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少子高齢化による生産年齢人口減が止まらず採用難が続いています。しかし、企業の採用がうまくいかない原因は、市況や少子高齢化のせいだけでしょうか。
確かに転職市場の動向は採用活動に大きな影響を与えますが、採用活動に問題があることも原因のひとつです。
複雑化している状況に、対策がなかなか追いつけないこともあると思います。 この記事では、採用がうまくいかない理由とその対策について解説します。
採用がうまくいかない原因は、大きく3つ挙げられます。
採用活動は、以下の流れで行われます。
まず、このフローにおいて、応募数や通過者数などの数値が記録されていないケースが非常に多く見られます。数値が記録されていないと、分析ができず、感覚的な印象に左右されやすくなります。
定量的・定性的な分析はとても重要で、採用活動のどこにボトルネックがあるのか、その原因は何か、どんな対策が必要かを見極めなければなりません。
重要なのは、数値が変動する要因を把握することです。単に数値の上下だけを見ても意味がありません。数字は取っていても、分析が不十分であれば、採用活動全体を俯瞰し、原因候補を洗い出して検証・分析することで、採用活動の質を向上させることができます。
働き方に対する意識の変化や、SNSなどIT技術の革新によるコミュニケーション手段の多様化により、求職者のニーズや行動特性を把握するのはますます難しくなっています。
ターゲット層の行動特性の理解は大切で、媒体選びや採用フロー、待遇見直しなどにとても役立ちます。従来どおりの手法を続けていると、気づかないうちに「以前よりも応募者が減っている」「採用に時間がかかる」「採用コストが増加している」という事態に陥るリスクが高まります。
優秀な人材の獲得はどの企業も望んでいます。人材争奪で優位に立つには、ターゲット層をよく知ること、そしてターゲット層にあわせた対策を打つことが重要です。
採用計画に問題があるケースも見受けられます。たとえば、スケジュールや予算に無理がある場合や、市況の予測が甘く、経営戦略との整合性が取れていないなど、基本的な計画が不十分であれば、採用活動がうまくいくことは難しいでしょう。
特に中途採用の場合、経営目標や現状の事業状況を考慮して、採用人数やポジションを決定する必要があります。また、それぞれのポジションに求めるスキルが異なるため、母集団形成や採用フローをポジションごとに検討しなければなりません。
さらに、採用戦略や計画が欠けている、または「いつもと同じやり方を続けている」という状況も問題になりやすいです。転職市場は常に変化しており、競争の激化や求職者の情報収集方法の進化により、これまでの採用手法が通用しなくなることもあります。
採用計画を立てることで、振り返りや過去との比較が可能になり、必要な予算や工数も見積もることができます。「気づかないうちに採用単価が上がっていた」「採用が思うように進まず、現場や経営陣から追及されるが、説明できない」という状況を避けるためにも、採用計画や戦略についてしっかりと考えることが重要です。
マンパワーグループでは、55年以上の人材ビジネスを通し培ったノウハウを活かし、採用代行サービスを提供しています。
募集から入社までのフルサポート 媒体管理や応募者とのやり取りなどの事務代行 会社説明会の企画・運営 面接官代行 など お客様の課題に合わせて、最適なプランを組み、採用のサポートを実施しております。
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多くの企業では、母集団を十分に形成できていないという課題が見られます。母集団形成がうまくいかない代表的な要因は、以下の5つです。
現在の採用チャネルのパフォーマンスや費用対効果、各チャネルの特性をしっかりと分析することが必要です。限られた予算をどこに投入するかが、母集団形成に大きな影響を与えます。
