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派遣先による一方的な派遣社員の部署異動は労働者派遣法の規定により、原則として認められていません。
組織変更や欠員補充などにより、どうしても派遣社員の部署異動を検討しなければならない事態が生じた場合、派遣先は正社員とは異なり、厳格な手続きが求められます。
本記事では、派遣社員の部署異動について適法で安全に進めるための契約手続きの流れや抵触日の取扱いなどを解説します。

派遣先が一方的に判断して派遣社員を部署異動させるのは、原則として認められていません。
もし、派遣社員の部署異動を実施したい場合は、本人と派遣会社、派遣先の三者すべてが合意している必要があります。
ここでは、なぜ派遣先の一方的な異動が認められないのか、その理由と異動を検討するタイミングを解説します。
派遣先の独断で部署異動ができない理由として、派遣社員と雇用契約を結んでいるのは派遣会社である点が挙げられます。
派遣先が持つのはあくまで業務上の指揮命令権のみであり、派遣社員の勤務場所や業務内容などの就業条件を直接変更する権限はありません。そのため、派遣先の一方的な判断による派遣社員の部署異動は認められていません。
さらに、派遣社員が担当する業務内容や働く場所は、派遣先と派遣会社が結ぶ労働者派遣契約によって定められています。派遣先は定められた契約内容に反しないよう、適切な措置をとらなければならないと労働者派遣法第39条でも規定されています。
現在の契約に含まれていない他部署への異動を独自の判断で実施すると、法律および契約違反となるため注意しましょう。
労働者派遣法第26条では、派遣社員を受け入れる際に「特定目的行為」を行わないよう定められており、企業には努力義務が課されています。特定目的行為とは、派遣先が派遣社員を受け入れる際、個人を指名する行為のことです。
派遣先が派遣社員を別の部署へ移す際、異動先の責任者が特定の個人を面接して選別するような行為は、実質的に「特定の個人を指名して受け入れる」行為とみなされ、特定目的行為に抵触する恐れがあります。
一方で、派遣会社が異動先の条件を確認し、派遣社員本人の合意を得た上で新たな派遣契約を結ぶ形であれば、異動が可能です。
派遣社員の部署異動は、主に以下のタイミングで検討されます。
まず、同一組織単位での就業期間が3年に達する場合について、派遣法では、同一の組織単位で同じ派遣社員を受け入れられる期間は、原則3年までとされています。そのため、3年を超えて同じ部署で継続しての就業はできません。
派遣契約が満了した後に、派遣社員本人の希望やこれまでの経験・スキル、派遣先の人員ニーズなどを踏まえ、別の組織単位で新たな就業機会が検討されるケースがあります。こうした検討は派遣会社との調整を通じて行われます。
もう一つは、企業の組織変更のケースです。
派遣契約の期間中であっても、当初の契約を維持することが困難な合理的理由がある場合、派遣元・派遣社員との協議の上で異動を検討することがあります。
たとえば、契約を維持することが困難な合理的理由として、以下のケースが該当します。
派遣先の講ずべき措置とは?
派遣社員は派遣会社と雇用関係にあるため、派遣先が就業条件を自由に変更することはできません。
派遣先が守るべきルールについて、分かりやすい言葉で解説しています。

