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派遣先への労働局による調査とは?調査の理由と流れを解説

掲載日2025年6月13日

最終更新日2025年6月17日

派遣先への労働局による調査とは?調査の理由と流れを解説

目次

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昨今、人材派遣に関する労働局の「需給調整事業部(派遣事業担当部署)」による調査件数が増加しています。

2020年、厚生労働省は派遣社員の待遇格差是正を主な目的とし、労働者派遣法を改正しました。これに伴い、労働局による調査が以前にも増して活発に行われるようになっています。

この調査は派遣会社だけでなく、派遣先企業も対象です。実施の時期は決まっていないため、日頃から適切な体制を整えておくことが重要です。

本記事では、労働局による調査の主な調査項目や指導内容、調査に備えるためのポイントについて解説します。

労働局による派遣先企業への調査とは

労働局による派遣先への調査とは、労働者派遣法に基づいて労働局の需給調整指導官が派遣先を訪問し、書類の提出を求め、法律の遵守状況を確認するものです。

この調査は予告なしに突然行われることはなく、事前に連絡があり、担当者と日程を調整したうえで実施されます。訪問時には、派遣社員の就業状況や派遣先管理台帳などの確認が行われます。

また、近年の調査では、労働者派遣法の改正に伴う同一労働同一賃金の実施状況や派遣社員の待遇改善に関する確認が重視される傾向があります。

派遣関係に関する調査については厚生労働省が毎年、労働局ごとに公表しています。直近のデータでは、愛知労働局が公表した「令和5年度労働者派遣事業先にかかる指導監督状況(PDF) 外部リンク」が参考になります。

この資料によると、派遣先の調査を行った件数は267件で、前年度比36.9%です。そのうち180件(約67.4%)の企業が文書による指導を受けたことが公表されています。

労働局が派遣先を調査するきっかけ

労働局が派遣先を調査するきっかけ

派遣先への調査は、派遣会社に対する調査がきっかけとなるケースが最も多く、他に派遣社員からの相談や定期的な調査などによって実施される場合があります。

派遣会社への調査の流れから

派遣会社には、3~5年に一度、労働局による定期指導があります。その際、派遣会社は派遣先の事業所名、派遣社員の従事する業務内容、人数等を記載した派遣社員の名簿を提出する義務があり、契約内容に不明点がある場合、派遣先への調査が行われます。

派遣会社に対する令和5年度の愛知労働局管内の指導監督状況(PDF) 外部リンクは1,485件で、例年ほぼ同じ水準で推移しています。そのうち、871件が文書指導を受けており、半数以上が何らかの指導を受けています。

派遣会社側に書類等の不備があったということは、派遣先でも同様の不備がある可能性が高いと判断され、派遣先へも調査が実施されます。

派遣社員からの申告・相談

派遣社員が労働局や労働基準監督署に相談をした場合も、派遣先の調査につながることがあります。主な相談内容には、正社員との待遇格差、賃金の引き下げ、休憩が取れないなどが挙げられます。

多くの場合、まず電話でのヒアリングが行われ、その際に相談内容に関する説明がきちんとできれば、調査には至りません。しかし、説明の内容が不十分で、相談内容に関する適切な対応が確認できない場合、より詳細な資料提出の要請や立入調査が行われる可能性があります。

最近では、ハラスメントに関する相談も増加しています。内容が誤認に基づくものであっても、労働局が必要と判断すれば、派遣社員の就業環境や労働条件全般についての調査が実施されることがあります。

派遣先への定期調査

派遣先への定期調査は、派遣会社に対する調査時に派遣会社から提出された派遣社員名簿をもとに実施されます。派遣先の担当者が派遣法を正しく理解し、適切に対応していれば大きな問題にはなりません。

