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VUCA時代に適応できるリーダーの資質とその育成とは

掲載日2021年7月 1日

最終更新日2021年10月26日

目次

    デジタル革命や少子高齢化等の影響によるビジネス環境の変化は、長きにわたり予測されてきたことのひとつです。その変化は人の働き方や従事する職業のバリエーションに影響を及ぼし、将来的に、より大きい変化に発展するだろうと想像されていました。そこに、新型コロナウイルスの感染拡大という、人々の行動を半強制的に制限する出来事が発生し、予想を超えるタイミングの速さと規模で環境変化が訪れました。その波はとどまることなく現在も広がり続けています。

    この先、変化がどの方向に進み、いつ訪れるのかを予想するのは困難であることから、VUCA(目まぐるしく変動し、予測困難で、複雑で、曖昧)時代の到来と言われています。働き手においては、これまでとは異なるビジネススキルも求められることになるでしょう。

    このような時代において、キーパーソンとなるリーダーにはどのような素質が必要なのでしょうか。

    過去のベストプラクティスが通用しない現代のビジネス環境

    デジタル革命は1960年代からはじまり、1990年代のインターネット活用の主流化、2000年代のスマートフォンの普及、2010年代のクラウドの台頭、そして現在のAIの発展加速、と長きにわたり続いています。ところが、膨大な費用と工数、そして何よりも使い手の意識改革が足かせとなり、多くの企業がデジタル化の必要性を認識しながらも未着手のままでした。少子高齢化の影響による人材不足が懸念されていてもなお、恒常的に人手不足に苦しむ企業や切羽詰まった人材不足感がない大企業が、デジタルを利用した業務の効率化を喫緊の課題として優先的に進めるケースは少なかったのではないでしょうか。

    しかし2020年に入り、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、人と人が接する行為に制限がかかるようになり、多くの企業が積極的に変化対応を加速するようになりました。企業運営に欠かせない「人」の命に係わる問題であるため、迅速に変わる必要性が出てきたわけです。

    そして企業の動きと同様に人の活動も変化し、消費活動の変化を通じて各産業のビジネスに影響を及ぼします。これまで恒久的と考えられていた外食需要の大幅な減少、「おうち時間」の増加によるオンラインショッピングの急増やリモートワークの急拡大など、人の動きの変化が消費やビジネスニーズの変化につながり、様々な産業が活動の急転換を迫られるようになりました。

    新型コロナの感染拡大が終息した後も、人の動きが完全にコロナ前の状態に戻ることはない、と言われています。現在需要が急激に伸びている産業と急激に落ち込んでいる産業とが混在する中、企業を取り巻く環境は今後も予想外の変化を見せる可能性が大いにあります。そのため、環境の変化に柔軟かつ機敏に対応する姿勢を今後も維持し続けることが、企業にも、働くすべて人々にも必要になってきます。

    複数の要素が影響する、先が読みにくいビジネス環境の中で企業経営を続けることになると、過去のベストプラクティスは通用しなくなる可能性が高くなります。また確率の高い予測を立てることがより一層困難になります。組織には今後、継続的に先々を想像し続け、トライ&エラーを繰り返す強靭さと共に、柔軟かつスピーディーな方向転換を可能にする機動力も併せ持つ必要が出てくるでしょう。その動きを支えるのは人材1人ひとりの働きです。

    組織の力は人材で決まり、リーダーの力量がそのまま組織力に直結することも少なくありません

    重視される能力の変化と働き手の意識

    「これまで」と「これから」の求められる仕事の能力

    2020年以降、初めてのリモートワークまたは時差出勤、新たな生活サイクルなどを短期間で実行に移す体験をしたことで、多くの人が「急な変化を求められる」体験を経験したのではないでしょうか。

    環境の変化はそれまで必要とされていたものにも変化をもたらします。
    独立行政法人労働政策研究・研修機構の調査結果からも、 人生100年時代を予測した場合、「これまでとこれからでは、重要となる仕事の能力が変化する」と考える企業が多い様子が窺えます。

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    ※独立行政法人労働政策研究所・研修機構「人生100年時代のキャリア形成と雇用管理の課題に関する調査」(令和2年2-3月調査実施)より調査結果の一部を引用

