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若手人材の採用が年々、困難になっています。若手の労働人口減少に加え、早期のキャリアアップを希望する人や、多様な価値観・働き方を求める人が20~30代で増えていることが背景にあります。
このような状況で若手採用を成功させるには、若手人材の仕事観やニーズを細かく把握して、それに合わせたアプローチをしなければなりません。
今回は若手層の転職ニーズを年代別に読み解きながら、具体的な対策を3つのポイントにまとめてお伝えしていきます。また有効な採用手法もご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
採用市場では「若手採用」という表現が用いられますが、実は求人広告や求人サイトで使われる「若手」という言葉に明確な定義はありません。
時代の流れや業界などによっても意味合いが異なります。老舗企業などではベテラン社員も多いため、「若手」は20代から30代までと年齢層が幅広い場合もありますが、スタートアップ企業などでは経営層自体が若いため、「若手」というと20代前半のみを指していることもあります。
採用タイミングによって若手の中でもさらに、「新卒」「既卒」「第二新卒」「中途」などの分類で括られることがあります。具体的な意味は以下のとおりです。
「新卒」
学校を卒業後初めて就業する人。
「既卒」
学校卒業後に就業経験のない人。
「第二新卒」
学校卒業後に1~3年ほどの就業経験がある人。
「中途」
「新卒」との対比でよく使われるのが「中途」。若手層の中でも就業経験があり即戦力として活躍できる人。
近年、優秀な若手を獲得するために、各企業は争奪戦を繰り広げています。
新卒採用を例に挙げると、大卒求人倍率のある調査では、2012年3月卒1.23倍から年々求人倍率は増加しており2019年3月卒は1.88倍、新型コロナウイルスの影響下の2022年3月卒でも1.50倍という結果でした。これは若手が就職しやすい状況ですが、一方で就職の人気企業を除いて若手採用に苦戦している企業が少なくないことが言えます。
個人が会社を選ぶ基準が多様化し、働き方も大きく変わったことで、若手が求める魅力的なキャリアやポストを提示できていない企業は、採用においても苦戦を強いられています。
採用できた後も魅力的なキャリアを提示できないと、早期のキャリアアップを望む人材は、ほかの企業に転職してしまうリスクがあるため気を抜けない状況なのです。
一方、企業が若手人材に対して、主にどのようなスキルや経験、素養を求めているのか、年代別に解説します。
20代前半の人材を採用する場合、企業は経験よりも今後の「伸びしろ」を期待します。そのため現時点で身に付けている経験・スキルよりも「将来成長する素養があるか」、「素直さと吸収力が高いか」を採用基準にする傾向があります。
また、欠員補充などであれば即戦力となる中途採用が有用ですが、将来を見据えた組織力の補強(事業計画に基づく数年後の組織強化)など長期視点で採用をするケースが多いのが20代前半の若手です。
20代後半の人材は、若手と言ってもリーダーになり得る存在です。そのため、数年であっても社会人経験の中で身に着けた経験やスキルが活かせるか、加えて将来のリーダーになる素養があるかなどを採用基準として考える企業が多いです。
昨今20代後半でマネージャー職などのポジションに登用する企業も増えてきており、とくにスタートアップ企業においては将来のリーダー候補ではなく即戦力としてのリーダーポジションを期待する企業もあります。
30代の人材は、これまでのスキル・経験がどう活かせるかという観点が基本的な採用基準です。時代の変化とともに昨今30代前半はすでに「若手」ではなく「中堅」として即戦力やマネジメントラインとしての役割を求められる傾向があります。
そのため、マネジメント経験はもとより、中には若くして役員経験がある30代の人材も少なくありません。企業側は会社を担う中核人材として、30代の若手に期待しています。
では、若手人材が争奪戦になっている状況について、その背景をより詳しくみていきましょう。
総務省の「労働力調査」では、15~34歳の労働力人口は2007~2017年の10年間で320万人減少しています。総労働力人口に占める若年労働力人口の割合では、この10年間で4.9ポイント減少し2017年度は25.5%となっています。
日本において就業している15歳~34歳の人口は全体の1/4程度にしか過ぎません。この限られた層をターゲットとして、若手人材の採用活動を企業は行っているのです。
引用:若年者雇用対策の現状等について(P.2)|厚生労働省人材開発統括官
転職活動をする若手人材でも、実力主義や成果重視の企業で経験を積みたいという人は増えています。キャリアアップやさらに上のステージを目指すために転職活動をする、優秀な若手人材が転職市場でも出てくるようになりました。
