調査データ
2021年6月 2日
コロナ禍の影響により、この1年の間にオンラインによる会社説明会や面接選考の実施など、「リモート採用」を導入している企業は増加しています。しかし、これまでの対面とは違う全く新しい形式のため、実際に導入した企業がどんなメリットや課題を感じているのかを知ることが重要といえるでしょう。そこでマンパワーグループでは、企業の人事担当者を務める20代~50代の男女400名を対象に、「リモート採用の導入と活用の実態」を調査しました。すでにリモート採用を導入・活用している人事担当者のリアルな声を紹介します。
企業で人事担当者を務める20代~50代の男女400名に、リモート採用を導入しているかを聞いてみたところ、4割超が「導入している」(41.0%)と回答しました。従業員数の規模別で見ると、「100人以下」の企業では18.7%、「101〜500人以下」の企業では39.7%、さらに、「501人以上」の企業では61.0%が導入済みと回答しています。「100人以下」の企業は2割弱、「501人以上」の企業では6割超となっており、従業員規模が大きいほど導入率が高くなる傾向があることがわかりました。
いつからリモート採用を導入したか聞いたところ、「コロナ契機で導入」(28.4%)が約3割を占めています。「コロナ契機で導入検討」(15.1%)を含めると、4割以上がコロナ禍をきっかけに導入、または導入を検討していることがわかりました。また、従業員規模「501人以上」の企業では、コロナ禍をきっかけに6割近くが導入にシフトしていますが、「100人以下」では2割程度にとどまっています。従業員規模の大きな企業で導入が進んだ理由は、採用業務の負担を削減する目的のほか、応募者・採用者の人数が多いことを踏まえ、コロナ対策に配慮したことが要因の一つといえそうです。
リモート採用で行っていることについて聞いた結果、「採用面接」(83.5%)、「説明会」(75.0%)が8割前後と、オンライン面接、オンライン説明会を高い割合で行っていることがわかりました。以降、「適性検査」(48.8%)、「内定者フォロー」(48.2%)が続き、選考前から選考過程、内定後まで、採用プロセス全般で活用している企業が半数近くを占めています。「密を避ける」「外出・訪問によるリスクを低減させる」など、採用担当者と参加者、双方への配慮としてリモートを活用している状況がうかがえます。
リモート採用導入のメリットについては、「採用業務負担の軽減」(65.2%)、「応募者の負担減」(62.2%)、「採用の時間効率が上がる」(56.1%)が上位を占めました。
応募者数や参加者数が多くなれば、採用業務に加え、採用担当者側のコロナ感染症対策に関わる業務も増えることが想定されます。そのため、規模の大きな企業ほど「採用業務負担の軽減」をメリットに感じる割合が高い傾向にあります。
リモート採用導入で感じているメリットについて、実際の声をいくつかご紹介します。
・コロナ感染リスクの軽減はもちろん、さまざまな時間を節約できる(男性・25歳)
・遠方の応募者とも接点を取れる。説明会などの参加数も対面で行っていた時より増えた(女性・27歳)
・面接などの予定が組みやすい。自粛期間中でも業務を進められる(女性・34歳)
・必要最低限の業務以外をリモートで実施することにより、効率化が図れて負担も少ない。応募者・企業の双方にメリットがあると思う(男性・56歳)
・地方などの応募者に対しても、場所の確保が必要なくなり、時間の制約もなくなり、早い対応が取れるようになった(男性・48歳)
リモート採用の課題・問題点トップは、「人物像がつかみにくい」(51.5%)で半数以上を占めています。以降、「WEB環境」(36.0%)、「面接担当者の不慣れさ」(25.8%)、「会社側が伝えたいことがうまく伝わらない」(22.8%)、「互いの伝えることのボリュームバランスが悪い」(20.0%)が続きます。
リモート採用においては、対面と違い、人柄や雰囲気が伝わりにくい点や、やりとりの間合いがつかみにくく、タイムラグもあり、会話のリズムや流れに影響を与える点などを懸念している人事担当者が多いようです。面接担当者がオンラインを通じた対話や見極めのコツを早期につかむことが課題となるでしょう。
物理的な面では、WEB環境による通信トラブルも問題となっています。対話が中断されることで、スムーズに面接を進めることができず、応募者の受け答えにも少なからぬ影響を与える可能性があるといえます。通信トラブルは、通信の利用状況や応募者の通信環境なども要因となるため、社内だけで解決できない問題として憂慮している企業も少なくないようです。
リモート採用で感じている課題・問題点について、実際の声をいくつかご紹介します。
・実際に会って会話を交わさないと、人となりがよく理解できないと感じる(男性・51歳)
・面接での対話以外で、立ち居振る舞いなども見たいが、リモートだと伝わる情報が少なく、採用の決め手に欠ける(女性・26歳)
・意思疎通がうまくいかない時がある(男性・34歳)
・通信環境が不安定になることが問題。また、応募者がつなげない状況があったり、連絡が取れなかったりすることもある(女性・46歳)
・画面越しでは応募者の表情がわかりづらい。通信環境の影響で声が聞き取りにくく、表情の変化もつかめないことがある(男性・46歳)
今回の調査では、全体の約4割がすでにリモート採用を導入済みであることがわかりました。また、コロナ禍をきっかけに導入は進み、企業規模が大きいほどリモート採用へシフトしている傾向にあります。
リモート採用を導入した業務としては、「採用面接」「説明会」「適性検査」に加え、「内定者フォローや」「契約書のやりとり」などにも活用する企業も少なくはありませんでした。リモートは、採用プロセス全般に役立っているようです。
コロナ禍において、リモート採用は感染対策や業務の効率化に役立つ一方で、「対面のような面接ノウハウがない」(女性・39歳)、「ハード面の環境が整えられない」(女性・43歳)など、企業側がいかに体制や環境を整備するかが課題といえるでしょう。
「採用に対する敷居が低くなりすぎて、当日のドタキャン(特に、辞退の連絡がないケース)が多いと感じた」(男性・49歳)など、結果的に非効率になってしまうケースもあるようです。
これからリモート採用の導入を考えている企業は、最初から採用プロセスの全てにリモートを導入するのではなく、導入ポイントを絞り、ノウハウ整備を行いながら部分的に取り入れて効率化を図っていくなど、企業に合った導入方法の検討が必要となりそうです。