    世界に目を向けても、労働環境の変化に伴い、ビジネスにおける重要な能力も変化するという見方が主流です。2020年10月に開催されたダボス会議のThe Jobs Reset Summitにおいては、デジタル技術発展の影響を受け、働く人の50%は2025年までに新たな能力を学び直す必要が出てくるという予想が立てられています。

    働き方への意識変化やデジタル技術の進歩がもたらす人材の流動

    これからの働き方へ目線を向けてみます。
    「リモートワークはコロナ後も継続する」という予想が、日本を含む多くの労働市場で多く聞かれ、実際にその方向に進んでいるようです。海外では場所を選ばない働き方の広がりに伴い、コロナ禍で一時停滞していた経済活動の再開を機に、新たなビジネス分野、新たな国で新たな職を探す動きが見られ、人の流動(流出)を警戒する企業が増えています。

    日本でも場所を選ばない自由な働き方が更に広がる可能性はあります。加えて少子高齢化の影響による労働力不足、デジタル技術の進化によるビジネス環境の変化とそれに伴う"人が従事する業務"の変化等、様々な要素が複雑に絡み合い、特定の状態に対処する体制を整えている時間はいよいよ無くなります。

    企業に求められるのは、働く側の意識変化を踏まえつつ、業界の市況やクライアントの変化に繊細に気づき、対応できる人材を獲得・育成することです

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    VUCA時代にもっていたい心構えとは

    デジタルツールのリテラシーやIT系知識など、業務に直結する能力・スキルは今後更に変化すると予想されています。ただし、重要なのは新たなスキルの習得よりも、「変化をキャッチし、対応していく意欲を持ち続けること」です。経験値の高さに関係なく、誰もがラーナビリティ(学び続ける能力)や役割の変化をオープンに受け入れる姿勢をもつことが大切になってきます。

    意思決定のフレームワークOODA(ウーダ)ループ

    意識しておきたいフレームワークのひとつとして "OODAループ"が挙げられます。

    OODAループは、アメリカの航空戦術家でもあり、意思決定に関する研究者のジョン・ボイド氏が考案した意思決定方法です。目まぐるしく変わる状況の中で、今の状況から得られるもので最善だと考えられる判断をし、即座に実行に移すためのフレームワークとして注目されています。

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    PDCAからOODA(ウーダ)ループへの転換へ

    参考になる成功事例が無い中でのビジネス運営では、OODA(ウーダ)ループのような考え方を用い、現状把握を行ってから最適アプローチを検討し実行に移す以外に方法がありません。

    その際に企業に求められるのは、周りの動きに遅れをとらずに行動しながら前進することです。そのためには人材の育成が重要となってきます。それまで高業績人材として活躍してきた人もそうでなかった人も等しく、情報をキャッチし自ら考え、自ら行動できるようにならなければ、大きな変化の波にのまれてしまいます。

    PDCAのような業務改善志向だけでは、VUCA時代に成功を収めることは困難です。どんなに業務改善に取り組んでいても、状況が変化した場合、クライアントのニーズそのものが形を変える可能性があり、そうなると改善で得られる成果は大きなものにはなり得ません。

    視点を広げ、柔軟な判断を下すといったOODAループ(ウーダループ)のような考えを根底におくことが、求められるスキルのひとつです。

    これからの時代に必要なリーダーの資質

    人材の成長や育成を考えた場合、リーダーの影響力は大きなものです。
    リーダーがどのようにメンバーの能力を活かせるのかが、組織力の強さに関係してきます。前述したようなOODA(ウーダ)ループの視点をリーダーは持つべきです。

    コンセプチュアルスキルとは

    OODAループのプロセスを早いスピードで実行する場合、コンセプチュアルスキル(概念化能力)を構成する能力が必要です。
    概念化能力が高い人は、本質を見抜く力が高く、物事を合理的に判断できると言われています。

    「地頭の良さ」が関わると言われるコンセプチュアルスキルですが、一言で表すと「考える力」と言われるだけに地頭だけでなく複数の思考能力で構成されます。

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    人材開発において、これまでは管理職の中でも上位階層を中心に概念化能力の強化を図るケースが多く見られましたが、OODAループの考え方を活かしビジネス環境に適応していくことを考えると、より広い層を対象にこれらのスキルの強化に取り組む必要性がでてきます。ビジネス環境の変化は否応なしに現場で起き、これらのスキルが鍛えられる場面が増え、若手の中で自然とスキルを身に着け活用していく人材も増えてくるでしょう。

