
目次
労働基準法では、労働環境の健全性を確保するため、1日および1週間あたりの労働時間の上限が定められています。
しかし、変形労働時間制の導入で、従業員と雇用主が合意のもと、一定の要件下で仕事の繫閑に合わせた労働時間の配分を行うことができます。変形労働時間制は、特定の時期や季節に仕事が集中しやすい業種に向いていると言えます。
本記事では、変形労働時間性のメリットやデメリット、採用すべき判断基準などについて詳しく解説します。
「変形労働時間制」は、繁忙期の労働時間を長くする代わりに、閑散期の労働時間を短くするなど、仕事の繁閑や業務の特殊性に応じて、経営者と従業員が話し合いのうえ労働時間の配分を調整して、従業員の労働時間を全体として短縮させる仕組みです。
戦後、労働基準法が制定されましたが、日本の労働時間は諸外国に比べると長いものでした。そこで、労働時間を短縮する施策の1つとして、変形労働時間制が導入されました。経理部のように月末・月初に仕事が集中する部署や、中元・歳暮を取り扱うために盆暮れに多忙を極める業種など、幅広く変形労働時間制が導入されました。
変形労働時間制の導入は、労働時間の配分を業務の繁閑に合わせて調整できるため、従業員の閑散期の待機時間の削減、ひいては、全体としての労働時間・時間外労働の削減を図ることができます。そのようなメリットがある一方で、導入と管理が複雑で手間がかかる欠点もあります。まずは、企業と従業員のメリット・デメリットを確認していきましょう。
変形労働時間制の導入による企業側のメリットは、変形期間における法定労働時間の総枠の範囲内であれば、1日8時間を超えていても所定労働時間となるため、時間外労働および割増賃金の発生を減らす効果が期待できることです。
また、変形労働時間制の導入は、労使の協力のうえで柔軟な労働時間の調整を行うものであり、従業員の過重労働を防ごうとする姿勢の表れとして、従業員や採用応募者などに好意的に受け止められるというメリットもあるでしょう。
さらに、業務量に応じた労働時間の配分ができるので、閑散期の手持無沙汰な時間が減るなど、人的リソースの最適化・業務の効率化が図られ、従業員一人あたりの生産性を向上させることができます。
企業側の最大のデメリットは、従業員ごとの就業時間のばらつきにより勤怠管理や賃金計算が複雑になる点です。変形労働時間制導入後は、従業員や部署ごとに所定労働時間が異なるため、それぞれ計算する必要があります。
また、変形労働時間制の導入にあたり就業規則を改定する必要があり、労使協定の締結も必要です。改定した就業規則や締結した労使協定の内容は従業員に周知させる必要があり、周知が不徹底だと、従業員の不平や不満につながりかねません。
従業員側のメリットは、忙しい時期と業務の落ち着いている時期をあらかじめ想定したうえで、メリハリをつけて仕事ができるところです。
繁忙期は長時間勤務になるものの、閑散期は労働時間を短縮して自分の自由時間を多く持つことができるため、趣味などのプライベートの活動に時間を充ててリフレッシュすることができます。
従業員側のデメリットとしては、固定労働時間制と比較するとどうしても労働時間が不規則になるということです。また、いくら総労働時間が変わらないと言っても、1日の労働時間が長時間になることはかなりの負担になります。そして、繫忙期の休暇は取りづらくなるので、プライベートの時間の調整も必要になるでしょう。
労働基準法では、1日8時間、1週40時間を超えて労働させることはできません。しかし、例外的に変形労働時間制を導入することで、期間内平均が上限の時間内であれば、1日8時間、1週40時間を超えて所定労働時間を設定できるようになります。
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法定労働時間の超過など、労働基準法違反時の罰則については「 労働基準法違反とは?罰則と13の違反例、ポイントを社労士が解説」で詳しく解説しています。
変形労働時間制は期間によって、「1カ月単位の変形労働時間制」と「1年単位の変形労働時間制」があり、ほかにも「1週間単位の非定型的変形労働時間制」や「フレックスタイム制」があり、それぞれ運用方法等が異なります。それぞれの制度について、順を追って解説します。
早見表
|
対象期間 |
労働時間 |
1カ月単位 |
1カ月以内 |
1週間の平均が40時間以内 |
1年単位 |
1カ月以上1年以内 |
1日あたり10時間以内 1週間あたり52時間以内 |
