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新型コロナ感染拡大により、課題が浮き彫りになった働き方の多様性。感染対策として政府はテレワークなどを活用した「出勤者7割減」を呼びかけました。2021年11月、経団連は多様な働き方を認める観点からテレワークを続けるべきとする一方で、政府が感染対策として呼びかけていた「出勤者7割減」という削減目標は「見直すべき」との提言を出しました。そうした動きを受けて、社員の働き方をまた新たな視点で検討し始めた企業も多いようです。
働き方の多様性で検討される代表的なポイントは、以下の4点です。
こうした取り組みを導入する際、導入後のメリットやデメリットといった影響から検討を進めがちですが、本来考えなければならないのは、そもそもなぜ新たな取り組みを検討するのかということです。根底にある「社員の多様性」という課題に向き合わず、「政府や団体が推進しているから」「世間のトレンドだから」といった動機だけで検討・導入してしまうと、何らかのルールや規定・規則といったせっかくの新しい仕組みが効果を十分に発揮できず、導入担当部門の徒労に終わってしまいます。
マンパワーグループ労働白書 (2020年10月)PDF
https://www.manpowergroup.jp/pdf/MPG_Future_for_Workers_By_Workers_JP.pdf
「What Workers Want #2 The Future for Workers, By Workers: Making the Next Normal Better for All 労働者が求めているものは何か (2)労働者による労働者のための未来: 新しい労働様式を、すべての人にとってより良いものにしていく」
組織のマネジメントは、社員の多様性がなく同様であってくれたほうが容易ではあります。しかしながら、労働人口の減少の中で企業に必要な人材を確保するには、どんな大企業や人気企業であっても多様な人材の活用が必須となっているのが現状です。
女性の就業率、労働力人口に占める高齢者の比率、障がい者の雇用者数、外国人労働者数、これらの数値は例年上昇していて、そのどれもが企業や産業の存続やイノベーションの重要な担い手となっています。企業が理想とするひとつの型に社員を無理矢理押し込めようとするマネジメントは、すでに過去のものとなりつつあるのです。
テレワークを始めとした働き方改革は、明らかに新型コロナ感染拡大前後で大きく変化し、根強く残っていた紙の契約書や印鑑、対面作業といった文化が見直され、ペーパーレスやリモート化が一気に進みました。
業務フローの変化は、より自由度の高い条件で人材をアサインするチャンスでもあります。リモート対応可能な業務であれば家庭や身体など何らかの理由で在宅勤務しかできない人材でも対応可能となります。また、より効率的に業務を構築し人材の適正化を行うことで短時間でしか働けない人材の採用や社員の副業・兼業の活性化に繋がる可能性もあります。社員の働き方と人材の多様化は連動しながら加速しているのです。
数日先でさえも社会や経済活動がどうなっているのか分からないという、これまでにない経験を私たちは共有しました。それぞれの社員が考える理想の働き方は、コロナが収束したとしても今後起こり得る類似の「パンデミック」や「災害」、また「出産・育児」「介護」「通院・闘病」「障がいや疾患の有無」といった直面するライフイベントやトラブルによって、都度変化します。
どんな時でも社員がいつも通り働き続けることのできる環境を、企業はこれからも継続して提供して行かなくてはならないのです。
マンパワーグループ労働白書「2021年 人材不足に関する調査」(2021年8月)PDF
https://www.manpowergroup.jp/pdf/MPG_2021_Outlook_Survery-Japan_JP.pdf
これまでとは違う価値観を認めることは、社員の衝突や軋轢を発生させることもあります。「これまではみんな我慢してやって来ていた」「仕事に家庭の事情を持ち込むなんてワガママだ」「プライベートを優先したいなら辞めたらいい」など、社員から反対意見がでることもあるでしょう。
また、異なる働き方、言語、文化、価値観を認め合うことは、感情的な戸惑いだけでなくコストや物理的な困難も伴うかも知れません。せっかく社員のためを思って導入する新しい仕組みを、どうすればトラブルなく提供することができるのでしょうか?
