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派遣先均等・均衡方式は、改正労働者派遣法によって「同一労働同一賃金」を実現するために定められた、派遣社員の処遇を決定するための方法の1つです。
派遣会社は、この「派遣先均等・均衡方式」と、もうひとつの方式「労使協定方式」のいずれかの方式を選択する必要があります。
また、派遣社員を受け入れる企業も、派遣会社に対する処遇決定のための情報提供が必要です。
この記事では、派遣先均等・均衡方式を採用している派遣会社から派遣社員を受け入れる際に、企業側がとるべき対応について解説します。
派遣先均等・均衡方式とは、派遣社員の待遇を派遣先企業で同じ仕事をしている従業員と同等にする方式です。
ここでいう待遇とは、賃金だけではなく賞与や福利厚生、教育訓練なども含まれます。例えば、自社の従業員に食事手当を支給している場合は、派遣社員にも食事手当を支給しなければならないということです。
そのため、派遣社員を受け入れる企業では、派遣先均等・均衡方式を採用する派遣会社に対して、事前に比較対象労働者の待遇情報を提供しなければいけません。派遣会社は提供された情報をもとに派遣先企業の従業員と不合理な待遇差が生じないよう、派遣社員の待遇を決定します。
労使協定方式とは、派遣元企業と労働者代表(労働者の過半数で構成される労働組合または過半数を占める)と協定を結び、派遣社員の待遇を規定する仕組みです。
ただし、仕事に必要な教育訓練を受ける権利や福利厚生施設を利用する権利などは、派遣先の正社員と同じでなくてはいけません。
特徴としては、派遣元企業と派遣社員が直接条件を協議するため、派遣社員の賃金が派遣先の正社員の賃金基準に影響を受けない点です。
派遣先が変わっても待遇に大きな影響がでないなどのメリットがあるため、多くの企業で導入されています。
労使協定方式 | 派遣先均等・均衡方式 | |
---|---|---|
比較対象 | 同一の業務に従事する一般労働者 | 同一の業務に従事する派遣先の労働者 |
待遇 |
一定の要件を満たす労使協定による待遇 (賃金は同種の業務に従事する一般労働者の平均以上) |
派遣先の比較対象労働者と均等・均衡のとれた待遇 |
派遣先が提供すべき情報 |
・教育訓練 ・福利厚生施設 |
・比較対象労働者の職務内容 ・比較対象労働者の配置変更範囲 ・賃金 ・福利厚生など |
派遣社員の同一労働同一賃金を実現する制度には、派遣先均等・均衡方式のほかに労使協定方式という方式もあります。派遣会社はどちらかの方式を採用して派遣労働者の待遇を確保することが義務付けられています。
派遣先均等・均衡方式と労使協定方式の違いは、待遇を派遣先企業に合わせるか、平均賃金に合わせるかの違いがあります。労使協定方式は、同じ地域で同じ業務を行っている一般労働者の平均賃金と同等もしくはそれ以上の賃金に設定する方式です。
派遣会社が労使協定方式を採用するには、派遣会社の労働者の過半数を代表する者または労働組合と労使協定を締結しなければいけません。
なお、労使協定方式を採用する場合でも、教育訓練や施設の利用については、派遣先企業の従業員と同等の扱いが求められます。
冒頭でも述べたとおり、派遣先均等・均衡方式は、改正労働者派遣法で定められた「同一労働同一賃金」を実現する方法の1つです。同一労働同一賃金とは、「同じ仕事を行う者は同じ待遇を受けるべきである」という考え方で、雇用形態の違いによる待遇の格差をなくすための原則を指します。
この原則は、正社員と非正規社員で同じ業務内容であるにもかかわらず、非正規社員が低い賃金で働く現状を踏まえ、そうした「格差」を是正するために提唱されました。同一労働同一賃金は、2018年の改正労働者派遣法によって明確化され、2020年の改労働基準法で正式に導入されました。
派遣法では「派遣先が講ずべき措置に関する指針」が定められています。