1週間単位 |
1週間 |
1日あたり10時間以内 |
フレックス |
対象期間なし |
清算期間を平均して週40時間以内 |
「1カ月単位の変形労働時間制」は、対象期間を1カ月以内に決めて、その期間内において1週間あたりの労働時間の平均が、法定労働時間の40時間以内に収まっていれば、特定の日に8時間、あるいは週に40時間を超えて所定労働時間を設定できる制度です。
なお、特例措置対象事業場である常時10人未満の労働者を使用する商業、映画・演劇業(映画の制作の事業を除く)、保険衛生業、接客娯楽業は、1日8時間、1週44時間を超えて所定労働時間を設定できます。
例えば、月初が閑散期で月末が忙しい会社であれば、月末の労働時間を法定労働時間の8時間よりも長く設定し、月初は8時間よりも短く設定することができます。
「1年単位の変形労働時間制」は、対象期間を1カ月以上1年以内に定めて、その期間内において1週間あたりの労働時間の平均が法定労働時間の40時間以内に収まれば、特定の日に8時間、あるいは週に40時間を超えて所定労働時間を設定できる制度です。
但し、1日の所定労働時間は10時間、1週間の所定労働時間は52時間が上限となります。
対象期間が3カ月を超える場合には、48時間を超える週は連続3回まで、かつ3カ月間に3回までとなり、年間の所定労働日数は280日が上限となります。
また、連続して労働できる日数は原則6日、特に忙しい特定期間においては1週間のうち1日休日を確保し12日までとされています。
「1週間単位の非定型的変形労働時間制」は、従業員が30人未満の小売業、旅館、料理・飲食店の事業で、1週間単位で毎日の労働時間を決められる制度です。
この制度により、1日の所定労働時間は10時間まで設定できますが、1週間の所定労働時間は40時間以内とし、1週間の各日の労働時間については、前週末に書面で労働者に通知しなければなりません。
フレックスタイム制は、これまでの変形労働時間制とは特徴が異なります。
フレックスタイム制は、労働すべき時間(清算期間)を平均して週40時間を超えない範囲で設定し、その範囲内における労働日の始業及び終業の時刻の決定を労働者の裁量に委ねる制度です。
法律要件ではありませんが、実務的には1日の労働時間帯を、労働者が必ず労働しなければならない時間帯(コアタイム)と、労働者が自分の裁量で労働できる時間帯(フレキシブルタイム)に分けての実施が一般的です。
フレックスタイム制で1カ月を超える期間を清算期間と定めた場合は、清算期間中の労働時間が平均して週40時間以内、かつ1カ月の労働時間が週平均50時間以内にする必要があります。これを超えた場合には、割増賃金を払う必要があります。
変形労働時間制を導入する際には、事前に労働者の勤怠実績を調査して、労働者の勤務実態をよく把握してください。
この調査で、労働者が時間外労働を多くする時期とまったくしない時期があれば、変形労働時間制の導入を検討する余地があると考えられます。
また、時期や曜日、時間帯で業務量に明確な特徴がないか、就業規則の変更は可能か、勤怠管理システムや労務管理システムの導入は可能か、人事評価は適切に行うことができるかなど、広範囲にわたってしっかり検討する必要があります。
例えば、大型の量販店で働く販売員の場合、年末年始や大型連休などのセール期間には客足が増えて繁忙になりますが、平日や閑散期は比較的落ち着いています。このような販売業の特性を考慮すると、忙しい時期には販売員の労働時間を増やし、閑散期には減少させるなどの変形労働時間制を導入することが適切でしょう。
この場合、販売ピークのタイミングを事前に把握し、それに基づいて月ごと、あるいは週ごとの労働時間の配分を行います。ブラックフライデー、クリスマスシーズン、年度末の販売キャンペーンなど、明らかに顧客の流入が見込まれる期間には、シフトを増やして対応力を強化します。一方で、通常期には所定労働時間を削減するなどして、従業員の過度な負担を避けると共に、人件費の適正化を図ることができます。
このような制度を設計する際には、各販売員の能力や顧客動向、過去の販売データなどを分析することが重要です。それによって、どの時間帯にどの程度の人手が必要かを予測し、より効率的な労働時間管理を行うことが可能となります。
