【人材派遣】派遣社員も産休・育休は取得可能|条件や注意点も紹介

【人材派遣】派遣社員も産休・育休は取得可能|条件や注意点も紹介

目次

派遣社員も、条件が合えば正社員と同じように産前産後休暇(産休)や育児休業(育休)の取得が可能です。産休や育休を利用することで、子育て中でもキャリアを中断せずにお仕事を続けることができます。今回は派遣社員の産休と育休に関わる諸制度の説明と取得するための条件、そして育休から職場復帰するときの注意点を解説します。

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人材派遣会社の産休・育休制度とは

産休と育休は条件を満たしていれば、正社員に限らず契約社員やパート、アルバイトなど雇用形態に関係なく取得できます。派遣社員として働いている場合も、人材派遣会社に申請をすることで取得が可能です。

産前産後休業

産休は労働基準法に定めのある休業で、産前休業は出産前の女性、産後休業は出産後の女性が取得できます。

産前休業の期間

産前休業の期間は、出産前42日(双子などの多胎妊娠の場合は98日)から出産予定日までの間となり、本人が請求した期間内だけ休むことができます。

出産予定日が遅れて、休業期間が42日より延びた場合も、超過した分は産前休業の扱いになります。産前休業の取得有無は自分で決められるので、取得せずに出産直前まで働くことも可能です。

産後休業の期間

産後休業の期間は出産後56日間で、この期間は本人が希望しても働くことは禁止されています。ただし、出産後42日を経過したときに、医師が就労に支障がないと認めた場合は働くことができます。

なお、産前休業および産後休業の期間中は、働いていないので会社が給与を支払う義務がなく、ほとんどの会社は無給です。ただし、出産手当金の申請要件を満たせば、手当金をもらえるため給与収入の一部を補填できます。

育児休業

育休は、育児・介護休業法による休業で、労働者が子育てをしながら会社で働き続けることができる環境を整備する目的で作られました。

育休を取得できる期間は、原則、子どもの1歳の誕生日前日までですが、パパママ育休プラス制度の利用などで期間が延長できる場合もあります。

取得回数は原則子ども一人につき1回です。ただし法改正により2022年10月1日より休業期間を分割して2回取得できるようになります。


また、保育園に入所を申し込んだものの入所できないなどの事情があれば、1歳6か月の前日まで延長することができ、1歳6か月の時点で同じ状況が続いている場合は2歳の誕生日前日まで延長が可能です。

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派遣社員が産休・育休を取得できる条件

派遣社員が産休・育休など妊娠、出産、子育てに関する諸制度を利用するためには、取得条件に合っているかがポイントとなります。下記の内容を確認しておきましょう。

産休・育休など諸制度を利用するための前提条件

妊娠・出産・子育てに関する諸制度を利用するための前提条件を解説します。

人材派遣会社との雇用契約はどうなっているか

人材派遣会社と派遣社員で取り交わす雇用契約には、「有期雇用契約(契約期間が決まっているもの)」と「無期雇用契約(契約期間に定めがないこと)」があります。

派遣社員で最も多いのは有期雇用契約です。無期雇用契約は契約期間の定めがありませんが、有期雇用契約は派遣先企業の契約期間満了日までであり、満了日の翌日に派遣社員としての契約が終了します。

産休・育休や給付金の制度を使うときには、派遣社員であること(契約が修了していないこと)が条件になる場合があるので、注意が必要です。

雇用保険、社会保険(健康保険・厚生年金)に加入しているか

雇用保険または社会保険の加入がないと、妊娠・出産・子育てに関する諸制度を利用できない場合があります。

雇用保険、社会保険の加入要件は次のとおりです。

・雇用保険は、派遣先企業で勤務開始時から最低31日間働く見込みがあり、なおかつ週20時間以上働くこと(ただし学生の一部は除く)

・社会保険は1週間の所定労働時間が正社員の4分の3以上(一般的に週30時間以上)であること

ただし、人材派遣会社によっては、派遣社員が下記の条件をすべて満たせば社会保険に加入できます。

・人材派遣会社の社会保険被保険者数が常時501名以上の場合
(2022年10月より社会保険被保険者数が常時101名以上の場合に改定されます)

・1週間の所定労働時間が20時間以上であること ・契約期間が1年以上の見込みであること
(2022年10月より「契約期間が2か月を超える見込みであること」に改定されます)

・賃金が月額8.8万円(年収106万円)以上であること ・学生ではないこと

産休を取得するための条件

産前休業を希望する場合は、出産予定日の42日前(多胎妊娠の場合は98日前)に派遣社員として雇用契約を結んでいることが必要です。雇用契約の期間が産前休業の開始予定日までに契約満了になると産前休業の取得条件から外れてしまいます。

