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経営の多角化の進行や市場競争の激化、働き方改革の浸透などにより、企業では売り上げ・利益の増大だけでなく、業務効率化やコスト削減が求められるようになっています。
こうした経営の効率化の動きや、目まぐるしく変動する市場環境への有効な対応策として、アウトソーシングの活用が挙げられます。すべての業務を自社だけでカバーするのではなく、積極的に外部を活用することで、コア業務に集中できる社内体制の構築から業務負担の軽減、コスト削減が実現できます。現在では、企業の規模を問わず、アウトソーシングを活用する企業が増えてきました。
ここではアウトソーシングの効果的な活用方法や対応業務について解説します。
アウトソーシング(Outsourcing)とは、字面では「外部調達」を指しますが、自社で賄っていた業務の一部、またはすべてを外部に委託して業務の効率化を図る経営手法のひとつです。 アウトソーシングはコスト削減だけではなく、アウトソーシング先の専門技術を積極的に活用することで経営体質の強化を目指すといった活用法があります。
アウトソーシングの活用理由は、企業によってさまざまです。例えば、会社の規模が大きくなりノンコア業務が増えたので、コア業務を内製化しノンコア業務を委託することで経営体質を強化する、というように自社の状況に応じてアウトソーシングを活用しています。
また、アウトソーシングの形態には、経理の給与計算や決算書作成のように一部の業務をアウトソーシングするパターンと、総務部門を一括で外部に委託するといった当該業務全体を委託するパターンがあります。目的や予算に応じてアウトソーシングの形態を使い分けることが可能です。
自社だけで業務を遂行するのではなく、上手にアウトソーシングすることで、生産性の向上やコスト削減が期待でき、企業の業績向上につながります。
ビジネス環境の変化が早くなり、すべての業務を自社のリソースで賄うのはリスクが高くなっています。新規事業の推進のために新たに人材を確保しても、数年で事業の方向性を変更せざるを得ない状況になることも珍しくありません。
このような投資リスクを抑えるためにもアウトソーシングは有効です。また、アウトソーシングできる分野が広がったことも活用する企業が増えた理由のひとつです。自社ではカバーできない分野を外部の専門技術で賄うために積極的にアウトソーシングする企業が増えてきました。
アウトソーシングを活用する企業が増えるに伴い、各企業の状況や目的に応じて使い分けることができるさまざまなアウトソーシング手法が開発されています。
BPOとはビジネス・プロセス・アウトソーシングの略で、企業の業務プロセスを一括してアウトソーシングすることで業務効率化を高める、アウトソーシングの手法の一つです。
BPOにおける主なアウトソース業務事例は、自社製品に関するコールセンターの開設やECサイトの運営、管理部門や間接部門の事務業務(会計処理や給与支払など)など、企業のコア業務を支える周辺事業に関する業務(ノンコア業務)が挙げられます。
企業の目的に沿った業務遂行ができる適切なアウトソーサー(委託先)を選定し、業務設計、実行、運用までを一括で委託することで、コア業務・事業へ注力できるのがメリットです。
ITOは、インフォメーション・テクノロジー・アウトソーシングの略です。IT関連の業務をアウトソーシングすることを指します。
例えば、デジタルマーケティングの設計や顧客データベースの構築、営業システムの構築などが挙げられます。企画から運用まで一括でアウトソーシングすることも可能ですし、ハウジングやホスティングなど一部の業務のみを委託することも可能です。
シェアードサービスとは、グループ内の間接部門を一か所に集約し共有することで効率化を図る手法です。間接部門とは本業を支える部門のことで人事や財務、経理等が挙げられます。
一例としては、複数のグループ企業からなる企業が、人事や財務機能を本社に集約していくケースが見られます。標準化して集約することで業務を効率化することができます。
KPOとはKnowledge Process Outsourcingの略で、高度なデータ分析や専門知識を必要とする企業のコア情報を扱う業務アウトソーシングを称する言葉です。
例えば、市場調査などのマーケティング分析や法務業務、業務プロセス改善のコンサルティングなど、非定型的かつ高度な判断が必要とされる業務がそれにあたります。
企業がアウトソーシングをする理由は、これまではコストを抑えることや内製化するための投資のリスクを軽減することが主なものでした。しかし近年では、コストダウンや投資リスクの軽減に加えて、外部の専門技術を積極的に活用することで経営基盤を強化していく戦略的なアウトソーシングが広がっています。アウトソーシングを活用するメリットを見ていきましょう。
