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リテンションで人材流出防止│メリットや重要性、施策例を紹介

掲載日2022年6月 7日

最終更新日2022年7月 8日

目次

    人手不足が社会問題化する中、採用だけではなく、今いる人材の流出を防ぐことも重要視されています。人材流出防止のための施策のひとつに「リテンション」があります。本記事では、リテンションとは何か、また、施策としてはどのようなことをすればよいのかなどを解説します。

    リテンションとは

    「リテンション」とは、直訳すると「保持」「維持」などの意味を持つ言葉です。日本で使われるときには、その場所に人を長期定着させるという意味合いで多く使われます。

    リテンションという言葉の使われ方

    ビジネスにおいてリテンションという言葉を使うのは、主に2つの領域です。

    1つは人事領域における、人的資源管理の場面です。この場合のリテンションとは、従業員が長期的に組織に定着することを表します。

    もう1つはマーケティング領域です。この場合のリテンションは顧客維持、つまり顧客との関係性が長期的に定着することを表します。

    なお、本記事では人事領域におけるリテンションについて解説します。

    人事におけるリテンションが重要になった背景

    近年、人事においてリテンションという言葉が使われるようになった背景には、大きく3つのことが挙げられます。

    働き手の減少

    1つ目は、少子高齢化による人口減少により、働き手が少なくなったことで、人材が不足し、獲得競争が激しくなっていることが挙げられます。既存の社員の流出をいかに防止するかがより重要になってきています。

    旧来の日本型雇用システムの衰退

    2つ目は、終身雇用・年功序列といった旧来の日本型雇用システムの衰退です。かつては一度入社した企業で定年まで働き続けることが当たり前で、組織と従業員の間には強い結びつきがありました。しかし、景気状況の変化による終身雇用や年功序列のシステムの崩壊や、個の尊重が重視されるようになったことで、従業員個人と組織のつながりが希薄になりつつあります。

    3.転職市場の活性化

    3つ目は、1、2で挙げた要因の影響もあり、転職市場が活性化していることです。転職活動をサポートするさまざまなサービスも増え、人材の流動化が顕著になっています。需要の多いスキルを持つ人材や若手人材であれば、より転職もしやすいでしょう。

    これらの背景から、若手人材やハイスキル人材を中心に退職者は増えています。人材流出が頻繁に発生すると組織の弱体化は免れません。そのため、リテンション施策の実施は組織にとって必須といえます。

    リテンションの4つの効果

    リテンション施策を実施することで、具体的にどのような効果があるのかを、いくつかの視点から解説します。

    従業員のモチベーションアップ

    リテンション施策は従業員の定着を促す必要があるため、従業員にとって魅力的に映る施策が多くみられます。従業員にとってはその企業に所属することのメリットが多いため、「この会社に長く勤めて貢献したい」という気持ちも生まれやすく、それが生産性を高めることにも繋がります。

    また、リテンション施策は、モチベーションアップだけでなくモチベーションダウンの防止にも効果的に作用します。

    従業員の退職は、その周囲のメンバーにもネガティブに作用することがあります。「ほかの人が辞めていく組織に自分は残っているのだ」と感じ、モチベーションが下がってしまうのです。

    昨今では、シニア人材の持つ知識や技能の活用も注目されています。リテンション施策により、シニア人材が高いモチベーションをもつことができれば、長年培った技能や知識を発揮し、組織の発展や次世代育成に貢献することにもつながります。

    安定した事業戦略の遂行

    退職による人材の入れ替わりが相次ぐ組織は、事業の成長戦略を描くのが困難になり、中長期的な事業計画の見通しが立てにくくなります。場合によっては、計画の見直しをせねばならない状況になるでしょう。リテンション施策によって従業員が定着することで、事業戦略を計画通りに遂行できるようになります。

    採用・育成コストの低減

    若手人材を中心に、早期退職の問題は常態化しています。採用・育成のコストをかけたにもかかわらず、十分に活躍しないうちに退職してしまう状況は、組織にとって大きな損失です。欠員補充の採用にも大きなコストがかかるでしょう。リテンション施策により人材の退職を防げれば、育成後も長期的な活躍が期待できます。

    最近では、就活や転職活動での企業選びの際に、従業員の離職率をチェックする人が増えています。離職率の低さは企業アピールのひとつとなり、人材採用にもポジティブに働きます。

    事業戦略の計画的な遂行および成長力・競争力の向上

    退職による人員の頻繁な入れ替わりは、企業の競争力を支える知的資産(スキル、ノウハウ、組織力、ステークホルダーとの関係性など)が蓄積されづらくなるということです。その結果、中長期的な事業計画の見通しが立てにくくなり、安定した事業戦略の遂行が阻害されます。場合によっては、計画の見直しをせねばならない状況も起こり得ます

    従業員が退職するということは、労働力が失われる、ノウハウなどが蓄積されないというだけにとどまらず、さらに、これまで培ってきた知的資産が他社に流出するということになります。前述のとおり、代替人材の育成は簡単にできるものではありません。そうなれば、企業の成長も停滞し、ひいては他社との競争力が低下してしまう恐れもあります。

