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2025年に雇用保険法が時代の変化にあわせて改正されました。
今回の改正では、育児休業給付の拡充やリスキリング支援の強化など、働くすべての人に関わる重要な変更点を含んでいます。
改正内容が多岐にわたるため、企業が実務対応を検討するには丁寧な情報整理が必要です。
本記事では、2025年の雇用保険法改正のポイントと企業が対応するべき点を分かりやすく解説します。

雇用保険法は、労働者が失業した場合や雇用の継続が困難になった際に、生活と雇用の安定を図り、就職を促進するための給付をおこなう法律です。
雇用保険法に基づき、働く人々のキャリアのさまざまな局面で以下のような支援が提供されます。
また、金銭的な支援だけでなく、雇用機会や労働者の能力開発といった、将来的な雇用の安定を図るための事業も含まれています。
雇用保険法は労働者のセーフティネット だけでなく、将来的な安定した雇用を支援する法律です。

ここでは、雇用保険法の適用範囲について解説します。
雇用保険は、原則として労働者を一人でも雇用している事業所に適用され、そこで働く労働者は被保険者として扱われます。
対象となるのは、正社員だけでなく、パートタイマーやアルバイト、契約社員など雇用形態に関わらず、一定の加入条件を満たす方です。
また、65歳以上の労働者も高年齢被保険者として対象です。
一方で、以下の条件に当てはまる場合は、雇用保険の適用対象外となりますので注意しましょう。
雇用保険に加入するためには、以下の2つの条件を両方満たさなければなりません。
上記の条件を満たしている場合、正社員やパート、アルバイトといった雇用形態に関係なく適用されます。
例えば、週に3日、1日7時間勤務する契約のパートタイマーは、週の所定労働時間が21時間となり、加入条件を満たすため雇用保険の対象です。
また、2028年10月に施行が予定されている雇用保険法の改正では、1週間の所定労働時間が20時間以上の人が対象であったところ、10時間以上に変更されるなど、加入条件はさらに緩和されるため、 となります。
雇用保険法では、働く人のさまざまな状況に応じて、多岐にわたる給付金や助成金が用意されています。
| 給付金の種類 | 目的 | 具体例 |
| 求職者給付 | 労働者が失業し所得を失った場合に、安定した生活を送りながら再就職活動を支援する制度 | 基本手当 傷病手当 など |
| 就職促進給付 | 失業した人がより早期に再就職するのを奨励・支援するために設けられている制度 | 再就職手当 就業促進定着手当 など |
| 教育訓練給付 | 労働者のスキルアップやキャリアチェンジを支援する給付 | 教育訓練給付金 など |
| 雇用継続給付 | 労働者が働き続けることが困難になった際に、その継続を援助するための給付金 | 高年齢雇用継続給付 介護休業給付 など |
制度を理解し活用することで、キャリアの中断を最小限に抑えたり、新たなスキルを身につけて市場価値を高めたりできます。

