調査データ
2021年5月19日
人工知能(AI)、ビッグデータ、クラウドなどの先端テクノロジーを使い、採用・育成・評価・配置・勤怠管理など、あらゆる人事業務をシステム化した「HRテック(Tech)」。近年は、テレワーク推進などに合わせてHRテックを導入する企業も増えつつあります。
そこでマンパワーグループでは、企業の人事担当者を務める20代~50代の男女400名を対象に、HRテックの導入と運用状況を調査しました。実際に運用している人事担当者のリアルな声も紹介します。
企業で人事担当者を務める20代~50代の男女400名に、HRテックを導入しているか聞いてみたところ、2割弱が「導入している」(17.3%)と回答しました。
導入率を従業員数の規模別で見ると、「100人以下」の企業では6.5%、「101〜500人以下」の企業では12.2%、さらに、「501人以上」の企業では30.8%という結果となりました。従業員規模が大きいほど導入率が高くなる傾向があり、「100人以下」の企業は1割弱、「501人以上」の企業では3割超と、導入率に開きがあることがわかりました。
HRテックを「導入している」と回答した人事担当者に、どんな業務をHRテックで行っているか質問したところ、最も多かったのは「人材管理」(73.9%)でした。次いで「労務管理」(71.0%)、「勤怠管理」(69.6%)、「求人・採用管理」(62.3%)が続き、すべて6割以上となっています。また、「学習管理」(29.0%)、「福利厚生」(26.1%)についても、2割以上が導入しています。
従業員規模別で見ると、トップの「人材管理」の業務においては、従業員規模の大きい企業ほど導入している割合が多いようです。
HRテック導入のメリットとしては、「定量的なデータに基づく評価ができる」(66.7%)、「効率よく業務を行える」(62.3%)が6割超で上位を占めています。
また、「適正マッチングにより早期退職を防止できる」(42.0%)、「適材適所に人材配置できる」(37.7%)といった採用時のミスマッチを防ぐメリットや適材適所での活躍を促進できるメリットを感じている人も4割前後いるようです。
従業員規模別に見ると、トップとなった人事評価領域の「定量的なデータに基づく評価ができる」については、規模の大きな企業でHRテックのメリットを感じやすい傾向にあるようです。
それでは、HRテック導入で感じたメリット・デメリットについて実際の声を見ていきましょう。
・管理業務の簡略化ができて、他の仕事に手が回せるようになった(女性・34歳)
・効率よく業務を進めることができ、人件費の削減にもつながる(男性・47歳)
・適材適所の把握・配置が容易にできる(女性・45歳)
・スキルなどが可視化できるようになり、戦略的な人事配置が可能になった(男性・43歳)
・業務が効率化でき、求人応募者への対応を忘れるなどのミスもなくなった(女性・29歳)
・ランニングコストが高い(男性・44歳)
・運用におけるスキルがなかなか身に付かない (女性・30歳)
・データの正確さ、タイムリーな更新など運用負荷が高い(男性・45歳)
・セキュリティ対策がより重要になった(男性・46歳)
・どこのデータが漏れているか把握できていないため、瞬時に確認できない(男性・24歳)
今回の調査では、HRテックをすでに導入している企業が、全体の2割弱いることがわかりました。また、HRテックを導入している業務の上位は「人材管理」「労務管理」「勤怠管理」であることや、導入メリットとしては「定量的なデータに基づく評価」「業務の効率化」を感じている企業が多いこともわかりました。
しかし、従業員規模によって、HRテックの導入にメリットを感じにくい傾向もあり、導入に役立つ領域の違いなどもあるようです。管理する従業員数が少なく、費用対効果のメリットを感じにくい規模の小さい企業では、「どんな領域で、何を目的に、どうHRテックを活用するのか」をより明確にすることが重要といえそうです。
HRテックは、業務効率化やコストメリットだけで導入するのではなく、企業としての人材活用方針と運用における目的をしっかりと持った上で、従業員の理解を深めていくことが重要になるでしょう。
現在、経済産業省は企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進を掲げていますが、HRテックの活用もその一環に挙げられており、今後、さらに浸透していくことが想定されます。中小企業・小規模事業者に向けてITツール導入費用を支援する「IT導入補助金 」などの施策も行われているので、活用を検討してみるのもいいでしょう。