ターゲットとする層は、どのチャネルであれば応募が来るのかをしっかり見極めることが大切です。極端な例ですが、派遣やパートアルバイトが多く登録している求人広告媒体に管理職募集をかけても集まりません。
採用チャネルは、募集ポジション毎に精査し選択していくべきですが、「とりあえず大手の求人広告媒体に出しておこう」となっている場合は要注意です。母集団形成ができていないのに、媒体費だけがかさむという事態に陥りやすくなります。
採用担当者の人数や工数が不足している企業では、母集団形成の施策が不足しているという問題がよく見られます。採用担当者が多忙で、新たな採用手法を導入できなかったり、既存の施策を改善する余裕がない状況に陥りがちです。
例えば、企業の知名度が低い場合、ホームページの採用情報掲載と求人広告だけの母集団形成だけでは、反響が期待できません。専門職種や人気のある人材の採用は特に、このような待ちの姿勢の手法だけでは応募は期待できません。ダイレクトリクルーティングやスカウトなど、企業から候補者にアプローチをする攻めの施策も検討するべきです。
母集団形成の種類については、「採用における母集団形成とは?15の方法と注意点」で詳しく解説しています。
求職者は、募集要項を含む求人内容からしか業務内容を知ることができません。まず、ここで興味を引かなければ応募はなく、内容が不十分では訴求力も弱まります。
問題なのは、求職者がそう感じていてもそのことを企業が把握しにくいことにあります。「もっと内容を教えてください」「わかりにくいです」と接触してくる人は稀で、たいていの場合は、無言で求人ページを閉じてしまいます。
採用ページに掲載する写真や文言の内容など、反応率などを確かめながらPDCAを回さなければいけません。求職者目線で施策を考える方法は、採用マーケティングとよばれ注目されています。採用マーケティングについては「【事例付き】採用マーケティングとは?メリットと導入手順を解説」で詳しく解説しています。
競合に比べて雇用条件やキャリアの選択肢が見劣りする場合、応募者が少なくなるのは当然です。
ここで注意すべきは「競合」の定義です。営業や製造部門など、製品や業界に関する知識が重視される職種では、競合は主に同業他社になるでしょう。しかし、経理や人事、ITなど、同業種や同業界の経験よりも同職種でのスキルが重視される職種では、競合は同業他社だけとは限りません。
競合情報で把握しておきたいこと
ターゲット層からの応募がないのは採用チャネルの選択を誤っている可能性があります。求人広告で募集条件を明示しているにも関わらず、要件に合わない求職者がトライしてくることはよくあります。ターゲット層がいるチャネルであれば問題ないのですが、そうでない場合、母集団の質が低下しやすくなります。
例えば、人気の職種で1名募集をする場合などは、採用媒体を利用して広く募集をするよりも、人材紹介サービスを利用したほうが効率的に採用できたりします。採用手法の特徴をしっかり踏まえて、チャネル選びを行いましょう。
母集団の数は確保できているものの、ターゲット外の応募が多いため、事務作業の負担とリクルーティングコストばかりが増加してしまうという課題がよく見られます。ここでは、代表的な4つの問題を取り上げます。
ターゲットやペルソナを設定していない、あるいは長期間見直していないなどの問題がある場合、ターゲットに刺さる訴求ができていないのかもしれません。
もしくは、求める人物像と要件がアンバランスな設定になっている可能性もあります。例えば、若年層がほしいのに人材要件に「豊富な経験とスキル」を第一にあげてしまっていると、反響があるのはミドル層中心からになってしまいます。優先順位をクリアにし、募集内容でしっかり伝える必要があります。
⇒関係者との認識違いを防ぐ「人材要件チェックシート」をダウンロードする
ターゲットやペルソナをしっかり設定しても、そもそも転職市場にどのくらいの求職者がいるのかを調査していないケースもあります。経験者が少ない職種では、転職市場に求職者がほとんど出てこないこともありますし、一般的な職種でも条件を厳しくしすぎると求職者を見つけにくくなります。