変形労働時間制の導入により、労働時間が平均週40時間を超えなければ、繫閑に応じて労働時間や労働日数を設定できます。しかし、運用に不備があると罰則の対象になりうること、あるいは運用に不備はなくとも従業員への説明が不足していると、誤解を招き不要なトラブルや生産性低下に発展しかねないリスクがあるので注意しましょう。
変形労働時間制を導入するにあたり、まず注意することは、就業規則や労使協定の内容をどうするかです。記載事項は、就業規則と労使協定はほぼ同様です。それぞれの変形労働時間制の記載事項について列記します。
1カ月単位の変形労働時間制を導入する際、変形期間における各日、各週の労働時間を定めます。最初に決めた労働時間の途中変更はできないので、特に注意してください。 その上で就業規則に次の項目について定め、1カ月単位の変形労働時間制を採用することも明記してください。労使協定の締結と届出は省略することができます。労使協定を締結する場合は、労使協定の有効期間を明記してください。
その上で、従業員へ周知することが必要になります。
就業規則の記載事項は次のようになります。
1年単位の変形労働時間制を導入する場合には、従業員に対して、あらかじめカレンダーで定めた労働日と休日、労働日ごとの勤務時間の事前周知が義務付けられています。このカレンダーで特定された労働日や労働時間を使用者は変更できません。仮に労使の合意があったとしても、対象期間の途中で労働日や労働時間を変更できないので、注意してください。
1年単位の変形労働時間制を導入する際の、就業規則の記載事項は次のようになります。
また、労使協定には同様の事項を記載し、従業員の過半数代表と締結して、労働基準監督署へ届け出でください。
1週間単位の非定型的変形労働時間制を導入する場合には、変形労働時間制の内容について就業規則に記載し、以下の項目について従業員の過半数代表と労使協定を締結、労働基準監督署へ届け出てください。
1日の所定労働時間の上限が、10時間であることをしっかり確認してください。
また、会社が前週末までに、その週の各日の労働時間を書面で通知する旨、通知の時期、特別な事由があるときの変更手続きなども記載してください。
フレックス制を導入する場合には、その内容について就業規則に記載し、以下の項目について従業員の過半数代表と労使協定を締結、労働基準監督署へ届け出る必要があります。
但し、清算期間が1カ月以内の場合には届出は不要です。
就業規則には、フレックス制を採用する旨、始業・終業の時刻を労働者の自主的な決定に委ねる旨を記載します。
早見表
労働時間の上限 |
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1カ月単位 |
週の平均は40時間以内 |
1年単位 |
1日あたり10時間以内 |
1週間単位 |
1日あたり10時間以内 |
フレックス |
清算期間を平均して週40時間以内 時間外労働 月あたり45時間超(年6回以内) |
1カ月単位の変形労働時間制では、平均して1週間あたりの労働時間が40時間を超えないよう、1カ月の上限時間は月の暦日数が28日の月は160.0時間、29日の月は165.7時間、30日の月は171.4時間、31日の月は177.1時間となります。
1年単位の変形労働時間制では、1日あたりの労働時間の上限時間は10時間で、1週間あたりの上限時間は52時間と定められています。
1週間単位の非定型的変形労働時間制では、1日あたりの労働時間の上限時間は10時間となります。
フレックスタイム制では、月45時間を超える特別条項の回数が年6回以内であることと、年間の時間外労働が年720時間以内であることが必要です。また、時間外労働と休日労働の合計が単月100時間未満かつ2~6カ月平均が80時間以内であることが必要です。
変形労働時間制は、法定労働時間を超えて働いても、残業代が出ない日があります。但し、すべての変形労働時間制の設定期間内の労働時間が上限を超える労働は、残業扱いになります。
残業代の計算方法は、労働基準法で定められた次の計算方法で求められます。
残業代 = 残業時間 ✕ 1時間あたりの賃金 ✕ 割増率
割増率は通常と同様で、時間外労働には1時間あたりの賃金の1.25倍、休日労働には1.35倍、深夜労働には1.50倍になります。
変形労働時間制における残業は、基本的に所定労働時間と法定労働時間のうち、長い方を超えた時間の部分を指します。
変形労働時間制を導入していて、繁忙期の所定労働時間を9時間にしている場合、実際の労働時間が10時間であれば、9時間を超えた1時間が残業時間になるわけです。変形労働時間のそれぞれの場合の残業時間について詳しく解説します。