アウトソーシングで業務を外部に委託すれば、従業員はその分の工数を減らすことができ、浮いた時間は自社にとってのコア業務(売り上げ・利益を直接生み出す業務や戦略立案など)に集中させることができます。
例えば、受注が増えてきて従業員の業務を顧客との折衝を中心にしたいので、周辺業務はアウトソーシングを活用する、というケースがあります。また、コア業務に集中できるということは、競争優位を築くための源泉であるコアコンピタンス(他社に真似できない独自の優れた能力)を強化しやすくなります。
外部の専門機関は当該分野の優れた知識・経験を保有しています。その知識・経験を活用することで、自社だけでは実現できなかった優れた品質・サービスを生み出すことができます。また、優れたノウハウを学んで自社に取り込むことができるというメリットもあります。
外部の専門機関は知識だけではなく、業務を処理するスピードにもたけている場合が多く、効率的に業務に対応することができます。
社員の場合、業務量や売上等に比例して人件費を変動させることが難しいですが、アウトソーシングの場合は、変動を加味した委託費で契約することが可能なため、結果的にコストを削減しやすくなります。また、アウトソーシングでは業務を委託する期間のみの支払いとなる点もコスト削減につながります。
アウトソーシングは外部に業務を委託することになり、新たな設備の導入を必要としません。そのため、設備の陳腐化リスクを防止することができます。
アウトソーシングするということは、業務を外部に委託して単純化させるという側面もあります。手掛ける業務が単純化されれば、管理がしやすくなります。
若年労働人口の減少で、人材不足が問題となっています。アウトソーシングを人材不足解消のための戦略として活用する企業も増えています。
好景気時の企業は余裕のある人員確保ができていたため「社内でできることは社内で」行うことが主流でしたが、景気の悪化により最低限のヘッドカウントで事業運営を行う必要が高まり、「社外でできることは委託」する業務アウトソーシング化の流れが進みました。
アウトソーシングにより人員のスリム化や業務効率化が実施できてはいても外注費が発生することに変わりはありません。その他にも以下のようなデメリットがあると考えられます。
業務プロセスをアウトソーシングすると、その業務プロセスの実務を行う社員が社内にはいなくなります。アウトソースした当初はその業務の流れを理解する社員がいても、担当者の変更などによって、アウトソースした背景や目的を理解している人いなくなり、引継ぎが十分になされないとブラックボックス化してしまうリスクがあります。
フローチャートなどの仕様書や運用手順書といった業務が可視化されているアウトプットの保管や、状況把握ができるよう定例での報告会の設定など、状況把握のための手段を確保しておきましょう。
アウトソーシングによる費用削減は、アウトソーサーの設備や人員などのリソースを他社とシェアすることで実現しているという側面があります。
自社の基準で品質やセキュリティ等を担保するために、アウトソーサー側が独自にリソースを準備する必要がある場合には、その費用が委託料金に反映されてきます。
すべてを自社で行う場合のシミュレーション価格からどの程度費用対効果が出れば適正価格なのか、必要最低限の対応を行う場合の相場価格を基準に判断するのではなく、総合的に判断する必要があるでしょう。
人事や経理業務などをアウトソーシングする場合に、社員の個人情報や会計情報など、企業の機密情報を外部に預けることになります。商品カタログの制作をアウトソースする場合には、新製品情報を事前に伝えることもあります。
セキュリティ対策が必ずしも委託企業と委託先で同じレベルで行われているとは限らないため、委託契約を結ぶ前にはセキュリティ対策のレベルを充分に確認する必要があります。
そうした観点から、アウトソーシングする際にはサービスレベルについての合意書(SLA:Service Level Agreement)を結ぶとよいでしょう。SLAにおいては、必要な機能や品質の水準を客観的、定量的に計測可能な数値で表し、測定方法なども定義しておきます。発注する企業には、アウトソーサーの業務品質を明確化できるメリットがあります。
これまでのアウトソーシングは、開発関連の業務を外部に委託することを指す場合が多かったのですが、現在ではその対応業務も広がっています。事務業務を一括で委託したい、経理業務のうちデータの入力だけお願いしたい、など、自社の要望に応じて柔軟に選択できるようになりました。ここでは、アウトソーシングされることが多い業務について説明します。
受付業務や受発注業務、事務処理センターなどのアウトソーシングです。事務とひと口にいってもその範囲は広いため、自分たちの要望にきちんと対応できる委託先を見つけることがポイントです。「作業量が多く事務員が足りない」や「事務員が退職してしまって業務が追い付かない」などが課題になっている企業に向いています。
