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Z世代が企業に入社し始める年代になり、Z世代のマネジメント方法や育成方法というキーワードを耳にするようになりました。
採用においてもZ世代特有の特徴が見られます。特徴を理解した上で採用活動を実践できるように、今回はZ世代の特徴と、企業が押さえておくべきポイントから採用手段までを解説します。
Z世代とは一般的に、1990年代後半から2010年代初頭に生まれた世代を指します。
このZ世代は世界人口からみても1/3前後を占めており、現在は労働市場・消費市場から見ても重要な役割を担う社会人になる前後の若手層として注目を浴びています。
もともと、1960年代半ばから1970代に生まれた世代がX世代と名付けられたことから、次の1980年代初頭~1990年代後半の生まれをY世代、1990年代後半からの生まれをZ世代と呼ぶようになりました。
Z世代はデジタルネイティブ世代で、オンラインを通じて自分の好きな情報を取得したり好きなコミュニティに参加したりできる、個性や価値観に多様性のある時代を生きています。
そのため採用活動においても、SNSや動画・WEBツールを活用することはもとより、それらを通じて何を伝えていくかが重要です。
表面的に華やかに見せるような画一化された情報や、形式的なアピールはZ世代には響かず、口コミや現場の実態などタイムリーでリアルな情報を求める傾向があります。
Z世代 |
Y世代 |
X世代 |
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年齢層 | 10代~20代半ば | 20代半ば~40歳前後 | 40歳前半~50歳半ば |
時代背景 |
デジタル化の加速 自然災害・環境問題など社会課題の高まりを経験 |
グローバル化の加速 就職氷河期・リーマンショックなど不安定な時代を経験 |
資本主義化の加速 バブル期~氷河期の上り下りを経験 |
価値観 | 多様化・個性化、社会課題への意識、トキ消費(参加の価値) | ゆとり世代・さとり世代、コト消費(体験の価値) | 競争主義・個人主義、モノ消費(所有の価値) |
採用活動の |
デジタルを使いこなすデジタルネイティブ世代のため、SNS、動画、口コミなどのツールをいかに採用活動に活かすかがポイント。 | 安定志向や・保守的志向が強いため、会社の安定性や福利厚生など安心して長く働ける環境面でのアピールがポイント。 | 独立心や挑戦心が強く、転職に対しても前向き。入社後のキャリアステップや将来的なポジションイメージを伝えることがポイント。 |
それでは、Z世代を採用する際に企業が押さえておくポイントと対策について、Z世代の価値観や考え方を踏まえて解説します。
Z世代は、働き方改革が推進される中で社会人になっていく世代であり、仕事だけではなくプライベートの時間も大切にしたいという価値観を持っています。
また、社会意識の変化やデジタル化による業務効率化などの後押しもあり、ワークライフバランスを実現できる環境が社会全体で整いつつある中で、ワークライフバランスを実現することはZ世代が会社を選ぶ際のほぼ必須の基準となりつつあります。
デジタル活用による効率化への意識が高い世代です。ワークライフバランスを充実させるためにも、業務の効率化に対しては前向きに取り組みたいと考えており、無駄な作業や業務を嫌う傾向があります。
例えば、その企業が「会社は出社するものだ」という固定観念にとらわれずにリモートワークを導入しているか、フレックス勤務など業務の効率化に向けて「仕事」の本質をとらえた取り組みを考えて行っているかなどを重視します。出社の必要性がある職場の場合は、その意図や背景などをきちんと伝えることが必要です。
Z世代は、「給与は自然と右肩で上がっていくものである」、「入社後は昇給昇格を目指して努力をするべきもの」、「組織の中では我慢して嫌な仕事もするべきもの」、などといった価値観にとらわれていません。
スキルを身につけることで報酬は上げることができると理解し、「役職や昇給を狙うキャリアがすべてではない」という自分の価値観を大事にしています。さらに転職したり、複数の仕事を並行したりするなど組織にとらわれない生き方をする、という自由な価値観を持っています。
また、自由な生き方をするためにはスキルを積む必要がある、という合理的な考えも持ちあわせています。多様性の時代を生きているため、会社員でないと食べていけないという価値観はなく、会社員以外にもフリーランスや起業など、自分軸での働き方の選択肢を持っているのも特徴です。
Z世代は、「会社任せのキャリア」ではなく「自分のキャリア」を築きたいという考えや、目指す自由を獲得するためにはスキルを身に付ける必要があるという考えも持ちあわせています。
スキルを積むことには意欲的なため、その仕事でどのようなスキルが身に付くか、またその仕事でどのようなキャリアを作れるかを明確に提示し、スキルアップのための教育制度や自主学習支援制度など、個のスキルアップに向けた支援を整えていくとよいでしょう。
また、フリーランスのような自由度の高い働き方や副業のようなパラレルワークへの意識が高い世代のため、個人の希望に応じた柔軟な働き方や仕組みを用意することもポイントです。
例えば、多様な雇用形態や就業時間・就業場所を選択できるように提示し、副業を推奨するなど柔軟な働き方を認めることで、社員であってもそれぞれの価値観に合わせた働き方ができるため、Z世代には魅力的にうつるでしょう。
Z世代は、SNSなどを通じてリアルな情報を得ている世代であるため、組織においても経営層や上司の形式的な報告や連絡より、本音や実際の現場の反応などを知りたいと思っています。