派遣先責任者として理解しておきたい10の措置をわかりやすく纏めた資料を用意しています。
ここからは、派遣先企業における派遣先均等・均衡方式と労使協定方式、それぞれのメリット・デメリットを解説します。
派遣会社が派遣先均等・均衡方式を採用している場合は、派遣先企業の待遇が良いと優秀な派遣社員が集まりやすく、定着率が高くなるメリットがあります。
一方、派遣会社へ提供する待遇に関する情報量が多いため、派遣先企業の手間と時間がかかり、負担が大きくなるデメリットがあります。また、派遣社員が派遣先企業の待遇に満足しない場合は辞退される可能性もあるでしょう。
労使協定方式は、派遣会社へ提供する待遇に関する情報量が、派遣先均等・均衡方式よりも少ないため、派遣先企業の負担が少ないというメリットがあります。
デメリットとして考えられる点は、受け入れている派遣社員と同じ業務に従事している派遣先企業の従業員との間で賃金格差が生じる可能性があることです。
労使協定方式は、平均賃金により派遣社員の賃金が決定されているため、必ずしも派遣先企業の従業員と同等の賃金にする必要はありません。そのため、派遣先企業の従業員と同じ業務に従事している派遣社員から不平不満が生じる可能性があります。
派遣先企業は派遣会社と労働者派遣契約を締結するにあたり、さまざまな手続きが必要です。ここからは、派遣会社が派遣先均等・均衡方式を採用している場合に派遣先企業が行うべきことを詳しく解説します。
派遣先企業は、全従業員の待遇情報を提供する必要はありません。受け入れる予定の派遣社員が行う業務と同等の業務に従事している「比較対象労働者」を選定し、その者の待遇情報を提供します。
比較対象労働者の選定方法には優先順位があり、以下の順で選定します。
例えば、配置変更のない経理業務行う派遣社員を受け入れる場合は、現在経理業務に従事している配置変更のない従業員を比較対象労働者として、派遣会社に情報を提供する必要があります。
なお、(5)を比較対象労働者とする場合は、短時間・有期雇用労働法などに基づいて、派遣先企業の通常の労働者との間で均衡待遇が確保されていることが条件です。
(5)については、就業規則などをもとにした、雇い入れる際に適用される待遇を基準とします。
比較対象労働者を選定したあとは、比較対象労働者に関する以下の情報を派遣会社に提供します。
なお、比較対象労働者の情報提供にあたり、比較対象労働者の候補となる従業員が複数いる場合は、一人の情報だけではなく、複数人の平均とすることも可能です。そのほか「新卒採用で入社した5年目の経理職で、B評価を想定した情報」を提供するなど、就業規則や人事評価を考慮し、標準的なモデルで対応することもできます。
方式については派遣会社が決定するため、派遣先企業が選ぶことはできません。 派遣会社がどちらの方式を選定しているかは、ホームページで確認が可能です。
派遣先企業で待遇内容に変更があった場合は、変更した内容を派遣会社に提供しなければいけません。
ただし、労働者派遣契約が終了する日より1週間以内の変更であって、待遇を変更しなくても派遣先均等・均衡方式に違反せず、労働者派遣契約で定めた範囲を超えない場合は情報の提供は不要です。
派遣会社への情報提供方法は書面やFAX、電子メールなどで提供します。
なお提供した情報については、写しを派遣終了日から3年間保存しなければいけません。
派遣先均等・均衡方式は、派遣会社への情報提供などの負担があるものの、派遣先企業の待遇が優れていれば、派遣社員が良い待遇で働けるため、優秀な人材が集まりやすく、定着率が高くなるメリットがあります。
派遣先均等・均衡方式を採用している派遣社員を受け入れる際は、必要な情報を適切に提供し、派遣社員と自社の従業員との格差が生じないよう対応にあたりましょう。
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