例えば、「20代で経験5年以上、○○資格保有者」と設定した場合、以下のような市況を考慮する必要があります。
該当する人材が転職市場にあまりいないのであれば、いくらよい条件で求人広告を出したとしても、応募は期待できません。
ターゲット外からの応募が多い場合、求人内容が求職者にうまく伝わっていない可能性があります。必須条件と望ましい条件を明確でわかりやすい表現で記載しなければ、無駄に応募の幅を広げてしまうことがあります。
また、ターゲット層がキャリアへの関心が高い、働き方にこだわりがある、といった場合、そのような情報を載せておかないと興味を持たれないため、応募にされないといったことが起きます。
多くの人材紹介会社とやり取りをしていると、同じような質問に対して個別に回答しなければならず、どうしてもコミュニケーションコストが増大し、情報伝達の不備や連携不足が生じやすくなります。採用担当者の代理として候補者を探し、募集ポジションや企業の魅力を伝え、動機付けを行うのは人材紹介会社のコンサルタントです。彼らが自社の採用担当者とどこまで共通の認識を持てるかが、スクリーニングの質を左右します。
詳しくは、「なぜ人材紹介会社は良い人材を紹介してくれないのか?」で解説しています。
⇒煩雑になりやすい人材紹介会社とのやり取りや現場調整をサポート「エージェントコントロールサービス」を見てみる
選考過程に課題があることも多くあります。
下記のように、応募から入社までの採用フローが応募者目線で設定されていない場合、選考や内定の辞退につながりやすくなります。
優秀な人材ほど多くの企業から内定を受けるため、内定通知の回答期限が設定されていることがほとんどです。リードタイムが長すぎると他社の内定を優先されてしまい、結果的に優秀な人材を逃すことになります。採用フローの改善には社内調整などの労力が必要ですが、しっかりと取り組むべき課題です。
求人広告や人材紹介会社から聞いている話と、面接での説明に乖離があると面接辞退が起きやすくなります。希望条件と合致しないことによる辞退以外にも、「応募者集めに書いたのかな?」といった不信感を持たれる恐れもあります。
面接官は応募者を評価する立場であると同時に、企業の顔としての役割も担っています。現在注目されている採用CX(キャンディデイトエクスペリエンス)において、応募者の体験が辞退率に大きく影響することがわかっています。
面接官がこのような言動をとっていると、企業自体の悪印象にもつながります。マンパワーグループの調査 では、採用活動中に受けた体験がその企業の製品への購買意欲に影響を与えていることが明らかになっています。
各選考工程における評価基準がバラバラだったり、関係者間で認識のズレが生じている場合、通過率(合格率)に影響が出ます。書類審査や人事面接を通過しても、部門面接での通過率が著しく低下するケースでは、部門が本当に求める人材要件や評価基準を正確に把握していない可能性があります。
ただ、採用担当者の立場からすると、部門が求めるものと就業規則に即した雇用条件等のバランスが取れず、条件を緩和せざるを得ないということもあるでしょう。どこを妥協するのか、改善できるのかを現場と確認し合うことは重要です。
最近の採用活動では、内定辞退率の高さが大きな課題となっています。
面接は応募者を評価するだけの場ではなく、応募者に自社の方向性や業務内容、入社後のキャリアプランを理解してもらい、「この企業に入りたい」と感じてもらう場でもあります。
応募者が最初は第一志望だったとしても、複数社の選考を受ける中で他社の社風や方針に魅力を感じ、第一志望から脱落してしまうことがあります。
採用面接の際、応募者が聞きたいことすべてを確認できているわけではありません。また、面接官の発言に対して少しでも不安や疑問を抱く場合があります。
特に新卒採用では、正社員として働く経験がなく、「自分にできるだろうか」という不安が起こりやすいものです。適切な内定者フォロー施策を実施することで、情報不足や認識の違いによる辞退を防ぐことが可能です。
仮に、内定辞退が発生しそうな状況でも、早期に把握できれば、追加募集などのバックアップ策をあらかじめ検討することができます。
