人材サービス最新情報
2021年6月28日
2021年4月1日より「改正高年齢者雇用安定法」が施行され、企業に対し「70歳までの就業確保措置を講じることを『努力義務』とする」ことが定められました。これにより、「70歳までの定年引き上げ」「定年制の廃止」「70歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入」などの措置を講じるよう努めることが求められています。そこでマンパワーグループでは、企業の人事担当者を務める20代~50代の男女400名を対象に、「シニア雇用制度の導入状況」を調査しました。すでにシニア雇用制度を推進している企業の人事担当者が感じている課題や問題点なども紹介します。
企業で人事担当者を務める20代~50代の男女400名に、「シニア雇用制度の導入状況」を聞いてみたところ、「役職定年制(*1)」は43.5%、「65歳以上の継続雇用制度(*2)」は59.8%が「導入済み」と回答しました。一方、「定年制の廃止」は16.3%にとどまっています。
従業員数の規模別で導入率の差異が大きかったのは「役職定年制」で、従業員規模が大きいほど導入している割合が高いことがわかりました。
(*1)「役職定年制」ある一定の年齢に達するまでを役職の任期とする制度
(*2)「65歳以上の継続雇用制度」従業員の希望に応じて定年後も引き続き雇用する制度
シニア社員の継続的な勤務について、現在行っている施策を質問したところ、「給与体系の適正化」(32.5%)、「勤務時間や日数のフレキシブルな対応」(31.5%)、「定年前の役職に応じた配置や異動」(28.8%)が上位を占めました。
従業員規模別に見ると、従業員規模が大きい企業ほど、シニア社員の雇用施策に取り組んでいるようです。従業員数が「500人以上」の企業では、上位3項目に加え、「定年後の働き方のメニュー化」、「経験を生かした新たな業務への配属」も、すべて3割以上という結果になりました。「101人〜500人以下」の企業では、「勤務時間や日数のフレキシブルな対応」の割合が低い一方、「経験を生かした新たな業務への配属」の割合は高い傾向にあります。また、従業員規模が小さい企業ほど「特に行っている施策はない」という割合が高く、施策自体を行うことが難しい状況といえそうです。
シニア社員活用の課題や問題点について質問したところ、トップ3は「モチベーションの低さ」(31.5%)、「健康上の配慮が必要」(26.5%)、「マネジメントの難しさ」(24.8%)となり、3割以上の人事担当者が「モチベーションの低さ」を感じていることがわかりました。また、シニアならではの健康上の配慮や、マネジメントの難しさといった点も上位を占めています。
シニア雇用の導入を進めている企業においては、「シニア社員それぞれが持つ力をどう生かすか」という点だけでなく、配属先の職場における課題や問題点も浮き彫りになりつつあり、勤務体系面のみならず、人事評価面でも課題を抱えているようです。
シニア社員活用の課題や問題点について、実際の人事担当者の声をいくつかご紹介します。
・意欲、健康状態などの個人差が大きく、会社側としても一律の対応がしづらい(男性・53歳)
・オンライン作業になれるまで時間を要する(女性・40歳)
・長く雇用することで、その人物のみしか理解できていない業務が発生し、世代交代が遅れること(男性・46歳)
・キャリアがあるので、扱いに困る(女性・42歳)
・若年層とのひずみが大きく、世代間交流がうまくできていない(女性・45歳)
今回の調査では、シニア雇用制度の導入状況において、「役職定年制」は約4割、「65歳以上の継続雇用制度」は約6割が導入済みであることがわかりました。しかし、従業員数「100人以下」の企業では、「役員定年制」の導入率は低い結果となりました。
また、約3割がシニア雇用の取り組みとして「給与体系の適正化」、「勤務時間や日数のフレキシブルな対応」、「定年前の役職に応じた配置や異動」を取り組む一方で、
「モチベーションの低さ」、「健康上の配慮」、「マネジメントの難しさ」を課題に感じていることもわかりました。
シニア社員の活用においては、「企業側から重宝されるため、職務と処遇の差もなく、シニア社員自身のモチベーションも高く、シニア活用の成功事例として取り上げられることも多いが、一方、このような専門的な知見を有する人材は限られている」(男性・25歳)など、経験・スキル・知見などの専門性が注目されています。
しかし今後、「改正高年齢者雇用安定法」がさらに推進されていく中では、高い専門性やスキルがないシニア社員も一定の活躍ができるような制度・環境づくりが重要になるといえそうです。また、職場全体のパフォーマンスを高めるためにも、シニア社員と受け入れる側の社員、双方の意識を高める教育なども必要になるでしょう。