また、産後休業も産前休業と同様、派遣社員として雇用契約を結んでいることが条件です。

育休を取得するための条件

派遣社員が育休を取得できる条件は次のとおりです。

条件に合えば男女関係なく取得できますが、人材派遣会社との雇用契約が有期雇用契約か無期雇用契約によって育休の取得条件が違います。

無期雇用契約の場合は①のみ、有期雇用契約の場合は①と②の両方を満たす必要があります。

1. 原則として1歳未満の子を養育する労働者であること

2. 子どもの1歳6か月になる前日までに、雇用契約(更新される場合には、更新後の契約)の期間が満了しないこと

そして、注意する点が1つあります。それは労使協定が締結されているかという点です。

労使協定とは、人材派遣会社(使用者)と労働者との間で締結される書面協定のことです。この場合の労働者とは、事業所の労働者の過半数で組織する労働組合がある場合は、その労働組合、労働組合がない場合は労働者の過半数を代表する者になります。

労使協定が締結されている際に、下記3つのいずれかにあてはまる場合は育休を取得できないこともあるので、締結の有無を事前に確認しましょう。

・入社後1年未満の場合(派遣社員の場合は、同一の人材派遣会社で1年以上就業の紹介を受けていることが必要です)

・育休を申し出る日から1年(ただし1歳以降の休業の場合は、6か月)以内に雇用関係が終了する場合 ・週の所定労働日数が2日以下の場合

育休は取得する1か月前までに人材派遣会社への申請が必要です。育休を取得する予定がある場合は妊娠の報告をするときに、育休を取得したい旨を伝えておくといいでしょう。

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派遣社員が産休・育休を取得から復帰までの流れ

妊娠がわかってから、産休や育休を経て職場復帰するまでの流れとポイントを説明します。

1.人材派遣会社に妊娠の報告

派遣社員もしくはその配偶者が妊娠した場合は、人材派遣会社に報告し出産予定日を知らせます。このときに産休や育休などの諸制度を利用できるかどうかを確認しましょう。

産休や育休などの諸制度が利用できる場合は、育児介護休業法の定めにより、人材派遣会社から産休や育休および諸制度の内容と制度を利用するときの申請方法(関係書類の記入や提出方法)などの説明があります。

説明は面談や文書、派遣社員が希望した場合には電子メール送信のいずれかの方法で行います。妊娠報告時に育休の取得意思を伝えなかった場合は、この説明のタイミングで人材派遣会社の担当者に取得の有無を伝えましょう。

また、産休中は派遣先への代替要員の確保が必要になるので、妊娠が判明したらすぐに人材派遣会社に連絡しましょう。

2.派遣先への報告

派遣社員の妊娠、出産に関する事柄は人材派遣会社の担当者から派遣先企業に連絡します。したがって派遣社員が直接派遣先に報告する必要はありません。

3.産休の取得申請

産休の申請をするときは、人材派遣会社が指定した書類に必要事項を記入し決められた期限までに提出します。

4.育休の取得申請

育休の申請をするときは、人材派遣会社が指定した書類に必要事項を記入し提出します。

育休は休業を始める1か月前までに人材派遣会社への申請が必要ですが、産休から引き続いて取得する場合には、産休の取得申請と同時に行ってもかまいません。

5.ハローワークに育児休業給付金を申請

申請は原則人材派遣会社が行いますが、派遣社員本人が手続きをする場合もあります。詳細は人材派遣会社から説明を受けましょう。

6.産休・育休から復帰

産休・育休から復帰するために決めるべきことは次のとおりです。

復帰の時期を決める

一般的には、保育園の入園時期の4月か、ならし保育が終了する5月から復職するケースが多いです。派遣社員の事情によりますが、復帰の時期を決定次第、人材派遣会社の担当者に連絡をしましょう。

復帰後の勤務条件を決める

復帰前と同じ労働条件で働くのか、勤務日数や勤務時間を減らすなど条件を変更するか、自身の事情にあわせて決めることが可能です。人材派遣会社の担当者に相談し、条件に合った派遣先を紹介してもらいましょう。

派遣社員が産休・育休時に受けられる手当

派遣社員が妊娠・出産する際に、条件にあうと次の手当や給付金がもらえます。

出産育児一時金

派遣社員が社会保険に加入していれば、本人または被扶養者が、妊娠85日以上で出産をした場合、健康保険から1児につき50万円(産科医療補償制度に加入されていない医療機関などで出産された場合は48.8万円。多胎出産の場合は胎児数分)※が支給されます。

出産育児一時金の受け取り方法は、健康保険から出産した医療機関などに直接支払う制度を利用するか(直接支払制度)、出産後に加入者本人が健康保険に申請して一時金を受け取る方法があります。

派遣社員が国民健康保険(国保)に加入している場合は、国保にも同様の制度があります。そのほか、派遣社員が夫の健康保険の扶養になっている場合は、夫が加入している健康保険から出産育児一時金がもらえます。

※令和5年4月時点

参照:厚生労働省|出産育児一時金の支給額支払い方法について

出産手当金

社会保険に加入していれば、産休の期間中に会社を休み、給与の支払いがなかった日数に対して、健康保険から出産手当金がもらえます。ただし、出産手当金は社会保険に加入している本人のみ(女性が対象)がもらえる制度なので、派遣社員が国民健康保険や健康保険の被扶養者の場合は受給できません。