雇用条件の改善は既存社員とのバランスも考慮しなければならず、難しい課題ですが、競合他社の雇用条件や待遇を把握することは重要です。
給与や福利厚生だけでなく、在宅勤務や産休・育休の取得のしやすさ、キャリアアップの支援など、競合他社と比較・確認することで、自社の条件に改善の余地があるかどうかを検討し、競合にはない自社の魅力を積極的にアピールするきっかけになります。
採用は入社がゴールではなく、入社後に期待したパフォーマンスを発揮し、長く定着できることが重要です。早期退職が増えると、無駄になるのは採用費や工数だけではありません。現場でのOJTや社員教育にかかるコストなど、影響は広範囲に及びます。また、新卒採用の場合、平均勤続年数や3年以内の新卒採用者数・離職者数などの情報をホームページや求人表に記載する必要があるため、企業イメージにも大きな影響を与えます。
早期退職の理由は主に3つです。
面接で聞いていた仕事内容と配属後の仕事内容が異なる、社風が期待と全く違うなどの「リアリティショック」(イメージと実態のギャップ)は、早期離職の大きな原因です。
マンパワーグループが2020年に発表した調査では、約50%の人が入社後に入社前とのギャップを感じていると回答しています。
調査データ:入社前の期待と入社後の現実に、5割以上が「ギャップ」を実感。入社前に聞いておけばよかった!と思ったこととは?
▼回答内容を一部抜粋
リアリティショックは少なからず起こるものではありますが、放置していると離職率の改善が難しいばかりではなく、高くなっていっていまいます。
面接時の話と入社後の実態があまりに違う原因のひとつは、面接官が「現場を理解していない」ことです。ここでいう現場というのは、部門などの大きなくくりではなく、課やチームといった小さな単位です。
採用実務を行っている人事担当者や、部門など大きな組織の責任者が面接を行う場合、募集ポジションの担当業務や期待すること、課やチームの雰囲気などを含めたリアルな声を知らず、応募者が知りたい情報と面接官が伝えられる情報に差がうまれるということもあります。
リアリティショックの原因となるギャップは、以下の点について面接官が現場のリアルや応募者の本音を把握できていないことによって生じている可能性が多分にあります。
応募者向けの転職情報には「経営層や人事担当者には企業のことを質問し、部門担当者には仕事内容のことを質問するように」と書かれているものもありますが、どのような立場であれ、面接官は自分の言葉で自社や仕事について説明し、目の前の応募者に対し実際に自社で働く姿をイメージさせることができるかが大切です。
入社してほしいがために、自社や業務の良い側面だけを伝えると、就業後の大きなギャップとなり、離職やモチベーションの低下、エンゲージメントの問題を引き起こしてしまいます。
動機付けや魅力付けのために、良い面だけを伝えたい気持ちは理解できます。ただ、自社に都合のよい情報ばかりを伝えると、「胡散臭い」「なにか裏があるのでは」と信頼性が低下するおそれがあります。そもそも、実態とかけ離れてしまっていたり、良い面を覆すようなネガティブ要素があるようでは、元も子もありません。
ネガティブに感じられる情報も、「こういった課題があるからこそ一緒に頑張れる人を求めている」と企業担当者の口から正直に伝えていれば、心の準備ができますし、その点を納得した上で自分は入社したという気持ちが早期離職の抑止につながります。
ただし、ネガティブな情報を提示するばかりでは「改善する気がない」「魅力がない」職場だと受け止められて終わってしまいます。
「現状の課題にはこのような取り組みで解決しようとしている」などの課題に向き合う誠実さや、「この大変さは人によってはネガティブに受け止められてしまうかもしれないが、それに向き合うことで成長・スキルアップしている社員が多数いる」といった情報のバランスに配慮した伝え方も考慮する必要があります。
募集ポジションの役割や、入社後すぐに発揮してもらいたいパフォーマンス、将来的に担ってもらいたいことやキャリアパスについては、特に誤解の生じる余地がないよう正しく伝えなければなりません。