日本のビジネスシーンにおいて、社員の多様性というと「性別」「年齢」「国籍」「障がいの有無」などのカテゴリーがフォーカスされがちですが、経産省が定義するダイバーシティ経営で活かすべき「多様な人材」の定義には、「価値観」「キャリアや経験」、そして「働き方の多様性」も含まれています。社員の価値観は、今や世代や性別だけではカテゴライズ不可能なほどに多様化していて、入社経緯やこれまでに身に着けたスキルや経験といったキャリアジャーニーも社員によってさまざまです。
さらに、それぞれの働く背景にある家族構成やプライベート、仕事へのプライオリティや理想の働き方などまで検討の範囲とするならば、社員の価値観に果てしないパターンがあるかがわかるでしょう。
その膨大な価値観のパターンと、刻一刻と変化する社員の置かれている状況や社会の情勢をすべて網羅して検討することは、物理的に困難です。導入後の影響をあれこれ心配し、石橋を叩いて完璧な仕組み作るよりも、社員の抱える「こんな働き方を選択したい!」という声にいち早くアジャイルすることが有効だと言えます。動きながら柔軟に考えるといった、これまでよりも変化に対してしなやかな組織がこれからの時代は求められているのかも知れません。
コロナによる影響で社員の大量離職や新規採用の停滞が、グローバルではすでに課題になっています。日本での状況が落ち着いている今こそ、中長期的な対策を行って安定的な人材確保を目指し、新しい働き方を社員の定着とパフォーマンスの向上に展開するタイミングです。デメリットをメリットに転換し、働き方の多様化を企業のコストではなく更なる成長とすることができるのではないでしょうか。
仕組みよりも何よりも、まずは「社員の多様性」が存在することを認め、多様な社員をマネジメントすることを恐れずポジティブに捉えることこそが、新しい企業のダイバーシティとインクルージョンへの成功の近道なのです。
マンパワーグループ労働白書「2021年 人材不足に関する調査」(2021年8月)PDF
https://www.manpowergroup.jp/pdf/MPG_2021_Outlook_Survery-Japan_JP.pdf
新しい働き方を企業に導入するにあたって、経営陣や導入担当部門が「仕組みありきではなく、課題を正しく理解すること」以外に大切なことがもうひとつあります。
それは、「多様な価値観を学ぶ場を社員に提供すること」です。新しい価値観や多様性は、ここ数年学校教育でも強化されていますが、社会人生活が長い世代には学ぶ機会が提供されておらず、古い価値観がアップデートされずに今に至る社員が多く存在します。そのため、社員の新しい価値観への理解度には個々に大きな差があります。そうした社員の理解度をある程度同じラインまで引き上げて共通認識を持つことは、新しい仕組みの導入を大きくサポートするでしょう。
例えば、SDGsはコロナ禍で世界的にさらに注目されることになった新しい時代の社会的価値観であり、多様性を学ぶのに適した指標と言えます。新型コロナ感染拡大で景気が低迷し企業の経営が悪化すればSDGsも下火になるのではとの見解もありましたが、緊急事態宣言下で働く人々のさまざまな課題、医療や貧困の格差問題、社会における環境問題、さらには企業や産業の経済活動など、私たちひとりひとりの生活がSDGsと密接に関係していることが実感され、世代を超えて意識が高まることになりました。
SDGsは、中期経営計画や経営理念、企業ビジョンを社員に伝える手段としても有効です。ダイバーシティとしてフォーカスされにくい多様な価値観を正しく学ぶことは、社員全員が当事者として新しい働き方を考え、協力して事業に貢献して行くためのモチベーションを育むことにも繋がります。企業の成長戦略として、SDGsやダイバーシティの研修を社員に提供してみるのもひとつの方法です。
マンパワーグループでは、企業のダイバーシティとインクルージョンを助ける社員研修を提供しています。
社員研修
SDGsの推進、浸透、事業企画、経営ビジョンや企業理解を伝えるためのオンラインSDGs研修を行います。
新卒採用
インターンシップ、説明会、選考グループワーク、内定者研修にも活用できるプログラムを提供します。