    そうなると、指揮命令系統の上位者には、説得力に加えて、部下を納得させることができる、合理的な判断に基づく指示やアドバイスの提供が、より一層強く求められます。そして1人ひとりの能力の差が広がることも予想されるため、部下の個性にも考慮しながら、「考える力の強化」につながるような支援を提供していくことが、次世代のリーダーには求められます。

    「対人スキル」が人を活かすリーダーのカギ

    強い組織を作るリーダーは人を動かし、人の成長を支援します。

    「考える力」を阻害せず、また必要な場合はそれを引き出し、育てるタイプのリーダーを育成することは、自律的に考え行動する人材を増やすことにつながります。このような人材の育成は、組織が外部環境の変化に翻弄されることなく存在価値を維持・拡大する上で、長期的に取り組むべき重要なポイントの1つになります。

    柔軟に立場や役割の変化に対応し、時に個々のニーズに合わせた支援を提供できるリーダーは、対人行動とリーダーシップを様々な場面で発揮し、周囲に影響を与えます。その観点から、リーダーや管理職に、対人スキルやリーダーシップスキルの強化に継続的に取り組む機会や環境を提供することが理想的だと言えます。

    そのようなリーダーのそばで経験を積む若手は、周囲の力を借りながら質の高い経験と人脈を築くことが多く、その過程で成長意欲を育みます。成長意欲を刺激する組織内環境には、従業員の組織へのエンゲージメントを向上させる効果も期待できます。社員への成長機会の提供に劣らず、「質の高いリーダーの育成」も人材不足が懸念される近い将来への備えの1つとして、検討する価値があるのではないでしょうか。

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    対人スキルとリーダーシップの開発

    自己理解が重要なカギ

    特定のスキルを強化する方法は、一般的に個人が必要な知識を習得し、その知識を活用し、試行錯誤しながら自分なりのやり方を確立させる、という流れを辿ります。この3段階を基本として、深く知識を浸透させ、より有効に活用するためのプロセスを追加する場合もあります。

    対人スキルとリーダーシップに関しても、同様の流れで強化に取り組みますが、特徴的な点は、この2つのスキルは個人が本来備えている性格との結びつきが強いため、知識の実践より先に、個人がもつ傾向が無意識に行動に表れてしまう可能性があるという点です。

    そのため、対人スキルやリーダーシップの強化に取り組む際は、「自己理解」のプロセスを初期段階に加えておくことをお勧めします。目指す姿に合わせて行動を調整するには、本人が本来の自分自身の傾向を知ることが効果的です。それは地図で現在地を確認するようなもので、行動や判断の傾向、その要因を本人が認識できていると、目指す方向に応じて、自ら行動を変えていくことができるようになります。「こうなりたい」、「こう思われたい」という本人の意思に応じて、ものごとへのアプローチ方法を変えていく人もでてきます。

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    客観的な指標「パーソナリティ診断」の活用

    "自分のことは自分自身が一番よく知っている"、これが私たちの一般的な考えです。ところが私たちの行動や考え方の自己認識は、時に周囲に映る姿や傾向と一致していないことがあります。「周囲に映る自分」は、「自身が知る自分」のほんの一部であったり、本人が発信したつもりのことが意図から外れた形で周囲に受け取られてしまうこともあります。

    増えつつあるリモート環境での仕事では、相手の反応を確認しにくくフィードバックを得る機会が少ないため、気づかずに周囲とのコミュニケーションを自ら妨げている場合もあります。そこで客観的な指標として、パーソナリティ診断を活用し、自身の思考や行動の傾向を知ることができれば、メンバーとのコミュニケーションや業務指示・指導を行う前に一度立ち止まり、より効果的な伝え方・方法を選択できるようになります。