事務作業は業務ボリュームが多くなりがちで、属人化せざるを得ない作業も多く、業務効率の低下につながっています。また、このようなケースでは人的コストも想定以上にかかるものです。社内で対応しなくてもすむ定型業務をアウトソースすることで時間コストを削減し、その分をコア業務に割くことができます。
詳しくは「事務アウトソーシングを導入すべき理由と注意点」をご覧ください。
経理業務は、各部門の会計管理を通じて経営をサポートする企業経営の要となる業務のひとつです。企業の血液ともいえる"すべてのお金"の管理を担うことから、大量の事務処理や定期的なレポート作成など膨大な業務が発生します。しかし、経理のコア業務は事業の利益に関する分析や戦略の基礎固めではないでしょうか。精鋭社員がコア業務に注力できる体制づくりを目的としたアウトソーシングの効果が出やすい部門です。
経理のアウトソーシングには、記帳業務や年末調整、売掛金・買掛金の管理などがあります。事務機能のアウトソーシングの場合と同様に、アウトソーシングしたい業務を明確にしておくことが重要です。一般的には、経費精算やデータ入力といったノンコア業務をアウトソーシングする企業が多くなっています。
経理業務は、一定の知識・経験と細かく数字に向き合う姿勢が重要な業務です。そのため、人材を採用しても即戦力としては機能しにくく、外部の専門機関を利用するメリットが大きいと言えるでしょう。また、経理の仕事は一年中が繁忙期というわけではありません。アウトソーシングならそのときの状況に合わせて運用できる点も魅力です。
詳しくは「経理業務のアウトソーシングでバックオフィスの在り方が大きく変わる!」もご覧ください。
総務のアウトソーシングには、受付、メールルーム、文書管理、ファシリティ管理、防災関連、その他庶務(備品管理、名刺発注、車両管理、慶弔関連、会議室管理)などがあります。総務の業務は範囲が非常に広く、アウトソーシングすることで大きなコスト削減が期待できます。
直接利益につながる部門ではありませんが、会社にとってなくてはならない部門です。しかし業務範囲が広いうえに、一つひとつの業務に専門知識が要求されることが多く、アウトソーシングを検討する企業が多いのも特徴です。
IT業務はアウトソーシングのニーズが高い分野の一つです。企業のすべての業務は、いまやIT技術を使わずにはまわりません。優秀なIT人材の採用や育成には、時間もコストも必要ですが、アウトソーシングを活用すれば採用・育成にかかる時間やコストを削減することができます。
IT業務のアウトソーシングは、大きくシステムの企画・開発と運用保守に分けることができます。
企画・開発段階では、社内の業務の流れを把握・整理して、効率のよい業務が行えるようにシステムを設計します。 運用・保守においては、インフラの維持・メンテナンスに加えて、アプリケーションのアップデートや機器類のリプレース対応などを行います。
サイバー攻撃やシステム障害などのトラブルは24時間365日いつ起こるか予測ができません。トラブルを検知した際には迅速な対応が求められます。休日や夜間にも対応可能な人員配置は企業内の一部門として対応するには負担が大きいため、アウトソーシングが活用されています。
商品やサービスに関する注文・申し込みやお問い合わせへの対応、あるいは商品やサービスのご案内・アフターフォローを行う窓口を行うコールセンター業務を一本化することで、接客品質の標準化だけでなく、顧客からの問い合わせ内容を顧客情報として一元管理できます。
コールセンター業務をアウトソースすることで、窓口要員の採用や研修コストを抑えるだけでなく、社内では気づきにくい接客品質の向上も可能です。またクレーム情報が各部署にちらばることもなく、素早い対応や部署の垣根を超えた商品改善に結びつけられることもメリットです。
アウトソーシングに適しているかどうかは、「業務が定型か非定型か」「業務量の大小」の2つの軸で判断していきます。
アウトソーシングに最も向いているのは、定型かつ業務量の多いものです。自社対応からアウトソーシングに切り替えるだけでもコスト削減効果が見込まれますし、より利益を生み出す業務を強化するための人員などのリソースの最適化も可能です。業務の一例として、膨大な事務処理やコンタクトセンター/コールセンターの一次対応などが挙げられます。
定型業務だが業務量は少ないものについても、標準化や自動化をすることで効率化できる可能性があり、社員がよりコア業務に集中できる環境をつくる目的としてアウトソーシング化の検討ができます。
非定型でボリュームが大きい業務をアウトソーシングする場合は、プロセスの見直しが必要です。業務の見直しを行い、重視している業務や、業務のムリ・ムラ・ムダを把握することです。業務の目的を明確にし、どのようなプロセスで実行しているか、その実行プロセスのなかに目的達成の阻害要因になっていないかなどを分析していきます。また、誰がその業務を実行しているか、担当者の適正配置がなされているかもチェックポイントです。