しかし、派遣先の担当者が派遣法に関する理解が不十分な場合、不備が指摘され、是正指導の対象となる可能性があります。

<派遣先に対する主な調査項目>

  • 派遣契約(個別契約書)の内容
  • 派遣先管理台帳の記載内容
  • 比較対象労働者の待遇等に関する情報提供
  • 事業所抵触日延長手続きと通知 など

この定期調査は、毎年件数が少しずつ増加傾向にあるため、注意が必要です。

派遣法改正への対応状況の確認

2020年の労働者派遣法改正により、正社員と派遣社員などの非正規社員の不合理な待遇差を解消することを目的に同一労働同一賃金の適用が義務付けられました。

労働局の調査では、同一労働同一賃金の遵守状況も重点的に確認されます。特に派遣社員の待遇については、実際に記載されているとおりかどうかを派遣会社、派遣先の双方で確認されます。

派遣先においては、直接雇用する労働者と就業環境が同水準かどうかもチェックされますので、業務内容等に違いがあればきちんと説明ができるようにしておきましょう。

なお、派遣会社に問題があって、派遣先に状況の確認が入る場合が多いので、日頃から派遣会社との連絡を密にしておくことをおすすめします。

派遣法は頻繁に改正されるため、派遣先担当者が最新情報を把握しきれないこともあります。派遣会社が法改正の情報を適切に派遣先と共有できていれば問題は生じにくいものの、情報共有が不十分なケースもあります。

結果、派遣会社の不備が派遣先にも影響し、指導件数増加の一因となっています。

労働局の主な調査項目と流れ

労働局の主な調査項目と流れ

労働局の調査では、主に次の項目が確認されます。

労働局の主な調査書類

労働局が調査で求める書類は、主に以下のとおりです。

  • 労働者派遣個別契約書
  • 派遣先管理台帳
  • 比較対象労働者の待遇に関する情報の提供
  • 派遣先事業所単位の抵触日通知書
  • 意見聴取通知書(3年を超えて派遣社員を受け入れようとする場合)
  • 派遣社員の就業日毎の始業・終業の時間がわかるもの(タイムカード等)

派遣先管理台帳は、主に苦情処理や均等待遇確保に関して、調査が行われます。担当者だけではなく、派遣社員へのヒアリングが行われることもありますので、ありのままを記載しましょう。

調査の基本的な流れ

労働局調査は、基本的に以下の流れで進行します。

  1. 労働局から求められた書類の準備
  2. 調査官の企業訪問
  3. 提出書類に対する内容確認と調査
  4. 提出書類の確認後、問題がなければ調査終了/問題がある場合は是正指導書の交付
  5. 指導内容に基づく改善対応(目安:1カ月程度)
  6. 是正報告書の提出

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派遣管理デスクでは、派遣管理業務の効率化に加え、派遣法や関連労働法に基づいた必要なサポートを提供します。

最新の法改正にも対応し、コンプライアンス遵守を促進。監査対応にも備えた体制構築・運用を支援します。

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労働局の指摘を受けた場合の対応とペナルティ

労働局の調査を受けた際、労働者派遣法に違反している場合や、違反はしていないが改善すべき点がある場合(こちらが圧倒的に多い)、以下の書類が渡され、警告や指導が行われます。

なお、軽微な不備の場合、口頭での指導が行われ、その場で終了することもあります。

指導票 法律違反をしていないが改善した方がよい場合に発行されます
是正指導書 法律違反をしている項目について1項目につき1枚発行され、改善期限が設定されます。
是正報告書 是正指導書に記載された期限までに改善した内容を報告します。
是正勧告書 是正指導書を何度受けても改善されない場合に発行されます。

「是正指導書」を受け取ると法律違反をしているので、罰則が科せられるのではと不安に思うかもしれません。しかし、この指導書に従って指摘された箇所を改善すればなんらペナルティはありません。

また、「指導票」を受け取った場合も、その指導に従って改善すれば問題ありません。改善がされたかは、指導票に記載されている内容を実施したかどうか、書類等を持参し確認をしてもらいます。

