調査データ
2023年10月11日
2023年4月、政府は「インターンシップを活用した就職・採用活動の日程ルールの見直し」について発表し、専門性の高い人材の選考開始時期を大学3年生終了前の春休みに前倒しするとしました。
採用活動を行う企業が「専門活用型インターンシップ(就業体験)」の要件を満たすことが前提条件とされており、2023年4月に大学2年生となった学生からこの新ルールの適用が始まります。
これにより、早期に優秀な学生を囲い込むためにインターンシップに注力する企業が増えるなどで、新卒採用はますます難しくなることが予想されます。
そこでマンパワーグループでは、社会人1〜3年目の男女400名を対象に、「企業の新卒採用早期化」のメリット・デメリットや、企業に応募する際に“給与以外”で重視した点について調査しました。
社会人1〜3年目の男女400名を対象に、就活生として感じた「企業の新卒採用早期化」のメリット・デメリットについて聞きました。
メリットについては、早くから進めることで早く終えることができる点に良さを感じている人も少なくはありませんでした。また、早期化によって出会える企業の幅や自分の可能性が広がると考えている声も多く見られました。
一方、デメリットについては、早期化によって学業や学生生活に影響が出る点を挙げる人が多くいました。特に、部活動や研究などに注力しているなど、早期から活動できない人には不利だと感じている人も少なくありませんでした。
また、早くから準備をしておかないとスタートが遅れる、出遅れた時に取り戻すのが難しいと感じるという声も多く、早く決めてしまいたいと焦り、あまり考えず承諾してしまうケースもあるようです。
さらに、インターンシップに参加できるかどうかがその後の就活に大きく影響することに問題を感じているという声も多くありました。
企業に応募する際に “給与以外”で重視したことを聞いたところ、「勤務地」(52.0%)、「待遇・福利厚生」(50.0%)、「会社の業種・業態」(48.5%)が5割前後となり、上位を占めました。給与以外でも、働く際の条件面は譲れないポイントのようです。
その一方、 “給与以外”で重視したことの中でも最も重視した点については、「会社の業種・業態」「業務内容・職種」がそれぞれ16%と最も高く、「待遇・福利厚生」14%が僅差で続いていました。働きやすさを前提条件とした上で、最終的には興味のある業界・業種や仕事内容であることが決め手となっていると言えるでしょう。
就職活動を振り返ってみて、“給与”と“そのほかの希望条件”について、どちらを優先したいと思ったかを聞いたところ、給与のほうを優先した希望条件としては「会社の知名度 / ネームバリュー」「会社規模(社員数や業績)」「グローバル企業」「キャリアパス」が半数を超える結果となりました。
一方、給与よりも優先する希望条件については、「勤務地」「業務内容・職種」「働き方の柔軟性(在宅勤務・フレックス)」「待遇・福利厚生」などが高い割合となり、半数を超えています。
男女別に見ると、全体的に男性よりも女性のほうが自身の希望条件を優先したい人の割合が高い傾向にあることもわかりました。
今回の調査では、「就活の早期化」に対して、メリットだけでなく、デメリットを感じていた人も多いことがわかりました。早期化によって早く就活を進めることができ、安心感や学生生活に集中できる時間を得られるようになるメリットがある一方、早く活動できる人、そうでない人との差の開きが大きくなる点をデメリットに挙げる学生は少なくありませんでした。
また、企業に応募する際に“給与以外”で重視したことについては、「勤務地」「待遇・福利厚生」「会社の業種・業態」が上位を占めていましたが、その一方、最も重視するのは「会社の業種・業態」「業務内容・職種」だとする人が多い結果となりました。働きやすさを前提とした上で、最終的には仕事内容を企業選択の決め手としていることがうかがえます。
就活の早期化はミスマッチを引き起こすことにもつながりかねず、学生だけでなく、企業にとっても大きな問題だと言えるでしょう。
就活の早期化により、ますます新卒採用が難しくなることも想定される中、企業と学生の双方にとって重要なことは、学生の情報格差をなくすことと言えるかもしれません。より多くの学生にインターンシップ募集などの情報が行き渡るようにすることが必要となるでしょう。
また、囲い込みをすることによって、学生は自分の可能性を狭めることになりかねない上、内定辞退が発生する確率も高まり、企業が計画通りの採用人員を確保できなくなる恐れもあります。
実際、前回の調査では、「内定承諾後の就職活動」について、全体の50.5%が「継続した」と回答しています。今後は、インターンシップから選考、そして入社するまでを長い視点で捉え、学生と継続的にコミュニケーションをとりながら自社の仕事の魅力や働きやすさなどについて、いかに伝え続けていくかが重要になるでしょう。