出産手当金は、1日につき標準報酬月額÷30日の3分の2に相当する額がもらえます。

例えば標準報酬月額が30万円の場合、1日あたりの出産手当金額は30万円÷30日×3分の2=6,670円(小数点1位を四捨五入)となります。

出産手当金の概算を知りたい場合、標準報酬月額は人材派遣会社に問い合わせれば教えてもらえます。

育児休業給付金

育児休業給付金は、派遣社員が雇用保険に加入している場合、産後休業が終了した翌日から原則1歳未満の子ども(ただし、保育所に入れないなどの事情がある場合は最大2歳未満)の育休中に、以下の条件を満たせば支給されます。

1. 育休中に休業開始前の賃金月額のうち80%以上の支払いがないこと 例えば賃金月額が30万円の場合、80%の24万円以上の支払いがあると給付金の支給はありません。

2. 休業開始前の2年間で働いた日が11日以上ある月が12ヵ月以上あること(例外あり)

3. 育休中に働いた日数が月10日以下もしくは80時間以下であるこ

育児休業給付金の金額は、育児休業期間の6か月までは、原則で1日当たり休業開始時賃金日額の67%の金額が給付され、それ以降は50%の金額が給付されます。休業開始時賃金日額とは、育休の開始前6か月間の賃金支給額(ボーナスは除く)÷180で計算された金額になります。

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産休・育休期間中に支払う税金・社会保険

派遣社員が産休・育休期間中に支払う税金や社会保険料について説明します。

所得税

所得税は毎年1月から12月までの1年間の所得に対してかかる税金です。

派遣社員の所得税は、人材派遣会社から受け取る給与の中からその都度天引きされ、12月の年末調整もしくは翌年の確定申告で最終的な精算を行われています。

産休・育休中で給与の支払いがない場合、その期間の所得税は発生しません。

また、「出産手当金」「出産育児一時金」「育児休業給付金」は非課税のため、所得税はかかりません。

住民税

住民税は前年の1月1日から12月31日までの1年間の所得を基準にして税額を計算し、今年の6月から来年の5月にかけて分割で支払います。そのため産休や育休中で給与がない場合でも前年に所得があれば住民税の納付が必要です。

住民税の納付は、給与から天引きされる特別徴収と役所から送付される納税通知書を使って自分で納付する普通徴収の2つの方法があります。

普通徴収で自らが住民税を納付する場合は、納税額の変更はないので従来の納付書をそのまま使います。なお産休や育休中で給与が減少した分は、来年の住民税の計算に反映されます。

人材派遣会社が特別徴収を行っている場合は、産休や育休中で給与の支払いがなければ天引きができないので、後日役所から自宅に送付される納税通知書で納付します。支払い期限をよく確認し、納め忘れがないように注意しましょう。

厚生年金・社会保険料

派遣社員が産休や育休を取得し、本人が社会保険に加入している場合は、社会保険料が免除になります。

人材派遣会社が日本年金機構や健康保険組合などに「産前産後休業取得者申出書」または「育児休業取得者申出書」を提出することにより、免除期間は納付したものとして計算されるため、厚生年金額に反映されます。

雇用保険料

雇用保険料は毎月の給与に対してその都度計算して天引き徴収するので、給与の支払いがない場合の保険料は発生しません。

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産休・育休取得時の注意するポイント

派遣社員が産休・育休を取得するときは、将来お仕事に復帰することをあらかじめ考えておくことが大切です。そのときに注意するポイントを説明します。

現在の派遣先に戻れるとは限らない

派遣社員が雇用契約を結んでいるのは人材派遣会社であり、派遣先企業ではありません。

人材派遣会社はそれまで就業していた派遣社員が産休や育休を取得した場合、ほかの派遣社員へその業務を引き継ぎます。そのため産休や育休から復帰しても前と同じ派遣先や、同じ派遣先でも産休・育休前と同じポジションで働くことができない場合があります。今後の働き方も含めて、その点は人材派遣会社に相談すると良いでしょう。

取得時だけでなく復帰時にも早めの相談をする

お仕事の復帰を決めたときは、早めに人材派遣会社に相談し、働くときの希望条件を伝えましょう。

なぜなら、もとの派遣先に戻れない場合に新たな派遣先を探す必要があるためです。復帰予定時期の近くに申し出た場合、すぐには希望する条件の派遣先が見つかるとは限らないため、早めの相談を心がけましょう。

復帰後のサポートが手厚い人材派遣会社を選ぶ

復帰後のサポートが受けられる人材派遣会社を選ぶと安心して就業することができます。

人材派遣会社によっては、復帰前のスキルアップを目的とした自宅で学べる学習プログラムがあったり、お仕事だけではなく「家庭と子育て」を考慮したキャリアを一緒に考えてくれるサポートがあったりします。

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まとめ

人材派遣会社の数は多く、派遣社員全員が無期雇用契約でお仕事をする人材派遣会社や、IT関連など特定の職種に従事するお仕事のみを扱っている人材派遣会社、全国規模で運営している大手の人材派遣会社など、運営形態・特徴もさまざまです。

派遣社員として働く中で、ライフプランとして子どもを育てながらの就労を希望する場合は、妊娠の報告を受けてから産休・育休の取得中や職場復帰後のフォローが手厚い人材派遣会社を選ぶことが大切でしょう。

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