このような考え方は、RJP理論とよばれ注目されています。RJP理論については、「【RJP理論】リアルな情報開示が採用ミスマッチ防止と信頼獲得に効く理由」で詳しく解説しています。
良い人材を採用できても、受け入れ体制や教育体制に問題があれば早期離職の原因になります。多くの転職経験者が感じているように、同じ業務内容でも企業によってルールや手順は異なることが多いものです。電話応対ひとつでも、企業ごとに特徴があります。
経験豊富でひとりで仕事を回していける人材ならともかく、未経験者や経験が浅い人に早くひとり立ちしてもらい、企業や業務になじんでもらうためには、フォローアップなど入社当初の受け入れ体制はしっかりしておきたいところです。
同じポジションや同一部署で離職が頻発する場合、ハラスメントの可能性も視野にいれて調査を行うべきです。ハラスメントは、必ずしも上司から部下へというわけではなく、同僚間や部下から上司でも発生していることもあります。
ハラスメントを放置した場合、SNSなどで情報が広がり、企業イメージに悪影響を与え、母集団が作れない、辞退率が上がるといった問題に発展しかねません。
また、ハラスメントまではいかなくても、「放置されてしまった」「人間関係に問題がありそう」「チームの雰囲気が悪い」といったネガティブな印象も早期退職のきっかけとなります。
採用の失敗を防ぐための施策を5つご紹介します。
最初に取り組むべきは、採用活動の可視化です。どのフェーズで目標と乖離が生じているのか、悪化している数値はないか、逆に改善の兆しが見られる部分はどこかを数値化することが非常に重要です。
採用における歩留まりとは、次の工程へ進む人数の割合を指します。応募に対して、どのくらい書類審査を通過し、どのくらいが辞退したかなどを数値化したものです。
<指標の一例>
※上記を採用チャネル別で出すなど、分析の指標とする
<その他指標例>
これらを数値化しておくと、採用が滞った時にボトルネックとなっている問題点が発見しやすくなります。この数値を可視化できていない場合、通過率や辞退率に気づくのが遅れ、原因の特定が難しくなり、計画していた採用人数の達成が困難になってきます。 採用活動の可視化・数値化は、採用活動の品質向上の第一歩です。
前述の通り、数値化は重要ですが、単に数値を取得するだけでは十分な分析とは言えません。目標との乖離や時系列での変化に対して「上がった・下がった」だけを見ても分析にはなりません。数値の裏側には「人の動きや心理」があります。 その原因が何かを想定し、常に対策を立てていくことが重要です。
新卒採用で春採用、夏採用と分けて行っていた企業でそれぞれの通過率や内定承諾率を見ていたら、夏採用の方が良かったということがあります。
当初、夏には次のインターンシップや選考に向けての準備もあるので、春採用で終わらせたいという採用側の都合がありました。
しかし、採用コストがあまりかけられず学生への知名度も低く、春採用の段階では第一希望の企業にはなりくいという現実もあったことから、夏採用に注力した結果、短期間の間に適切な採用コストで新卒採用に成功しました。
採用率が悪いため、適性検査の選考基準を少し引き下げ、合格率を上げたところ、採用率は上昇。しかし、離職率が高まってしまったという事例があります。
対策として、内定後と入社後にフォロー体制の強化を実施。合格率を維持しながら、離職率の引き下げに成功しました。
上記では、マンパワーグループの採用代行サービスによる改善サポートの実例を紹介しましたが、数値から原因のあたりをつけ、対策を講じ状況をまた分析する、といったPDCAを回していくことで、採用活動の質は上がっていきます。
PDCAは一度で終わるものではなく、最適化するには何度もトライを繰り返す必要はあります。ただ、転職市況や求職者の行動特性は、以前に比べて早いスピードで変化していきます。それは数値に現れていますので、しっかりと分析からのアクションを回していきましょう。
