調査データ
2021年8月16日
部下の指導に悩む上司は少なくないものですが、改正労働施策総合推進法施行による「職場におけるパワハラ防止措置」などによって、部下への指導方法への配慮がより一層求められています。そこでマンパワーグループでは、部下を持つ20代~50代の管理職の男女400名を対象に、部下の指導方法に関する悩みや心がけていることについての調査を実施しました。
部下を持つ20代~50代の管理職の男女400名に、部下に対して、仕事を任せられない、任せるのが不安だと感じるのはどのような時か聞きました。「特に感じたことはない」という回答は1割弱にとどまっていることから、9割超が部下に仕事を任せられないと感じた経験があることがわかりました。
具体的な要因としては、「報告・連絡・相談をしない」(37.3%)、「期日を守らないなど責任感がない」(31.3%)、「仕事への意欲を感じられない」(23.3%)が上位を占めています。
また、男女別に見ると、男性上司は「報告・連絡・相談をしない」(38.5%)、「期日を守らないなど責任感がない」(29.2%)、「仕事への意欲を感じられない」(24.4%)が上位となっている一方、女性上司は「期日を守らないなど責任感がない」(46.8%)、「遅刻・サボり癖など勤務態度が良くない」(36.2%)、「報告・連絡・相談をしない」(27.7%)が上位となっていました。 "報・連・相"や"勤務態度"を重視する点は男女にかかわらず共通しているようです。
実際どのように部下へ指導しているのか、管理職者の声をご紹介します。
・なぜ報・連・相が必要なのか、実例を示して説明する。指示待ち部下には、細かく指示し過ぎず、次回から自分で考えさせる(男性/36歳・愛知県)
・なぜその仕事が必要なのか、根拠の理解と求めているゴールを共有する(女性/42歳・千葉県)
・報告書を出させて何をしないといけないか考えさせ、工程を守らせるようにする(男性/52歳・宮崎県)
・過去の自分の失敗例などを参考に話して、改善してもらう(女性/40歳・大阪府)
・アドバイスした後には優秀な部下と組ませて、なるべく自分で気づきを得られるようにする(男性/51歳・宮城県)
・他人と比較する言葉。比較されることで評価を落としたと感じる人もいるから(男性/59歳・栃木県)
・「前に説明したよね」と言ってしまってから、何回も説明してあげないといけないと思った(女性/48歳・大阪府)
・感情的になり、人格を否定する物言いをしてしまった。けなすのではなく褒めるべき(男性/55歳・千葉県)
・能力がないと感じさせる発言。逆に、部下のネガティブなポイントを引き出してしまう(女性/34歳・宮城県)
・すでに頑張っているのに「頑張れ」と言ってしまい、部下の心が折れてしまった(男性/52歳・神奈川県)
苦手意識を持つ部下はいるかを聞いたところ、「いる」(57%)という回答が全体の約6割を占めました。実際に、管理職者が苦手意識を持つ部下に対して心がけていることについてご紹介します。
・努めて冷静に、段取りを踏んで接する(男性/46歳・東京都)
・態度の違いを出さない。嫌いな部下や苦手な部下ほど距離をとってしまいがちなので気をつけている(女性/37歳・神奈川県)
・直接話をし、プライベートな話題なども取り入れ、タイミングを見極めてうまく褒めること(男性/32歳・高知県)
・「一緒に働くメンバーの好き嫌いは関係なく、常に誠実に仕事をするべき」と部下に伝えることで、きちんと仕事をすすめられている(男性/55歳・愛知県)
・コミュニケーションにムラが出ないよう、チーム全員に対し、プライベートな会話は避けて最小限のコミュニケーションにとどめる(女性/34歳・宮城県)
今回の調査では、「部下に仕事を任せられない、不安だと感じたことがある」管理職者が、9割超いることがわかりました。その具体的な要因としては、「報告・連絡・相談をしない」、「期日を守らないなど責任感がない」、「仕事への意欲を感じられない」が上位を占めています。また、苦手意識を持つ部下がいる管理職者は、約6割いることもわかりました。
全体的には、"報・連・相"や"勤務態度"、さらに"仕事への意欲や理解"、"コミュニケーション"などに問題がある部下に対し、「仕事を任せられない」と感じる傾向があります。部下への対処法としては、仕事に対する理解を深める指導、コミュニケーションをしっかりとるための工夫をしている人が多くいるようです。
「改正労働施策総合推進法」(通称:パワハラ防止法)が2020年6月に施行されたことにより、現在、企業においても、職場におけるパワハラ防止対策が事業主に義務付けられています。事業主が講ずべきパワハラの措置義務については、中小企業は2022年3月31日まで「努力義務」となっていますが、同年4月1日以降は義務化され、今後、罰則がもうけられる可能性もあります。
とはいえ、管理職者の部下への指導がパワハラにつながるものなのかどうかは、個々の解釈では判断が難しいものです。双方の個人的な考え方や受け取り方、互いの相性なども関係しますし、コミュニケーションが少ないことで生じるすれ違いなどが影響してしまうケースもあるでしょう。パワハラ問題を避けるために、管理職者が部下に対して消極的な指導しかできなくなってしまう可能性もあります。企業としては、「どのような行為がハラスメントに当たるのか、どういったスタンスで指導していけば良いか」など、マネジメント教育・研修の体制をしっかり整えていくことが、重要なポイントになるでしょう。