もっともアウトソーシングに向いていない業務が、非定型で業務量が少ないものです。
外部に委託するということは、従事するメンバーに対して、都度指揮・命令することはできません。業務を遂行するなかで多くの判断が求められる業務は、アウトソーシングに適していないとお考え下さい。
アウトソーシングを上手に経営に取り入れることで、仮に規模が小さくても事業基盤を強化することができます。ここでは、いくつかの活用例を紹介します。
ホテル事業を展開しているA社では、これまで自社が運営する独自のWebサイトで予約受付・管理を行っていましたが、自社サイトの運用だけでは顧客への訴求や利便性に劣るため、宿泊予約サイトなど外部媒体からも予約を受け付けることにしました。
サイトへの情報掲載、予約情報の集約、予約状況に応じた宿泊プランの掲出などを自社サイト以外でも行う必要があり、業務の複雑化や業務量増が予想されたことから、既存の社内リソースだけでは対応しきれないと判断し、自社サイトも含めたWeb媒体の制作管理および予約受付・管理業務をアウトソースしました。
自社サイトの運営にあたっていたメンバーは、商品企画や顧客サービスなどの業務を担当するようになり、自社工数の削減だけでなく、人員配置の最適化にも寄与しています。
傘下に複数の事業会社を抱えるB社では、それぞれの事業会社に総務・人事・経理などの間接部門を擁しており、グループ全体の直間比率・販管費が増大傾向にありました。
そこで、グループ全体でスケールメリットを共有しつつ事業を拡大するという事業方針に則り、グループ内で重複している管理業務をシェアードサービス形式で集約し、アウトソーシングしました。
シェアードサービスの導入により、グループ全体で管理業務のコストが低減したため、コア事業に人と設備を集中できる仕組みの構築が進んでいます。
アウトソーシングを導入するうえで最も大切なことは、ベネフィットを明確にしておくことです。
アウトソーシング活用企業の導入理由は、コストを適正化したい、ビジネス機会を逃さず迅速な新サービスの立ち上げを行うためなど、企業の目的によってさまざまです。その目的を達成するためにアウトソーシングが有効かどうか導入前に検討する必要があります。
活用するうえでのポイントは、「効率性」と「効果性」の視点からアウトソーシングで得たいゴールをはじめに明確にしておくことです。効率性とは、コスト削減や人材の効率的な活用を目的とするものです。例えば、アウトソーシングで人員や業務の再配置を行い、生産性を高めていくといった活用方法があります。
一方の効果性とは、自社の資源では対応できない業務や人材の急な退職で業務の対応に問題が出てしまったなどの場合に、アウトソーシングで外部の専門性を活用していこうとするものです。ノウハウが少ないまま自社の経営資源を投入するよりも、外部の専門機関に委託する方が費用対効果を高くできます。同時に、外部に委託してノウハウを吸収してから自社資源を投入する方が経営を効率化できます。
コア業務とは、より自社の売上や利益に直結する業務のことです。
コア業務は企業により異なりますが、顧客と折衝する営業機能や商品開発、広告・販売促進機能などが例として挙げられます。アウトソーシングを検討する前に、あらためて一度コア業務を明確にしておくことをおすすめします。
アウトソーシングのメリットのひとつに、周辺業務を委託することで自分たちが強みとするコア業務に集中できる点がありますが、コア業務を具体的にすることで、委託する業務の候補があがり、またアウトソーシング後に人員などの資源をどう再配置すればいいか見えてきます。
アウトソーシングを計画していく際は、はじめにアウトソーシング化する目的を明確にする必要があります。そのためには、担当者が日々感じている問題、部門や会社全体としてみたときに課題と感じることなど、現状課題を言語化し一覧化することが大切です。
明確化された課題を解決することで得たいのは、コストの適正化なのか、従業員をコア業務へ集中することなのか、会社が柔軟に変化できるための組織のスリム化なのかなど、アウトソーシングすることで得たいと考える効果を明確にします。目的が明確になった時点で、アウトソーシングしたいと考える業務を数値化・可視化し、外部リソースを使うことで効果が得られるかを検証します。
アウトソーシングする分野を検討するには、業務マッピングを用いて業務の特徴を可視化すると検討しやすくなります。
まず、縦軸を定型or非定型、横軸を業務量の大or小として4つのゾーンを用意します。そして、自社の業務を洗いだしてリスト化し、定型業務と非定型業務に分けます。同時にどの程度の工数がかかるかを算出し、業務マッピングに分類していきましょう。