「管理職ポストがなかなか空かない会社」や「課長に昇格するまで10~20年かかる企業」などではキャリアアップが図れないと、20代の早いうちに裁量を任せられたり、ポストを獲得できたりする会社へ移り、早期にキャリアのベースを築くという考えが若手の中でも根付いてきました。そのため若手にキャリアの魅力づけができない会社は採用難の状況が加速しています。
ひと昔前までは「知名度のある大手企業」を皆がこぞって目指すという時代がありました。今でもブランド力のある大手企業は高い人気がありますが、キャリア形成に対する価値観が多様化したため、中小企業やベンチャー企業も支持を獲得してきています。同時に働き方も多様化しており、正社員にこだわらずフリーランスや個人事業主として独立を選ぶ人や、経営者として起業を選ぶ人も増えてきました。このような流れを受けて、「大企業」や「正社員」という安定したキャリア形成や働き方の魅力づけ自体が難しくなっています。
価値観が多様化していることについて、年代ごとの大まかな特徴を確認しましょう。
20代前半の世代は、デジタルネイティブと呼ばれています。デジタルネイティブとは小さい頃からインターネットを活用し、世界中から幅広い情報を収集することに慣れている世代です。そのため価値観が固定化しておらず多様な考えを受け入れられます。またSNSを通した発信が活発な世代です。彼らは「ありのままの自分を発信しそれを認めてもらう」という、等身大の自分や居心地が良い場所を求める傾向があります。大切にしているのはプライベートの活動や趣味の時間です。仕事においてはワークライフバランスを重視するため、リモートワークやフレックス勤務など自由度の高い会社を希望します。
20代後半は、親世代が経験したリーマンショックによるリストラや早期退職などを目の当たりにしてきた世代です。この世代は安定志向で、自分のキャリア観を大事にする特徴があります。また「大企業は安定しているから安心」という価値観が変わってきた世代でもあり、転職先も地名度や会社の規模で選択する人ばかりではありません。
「どのようなキャリアを形成すれば将来何があってもやっていけるか」という判断軸を持つ人もいます。そのため、就職の選択は、個人のキャリア観によって大きく分かれる傾向にあり、大企業を選ぶ人もいれば、今後成長するスタートアップ企業を選ぶ人もいます。また大企業を経て将来的にベンチャー企業へ転職するなど、長期視点でキャリアを考える傾向があります。
30代は就職氷河期後の求人回復や、リーマンショックでの求人の激減、東日本大震災などの見通しの立たない社会環境などの中で就活・転職をしてきたため、「希望の就職先に就けなかった」「納得のいくキャリアを形成できなかった」人も多い世代です。そのため、「社会環境に左右されないキャリアを築き直す」という意識が強くあります。
今まで積んできたキャリアや、その市場価値を冷静に判断し、足りないキャリアを転職でどう埋めるか、次の不景気が来る前にどれだけ自分のスキルや経験が積んでおけるかという焦りに似た感覚を持っています。キャリアアップが見込めない企業は早期に見切りをつけて、力をつけられる環境へと移行する傾向があります。
現在の20~30代は「会社が候補者を選ぶ」のと同様に、「個人も会社を選ぶ」という価値観を持っています。「主体的なキャリア」や「多様性のあるキャリア」が提唱される中で社会に出てきたことが背景にあります。
そのため企業は「候補者から選ばれる会社」になっていくことが「優秀な若手人材を採用する」上では必要です。選ばれる会社になるためには明確な人事戦略が欠かせません。魅力や特徴をうまく打ち出せないと、若手採用がますます難しくなっていきます。
では20~30代の人材に選ばれる会社になる上での「採用」のポイントに着目してみていきましょう。
若手人材が会社を選ぶ価値観は多様化している中では、不特定多数に向けて採用活動をしても成功はしません。多様化したニーズを把握し、ターゲットに合わせた魅力づけが必要です。
そのため、まずは自社の採用ターゲットを明確にしていく必要があります。任せたい業務内容を明確にし、それにはどのような経験・スキルが必要なのかに落とし込んでいきます。経験・スキルだけでなく、「協調性の高い人」「新規企画が得意な人」など求める人物像なども明らかにしていきます。
求めるターゲットが明確になったら、次は採用手法を検討し、状況に応じてアレンジしていきましょう。
求職者が転職活動で使う媒体やツールは年代ごとに変化してきており、募集団形成においてはその年代に合わせた媒体やツールを活用しアプローチしていきます。
例えば、転職サイトや人材紹介においても20代に強い転職サイトや、転職エージェントもあれば、30代以上に強い転職サイト・転職エージェントもあるので登録者属性などを考え活用していくとよいでしょう。
新型コロナウイルスの影響により、オンライン選考が主になりつつある中で、応募者に対して企業の魅力づけをすることが選考過程で難しくなっています。ターゲットに響く面接手法や、面接官の選定・育成や、面接前後のフォロー方法などもターゲットにあわせてアレンジしていく必要があるでしょう。
