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多くの派遣社員が在籍する場合、管理工数が増大し担当者の負担が増える傾向にあります。専任の担当者を設置する企業もありますが、人材派遣会社が提供している派遣管理デスクサービスを導入するケースも増えてきました。
本記事では、派遣管理デスクサービスのメリット・デメリットや導入に適している企業について解説します。
派遣管理デスクとは、派遣契約の管理や人材派遣会社とのやりとり、派遣に関する相談を受ける窓口の代行サービスです。
派遣社員は就業先と雇用主が異なり、また雇用契約も有期であることがほとんどです。不安定な立場であることから、派遣先にも労働者派遣法によるさまざまルールが課せられています。
そのため、多くの派遣社員が従事している企業では、派遣社員の管理工数が増大なる傾向があります。法律に沿った適切な利用と担当者の工数削減を目的として、派遣管理デスクサービスが取り入れられています。
派遣管理デスクは人事・派遣担当者と派遣社員が所属する部署、派遣会社の間に入り、窓口として業務を遂行します。
派遣管理デスクは、派遣管理デスク担当者が常駐し業務を行うオンサイト型と担当者が外部にいるオフサイト型があります。依頼する業務や要望に合わせて選択することが可能です。オンサイトとオフサイトを組み合わせて行うケースもあります。
派遣管理ツールは、派遣の依頼や契約管理、勤怠管理、請求などを一括で管理できるツールとして多くの企業に取り入れられています。派遣管理ツールは、派遣会社側と派遣先の双方で導入し、情報を一元管理することができます。
派遣管理ツールは主に派遣の発注や契約管理、派遣先管理台帳の作成、勤怠管理、請求情報に焦点をあてています。
ツールであるため運用は自社で行います。派遣オーダーの入力や勤怠情報の管理、部門からの問い合わせ、職場見学の調整等も担当者が行います。派遣管理デスクサービスの場合は、派遣管理ツールの導入から利用支援、日々の調整業務、問い合わせ対応などを代行するところに違いがあります。
人材領域におけるMSPとは、外部人材の管理や適切なベンダーのコントロール、ベンダーのパフォーマンス評価などを行うサービスです。
対象は人材派遣に限らず、個人事業主や業務委託なども含まれます。また、日本国内だけに限らず外国にある支社なども管理対象になる場合もあります。
一方、派遣管理デスクは、人材派遣の管理に特化しています。個人事業主やアウトソーサーなどの契約管理も含めてサポートを希望する場合は、MSPを検討するほうがよいでしょう。
派遣管理デスクサービスを導入する企業の導入理由は、主に以下の3つのメリットが得られるためです。
管理工数の削減は大きなメリットです。派遣社員の人数が増えると、事務的作業も増え、また取引のある人材派遣会社も増える傾向にあるため、コミュニケーションコストも膨れ上がります。この煩雑になりやすい管理業務をアウトソースできるため、担当者の負担を軽減できます。
派遣社員という外部人材の個人情報を取り扱うため、担当者には慎重な対応が求められます。ひとつひとつの作業は小さくても量が多いため、業務負荷は周囲が考えるより大きいものです。担当者の負荷を調整することで、社員にしかできない業務に集中できる環境が整います。
派遣管理デスクは、派遣会社の管理も一元的に行います。発注案件に対する情報提供や質問への回答など各派遣会社と細かい連携を取りながら、スピーディーな人材の確保に努めます。
派遣会社との情報連携は定着率に関わってきます。どのような人材が適しているのか認識を丁寧に合わせることで、ポジションにマッチした人材が派遣される可能性が高くなります。すぐに契約終了してしまった場合でも、その原因を見極め、派遣会社に気を付けるべき点を伝えることで、人選の精度向上を目指します。
また、各派遣会社の紹介状況やコストの可視化などによるパフォーマンス分析で、より効率的・適切に人材派遣サービスを活用できるようにサポートします。
派遣社員を受け入れるにあたり、派遣法、労働基準法、男女雇用機会均等法、労働安全衛生法など、様々な労働関連法を遵守する必要があります。
中でも派遣法は幾度となく改正され、その内容は派遣会社だけに影響するものではなく、労働者保護の観点から派遣先企業にも関わるものもありました。
派遣先には以下のような講ずべき措置が求められています。
適切な派遣サービスの利用には、派遣法に関する知識が必要不可欠です。法改正情報のキャッチアップも必要とされ、見落としや対応漏れのないよう対応しなれけばなりません。
派遣管理デスク担当者は派遣法に精通しているため、コンプライアンス対策についても手厚くサポートしてくれます。タイムリーに助言をくれ、相談できる相手が身近にいることは、担当者にとっても安心できる環境といえます。
派遣管理デスクの導入にはデメリットもあります。サービスの利用を検討する際は、デメリットも把握しておく必要があります。
派遣管理デスクサービスを導入する場合、導入コストが必要です。ただし、導入コストの幅は提供する会社によって大きく異なります。