1カ月単位の変形労働時間制の残業は、日、週、月の単位で分けて考える必要があります。
日の単位では、1日の所定労働時間を8時間と設定した場合8時間を超えたところから割増賃金が発生し、週の単位では、週の所定労働時間を50時間と設定した場合50時間を超えたところから、月の単位では、月の暦日数で変わり月の暦日数が28日の月は160.0時間、29日の月は165.7時間、30日の月は171.4時間、31日の月は177.1時間を超えたところから割増賃金となります。
|
一例 |
残業カウント |
日 |
1日8時間勤務と設定した日 |
8時間を超えたところから |
週 |
週50時間と設定した週 |
50時間を超えたところから |
月 |
28日の月 |
160時間を超えたところから |
29日の月 |
165.7時間を超えたところから |
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30日の月 |
171.4時間を超えたところから |
|
31日の月 |
177.1時間を超えたところから |
1年単位の変形労働時間制の残業は、1カ月単位の変形労働時間制の日、週、月の単位と同じですが、それに加え年の単位が入ってきます。1年の単位ですと、1年の暦日数が365日の法定労働時間の総枠は2085.7時間、うるう年の366日の場合は2091.4時間となり、1年間の実際の労働時間がその時間を超えたところから割増賃金が発生します。
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一例 |
残業カウント |
日 |
1日8時間勤務と設定した日 |
8時間を超えたところから |
週 |
週50時間と設定した週 |
50時間を超えたところから |
月 |
28日の月 |
160時間を超えたところから |
29日の月 |
165.7時間を超えたところから |
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30日の月 |
171.4時間を超えたところから |
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31日の月 |
177.1時間を超えたところから |
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年 |
365日の年 |
2085.7時間を超えたところから |
366日の年 |
2091.4時間を超えたところから |
1週間単位の非定型的変形労働時間制の残業は、日と週の単位で考えます。日の単位では、他の変形労働時間制と同じで、設定した所定労働時間を超えたところから残業となり、週の単位では、1週間の所定労働時間は法定労働時間の40時間となっているため、40時間を超えたところから割増賃金が発生します。つまり、日の単位で発生した割増賃金分を除いても、週6日働くと週40時間を超える場合があるので、その時は週40時間を超えた分は、割増賃金を払います。
フレックスタイム制の残業は、日の単位ではなく清算期間の単位で考えます。清算期間は上限が3カ月で、その範囲内で従業員が労働時間を設定します。
フレックスタイム制は、始業・終業の時刻を労働者が自主的に決めるので、清算期間内での実労働時間が、所定労働時間を超えたところから割増賃金が発生します。
但し、清算期間が2カ月から3カ月の場合は、まず1カ月の単位で実労働時間が週平均50時間を超えた分に対して割増賃金が支払われます。次に、清算期間の単位で法定労働時間の総枠を超えた分が割増賃金として、最終月の給与と一緒に支払われます。
変形労働時間制を導入する際の手順は、就業規則の見直しから始まり、従業員の過半数代表と労使協定を締結して、労働基準監督署へ届け出るという流れです。以下に、それぞれの変手順について詳しく解説します。
変形労働時間制を導入する前に、まず従業員の労働時間の実態調査をしてください。従業員の勤怠管理表を基に、会社の繁忙期及び閑散期に、誰がどの程度時間外労働をしているか、どの職種、どの業務、どの役職に時間外労働が多いかなど、実態の把握が重要です。この調査を踏まえて、どの変形労働時間制を導入したら良いか判断してください。