マッピングができたら次にゾーンごとにアウトソーシングで得たい効果を定数評価します。評価項目の例としては、効率化、標準化、コア業務への集中、コスト削減などがあります。ゾーンAでは、効率化5点、標準化5点、コア業務への集中5点、コスト削減5点で総合評価20点、ゾーンBでは効率化5点、標準化5点、コア業務への集中3点、コスト削減3点で総合評価16点というようにゾーンごとに評価点数を設定します。評価を定数化することで、どのゾーンのどの業務をアウトソーシングすれば効果が高いかが一目で把握できます。
ゾーン | 総合的評価 | 効率化 | 標準化 | コア業務への集中 | コスト削減 |
---|---|---|---|---|---|
A | 20 | 5 | 5 | 5 | 5 |
B | 16 | 5 | 5 | 3 | 3 |
C | 12 | 3 | 3 | 3 | 3 |
D | 8 | 2 | 2 | 2 | 2 |
「業務が定型か非定型か」「業務量の大小」の2つの軸から分類した各ゾーンの詳細も把握しておくことが重要です。詳細については、「アウトソーシングに向いている業務・向いていない業務」で紹介します。
このようにマッピングして評価を定数化することで、経験や勘に頼らずにアウトソーシング分野を検討することができます。
アウトソーシングの委託先をアウトソーサーといいます。アウトソーシングの成否は、アウトソーサーの力によるところが大きいので重要なステップです。
評価のポイントは、アウトソーシングした業務に対応できることを前提とし、実績は十分にあるか、どのようなプロセスで業務を実行してもらえるのか、誰が実行するのか、管理体制はできているか、報告の形態・頻度はどうなっているかなどがあります。
委託費用は安いに越したことはありませんが、費用面だけでアウトソーサーを決めてしまうと、アウトソーシングの本来の狙いを達成できず、かえって費用がかさんでしまったケースもありますので注意しましょう。また、近年特に重要となっている情報セキュリティー体制についてもチェックしておきましょう。
外部を利用して業務を効率化する方法には、アウトソーシング以外にも派遣やITサービスの活用などが挙げられます。目的に応じて使い分けていきましょう。
人材派遣サービスとは、派遣会社に登録している人材を派遣するサービスです。
アウトソーシングとの違いは、提供されるサービスが「業務の遂行」ではなく、「派遣先担当者の指揮命令のもとで業務を行う人員の派遣」のため、業務の指示・命令を直接することが可能です。判断を都度仰ぐ必要のある業務などでは、人材派遣サービスの活用が有効でしょう。また、社員と異なり契約形態(勤務時間や日数)などを調整できるため、コストの最適化にもつながります。
詳しくはこちらの「派遣の活用法とメリット。アウトソーシングとの違いとは?」記事をご覧ください。
ITサービスを活用して業務効率化を目指すこともできます。代表的なIT技術として、RPAやOCRが挙げられます。RPAとは、ロボティック・プロセス・オートメーションの略で、ロボットによる業務自動化の取り組みや、その一連の技術のことです。データ入力のような定型業務を自動化することができます。ロボットの活用で、完全自動化で24時間稼働可能、ヒューマンエラーが起こらないなどのメリットがあります。
OCRは、手書きの書類や帳票を機械で読み取ってデータ化できる技術です。手書き文字を再度入力する手間を省き、作業を効率化することができます。OCRの利用シーンには、申込書・申請書類の取り込み、名刺を読み取り電子データベース化、アンケートデータの自動読み取りなどがあります。RPAと連動すれば、手書き文字の読み取りをしたあと、そのデータを自動で入力・振り分けができ、より効率的な作業が実現できます。
アウトソーシング市場は年々拡大しており、企業のアウトソーシングに対するニーズが堅調に推移することが見込まれています。
経営環境が目まぐるしく変わる昨今、企業が製品やサービスの向上を図るには、自社資源だけでは限界があります。アウトソーシングを上手に活用すれば、自社の資源だけでは困難だった業務品質の向上、業務効率化を早期に実現できます。また、企業戦略において、アウトソーシングは単なるコスト削減の手段ではなく、企業間提携と同様に優先度の高い選択肢の一つとなるでしょう。
まずは、アウトソーシングを検討すること自体が、企業戦略や自社の業務プロセスを見直すきっかけになります。アウトソーシングは、前提として「コア業務とノンコア業務が何であるのか」を社内で仕分けることが必要になり、コア業務をあらためて定義することは、すなわち他社との差別化が明確化されることであり、自社の戦略構築の手掛かりともなり得るものです。
アウトソーシングを戦略的に活用していくことは企業規模の大小にかかわらず、企業価値を高める効果的な手段といえるでしょう。
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