派遣管理デスク担当者の人件費を含めた場合もあれば、諸条件を追加することで運用に必要な備品の提供(自社内であれば、デスクやPC、携帯電話など)だけの場合もあります。
派遣社員の管理を外部に委託することで、社内の人材に人材派遣に関するノウハウが蓄積されにくくなります。回避方法としては、委託時にフローを整備してもらい、マニュアル化しておくことです。
派遣管理デスクの担当者は、派遣社員の個人情報や企業情報に触れることになります。自社の業務を委託するため、情報漏洩リスクはゼロとはいきません。
情報管理に対し高い意識で取り組む業者を選ぶことは大前提として、派遣管理デスクの担当者がアクセスできる情報をあらかじめ決めておくことも大切です。
派遣管理デスクが対応する業務の一例をご紹介します。
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派遣管理デスクは、すべての企業に適したサービスではありません。費用対効果などを鑑み、導入を検討する必要があります。派遣管理デスクの導入が適している企業について解説します。
派遣社員が数十人以上いる場合、派遣管理デスクの利用を検討してみましょう。
在籍している派遣社員は、すべて同一の派遣会社の所属であるケースは稀です。通常は、複数の派遣会社から派遣社員を受け入れています。
派遣社員個別の対応のほかに、それぞれの派遣会社に対しての対応もでてきます。同じようなことを何度も伝えなければいけない工数や派遣会社ごとに異なるフローは、ひとつずつみれば小さな業務ですが、膨大になりやすい傾向にあります。
このような管理工数を引き受けてもらえるため、担当者は業績に直結する業務に集中できる環境や新たな業務に就くことが可能になります。
全国展開しているなど多拠点で活動をしている企業では、各地に派遣社員が在籍していることがあります。それぞれの拠点で働いている派遣社員数にもバラツキがあり、1名だけいる、といったケースもあるでしょう。
その場合、現場担当者が派遣社員の管理も兼務することになり、本業に支障をきたす可能性があります。また現場担当者が専門的な知識を持っていないと、適切な職場環境を維持できなかったり、派遣契約や抵触日の管理が曖昧になるリスクもあります。
派遣管理デスクが入ることで、派遣管理業務が一元管理できるので、可視化しやすくなり、ガバナンスの強化に繋がります。
派遣社員の管理は人事担当者が行うケースが多く見られますが、人事担当者の業務は採用から社員研修、労務管理、人事戦略など幅広く個人情報の取り扱いも多いため、慎重な対応を求められます。
人事担当者がそもそも不足している場合、派遣管理デスクは大きな助けになります。派遣法に沿った対応を、業務に精通している人材が行うため、人材派遣サービスをスムーズに利用することが可能です。
派遣管理デスクの導入事例を3つご紹介します。
約200名の派遣社員が常時就業しており、人事担当者が1名で対応していました。 社員の業務量を軽減するのと度重なる派遣法の改正に適切な対応を目的に、派遣管理デスクの導入を決定。
社内文化やフローを考慮した、必要な人材をタイムリーに確保できる体制を構築。派遣会社との交渉や法対応なども安心して依頼できるため、サービス利用も3年目に入っています。
コスト適正化とサプライヤーのパフォーマンス不良を課題に抱えている企業での導入事例です。派遣管理デスクを導入し、依頼する人材派遣会社のパフォーマンス分析と見直しを実施、市場価格をベンチマークとした料金表を作成してもらうことになりました。
安定した人材の調達はもちろんのこと、年間を通して約8%のコスト削減を実現。また、派遣法に即したガイドラインを設定し、現場へ周知徹底することで、コンプライアンスリスクにも備えることができています。
全国に約1500名の派遣社員が在籍しており、現場にかなりの管理工数がかかるような状況でした。 まずは都内の事務系100名の派遣社員の管理から派遣管理デスクを導入し、効果を実感できたところで、段階的に全国の製造系業務や販売職にも拡大。
契約管理や請求書の処理などの現場負担軽減だけではなく、派遣契約の実態調査も行ってもらい、現状を可視化し、適切なサービス利用に向けての改善提案を受けています。また、自社の勤怠システムと派遣管理システムの連携対応を行ってもらうことで、効率化も図れるようになりました。
派遣管理デスクは、担当者の業務負荷軽減と派遣法に即した人材派遣サービスの利用に大きなメリットがあります。 目まぐるしい社会変化が起きている昨今、企業も顧客ニーズに応えるため、柔軟に組織を変えていく必要があります。その流れで派遣サービスや業務委託など外部人材に業務を担ってもらう機会も増えることでしょう。
外部人材である派遣社員は、自社に所属する従業員ではないものの、管理が不要というわけではありません。適切なサービス利用のために派遣デスクサービスの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
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