契約社員、アルバイト、パートなどにも適用されます。

給与や待遇のよい職場に転職する

保育士としてのキャリアを積むのに精一杯で、役職に就くのは大分先のことだろうと思っている方や、今の職場で役職についてもさほど給与は上がらないのではないか、という不安を抱えている方もいるでしょう。そのような場合には、給与や待遇のよい職場への転職をすることもひとつの手です。

転職に際しては、フルタイムでの保育士以外に、派遣社員の保育士として働く選択肢もあります。派遣社員には、時間の融通がきき、より待遇のよい職場環境を選択しやすいというメリットがあります。保育士に特化した専門の派遣会社もあります。

マンパワーグループは、選択肢が豊富で、さまざまな雇用条件を指定しての検索が可能です。ご自分の希望に即した職場への転職・年収アップを目指すのであれば、ぜひご利用ください。

まとめ

保育士の給与は、保育所のある都道府県や保育所の給与体系、役職の有無などで差がつくことが少なくありません。ご自分が働く地域の給与の相場、同じ地域の保育園の平均年収などを調べてみましょう。

給与アップを目指すのには役職に就く努力をするか、ほかの保育園へ転職も視野にいれてみてはいかがでしょうか。また、保育士は、派遣社員としても十分にキャリアを積める職種です。育児や介護が必要な場合でも、時間のやりくりが可能で、ほかの施設に移りやすいのも派遣社員のメリットだといえるでしょう。

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