働き方の多様化や社会構造の変化に対応し、労働者のセーフティネットを一層強化するため、2025年以降に雇用保険法が改正されます。
具体的な改正内容は以下のとおりです。
2025年4月1日から、自己都合で退職した人に対する基本手当(失業手当)の給付制限が見直されます。
従来の制度では、自己の都合で会社を辞めた場合、失業手当を受け取るまでに原則として(5年以内に2回を超える場合は3ヶ月)の給付制限期間がありました。
今回の改正により、離職期間中や離職する前の1年以内に、労働者自らがキャリアアップなどを目的とした教育訓練をおこなった場合には、給付制限が解除されます。
さらに、原則の給付制限期間自体も2か月から1か月へと短縮されています。
本改正は労働者が主体的に学び直しをおこない、円滑に就職ができるよう後押しするものです。
参考:雇用保険法等の一部を改正する法律(令和6年法律第26号)の概要|厚生労働省
2025年10月から労働者の主体的な学び直しを支援するための「教育訓練休暇給付金」という新しい給付金制度が創設されます。
教育訓練休暇給付金の目的は、在職中の雇用保険被保険者が、教育訓練を受けるために無給の休暇を取得した場合の、その期間における生活費の支援です。
従来では、労働者が自発的に教育訓練に専念するために休業する場合、生活費を直接支援する仕組みがありませんでした。
今回の改正により、雇用保険の被保険者が教育訓練のための無給の休暇を取得した場合、失業時に支給される基本手当と同水準の給付金を受け取れるようになります。
一方で、給付を受けるには、被保険者期間が5年以上あることなどの要件を満たす必要があります。
参考:雇用保険法等の一部を改正する法律(令和6年法律第26号)の概要|厚生労働省
2025年4月より、これまで暫定措置として運用されてきた複数の給付制度について、内容の見直しを実施します。
具体的には、以下の制度が対象となります。
参考:雇用保険法等の一部を改正する法律(令和6年法律第26号)の概要|厚生労働省
2025年4月から、男女ともに育児休業を取得しやすい環境を整備するため育児休業給付の給付率が引き上げられます。
従来の制度では、育児休業給付は休業開始前の賃金の67%、180日経過後は50%が支給され、手取りに換算すると8割相当とされていました。
今回の改正によって最大28日間、休業開始前賃金の13%相当額を給付し、育児休業給付とあわせて80%、手取りで10割相当の給付に変更します。条件としては、給付を受ける場合には、子の出生後、 に両親がともに14日以上の育児休業の取得が必要です。
なお、配偶者が専業主婦、または専業主夫である場合や、ひとり親家庭の場合でも、同様に給付率が引き上げられる配慮がなされています。
※男性は子の出生後8週間以内、女性は産後休業後8週間以内
参考:子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律(令和6年法律第47号)の概要|厚生労働省
育児休業給付の支給額は年々増加しており、財政基盤の安定化が急務です。この給付制度を将来にわたって安定的に運営していくため、段階的に財政基盤を強化する措置が講じられます。
特に2025年4月からは、育児休業給付にあてられる保険料率について改正されます。
具体的な内容は以下のとおりです。
本改正により今後の男性の育休取得率の大幅な上昇などにも対応できる、持続可能で安定した制度運営を目指しています。
参考:雇用保険法等の一部を改正する法律(令和6年法律第26号)の概要|厚生労働省
2025年4月から、育児期における柔軟な働き方を支援するため、新たに「育児時短就業給付」が創設されます。
従来では、育児のために短時間勤務制度を利用した際、賃金が低下した労働者の収入を補う給付制度はありませんでした。
今回の改正により、2歳未満の子を養育するために時短勤務を選択し、賃金が低下した被保険者に対して、低下した賃金額の10%を支給する制度が始まります。
給付率は、育児休業よりも時短勤務で職場復帰、さらに時短勤務よりも通常の勤務形態での就業を促すという観点から設定されています。
参考:子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律(令和6年法律第47号)の概要|厚生労働省
2025年度より、子ども・子育て関連政策の財源と支出の全体像を明確にするため、新たに「子ども・子育て支援特別会計」が創設されます。
具体的な内容としては、以下の2つを統合したものを子ども・子育て支援特別会計と制定しています。
なお、子ども・子育て支援特別会計は、内閣総理大臣が管理する「子ども・子育て支援勘定」と、厚生労働大臣が管理する「育児休業等給付勘定」の区分です。
今回の創設により、政策全体の費用負担の構造が「見える化」され、国民への透明性を高めるとともに、効果的で一元的な政策運営が実現します。
参考:子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律(令和6年法律第47号)の概要|厚生労働省
2028年10月から、働き方の多様化に対応し、雇用のセーフティネットを広げるため、雇用保険の適用対象が拡大されます。
従来の制度では、雇用保険の被保険者となるための要件の一つとして、週の所定労働時間が20時間以上必要でした。
今回の改正により、要件が週の所定労働時間「10時間以上」へと変更されます。
また、新たに対象となる労働者も、現行の被保険者と同様に、失業した際の基本手当や、育児休業給付、教育訓練給付など、各種給付の対象となります。
参考:雇用保険法等の一部を改正する法律(令和6年法律第26号)の概要|厚生労働省