施策を立案する際に重要なのは、適切な人員配置です。施策を実行するには、ある程度の時間確保や工数が必要です。原因を特定し、施策を立案しても、実行する採用担当者が日々の業務で手一杯であれば、そもそも人数が足りず、施策は形だけになりがちで、実行力や品質にも影響します。
例えば、ITエンジニアや経験豊富な営業などを募集する場合、「待ち」の募集方法では、スカウトなどで他社へ人が流れてしまい、ターゲット層からの応募がないといった問題がおこります。その対策として、ダイレクトリクルーティングの導入を決定したとします。
「攻め」の母集団形成方法であるダイレクトリクルーティングは、結果がでるまでの工数と時間が思った以上にかかる手法です。今の人員で対応できるか、できない場合は採用代行などの外注の導入は可能かなど、現状を鑑みたうえでの検討が必要です。
採用活動やその分析を効果的に行うためには、デジタルツールの活用が欠かせません。デジタルツールを活用することで、感覚的な判断ではなく、客観的なデータに基づいた精度の高い採用活動を実現できます。
また、ツールの活用により、ルーティン業務の自動化が進み、採用担当者はより戦略的な業務に時間を割けるようになります。
近年、HR分野ではデジタル化が進んでおり、さまざまなツールを活用することで採用プロセスの効率化やデータ分析が進化しています。ここでは、代表的なツールとその活用方法を紹介します。
ATSは、応募者情報を一元管理し、採用プロセス全体を可視化・効率化するためのツールです。履歴書や面接記録の自動管理、面接日程の調整、自動通知機能などを備えており、手動の煩雑な作業を軽減します。
応募者ごとの進捗状況をリアルタイムで把握できるため、ボトルネックの特定や迅速な対応が可能です。
例えば、複数の採用チャネルから集まった応募者情報を自動的に収集し、書類選考から内定までの進捗を数値化してモニタリングが可能に。可視化されたデータをもとに、採用プロセスの最適化を行うことができます。
応募者体験(CX)の向上には、チャットボットやLINEなどSNSの導入も採用成功率の改善につながります。
AIを活用したチャットボットは、24時間自動で応募者からの問い合わせ対応が可能であり、エントリーシートの送信や進捗状況の確認など、応募者の利便性を向上させます。
採用活動の品質向上のために、一時的に採用代行や採用コンサルティングなどの外部サービスを利用する企業も増えています。
市況の変化による採用活動の多様化は、採用担当者の業務量を増大させ、コア業務に十分に時間をかけることができない状況を引き起こしており、その負担を軽減させるためです。
採用担当者の担当する業務は幅広くスピーディーに対応する必要がある業務も多くなりますが、採用担当者は、現在の自社理解を深めるだけではなく未来にも目を向けることが大切です。
ノンコア業務さえ手放すことができれば、採用担当者がじっくり採用活動の改善に取り組みやすくなります。
また、採用に特化した専門家による外部サービスを導入し、コア業務を含めた採用活動の問題解決を一気に推し進める方法もあります。
第三者の視点により、自社では気づけなかった課題などを早期に把握し、これまで実施できなかったような対策が講じられるのが外部サービスを利用する大きなメリットのひとつです。
採用活動は、社会の変化や市況、求職者の動向などさまざまなものに影響されます。当たり前だと思って続けていた手法が、いつの間にか結果を出さないばかりか、コスト増の原因になっていることも珍しくありません。
採用難でも採用を成功させる企業は、採用活動を適宜見直し、PDCAをしっかり回しています。人の持つ能力も企業の資本だと捉える「人的資本」の考え方が注目されているように、業績や企業の未来は人材にかかっているといっても過言ではありません。それだけに、採用は企業の根幹にかかわる業務と言えます。多岐にわたる業務で大変ではありますが、成功した時の影響も大きいため、ぜひ一度採用業務の振り返りと分析を行ってみてください。
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