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「働き方改革」という言葉に対して、皆様はどのような印象をお持ちでしょうか。
時間外労働の上限規制や、年次有給休暇の確実な取得、勤務間インターバル、同一労働同一賃金など、社員にとって魅力的な働き方ができる社会の実現というポジティブな期待の半面、実は社員にとって厳しい側面も含まれています。
企業が国の方針に即して働き方改革を推進することで、社員には「限られた労働時間で、有給休暇もしっかり取得しながら、従来と同等以上の生産性や成果を発揮する」ことが求められます。
端的な例では、「周囲も巻き込みながら、長時間労働を前提に高い成果を創出してきた」タイプの人材は、会社にとって扱いが難しくなる可能性があります。少なくとも、仕事の進め方やスタイル等を変容しなければ、企業に罰則が適用されてしまうということも起こりうるでしょう。
働き方改革は、企業側の「働かせ方」を改革することだけでなく、社員側の「働き方・働く意識」の改革も求められることを、労使双方が意識しておく必要があります。
ビジネス環境・法律・顧客ニーズ等の変化でローパフォーマー(またはミスマッチ人材)になってしまうケースの他にも、求められる役割期待と発揮能力が根本的にミスマッチの場合等、ローパフォーマーが能力を発揮できない要因は様々です。
企業コンサルティングの経験上、多くの企業が企業規模や採用基準を問わず、社員の10%~20%くらいにパフォーマンス不足やミスマッチの問題を抱えていました。
残念ながらローパフォーマー化してしまった社員に対しては、行動変容を促す必要があります。
「ネガティブフィードバック」や「業績改善プログラム」などのプログラムが効果を発揮することが多いですが、実施にあたりどのようなアプローチが必要か、具体的に考察します。
まずはローパフォーマー本人への対策以前に、上司の意識を変える必要があります。
こうしたプログラムの研修やコンサルティングをしていると、上司から下記のような言葉が出ることがあります。
「○○さんは大先輩なので、厳しいことも言いにくい。定年までボチボチやってもらえれば構わない」
「ローパフォーマーに時間を取るより、ハイやミドルパフォーマーの能力向上に時間を費やす方が効率的だ」
「あの人は、他部門も含め何年も低空飛行で、注意すると怒り出すし、下手に触らないほうが無難」
「以前に注意したが、変わらなかった。ベテランなので性格は変えられない。話がかみ合わない」
これらは、決して怠慢からくるものではなく、組織運営や会社の目標達成に真剣だからこそ、「ローパフォーマー対応に時間を取るより、他に時間や労力を取るほうが効果的」と判断したからこそのコメントなのでしょう。
ただ、問題の先送りや塩漬けにした対応は、本人の成長や改善を阻害するだけでなく、周囲のモラルを低下させます。
「あんな態度でも会社は何も言わないなら、真面目に働くのが馬鹿らしくなる」
「あの人の起こすトラブルで業務を割かれているのに、会社や上司は分かっていない」
などの声は、実際にインタビューで聞かれる言葉です。
定期的な面談や定量的な評価など、しっかりとした行動をとっている上司であっても、そこに「本気で一緒に改善しよう」というマインドが入っていなければ相手や周囲に見抜かれます。
上司に対して「期間を決めて、ローパフォーマーと本気で向き合い、本人のために真剣に対応する」マインドセットを行うことは大変重要です。
ローパフォーマー化した社員には、仕事に対する主体性・モチベーション・集中力・想像力等が欠如していると感じる場合もあるでしょう(本人にすれば違うとしても、周囲からは欠如しているように見える場合もあります)。
そうした際に、上司や会社としては下記のように、本人の考え方や意識を改善したくなります。
「仕事にもっと責任感を持って」
「主体的に考えて」
「業務の意味や関係者を想像して仕事を進めて」
根本的な治療としては、根底にある意識やものの考え方を改善できることがベストで長く効果が続きますが、現実的には意識面の指導から入っていくと、上手く改善しないケースが多いのも事実です。
なぜなら「責任感」や「主体性」は、可視化や評価が難しく、改善効果が本人にも周囲にも判断が難しいためです。身も蓋も無い言い方をしてしまうと、「意識がすぐに変わる変化受容力があれば、問題社員になっていない」はずです。
アプローチとしては「意識」ではなく表面に出てくる「行動」にフォーカスを当てて指導していきましょう。
「行動が変わる」→「変わった行動を賞賛する」→「改善行動が反復・定着する」→「行動の根幹にある意識が変わる」というステップを経た意識変革を促すのです。
また、意識までは変わらなくても、表面上の行動が会社の求める水準に達していれば、ビジネス上は問題がありません。
ローパフォーマー対策を行う際には、コミュニケーションの「主語」が大変重要です。主語をどこに置くかによって、上司と本人の信頼関係構築や改善効果が大きく異なります。
「こんな成績では(上司として私が/我々の部門が)、困るよ」
「あなたの行動で(周囲の同僚や顧客が)、迷惑を受けている」
など、ともすれば本人以外の人物を主語にして(口に出さなくとも、文脈としてそのように読み取れる)話をしてしまうのは逆効果です。
「(あなたのために)一緒に改善していこう」
「(あなたにとって)一番良い状態を考えよう」
「(あなたに成長して欲しいから)厳しいことも敢えて言う」
など、本人を主軸においたコミュニケーションによって、厳しいメッセージでも伝え易い土壌が出来ていきます(「あなたのために」と毎回口に出すと、かえって逆効果の場合があるため、頭の中に置いておくだけでも十分です)。
共通して大切なポイントは「本気で、相手の改善を願い、支援すること」です。
たとえ結果として十分な改善が叶わず、より厳しいコミュニケーションが必要になる場合でも、本気で向き合い信頼関係が構築できているかどうかが重要になります。
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