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近年の人事の「トレンドの一つ」となっているHRテックは、デジタル技術を活用することで採用や教育業務全般の精度を高めたり、効率化を図ったりすることを指します。デジタル化が進む今後も引き続き注目されると予想されるため、人事担当者は注目しておきたいところです。
この記事では、HRテックの概要とメリット・デメリット、実際のHRテックシステムがどのようなものなのか、について解説します。
最初に、「HRテックとはどのようなものか」や市場の動向について確認し、「なぜ近年になってHRテックが注目されているのか」を解説します。
HRテックとは、「人事」を意味するHuman Resourcesと「技術」を意味するTechnologyを組み合わせた造語です。
AI・ビッグデータ・クラウドといった最先端のICT技術・サービスを活用することにより、これまでにない視点で、人員の配置や採用、人材育成を効率的に行うことができます。
AIとは、Artificial Intelligence(アーティフィシャル・インテリジェンス)の略で、人工知能という意味です。人工的に作られた人のような知的な振る舞いをするシステムを指します。
「職場でAIを活用しているか?」という調査において、日本は約26%が活用していると回答しています。
ビックデータとは、従来のシステムやツールでは分析や保管が難しいような巨大で多種多様なデータ群を指します。
クラウドとは、インフラやシステムを保有していなくても、インターネットを通して必要なサービスを利用する考え方のことです。
HRテックの注目の高さは、市場規模の推移・予測にも顕著にあらわれています。2017年度におけるHRテックの市場規模は586億円でしたが、2023年には4倍以上の2,504億円規模にまで膨らむと予想されています。
そのなかでも、「採用・配置」の分野がHRテック市場の大半を占めています。
HRテックが注目され、急激に伸びている背景には、「クラウドやAI(人工知能)の技術開発が進んだこと」と「採用の難化」の2点が挙げられます。
採用面接や人事評価において、以前から人材分野に利用できるHRテックの技術は存在していたものの、高額なシステムを導入しないとHRテックを導入できなかったため、一部の大手企業にしか利用されていませんでした。
しかし、近年の技術開発により現状分析や仮設立案など精度の高いHRの機能を安価に利用できるようになった結果、中小企業を含む多くの企業で、HRテックの導入が積極的に検討されるようになりました。
少子高齢化による「労働人口の減少」や、終身雇用を重視しないといった「求職者の意識の変化」により、多くの企業が人手不足に悩んでいます。
このため、効率的に人材を採用し、戦力化するか、という点が重要視されています。テクノロジーを活用することで人事部の手間を軽減し、効率的な採用と人材配置も実現できるようになりました。
マンパワーグループは、2021年1月にHRテックに関する調査を行いました。
HRテックを導入していると回答した人事担当者は、2割弱で大手企業ほど導入率が高い傾向にあります。
参照:企業のHRテック導入率は2割弱。導入している業務領域やメリットとは?」
HRテックは、どのような場所で活用されているのでしょうか。
こちらも調査データからになりますが、以下のような領域で活用されているようです。
人材管理は、社員に関するデータを一元管理できることで、人事業務の効率化も図れ、今まで見えてこなかった情報が可視化しやすく、さまざまな事案の判断スピードが上がることが期待できます。
続いては、HRテックを導入することによるメリットとデメリットについて解説していきます。
HRテックの主なメリットは以下の4点です。
採用面接や人事評価において、感覚的な人材採用・管理ではなく、評価を数値化することができます。
例えば、オンライン面接における仕草や表情、話し方などは、これまで面接官の主観に頼るしかありませんでした。HRテックを使えば数値による定量的な判断ができるため、全ての求職者や従業員を同じ基準でチェックすることができます。
AIなどの技術進化により、適性検査の結果や面接時の動画情報などから性格や志向、考え方などに関する大量のデータを取得して、正しく活用できるようになりました。これらのデータは、適性マッチングによる早期退職の防止、適材適所な人材配置などに役立てることができます。
求職者へのフォローメールの送信やデータの入力、人事考課、人事異動など、人事・採用に関する業務やデータ集計を自動化・機械化することにより、担当スタッフの手間を軽減することができます。
労働時間や勤怠状況などのデータから、自社従業員の心身に関する疾患や過労へのケアに役立てることができます。例えば、特定のスタッフが基準時間を超えて労働していた場合、管理者にアラートを出すことにより、早期に対策が取れるようになります。
次は、デメリットとなりうるポイントを3点挙げておきます。
HRテックが扱う情報の中には、従業員・求職者の性格や指向、人事評価など、重要な個人情報が多く含まれています。社内管理の場合と同様に、情報漏えいが起きると非常に大きな問題に発展する恐れがあるため、慎重な情報の取り扱いが求められます。
HRテック事業者との「個人データの取り扱いに関する契約内容(安全管理、再委託の可否、事故発生時の対応、契約終了後のデータの取り扱いなど)」についても十分に吟味する必要があります。
HRテックで得られたデータだけを正解にしてしまうと、不満や不信感を生むリスクがあります。HRテックを利用することで得られるデータ量は大幅に増えますが、「どんなデータが得られて、何が不足しているのか」について冷静な目を持つことも重要です。
特に、データに基づいて人事考課がなされる場合、評価される側の社員にとっても、「納得できない」などのケースが生じる恐れがあります。
多くの事業者がHRテックシステムを提供していますが、機能の豊富さや価格だけではなく、自社の課題を解決してくれるシステムを選定することが大切です。
自社に適していないHRテックの導入により、「オーバースペックであるために必要以上に予算がかかってしまう」、「ハイスペックであるものの使いこなせるスタッフが社内に存在しない」などのデメリットが生じてしまうリスクがあります。
最後に、HRテックシステムには「どのようなシステムがあるのか」について解説します。
採用管理システムとは、応募者の履歴書、選考プロセス、面接評価などのデータを収集し、一元管理するシステムです。
これらの機能を活用することで、採用活動を効率化し、精度を高めることができます。
採用管理システムに関しては「採用活動を効率化するATS(採用管理システム)導入のメリット・デメリットを解説」で詳しく解説しています。
人材管理システムは、従業員に関するさまざまな情報をデータ管理できるシステムです。
人材管理システムは、配置転換や部署の適性判断のためのデータとして活用することができます。
また、活躍している人材のデータを参考にすることで、人材採用時のターゲット設定(求める人物像)に活用することもできます。データを数値化して一元的に管理することにより、従来の評価システムと比べて適正に管理できるようになります。その結果、優秀な社員を正当に評価し、モチベーションの向上につなげることができます。
労務管理システムでは、社会保険、給与計算、労務管理などを一元管理できます。これらを連携させて管理すると、情報入力の二度手間を回避できるようになり、担当スタッフの業務効率化にもつながります。
出退勤データや残業時間、有給消化日数などもクラウド型のシステムで管理することができます。スタッフがスマホをタップするだけで出退勤を管理できるだけでなく、最新の法令や税率にも対応するため、管理側の手間を大きく軽減できます。
オンライン学習(eラーニング)の受講状況・進捗状況、対面型の各種研修の受講状況をシステムで管理することができます。また、研修時の課題や目標、達成状況をシステムで管理することにより、社員のスキルアップや評価のために情報を活用することもできます。
人事における教育・採用・労務管理などの分野に、クラウドサービスやAIなどの技術を活用したものが「HRテック」です。クラウドやAI技術が身近になった現在、HRテックの導入は活発に進んでおり、市場規模も大幅に伸びています。
今回の記事を参考に、自社の採用や人事の課題を解決するために、HRテックの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
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