【ITエンジニアが語るキャリアの築き方】グローバリゼーションの到来 ~おもしろきこともなき世におもしろく~

目次

大塚 慎也

執筆者プロフィール

大塚 慎也

GTDシステム技術5課
カスタマーサービスリーダー(掲載当時)

おもしろきこともなき世におもしろく
これは私の実家がある山口県下関市が生んだ幕末の志士、高杉晋作の辞世の句と言われています。
私はこの言葉が好きで、なにか困難な局面にぶつかった時に思い出すようにしています。
晋作が生きた江戸末期から約150年。人々の生活様式は随分と変わりましたが、現在の日本の状況は、当時と似たようなところがあるのではないかと思います。それが、「グローバリゼーションの到来」です。

江戸末期、幕府は海外の列強が植民地支配を続ける中で、海外の列強に対抗するのか、もしくはアジアの小国の一つとして植民地支配を受け入れるのか、否応なく判断を強いられていました。
しかし、江戸幕府の体制では、列強に対抗し得ないと考えた維新志士達によって、日本は明治維新という大改革を行い、近代化を進める道を歩んだのです。

現在の日本の状況は、ある意味江戸末期に近い部分があるのではないかと思います。東西冷戦の終結や情報通信革命により、国家の壁がどんどん低くなり、世界中の情報を家庭のパソコンから瞬時に覗く事ができるようになりました。人材の流動性も高まり、日本人が外国資本の会社に入社したり、海外の人材が日本の会社に入社したりすることも当たり前のようになっています。江戸時代は政治レベルだったグローバリゼーションが、現在は国民一人一人に浸透していっているように感じます。

近頃、社内公用語を英語にする企業が増えています。世界共通賃金で雇用するという方針を打ち出した企業もあり、驚かれた方も多いかと思います。しかし、私の実感としては、今後遅かれ早かれ、そういった企業が増えていくのは間違いないと思うのです。そう考えるようになった経緯をご紹介したいと思います。

私は2011年よりコールセンターでのテクニカルサポート業務を行なっていますが、前職は派遣プログラマとしてスマートフォン向けのソーシャルゲームの開発を行なっていました。そこでは主に派遣社員30名ほどのチームで開発を行なっていたのですが、開発の過程で海外の人的リソースを使うということに派遣先の方針がシフトして行きました。
私はそれまで、海外のリソースを使った開発(オフショア開発)は、コストは下げられるが品質管理が難しいという認識でした。なので、日本側の方針を反映した開発は難しいのではないかと思っていたのですが、結果から申しますと、日本の開発チームは解散となり、企画、デザイン、プログラムなどすべての開発拠点を海外のチームに委ねることになったのです。

ただ、私はその決定にそれほど驚きはしませんでした。
開発チームの上司から、海外の開発チームの状況を聞くにつれ、「今後日本での開発は難しいだろうな」と思っていたからです。それまで想像していた、オフショア開発の短所とは裏腹に、実際に東南アジアの某国に拠点を構えて人材を募集したところ、中国、インド、マレーシアなど、周辺の各国から応募があり、日本語を使え、マネージャークラスの能力を備えた技術者が、日本の1/3~1/2程度のコストで雇用できる状況だったそうです。また各自の意識も高く、成功して稼ぎたいとか、貪欲に最新の知識を習得しようとする姿勢を持った方が多いとのことでした。
それに比べて日本のチームは海外に拠点を構える事自体に消極的だったり、実績も上がらないのに待遇面の改善を求めるメンバーもおり、また、出来上がったソーシャルゲームも品質が低いものでした。
つまり、「日本人は教育水準も高く、優れたコンテンツを生み出すことができる」という、今までなんとなく抱いていた安心感は、全くの幻想だったのです。

私はその現場を目の当たりにし、悩みました。数年後にはエンジニアも世界中の人材と価格競争を強いられる事になるだろう。
英語も堪能ではなく、エンジニアとしてのスキルも充分でない自分が生き残っていけるのか?
悶々とした日々が続いた時に思い出したのが、冒頭の晋作の句です。
おもしろきこともなき世におもしろく
そうか、いつの時代だって世間自体が楽しさを提供してくれるのではない。自分が仕事をおもしろく創造するように生きていけばいいんだ。
こう考えるようになってからは肩の荷が下りたような、すっきりとした気持ちになり、エンジニア以外の仕事にも目を向けようと視野が開けて来ました。
では、どんな仕事であれば自分の能力を発揮できるのか、世の中におもしろく関わっていけるのか自問自答した結果、「今まで培ってきたITスキルをわかりやすく提供し、ITによってより便利な生活を送れる人々を増やしたい」と考えるようになりました。

そして、前職のチームが解散後、現在のコールセンターの仕事に就きました。これまで培ってきたITスキルの他に、説明する力、コミュニケーション力が問われる仕事で、これはまさに自分が考えていたことに近い仕事ではないかと思いました。
そして、これまで全く経験のなかったコールセンターでの仕事を始めることになったのです。

現代の、特にITビジネスに関わる人材には、常に各個人の中の「変革=維新」を求められています。現在の私の仕事はエンジニアではありませんが、コールセンター業務も今後海外のリソースを使って行くことになるでしょう。そういった時代に適応できるよう、これからも変化を恐れずに、自分の信念をもって仕事に向き合おうと考えています。

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