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「昔からこの書き方で求人を出しているから大丈夫」
そう思って求人原稿を見直してみると、現在では使わないほうがよい表現や、記載が不足している項目が見つかることがあります。
近年は職業安定法の改正などにより、求人募集時に明示すべき事項が追加されており、求人広告に求められるルールも変化しています。
本記事では、求人広告を作成・掲載する際に押さえておきたい法令や必須記載事項、注意したい表現を解説します。

求人広告には、「職業選択の自由」という憲法上の権利を土台として、複数の労働関連法が適用されます。
以下では、求人広告を作成するうえで押さえておくべき代表的な6つの法律について解説します。
採用条件を整理するときの参考資料
求人票に記載する応募条件や求める人物像を整理する際は、採用要件を客観的に整理することが重要です。要件定義に活用可能なチェックシートをご用意しています。
求人をおこなう際には、求職者に対して業務内容や賃金などの労働条件を正確に明示する義務があります。
これは職業安定法によって定められており、求職者が入社後の働き方を正しくイメージできるようにするための重要なルールです。
実務上の注意点として、現場の担当者から聞いた情報と求人広告の内容にズレがないよう、掲載前に社内ですり合わせをおこなう必要があります。
なお、次の項目で解説する「虚偽表示の禁止」との違いは、明示義務が「書くべき情報を漏れなく書く」ルールであるのに対し、虚偽表示の禁止は「書いた内容が事実と異なってはいけない」という点です。
求人票を作成する段階で、社内の労働条件通知書や就業規則と内容が一致しているかを確認しましょう。
実際の労働条件よりも良く見せかけた「虚偽の表示」や、求職者に誤解を与えるあいまいな表現は、職業安定法によって禁止されています。
支給実績のない手当を記載する、または実態とかけ離れた高額な給与を掲載することなどは、求職者を欺く行為とみなされるためです。
違反した場合は、職業安定法第65条に基づき、6ヶ月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金が科される可能性があります。
求人原稿を公開する前に、実態と一致しているかを複数人でダブルチェックする体制を整えておきましょう。
求人広告に記載する労働時間や休日、休憩などの条件は、労働基準法が定める最低基準を満たしている必要があります。
原則1日8時間・週40時間の法定労働時間を超える勤務を前提とした求人や、休憩・休日を確保しない条件は、そもそも法律違反となり無効です。
また、給与についても産業別の最低賃金を下回っている場合は、労働基準法違反として30万円以下の罰金が科されるおそれがあります。
賃金の最低基準については、労働基準法第28条において「最低賃金法の定めるところによる」と規定されており、具体的な金額のルールは次の項目で詳しく解説します。
求人広告に記載する給与額は、都道府県ごとに定められている最低賃金以上の金額に設定しなければなりません。
最低賃金法によって、企業は労働者に対して最低賃金額以上の賃金の支払いが厳格に義務付けられているからです。
また、最低賃金には「地域別」だけでなく「産業別」に定められている場合もあるため、自社がどの基準に該当するのかを両方の観点から確認する必要があります。
とくに、実務で間違いやすいのが、一定時間分の残業代をあらかじめ給与に含めて支払う、固定残業代(みなし残業代)を導入しているケースです。
固定残業代として支払われる金額を除いた「基本給部分」だけで時給換算し、最低賃金を上回っているか計算する必要があるため、注意して給与を設定しましょう。
男女雇用機会均等法により、性別を理由に応募を制限、または優遇したりする行為は原則として禁止されています。
「営業マン」「看護婦」のように性別を連想させる職種名を使用したり、男女で異なる採用基準を設けたりする行為も違法となります。
とくに、求人広告に掲載する場合は、次のような表現には注意が必要です。
ただし、防犯上の理由から同性による警備が必要なケースなど、業務の性質上性別を特定せざるを得ない場合は例外として認められています。
参照:企業において募集・採用に携わるすべての方へ男女均等な採用選考ルール|厚生労働省(PDF)
求人募集や採用選考において、年齢を理由とした応募機会の制限は原則として認められていません。
「35歳未満の方」など特定の年齢層を対象とする表現だけでなく、「若手歓迎」など年齢を直接示していない表現であっても、特定の年齢層を求めていると受け取られる可能性があります。
求人広告では、特定の年齢層ではなく、業務に必要な経験やスキル、求める人物像を基準に表現することが重要です。
なお、長期勤続によるキャリア形成を目的とした募集など、法令上の例外事由に該当する場合は年齢制限が認められることがあります。ただし、適用には一定の要件があるため、年齢条件を設定する際は事前に確認しましょう。

