調査データ
2025年9月 8日
日本をはじめ、世界で多くの企業が深刻な人手不足を課題視しています。厚生労働省が発表した2025年7月の有効求人倍率は1.22倍と高水準を維持しています。さらに生産年齢人口は2050年には5,275万人まで減少すると見込まれ、労働力不足は今後さらに深刻化していく可能性があります。この危機的状況を打開するために、DEIB※¹(ダイバーシティ・公平性・インクルージョン・帰属意識)を戦略的優先課題として位置付け始める企業が増えてきました。
今回の記事では、DEIBがなぜ企業の持続的成長に不可欠なのか、企業の取り組みや効果について古川 武生コンサルタントが解説します。
※¹ DEIB:Diversity(ダイバーシティ)、Equity(公平性)、Inclusion(インクルージョン)、Belonging(帰属意識)
参考:マンパワーグループが発表した2025年労働市場動向の詳細は、こちらでご確認いただけます。
URL: https://www.manpowergroup.jp/company/press/2025/20250327.html
2025年1月にマンパワーグループが発表した「2025年 人材不足に関する調査」によると、61%の企業がDEIB(ダイバーシティ・公平性・インクルージョン・帰属意識)を戦略的優先課題として位置付けています。米国では政治的背景からこの取り組みを縮小する動きも一部で見られますが、全体的な潮流としては大きなうねりには至っていません。
DEIBの本質は、単なる社会貢献活動の範疇を超えた、企業の持続的成長を支える重要な経営戦略にあります。多様な視点を組織に取り込むことで、社員同士の化学反応が促進され、これが組織変革の原動力となります。
この組織変革により、企業は顧客の多様なニーズをより的確に捉えることが可能になり、新たなビジネス機会の創出につながります。つまり、DEIBは企業の競争優位性を高める重要な要素として機能しているのです。
近年、政治的影響を抑制する目的で「Belonging(帰属意識)」というキーワードを前面に押し出し、DEIBを包含した取り組みを推進する企業も増えています。この動きは、DEIBの本来の価値を損なうことなく、より幅広い理解と支持を得るための戦略的アプローチといえるでしょう。
労働市場における人材の多様化が進む中、企業がDEIBを戦略的に活用することで、組織の革新性と競争力を高めることができる時代が到来しています。
人手不足という構造的課題に直面する日本企業にとって、DEIBは単なる理念的な取り組みではなく、企業の存続のための戦略上不可欠な要素となっています。今後さらに人手不足が深刻化すると予想される労働市場において、従来の限定的な採用手法から脱却し、多様な人材の力を最大限に引き出すことが企業の競争優位性を左右する可能性があります。ダイバーシティを組織変革の原動力とし、Belonging(帰属意識)という新たなアプローチも含めて、DEIBを経営戦略の重要課題として実践していくことが必要になるでしょう。