【ITエンジニアが語るキャリアの築き方】プロのITエンジニアを育てるということ

目次

森 直樹

執筆者プロフィール

森 直樹

東日本ITサービス部
IT研修担当(掲載当時)

プロのITエンジニアとは

今回は育成という観点から、プロフェッショナルとしてのITエンジニアのあり方について考えてみたいと思います。
ITエンジニアになるには、学校や企業内で研修を受け、検定や資格取得をすればいいと思っている人も多いのではないでしょうか。
ある意味正しいですが、プロのITエンジニアとなると、ちょっと違うかなという感じがします。
先日テレビで、プロフェッショナルな仕事をテーマにした番組を観ました。プロフェッショナルという言葉から連想するのはどんな人でしょうか。普通の人にはできない事ができて、極限まで追求した人をイメージするのではないでしょうか。
プロ野球選手やプロゴルファーが、なぜ、すごいかというと、自分たちにできない、すばらしいプレーをするからですよね。
プロのITエンジジアも同じです。複雑なシステム構築をしたり重大なトラブルを解決したりするのは、プロのITエンジニアでないとできません。ただ勉強だけをしたのではなく、実際にきちんとした結果を出さないとプロとはみなされないということです。
あたりまえの話ですが、長い実務経験独自の工夫を積み重ねて、はじめてプロになれるような気がします。
では、プロのITエンジニアとなると、どのような過程を経てなっていくのかを考えてみましょう。

どのようにしてプロになっていくのか。

人が成長していくということは、建物を立てる場合と似ているかもしれません。
まず、基礎のために地面を掘り固めます。そこに基礎を作り、柱を立てて屋根を葺きというように進んでいきます。
ITエンジニアとして最初に受ける研修こそが、基礎の段階ですが、この段階で既にプロになることを意識するべきだと思います。
すなわち、初級エンジニアから一定期間すぎたら自然と中級、上級といったプロになれるわけではありません。
こんな話を聞いたことがあります。
いいエンジニアだと評価されるのは、トラブルを起こさないシステムを構築した時よりも、トラブルが発生した際の対応がよかった時だそうです。面白いですね。
決められたことを忠実にこなすのではなく、どんな局面にでも対応できる力を発揮した時に、非常に高い評価をされるということです。つまり、プロになるには、応用力が最も大切だということです。応用力とは、予想がつかない局面に対応できる力です。
したがって、いかにして応用力をつけるかということを見据えて、基礎を学ぶべきです。
たとえば、このエラーメッセージが出力されたら、このように対処するということを一々覚えるのではなく、エラーメッセージを解析するにはどのような資料を見て、システムの動きを理解し、原因を類推する力をつけることです。記憶ではなく、考える力です。
そのためには、コンピュータ・システムや製品が成長してきた歴史や本質的な動きを基礎の段階で理解しておくことが重要です。
基礎の段階が終わったら、徹底的に追求する姿勢を持ち続けることです。妥協はダメです。
そこまでいけば、あとは場数をこなすだけです。

育てるということ

では、育てる立場からみたら、どのようにしたらよいのでしょう。
初級レベルの研修で、非常に局所的で専門的な内容を丸暗記するようなケースが見受けられますが、私は、深くなくてもいいから、なるべく広い領域について、その本質を教えることが重要だと思っています。
暗記ということは、最低限は必要ですが、それは九々のようなもので、複雑な計算をする上での最低限の範囲にとどめるべきです。
一方、徹底的に追求する姿勢を持たせるには、メンタリングが向いているのではないかと思います。メンタリングとは、人の育成、指導方法の一つで、指示や命令によらず、指導者が、対話による気づきと助言による被育成者本人の自発的・自律的な発達を促す方法です。これにより、自分の意志で徹底的に考える癖をつけさせます。
私は、ITエンジニアとしての経験から、後輩を育成する時に心がけてきたことがあります。
答えを教えるのではなく、調べ方を教えることです。
答えを教えることは、暗記につながります。調べ方を教えると、自分で考えるようになりますし、徹底的に追求するという姿勢にもつながります。また、答えは一つとは限らないので、比較検討したりする癖もつきます。
私の経験では、新人時代にそのような姿勢を身につけた人は、成長していると思います。
今まで言ってきたように、初級レベル段階では覚えさせる研修でなんとかなりますが、次の段階からは各自が自分の力で成長していくしかありません。
最後に、では先輩エンジニアは後輩になにができるかと言えば、後姿を見せることです。自分のスタイルを見せてあげるしかできません。
みなさん、プロのITエンジニアを目指してください。 後輩にすばらしい後姿を見せられるように。

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