求人広告には、職業安定法に基づき、必ず記載しなければならない項目が定められています。
ここでは、求人広告に必ず記載する項目のルールについて解説します。
求人広告には、職業安定法第5条の3に基づき、業務内容や賃金、就業場所など基本的な労働条件を必ず記載しなければなりません。
これらの項目が抜けていると、求職者が労働条件を十分に理解できないまま応募してしまい、入社後のトラブルにつながるおそれがあります。
主な必須記載項目には、以下のようなものがあります。
これらの情報が不十分なまま求人を出してしまうと、入社後に「聞いていた話と違う」というトラブルの原因になるため、求人作成時には上記の項目がすべてそろっているか確認しましょう。
2024年4月1日に施行された改正職業安定法施行規則等により、明示すべき項目がさらに追加されています。
入社時点の条件だけでなく、契約期間中に想定される将来の働き方の見込みまで開示が求められるようになったためです。
具体的に追加が必須となった項目は以下の通りです。
既存の求人テンプレートを使い回している場合は、この改正内容が反映されているか、今一度見直しておきましょう。
時間外割増賃金をあらかじめ決まった金額として毎月の給料に含めて支払う仕組みを、固定残業代といいます。
この、固定残業代を導入している場合、求人広告には透明性が高く正確な記載が義務付けられています。
「月給〇万円(固定残業代含む)」とだけ記載すると、基本給がいくらなのか、何時間分の残業代が含まれているのかが求職者に伝わりません。
固定残業代を記載する際は、次の3点を明示する必要があります。
これらの項目をあいまいにしたまま求人を出すと、応募者に実際の給料の内訳が正しく伝わらず、入社後のトラブルにつながるおそれがあります。

求人広告では、問題ないと思った表現が、法令違反に該当してしまうケースがあります。ここでは、とくに実務で注意したい7つのNG表現とその言い換え例を紹介します。
男女雇用機会均等法により、性別を限定するような職種名や、男女どちらかを優遇する表現の使用は禁止されています。求職者が性別を理由に応募をあきらめてしまう可能性があり、機会の均等を損なうためです。
たとえば、以下のようなNG表現がある場合は、OK表現に言い換えるようにしましょう。
| NG表現 | OK表現 |
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職種名や歓迎条件を書く際は、性別を連想させる言葉が入っていないか、確認する必要があります。
労働施策総合推進法により、「35歳まで」のように具体的な年齢で応募資格を制限する表現は、原則として違法です。
年齢を直接的な理由にしていなくても、「同年代のスタッフが多いため」といった実質的に年代を制限する表現もNGに該当します。
年齢差別となるNG例と言い換え表現は以下の通りです。
| NG表現 | OK表現 |
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年齢を直接的な理由にせず、業務に必要な経験や求める人物像で表現しましょう。
参照:厚生労働省|労働者の募集及び採用における年齢制限禁止の義務化に係るQ&A
応募者の能力や適性と関係のない、国籍や出身地、居住地などを理由に採否を決める、または条件を設ける行為は職業安定法等で禁止されています。
こうした表現は、基本的人権の侵害にあたるおそれがあるためです。
求人広告に記載する場合は、次のように業務上必要な条件として書き換える必要があります。
| NG表現 | OK表現 |
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選考では特定の層を優遇するのではなく、あくまで業務に必要なスキルや経験を基準にした、公平な記載を心がけましょう。
「給与応相談」「詳細は面接にて」といった、労働条件を求職者が判断できないあいまいな表記は、法律で定められた明示義務を果たしていないとみなされます。
資格が必須なのか実務経験まで必要なのかが不明確だと、応募者を混乱させ、ミスマッチの原因になるため注意が必要です。
| NG表現 | OK表現 |
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求人広告の情報は、誰が読んでも同じ意味に受け取れる表現を心がけましょう。
業務の遂行に直接関係のない容姿や家族構成などを、採用の条件として記載する行為は、厚生労働省が定める公正な採用選考の原則に反します。
こうした記載は就職差別につながるおそれがあり、求人媒体の審査を通過できない可能性も高くなります。
次のように、業務に関係する条件として言い換えましょう。
| NG表現 | OK表現 |
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実態としては支給されない最高額の給与を基本給のように見せかけたり、休日日数を実際より多く記載したりする行為は、職業安定法違反にあたります。
たとえば、正社員登用を見越した契約社員の募集であるにもかかわらず、最初から「正社員募集」と偽って掲載する行為はルール違反です。
求人票の内容は、あくまで実際の労働条件に基づいて正確な数値や情報を記載しましょう。
他社の求人原稿の文章や、インターネット上の画像を無断で自社の求人広告に使用する行為は、著作権法違反にあたります。
魅力的な求人を作りたい気持ちから、つい他社の表現を参考にしすぎてしまうケースが見られますが、文章や写真には著作権が存在します。
フリー素材の画像やイラストを利用する場合も、必ず利用規約を確認したうえで使用しましょう。可能であれば自社で撮影したオリジナルの写真を使うのが望ましいです。