ただし、労働局から指導を受けたにもかかわらず、何もしないでいると「是正勧告書」が発行され行政処分が下され、企業名が公表されることもあります。

指導を受けたら、どのような内容を見直したかが分かるようになるべく早めに報告書を提出しましょう。わからないことがあれば、労働局に相談をして記載することも可能です。

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労働局調査に備えるためのポイント

労働局調査に備えるためのポイント

労働局の調査に備えるためのポイントについて説明します。

定期的な自主点検の実施

厚生労働省は、「派遣労働者の同一労働同一賃金にかかる自主点検表(PDF) 外部リンク」のチェックリストを公開しています。これをもとに自社の状況を確認するとよいでしょう。

【自主点検すべき主な内容】

  • 派遣社員の契約書を定期的にチェック
  • 派遣料金についての配慮義務(引き下げに注意)
  • 派遣社員に対する教育訓練の実施
  • 福利厚生施設の利用機会
  • 適切な労働時間、安全衛生管理
  • 派遣社員からの相談対応の整備
  • 法改正についての情報確認

など

参照:厚生労働省|派遣労働者の同一労働同一賃金に係る自主点検表(派遣先用)(PDF) 外部リンク

派遣料金の配慮義務は、派遣社員の不合理な待遇差をなくすことを目的としています。

派遣先は、派遣会社が法律に基づいた必要な派遣料金を提示したにも関わらず、交渉に応じない、あるいは提示額を下回る場合には、「適切な配慮がなされていない」と見なされ、行政からの指導の対象になることがあります。

派遣会社との密な連携

日頃から、派遣会社の担当者から法改正に関する情報提供を受けることも効果的です。自社で情報収集をこまめに行うことに越したことはありませんが、派遣会社ならでは視点や解説には参考になる点が多いです。

労働局から調査の事前連絡があった場合も、速やかに派遣会社の担当者と連携を取ることが大切です。

また、派遣社員の受け入れにあたっては、派遣先としての対応事項もあります。そのひとつが、「事業所単位抵触日や待遇に関する情報の通知」です。これは、契約更新のたびに、派遣会社へ情報提供をする必要があります。

さらに、見落とされがちなのが、「派遣社員の社会保険加入状況の確認」です。派遣社員の適正な労働環境を守るうえで、派遣先として確認・把握する(派遣先管理台帳に記載する)ことが義務付けられています。

こうした情報も派遣会社と連携し、適正に運用する必要があります。

派遣管理デスクサービスの導入

派遣管理デスクサービスとは、派遣先の担当者に代わり、派遣法への対応や派遣契約の管理を代行するアウトソーシングサービスです。

複数の派遣会社を利用している、あるいは多数の派遣社員を受け入れている企業にとって、派遣社員の情報管理は非常に手間がかかります。こうした場合、派遣管理デスクサービスを導入するのもひとつの有効な方法です。

メリット

  • 派遣法に精通した担当者によるサポートが受けられる
  • 法規制を遵守した運営ができる

デメリット

  • 導入コストがかかる
  • 運用フローの構築には派遣先の協力が必要

導入が適している企業

  • 100名以上の派遣社員を管理している
  • 派遣の専任担当者がおらず、管理が追いついていない
  • 派遣管理のコンプライアンス遵守に不安がある

派遣管理デスク導入事例集

マンパワーグループでは、派遣社員が100名以上在籍する企業様を対象に、派遣管理デスクサービスを通じて多様な支援を行っています。
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まとめ

同一労働同一賃金が企業の義務となったことを契機に派遣会社、派遣先とも労働局の調査件数は増加傾向にあります。

これらの調査は、定期調査以外にも、派遣社員からの相談や派遣会社に対する調査がきっかけとなり、派遣先にも及んでいます。指導を受けた場合は迅速な対応が求められ、改善を怠ると行政処分の可能性もあります。

日頃から派遣会社との連携や自主点検を行い、適切な管理体制を整えておくことが重要です。

本コラムで取り上げている企業課題に関するご相談や、弊社サービスに関するご質問などがございましたら、お気軽にお問い合わせください。

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著者プロフィール

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世界70カ国・地域にオフィスを持ち、ワールドワイドに展開している人材サービスのグローバルカンパニー、ManpowerGroupの100%出資の日本法人。

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