    従業員の定着を促すリテンション施策は、成長力・競争力の向上に寄与する施策といえるでしょう。

    4つのリテンション施策

    実際にリテンション施策を行う際に検討したい4つの施策を解説します。

    ワークライフバランスを整備する

    ワークライフバランスが取りやすい制度は、従業員が仕事を含めた人生そのものを充実させる助けになります。例えば、育児、介護や病気の治療などと仕事の両立ができるように、テレワークやフレックスタイム制度といった柔軟な働き方を導入することで、従来であれば退職を選択せざるをえなかった人が、働き続ける選択を持ちます。

    有休休暇の取得や時間外労働の削減を、会社が積極的に働きかけることも定着を促進する1つの方法です。

    賃金体系を見直し、透明化する

    公平な評価に基づいた報酬は、従業員のリテンションに効果があります。自社の経営方針に沿った評価設計と、それが従業員にとって公正かつ透明性のあるものにしなければなりません。 また、同一労働同一賃金の導入により正規雇用と非正規雇用の格差を是正することは、非正規雇用の従業員のリテンションにも効果があります。

    上司と部下との対話の機会を増やす

    上司と部下が1対1でミーティングをする「1on1ミーティング」など対話の機会を定期的に設けることも、リテンション施策の1つともいえます。

    1年に2回ほど行われる人事評価面談だけでは、プライベートを含め、部下のことを深く理解することは困難です。対話の機会を多く設けることで、部下のことを深く知ることができ、良好な関係性の構築に活かせるでしょう。

    また、定期的に対話することは、部下の悩みや問題を早い段階で知るきっかけにもなり、退職につながりかねないトラブルも事前に防ぐことにも効果的です。

    社員のキャリアアップ・スキルアップ支援

    成長意欲を持っている優秀な人材は、上司から見れば手がかからない部下といえるでしょうが、本人としては「自社での成長は期待できない」と感じているかもしれません。

    リテンション施策としては、個々のキャリアアップ・スキルアップの計画を立て、人事・上司・本人などで共有し、進捗を管理していくことが効果的でしょう。汎用性のあるスキル開発を行うことで従業員は安心して自社でキャリアやスキルの向上に励むことができ、結果的に長期定着につながります。

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    リテンションの施策例

    実際に企業が行っているリテンションの施策を紹介します。

    「生き方改革」で離職率を大幅低減

    長い歴史を持つ大手食品メーカーのA社は、「生き方」改革を掲げ、大規模な人事制度改革を行っています。テレワークやフレックスタイム制の導入はもちろん、育児や介護などのさまざまな事情に対応するために、本人が希望する勤務地に一定期間固定することを希望でき、本人が希望する勤務地に転勤したいという希望を出せたりするという制度を設けました(期間・回数内の制限あり)。そのほか、キャリア構築の機会として副業制度を設けるなど、さまざまな取り組みを行っています。

    一人ひとりへのキャリア支援で新卒3年後定着率100%

    デベロッパーのB社は、2020年4月に発表された「CSR企業総覧」の「新卒の3年後定着率」で定着率100%として上位にランキングされています。人材育成方針として、OJTを中心に、コミュニケーションを通じて計画的に必要な能力を育成しています。

    キャリア形成や能力開発についても、面談の機会を数多く行い、一人ひとりに向けた能力開発や支援を行っています。ジョブローテーションでのプロフェッショナル育成を実施しているほか、一人ひとりの社内研修時間について年間計画を立てて確保するなど、熱心なキャリア支援を行っています。

    退職後、6年間自由に復職できる制度で離職率減少

    ソフトウェア開発のC社は、ワークスタイル変革としてさまざまな制度を実施しています。その中でもユニークなのは、「退職後、6年の間は自由に復職できる」という制度です。従業員が一度離職しても、その後6年の間に社外で得た経験とともに復職できれば、多様性と重要な経験を取り入れた事業展開が可能になります。一見、退職しやすい制度に見えますが、ほかの制度も相まって、離職率は以前より飛躍的に減少しています。

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    まとめ

    今回紹介した離職率低下に効果のあった事例を見てみると、一人ひとりに焦点を当てたきめ細かな施策や、従業員の人生そのものを大切にする施策がリテンションの効果を高めていることがわかります。個と組織の関係が希薄になりがちな時代だからこそ、リテンションで新たなつながりを築き、組織の力を強化していくことが急務といえるでしょう。

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    著者プロフィール

    木山美佳(人材育成コンサルタント・キャリアコンサルタント)

    (株)キャリ・ソフィア代表取締役 (一社)ダイバーシティ人材育成協会 代表理事 大手総合人材サービス会社、JAL系研修会社を経て2011年に株式会社キャリ・ソフィアを設立。人材育成を通して5万人以上のキャリア形成に携わる。キャリア教材考案者。大阪府立大学大学院人間科学修士(博士後期課程単位取得退学)。国家資格キャリアコンサルタント。月刊人事マネジメント連載記事「部下指導は伝え方が9割」執筆、著書『自分から動く部下が育つ8つのパワーフレーズ』(同文舘出版)

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