求人広告では、年齢や性別を条件とする行為は、原則として法律で禁止されています。一方で業務の性質によっては、例外として認められるケースもある点は押さえておきましょう。
ここでは、どのような場合に年齢や性別を条件にできるのか、代表的なケースを紹介します。
年齢制限は原則として禁止されています。ただし、労働施策総合推進法施行規則により、特定の事由に該当する場合は例外として上限などの設定が認められています。
例えば、長期勤続によるキャリア形成を目的として若年者を募集する場合などが例外事由に該当しますが、期間の定めのない雇用契約であることや職務経験を問わないことなど、法令で定められた要件を満たす必要があります。
この例外を適用する際は、求人票にその理由を明記する必要があるため、掲載前に要件を満たしているか確認しましょう。
男女雇用機会均等法では性別による制限を禁止しています。一方で、業務の性質上、例外的に特定の性別のみを募集できるケースがあります。
たとえば、以下のような職務の場合は性別制限に該当しないと判断されるケースが一般的です。
また、過去の格差を是正するための積極的な措置(ポジティブ・アクション)として、募集職種における女性の割合が4割を下回る場合に限り、女性を優先して募集・採用する措置が認められています。

求人掲載後や選考過程で、給与や勤務地などの労働条件を変更する場合は、変更内容を求職者に明示する必要があります。
たとえば、当初提示していた勤務地や業務内容を変更する場合は、変更が確定した時点で速やかに伝達します。メールや書面など、内容を確認できる形で通知しておくとよいでしょう。
変更内容の伝達方法としては、次のような方法があります。
| 方法 | 内容 |
| 変更内容をまとめた変更通知書を交付する | 変更箇所を整理した書面を交付する |
| 労働条件通知書を修正する | 変更箇所を明示したうえで再提示する |
求人広告を掲載した後でも、労働条件に変更が生じた際は誠実かつ迅速に対応し、求職者との信頼関係を損なわないよう注意しましょう。

ここでは、求人広告のルールに違反した場合の罰則・行政対応について以下の観点で解説します。
職業安定法では虚偽の求人表示を禁止しており、違反した場合は罰則の対象となります。
具体的には次のようなケースが、虚偽表示にあたります。
虚偽の求人表示は職業安定法違反となり、6カ月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金が科される可能性があります。
求人広告のルールに違反した場合、内容によっては行政指導や求人媒体による掲載停止の対象となることがあります。また、悪質なケースでは企業名が公表される場合もあります。

ここでは、求人広告のルールに関するよくある質問を紹介します。
「未経験歓迎」との記載自体に問題はありませんが、年齢制限と組み合わせる際には注意が必要です。
「未経験歓迎の35歳未満」のように年齢条件を付ける場合は、労働施策総合推進法の例外事由の要件を満たす必要があるためです。
また、「未経験歓迎」と書きながら、応募資格欄に「〇〇の業務経験3年以上」と記載すると、内容に矛盾が生じ、求職者とのトラブルの原因になります。
求人広告に「大卒以上」「高卒以上」といった学歴の条件の記載自体は禁止されていません。学歴の制限は、労働基準法や労働施策総合推進法といった法律で禁止されているわけではないためです。
ただし、厚生労働省は「公正な採用選考の基本」として、応募者の適性と能力に基づいた採用を推奨しています。
業務の遂行に直結しない学歴制限は、優秀な人材を取りこぼす原因にもなりかねないため、本当に必要な条件か見極めが大切です。
求人募集時には、試用期間の有無や期間を明示する必要があります。試用期間中と本採用後で賃金や待遇が異なる場合は、それぞれの条件を明確に記載しなければなりません。
特に給与額や手当の支給条件が異なる場合は、本採用後の条件と区別して記載しましょう。
求人広告を作成する際は、労働条件の明示や年齢・性別に関する表現など、法令上のルールを押さえておく必要があります。
特に2024年4月以降は「業務内容・就業場所の変更の範囲」など新たな明示事項も追加されているため、従来の求人票や募集テンプレートをそのまま使用する際は注意が必要です。
また、虚偽や誤解を招く表現は職業安定法違反となる可能性があります。掲載前には、労働条件や求人内容が実態と一致しているか確認し、最新の法令や掲載基準に沿った求人広告を作成しましょう。
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