    また、特定の誰かの意見ではなく、第三者の客観的な指標ということで、自分に対するフィードバックを受け入れやすい点も活用のメリットです。

    パーソナリティ診断を活用するメリット

    パーソナリティ診断を活用する最大のメリットは活用場面や利用者の立場によって異なります。採用や選抜においてパーソナリティ診断を活用する採用判断者の場合、最大のメリットは受検者の行動の源泉となる「物事の受け止め方」や「物事への反応」の傾向を確認できる点にあります。

    社会経験を重ねた人の中には、周囲の期待に応えるために"本人が演じる自分"を発揮できている人がいます。その場合、普段の行動傾向は"本人が演じる自分"で間違いありませんが、その人の素の姿も同時に把握しておくと、肝心な、窮地に追い込まれた時や普段通りにいかない時に発揮し得る、その人の行動や判断の傾向を予測することができます。

    能力開発等の目的でパーソナリティ診断を活用する場合の、受検者本人にとってのメリットは、その診断結果から得るフィードバックではなく、内容を確認していく過程で本人が自分の普段の行動を振り返る機会を得る点にあると言えます。

    診断結果をただ本人に渡すだけでは十分な効果は得ることは難しいため、状況が許す限り、外部のコーチやコンサルタント、あるいは本人との利害関係が成立しない社内コーチや人材開発担当による個別フィードバックセッションを行うことをお勧めします。

    診断結果を確認していきながら、コーチが客観的な視点で本人に問いを投げかけ、本人がその問いに応えていく過程で、本人が普段から意識して調整している行動や、無意識に発揮している行動を振り返ることができます。その際、本人が真剣に取り組んだ場合、2つの気付きを得ることができます。

    ひとつは、本人がこれからも継続したいことや改善したいことに関する気付きです。これは、本人が"どうありたいか"を基準に、自分の行動を調整する際のポイントとなります。もうひとつの気付きは、普段の行動や判断、あるいは特定の状況で自分が下した判断が、"正しかった"という確信です。自分の判断や自分が決めた方向性への確信を得ることは、リーダーにとって貴重な機会となるはずです。

    リーダーは経験を重ねれば重ねるほど、活躍すれば活躍するほど、自分について相談できる相手が限定されてきます。また、経験が豊富であれば豊富であるほど、学びのために時間を費やす機会が減っていきます。それでもなお、自らのアウトプットやそのアウトプットを軸にした他者とのやり取りの中から学びを得ることはできます。「気兼ねなく自分が感じたことや考えていることを語る機会を得る」これが、本人にとって最大の、パーソナリティ診断を活用するメリットだと言えます。

    「個々に合わせた人材開発」に注目が集まっています

    デジタル化が進むにつれて、人の役割は特定のスキルや知識とは違う、機敏な判断力や創造力、対人力等の発揮にシフトしていくと予想されています。個人の特性を活かす場面が増えるという背景から、個々に合わせた人材開発の必要性に注目が集まっています。マンパワーグループでは、ホーガンアセスメントを取り入れたサービスを提供しています。ご興味ある方は、下記をダウンロードください。

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    まとめ

    これからの時代で必要なのは、自律的に物事を考え行動できる人材です。クライアントや自社メンバーと日々やり取りをするなかで起きる小さな変化に気づくことが重要であり、誰かの指示があるまで動かない、疑問を抱かないという姿勢でいると変化する外部環境からどんどん取り残されてしまいます。

    考える社員を育てるにはリーダーの役割が重要です。しかし、社員個人でリーダーのスキルを高めることは難しく、新しい気づきやリーダーとしての方向性を知るためのサポートを提供するのが企業の役割です。リーダー育成に力を入れることは、会社の基礎力を高めることに繋がります。ぜひこれまでの研修を見直し、VUCA時代に必要なリーダー育成について取り組んでみてください。

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    著者プロフィール

    マンパワーグループ株式会社 マーケティング本部 山口薫

    日系不動産会社、米系人事コンサルティング会社を経て、2011年に株式会社ライトマネジメントジャパン(現マンパワーグループ株式会社)に入社。タレントマネジメント部門にて人事コンサルタントとしてアセスメント、コーチング、リーダーシップ領域を中心とした提案営業およびコンテンツ開発、デリバリーを主に外資系企業を対象に提供。また日系企業、外資系企業の能力開発や採用に関連するグローバルプログラムの実施を多数支援。

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