情報のやりとりは、結論に至る経緯を含め、どのような議論が実際になされ、メンバーがどのような想いを抱いているのかを、オープンにやり取りできることを重視します。フラットなSNSでの情報取得に慣れているため、上司にも気軽に質問したり話しかけたりできる風通しのよさを求める傾向もあります。
オープンなコミュニケーションにおいてはデジタルツールの活用が有効です。関係する全員がオープンに問い、意見を述べ、コメントをできるようなデジタルツールを導入している企業が増えています。
同時に、上司や周りに気軽に質問できるカルチャーがないとコミュニケーションツールも活用しにくいので、ツールの導入とともに既存社員の意識・カルチャー改革も必要になります。
採用活動においては企業からの一方的な発信だけではなく、就活生が発信やコメントをできるコミュニティづくり・仕組みづくりを行うなど、デジタルツールをうまく活用するのもポイントでしょう。
調査データ
マンパワーグループが社会人1〜3年目の人材を対象に2023年7月に行った調査で、「“給与”と“そのほかの希望条件”について、どちらを優先したいと思ったか」を聞いたところ、「勤務地」「業務内容・職種」「働き方の柔軟性(在宅勤務・フレックス)」「待遇・福利厚生」などが高い割合となり、半数を超えています。
一方で、「会社の知名度 / ネームバリュー」「会社規模(社員数や業績)」「グローバル企業」を、給与よりも重要視すると回答した声は少なく、「大きな会社で働きたい」というよりかは「自分がどう働くか」を重視する傾向にあることがうかがえます。
調査データ:就活時にどう考えていた?「企業の新卒採用早期化」のメリット・デメリットや、企業に応募する際に“給与以外”で重視した点
これまで述べてきたように、Z世代は特有の特徴があります。これまでのX世代、Y世代と同じ採用手法で採用活動を行っていては、応募が増えない、辞退が相次ぐという恐れがあります。本章ではZ世代の特徴を踏まえた採用手法について解説します。
情報の取得の大半がSNSや動画からであるZ世代の就活生にアピールするためには、SNSや動画配信を活用しないわけにはいきません。
また、この世代はリアルな情報を好むため、例えば動画配信においては人事担当者が形式ばった話をするようなコンテンツでは意味がありません。社長と社員の座談会や先輩社員のリアルな声というような、社内の実際の雰囲気や、社員の本音が聞けるコンテンツ内容などを織り交ぜて発信していくとよいでしょう。
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SNSを活用した採用活動については、「新卒採用で利用できるSNS採用(ソーシャルリクルーティング)とは?SNSの種類や活用方法、事例を紹介」をご覧ください。
自社サイトを活用した情報発信による採用活動については「オウンドメディアリクルーティングとは?導入すべき3つの理由」で詳しく解説しています。
Z世代は、コロナ禍でのオンライン授業などにも慣れているため、説明会も対面参加型の開催だけにこだわるのではなく、気軽に参加できるオンライン説明会などを組み込むとよいでしょう。
就活生もオンライン説明会だと気負わず多くの企業に参加ができるため、参加するハードルが低くなり、積極的に参加できる傾向があります。
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業界や会社の情報提供やPRを広くおこなうことを目的としたカジュアルな説明会をオープンカンパニーといいます。
オープンカンパニーについては、「オープンカンパニーは有効か?満足度の高いイベントを作る7ステップ」で解説しています。
オンライン面接を開催する場合の注意点はまとめたコラム「オンライン面接を成功させるには?メリットと注意点を解説」もございますので、ぜひご覧ください。
マス向けの広報的な発信よりもSNSなどの直接的な発信に慣れている世代ですので、個別にスカウトを送るダイレクトリクルーティングが効果的です。個別に「あなたにスカウトを送っている」ということを伝える内容を織り交ぜ、アプローチしていくとよいでしょう。
少子化や各社の採用枠増加の背景もあり、採用市場はますます活況となる中で、Z世代を採用していくためには、この世代がどのような考えを持ち、何を大事にしているのかを理解した上で採用活動を行う必要があります。
また、Z世代の志向や特徴を理解することは、採用だけではなく採用後の育成教育を考える際にも必要な考え方です。入社後の活躍も見据えてZ世代を理解し、採用のための取り組みをしていきましょう。
調査データ
Z世代の特徴のひとつが、転職に対する考え方です。前述したようにZ世代は自身でキャリアを築いていくという価値観をもっており、また終身雇用が存続するとも考えていません。一社で勤め上げるという気持ちは希薄であり、キャリアップやよりよい環境を求め、転職することに対する心理的ハードルは高くない傾向にあります。
一方、若年層の採用を考えた場合、労働人口減という絶対数が少ない若年層の採用は今後も困難が続くことが予想されるため、定着してもらうことがひとつの課題とも言えます。
2024年2月にマンパワーグループが人事担当者を対象に実施したアンケート調査では、8割超の人事担当者が新卒採用でのミスマッチを経験しており、うち、約6割がミスマッチの結果、新入社員の早期退職につながったと回答しています。
Z世代だけに限ったことではありませんが、せっかく採用に成功しても早期離職が増えてしまっては意味がありません。内定フォロー施策や定着施策も必要であり、価値観を押し付けるのではなく、相互理解が進むような適切な施策を検討してみてください。