ここでは、雇用保険法の改正時に企業がするべき対応として以下の3つの観点で解説します。
今回の雇用保険法の改正に伴い、企業は就業規則の見直しを実施しましょう。
特に法改正によって、育児休業給付の拡充や、新たに「教育訓練休暇給付金」「育児時短就業給付」といった制度が創設されます。
これらの新しい制度に従業員が対応できるよう、法律の定めに沿って整備し直す必要があります。また、単に規程を改定するだけでなく、全従業員に明確に周知し、誰もが新しい制度を円滑に利用できる体制を整えることが重要です。
また、新しい保険料率や給付制度に対応できるよう、給与計算・社会保険管理のデータ設定を見直しや手続き・フローなどもあわせて見直しましょう。
法改正への適切な対応は、企業のコンプライアンス体制を維持する上で大切な取り組みです。
今回の改正により、企業は従業員育成戦略を見直す良い機会となります。
今回の雇用保険法の改正には自己都合退職の給付金の条件変更やリスキリングの支援などが該当します。結果として、転職・再就職のハードルが下がる可能性があるためです。
企業としては、社員の離職リスクをふまえて今後のキャリア管理を進める必要があるでしょう。また、福利厚生や教育訓練制度を整備することで「会社としての魅力」を高める手法も必要に応じて検討が必要です。
法改正による社内の規定変更だけでなく、労働環境の整備もあわせて実施しましょう。
特に、育児関連給付の拡充に伴い、企業は従来以上に、従業員が子育てをしながら安心して働き続けられる労働環境を整備することが重要です。
具体的には、管理職への研修を通じて制度への理解を深めてもらったり、代替要員の確保や業務プロセスの見直しをおこなったりしましょう。
多様な働き方に対応できる柔軟な人事制度や労務管理体制を構築することは、優秀な人材の確保と定着にもつながり、企業の持続的な成長に必要です。

ここでは、雇用保険法のよくある質問について解説します。
2025年に施行される雇用保険法の変更点は以下の通りです。
雇用保険に未加入の場合、罰則が科される可能性があります。
事業主は、雇用保険の加入要件を満たす労働者を雇用した場合、雇用保険に加入させる法的な義務があるためです。
義務を怠り、ハローワークへの届出をおこなわなかった場合、雇用保険法第83条に基づき、「6か月以下のまたは30万円以下の罰金」が科されることがあります。
また、遡って保険料を徴収されるだけでなく、延滞金が発生することもあるため、加入手続きは速やかにおこなわなければなりません。
現行の制度では、週の所定労働時間が10時間のパート労働者は、原則として雇用保険の加入対象にはなりません。
現在の加入要件は、週の所定労働時間が「20時間以上」であるためです。
しかし、法改正により、要件は将来的に変更されるため注意が必要です。
具体的には2028年10月から、雇用保険の適用対象が拡大され、週の所定労働時間が「10時間以上」の労働者も加入対象となります。したがって、改正法施行後は、週10時間勤務のパート労働者も雇用保険の対象です。
2025年の法改正は、企業の人事労務管理に多岐にわたる影響を及ぼします。
特に以下の3点についての影響が考えられるでしょう。
それぞれの状況を踏まえて、各企業には対応が求められます。
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雇用保険法は、失業時に労働者の生活を守るだけでなく、今後のキャリア形成や育児・介護との両立を支えるために必要な法律です。
特に2025年の改正では、働き方の多様化や社会のニーズに応えるべく、育児支援の強化やリスキリング支援の拡充などが施行されます。
従業員にとってはより手厚い支援を受けられる機会となる一方、企業にとっては就業規則の改定や環境の整備などにおいて迅速かつ適切な対応が求められます。
変更点を正確に理解し、適切な労務管理を実践することが、企業の持続的な成長にもつながるでしょう。