では、それぞれの年代にはどのようなアプローチ法が有効なのでしょうか。
デジタルネイティブの20代はWEBサイトを活用した転職活動はもとより、SNSやクチコミの情報にも敏感です。「本当の社風はどうなのか」「働く人たちがどんな人たちがいてどんなことを考えているのか」などリアルな企業の姿を知りたいと考えています。求人広告に掲載されるような働くメリットや魅力だけでなく、既存社員によるリアルな情報の発信も織り交ぜるなど、SNSによる発信をうまく活用すると良いでしょう。
一定のスキルが身についてきた30代は、よりスキルや志向に合った企業やポジションを求めるべく、人材紹介サービスの活用も盛んです。デジタル情報だけでなく信頼できるリアルな情報を求めているため、選考過程でのリアルな情報(オンライン含む)や、人材紹介会社やリクルーティングアドバイザーなどプロからの情報を収集し、活用していくとよいでしょう。
年代を問わず、若手人材へのアプローチで求められるのは「個に寄り添う」ことです。面接においては企業からの一方的な発信や質問で終わるような選考ではなく、候補者の考えや志向・キャリア観を引き出し、自社ではどういうことができるか、どんなキャリアステップが踏めるかなど個人の志向に応じた提案をすることが重要です。
ここでは、若手人材の採用に活用できる手法を紹介します。
一定のスキルや経験がある求職者を対象とした人材紹介サービスは多くありますが、若手に特化した人材紹介サービスもあります。入社後の育成を視野に入れた未経験者の採用や、経験・スキルよりも素養を重視した採用を希望する企業が活用できる人材紹介会社です。一般的な求人サイトの募集ページや、コーポレートサイト内の求人ページなどとは異なり、自社に合った人物タイプなども見極めてから候補者を紹介してもらえます。そのため企業は採用から獲得まで効率よく採用活動ができます。
リファラル採用は、すでに勤務をしている従業員の知人や友人を社員として紹介してもらう方法です。近年リファラル採用は、有効な採用手法になりつつあります。
現役で活躍する従業員の紹介であれば、自社に合うスキルや人物像を理解した上で、知人・友人を紹介してくれていると判断でき、円滑に選考を進められます。また自社の魅力づけがなされた状態で採用プロセスに進むことが多いため、選考方法も一般ルートとは別枠で用意するケースがあります。
一方、口コミやリアルな情報を重視する若手層は、実際に仕事をしている当人から直接情報を収集でき、かつ信頼ができる知人・友人からと紹介してもらうことで、安心して入社できると考えられます。
このような特徴から、リファラル採用は社員が紹介したくなる仕組み作りや組織作りがポイントです。例えば、紹介報酬制度を設け、紹介社員にも報酬が支払われるような仕組みを作ることで、既存社員のエンゲージメント向上も図れます。
Facebook・LINE・Twitter・InstagramなどSNSを活用した人材獲得手法をソーシャルリクルーティングと言います。ソーシャルリクルーティングは、若手層にアプローチする方法として有効です。募集情報だけではなく、社員の声や社内の生の情報など企業の社風や雰囲気を発信する上で利便性が高いと言えます。SNSを通じて情報が拡散されると、多くのターゲット層にコストをかけずに情報を届けられます。それだけでなくコメント機能を活かして、双方向のコミュニケーションをとることで、求職者は身近に企業を感じることができます。
ソーシャルリクルーティングで大事なのはSNSを継続的に運用することです。「更新が滞る」「コメントへの返信がない」場合はかえってマイナスの印象を与えるため、こまめに更新と対応をしていく必要があります。
ダイレクトリクルーティングは、企業が求職者に直接アプローチをする手法です。スカウトサイトなどを通じた個別のスカウトメール送信や、LinkedInなどをはじめとするSNSを通じた個別スカウトなどもあります。
いずれもターゲット一人ひとりに魅力づけやコミュニケーションをして、多様化する若手層の価値観や働き方に応じて的確なアプローチができるため、企業の採用活動における有効な手段の一つになっています。
ダイレクトリクルーティングは、成功率が高い手法ですが、採用の片手間で対応をしても成果はでません。採用部門の中には専任担当を配置するなどダイレクトリクルーティングに特化して強化を図る企業も出てきています。
若手に限らず、採用の成功には企業側が「選ばれる会社」になることが求められています。若手の求職者たちは企業の本質を見ようとする傾向が強いため、企業の良い部分も悪い部分も知った上で自分の価値観やキャリア観にマッチする会社を選ぼうとしています。そして自分のキャリアを企業に預けるのではなく、自分自身でキャリアを掴んでいこうという主体的なキャリア観に変わってきていることが特徴です。キャリアに主体的な若手が活躍できる組織作りこそが若手採用の成功につながると言えます。
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