製造業には、自動車・食品・繊維・鉄鋼などさまざまな種類があり、具体的に年収のイメージがつきにくいという方も多いのではないでしょうか。
本記事では製造業の種類や年代別の平均年収を紹介します。また、後半では、製造業特有の職種である工場勤務に焦点を当て、勤務する上でのメリット・デメリットや役立つ資格についても具体的に解説します。製造業に関心がある人はぜひ参考にしてください。
製造業にはどのような種類があるのか
製造業とひとくちにいっても、たくさんの種類があります。身近なものから特殊なものまでいくつか代表的なものを一覧で紹介します。
製造業の分類 | 主な製造品の種類 (一例) |
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食料品製造業 | 畜産食料品、水産食料品、果物・野菜缶詰、製粉・パン・菓子 |
飲料・たばこ・飼料製造業 | 清涼飲料、酒類、たばこ、家畜用飼料 |
繊維工業 | 製紙、紡績、化学繊維、織物 |
印刷業 | 印刷、製版、製本業 |
化学工業 | 化粧、医薬品、プラスチック、合成ゴム、石鹸洗剤、塗料 |
石油製品製造業 | 石油精製、潤滑油 |
ガラス・セメント製造業 | ガラス製品、陶磁器、レンガ、セメント |
鉄鋼業 | 製鉄、製鋼、圧延類 |
金属製造業 | ブリキ缶、ガス機器、トイレット、ボルト・ナットなど部品 |
生産用機械器具製造業 | 食品用機械、農業用機械、建設機械、工作機械、ロボット |
電気機械器具製造業 | 住宅用機器、電気照明器具、洗濯機、冷蔵庫、掃除機 |
情報通信機械器具製造業 | 携帯電話、ビデオ機器、デジタルカメラ、液晶テレビ |
輸送用機械器具製造業 | 自動車、鉄道車両、船舶、航空機、産業用運搬車両 |
※参考
製造業の分類とその内容(何を作っているか)・その業界の主な会社 金沢工業大学
製造業の年収は他の業界に比べて高いのか?低いのか?
ここでは、製造業の年代別平均年収を紹介し、他業種との比較をしながら解説します。
製造業の平均年収
年代 | 平均年収 |
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20代 | 300~400万円 |
30代 | 400~500万円 |
40代 | 500~600万円 |
※参考
工場勤務.com
年代によって差があるのは、経験や昇格が反映しているからです。また、サラリーマン全体の平均年収は約418万円ですから、けして製造業の年収が低いわけでないことがわかります。もちろん製造品の種類や企業規模によっても同じ年代で幅はあります。製造業への就職を考える場合、そのような違いにも着目するのもひとつの方法です。
では、ほかの業種との違いはどうでしょうか。厚生労働省のまとめた「平成28年賃金構造基本統計調査の概況」のデータを参考に見てみましょう。
(※こちらは「平成28年6月分の賃金」のデータを元に平均年収を算出しています。)
業種 | 平均年収 |
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金融 | 約459万円 |
建設 | 約410万円 |
卸売・小売 | 約395万円 |
製造 | 約374万円 |
医療・福祉 | 約350万円 |
運輸・郵便 | 約348万円 |
サービス | 約337万円 |
これらはほんの一部ですが、代表的な業種と比較しても製造業の年収が特別低いわけではありません。
さまざまな手当がある?