次に、変形労働時間制を採用する対象者を選定しなければなりません。選定のポイントは、従業員の勤怠管理表を調査して、繫忙期の労働時間と閑散期の労働時間の差が大きい従業員や部署、職種を選定しましょう。最終的には、運用面や管理面などを考慮し、どのセグメントに変形労働時間制を適用すべきかを決定します。
労働時間を決めるポイントは、従業員の勤怠管理表をよく精査して、繫忙期の所定労働時間をどのくらい増やして、閑散期の所定労働時間をどのくらい減らすかを検討することです。
労働時間は変形労働時間制によって、日、週、月ごとに決める必要があります。以下、確認事項です。
対象者及び労働時間が決まったら、それを就業規則に落とし込む必要があります。就業規則の記載事項については前述したように、変形労働時間制によって多少異なります。
それぞれの変形労働時間制の必要な記載事項はすべて網羅し、変更した就業規則は全従業員に周知しましょう。
労使協定が必要な変形労働時間制を採用した場合は、就業規則と並行して従業員の過半数代表と労使協定を締結する必要があります。
過半数代表を選出するにあたっては、就業規則について意見を聴くためと目的を明らかにして、民主的な方法で公正に選出してください。意見書の「意見を聴く」とは、意見を聴けば足りることで、過半数代表の同意を得ることまでは求められていません。
また、1カ月単位の変形労働時間制では、就業規則を変更することで労使協定を締結しないこともできます。
労使協定は、経営者と過半数代表が話し合いで決めることで、会社の運営において重要な役割を果たしています。労使協定の記載事項は前述したとおりですが、変形労働時間制によって多少異なりますので、漏れがないように内容を精査してください。
労働基準監督署へ就業規則を届け出る際には、労働者の過半数代表に意見を聴いて意見書を作成し、就業規則と一緒に提出する必要があります。
また、変形労働時間制の導入にあたっては、それぞれの変形労働時間制の協定届を提出する必要があります。
届け出る労働基準監督署は、事業所を管轄する労働基準監督署になります。
なお、1カ月単位の変形労働時と清算期間を1カ月以内に設定したフレックスタイム制の場合は、労使協定の届出は不要です。
協定届は厚生労働省の主要様式ダウンロードコーナーからダウンロードができます。
1年単位の変形労働時間制を採用する場合は、変形期間中の各日の始業・終業の時刻、休憩時間や休日、起算日などを就業規則に定め、意見書を添えて管轄の労働基準監督署へ届け出る必要があります。
また、勤務時間や起算日、休日、特定期間、対象となる従業員の範囲、有効期間を定めた労使協定を作成し、従業員の過半数代表と締結したうえで、管轄の労働基準監督署へ届け出てください。場合によっては、期間中の労働日、労働時間が分かる勤務カレンダーを作成して提出してください。
1週間単位の非定型的変形労働時間制を採用する場合は、1週間単位の非定型的変形労働時間制に関する協定届と変更した就業規則を作成して、管轄の労働基準監督署へ届け出る必要があります。
変形労働時間制を導入するために、就業規則や労使協定を締結して管轄の労働基準監督署へ届け出た場合は、就業規則や労使協定の内容について、対象の従業員によく説明して理解してもらい、誤解や混乱が起きないようにしてください。また、会社内で就業時間が変わった場合は、変形労働時間制の導入について、全社に通達を出すなど周知徹底に努めてください。
変形労働時間制度の運用は、事前の準備が重要です。シフト表を作成して、勤務日や休日を事前に従業員へ通知します。また、残業代の計算では個人ごと、部署ごとに労働時間帯が異なる場合があるので、計算が煩雑になります。
役割ごとの業務としては、管理職は勤怠管理やシフト表の作成をします。労務担当者は給与計算や勤怠管理システムの導入、シフト表の公示などをします。従業員はシフト表に基づいて仕事の段取りを考えてください。
シフト表の作成や残業代の計算など、担当者が変形労働時間制の内容をよく理解した上で実施しないと、混乱を招きますので十分注意してください。
変形労働時間制には、企業側及び従業員側のメリットとデメリットがありますが、お互いに導入して良かったと思えるようにしたいものです。
また、手続きの不備、誤った運用、周知が徹底されていないことによる罰則・トラブルなどのリスクもあります。そのためには、事前の実態調査から始めて、変形労働時間制の内容をしっかりと理解し正しい手順を踏みながら進めることが重要です。
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