通勤手当や役付手当、成果に関する手当などがありますが、製造業では勤務だけでなく、業務に関する手当も数多く存在しています。
個人の技能や資格、勤務状況が基本給だけでは反映しきれないことから下記のような手当で配慮しようとつくられました。
手当の呼び方や定義、金額については各企業によって定められています。
- 技能(資格)手当・・・企業が必要とする特別な技能(資格)の保有者に対して支給される手当
- 特殊作業手当・・・通常の勤務として想定されていない特殊な作業環境(危険、高熱、低温等)にて勤務する者に対して支給される手当
- 特殊勤務手当・・特殊な条件(交代勤務、単独勤務等)で勤務する者に対して支給される手当
上記以外に製造業に限らず、一般的なものとして、労働基準法に定められた主な3つの手当があります。
- 時間外手当・・・法定労働時間(1日8時間・1週間で40時間)を超える場合に支払われる手当。基本給を時給換算した金額の25%以上が上乗せして支払われる。
- 休日出勤手当・・・会社の指定する法定休日に出勤した場合に支払われる手当。基本給を時給換算した金額の35%以上が上乗せして支払われる。
- 深夜労働手当・・・午後10時〜翌朝午前5時までの勤務に対して支払われる手当。通常の賃金や時間外手当などに加えて、基本給を時給換算した金額の25%以上が支払われる。
時給1,000円なら、仮に2時間残業すれば1,250円×2時間=2,500円がつきます。これが月間10日であれば月収は25,000円の増加です。そして残業が午後10時から午前5時までの場合は夜勤手当がつきます。2時間残業なら1,500円×2時間=3,000円で同じく10日残業すると月収は30,000円の増加です。
法定休日に出勤した場合の時給は1,350円で、これを休日の就業時数や就業日数にあてはめると手当の総支給額が確定します。
また、資格取得が条件でつく手当もあり、内容によっては年間数万円から数十万円の収入の増加が可能です。
製造業(工場勤務)で働くメリット・デメリット
製造業の仕事をイメージするために、例として製造業特有の工場で働くメリット・デメリットを解説します。
メリット
コミュニケーションが苦手でもOK
接客業や販売業と違い、基本的には顧客とのコミュニケーションをとる機会はありません。また、営業職や事務職のように社内で打ち合わせや会議をすることも少ないため、コミュニケーション能力に自信がなくても働きやすい利点があります。
就業時間が規則的で長期休暇もある
繰り返し業務がメインで、交代制が一般的なため定時で退勤できることが多いです。大半の企業が週休2日制で、ゴールデンウイークやお盆、正月シーズンはたいてい長期の休暇が取れます。
未経験でも就きやすく年齢幅が広め
学歴や経験が大きく影響することはなく、新卒・中途採用に関わらず未経験でもはじめやすいです。年齢層は幅広く、活躍しています。
デメリット
立って作業することがほとんど
多くの工場では立ち作業が一般的です。工場では多くの工程がありますし、工場内にはそれらに必要な機械類が数多くあります。作業効率や作業動線、安全面などを考え、立ち作業がふさわしいと判断されているからです。
単純作業の連続で変化がない
工場での製造は担当が割り当てられ、1人で複雑な作業や多くの作業を同時に行うことは少ないです。就業時間中は単純な作業をずっと繰り返すため、人によっては退屈に感じる場合もあります。
繁忙期は残業や休日出勤が発生しやすい
製品によって繁忙期は違いますが、たとえば清涼飲料水なら夏季、温かい飲み物なら冬に忙しい場合が多いです。季節や年中行事に影響されやすい業種では、繁忙期の残業や休日出勤、夜間勤務が増えるケースもあります。
製造業で働くには?
製造業(工場勤務)で働くことを検討する場合、資格の有無がどのように影響するのかについて解説します。
未経験や無資格でもできる?
未経験からでも始めやすい仕事です。さらに、資格があれば得られるメリットもあります。ここでは3つの主なメリットを紹介します。
採用されやすい
資格や経験を問わない企業も多いですが、人気が高く募集人数が定員よりはるかに多い場合は結果に影響することがあります。
収入アップにつながる
資格に応じた手当がつく場合、月収で数千円から数万円の差が生じます。資格を生かした配属や作業に就くことが多いため、生産性や品質の向上に貢献できるからです。
昇進しやすい
資格によって業務の範囲が広がったり、人材育成に役立てたりします。企業にとって重要な存在とみなされ、高評価されやすくなるからです。
役立つ資格
ここでは、働く上で役立つ資格をいくつか紹介します。
危険物取扱者
危険物の扱いやその現場に立ち会うことができる国家資格です。特に化学薬品や医薬品、ガスなどを扱う分野に生かせます。
衛生管理者
労働環境の整備や改善に関わる国家資格です。作業場が衛生的かどうか、作業をする人が健康かどうかを調査する仕事なので、あらゆる分野の工場で生かせます。
フォークリフト荷役技能検定
運搬作業に使う乗り物を運転するのに有用です。どの工場で作業する場合にも有利な資格といえます。
電気工事士
電気設備を安全に運転するのに必要な知識や技術を証明する資格です。工場内設備の点検や整備に生かせます。
機械加工技能士
工作機械を使った作業能力を認められた人に与えられる資格です。特に部品や機械製品などを扱う工場で生かせます。
まとめ
製造業にはさまざまな種類があることや、業界全体の年収についても解説してきました。製造業は未経験からでも始めやすく、勤続年数や努力次第で収入を上げることができる魅力もあります。ぜひ就業後のやりがいを具体的にイメージして、自分にあった業種や職場を見つけてください。