派遣社員の部署異動をする際には、法令遵守の観点から押さえるべき重要な注意点が複数あります。
ここでは、以下の4つのポイントから解説します。
派遣社員の異動は、派遣先・派遣会社・派遣社員の三者すべてが合意している場合に限り、部署異動が可能となります。
異動に伴い就業場所や業務内容、労働条件が変わるため、派遣先は事前に派遣会社に異動の相談をしましょう。そこから派遣会社を通じて派遣社員へ丁寧に説明し、本人の同意を得ます。
三者の合意が得られたら、派遣先と派遣会社との間で労働者派遣契約を変更または再締結することで、正式に異動が成立します。
このプロセスを経ることで、特定目的行為への抵触が回避可能です。
なお、派遣先の上司が直接、派遣社員に対して「別の部署で働いてほしい」と伝える行為は、トラブルや法律違反につながる恐れがあるため避けましょう。
部署異動の提案をする際には、派遣社員本人が納得して決断できるよう、派遣会社を通じて丁寧に説明しましょう。
部署異動により、働く環境や仕事内容がこれまでと変わるため、事前の説明が不十分だと、派遣社員本人が強い不安を感じてしまいます。
そのため、本人が納得できるよう、派遣会社を通じて以下のような説明をする必要があります。
また、派遣社員本人が判断できるように、異動先の職場見学を行うことで、不安の払拭ができ、就業後の安定につながりやすくなります。
派遣社員が、同一の組織で働けるのは原則3年までです。ただし、別の部署に異動すると抵触日がリセットされるため、派遣可能期間が変わってきます。
しかし、抵触日の延長のみを目的とした実態を伴わない部署異動は、期間制限を免れるための違法行為とみなされ、労働局の指導や是正勧告の対象となります。
たとえば、形式上は部署名を変更しても、指揮命令者が変わらず業務内容も実質的に同一な場合、組織単位の変更とは認められません。
部署異動をする際は、実質的に組織単位が変更されているか、業務内容や指揮命令系統に明確な変化があるかを確認しましょう。
派遣社員は、派遣先からの異動の打診を受け入れる義務はありません。
そのため、新しい仕事内容や勤務条件があわないなどの理由で、本人が異動に同意しないケースも十分に考えられます。
しかし、派遣社員が異動を拒否した場合でも、派遣先がそれを理由に不当な扱いや一方的な契約解除をすることは認められません。
もし派遣社員が異動を拒否した場合は、派遣会社と協議し、条件の見直しや他の派遣社員の手配など、本人の意思を尊重した別の解決策を検討しましょう。

派遣社員の部署異動を実施する際には、適切に手続きを進める必要があります。
ここでは、適切な異動の進め方のチェックポイントを以下の観点から解説します。
部署異動に伴い、業務の難易度や責任範囲が変化する場合は、派遣料金などの労働条件を見直す必要があります。
とくに、派遣料金が下がる場合、派遣社員の時給にも影響するため、派遣社員本人の同意が得にくくなる可能性があります。
部署異動により、契約書に記載する就業条件が変わるため、事前に変更点をすべて洗い出し、派遣会社と正確に共有しておく必要があります。
労働条件や期間制限に関する認識のズレは、後々の契約トラブルに直結するため、手続き前にすり合わせをしておきましょう。
部署異動の協議が終了した後は、派遣会社や派遣社員から自由な意思に基づく同意を得たとわかる議事録や面談記録を作成しましょう。
具体的に、記録する内容は以下のとおりです。
三者の合意を記録に残すことで、あとから無理やり異動させられたなどの疑念を抱かれるリスクを防げます。
また、労働局の調査が入った際にも、適法な手続きを経て異動を行ったと証明する重要な証拠となるでしょう。
派遣社員は異動後に新たな指揮命令者のもとで業務するため、事前に受け入れ部署の指導体制や業務マニュアルを整備しておきましょう。
とくに、指揮命令者に対して、派遣社員の業務範囲や就業条件をしっかり共有することがポイントです。
また、異動してきた派遣社員が迷わずに業務を始められるよう、初日には以下のような丁寧な引き継ぎや説明の場を設ける必要があります。
このような受け入れの準備により、業務内容のミスマッチや現場での混乱を未然に防ぎ、働きやすい環境を構築できます。

ここでは、派遣先企業の担当者からよく寄せられる質問に回答します。
派遣社員本人から「部署異動したい」と希望された場合でも、派遣会社の合意が必要になるため、派遣先はすぐに異動を決定できません。
まずは、派遣社員に対して雇用主の派遣会社へ相談するように促しましょう。
本人が派遣会社へ相談し、同社から派遣先に正式な申し入れがあった段階で、初めて検討を開始します。
新たな派遣契約の手続きや労働条件の交渉が必要となるため、契約更新の2ヶ月前までには派遣会社へ相談することが望ましいです。
とくに、時給や業務内容の変更を伴う場合は、派遣社員が内容を検討し合意するまでの時間が必要です。
また、異動先の職場見学や条件交渉に時間がかかる事態も想定されるため、余裕をもったスケジュールを組むようにしましょう。
もし、部署異動して指揮命令者が変わる場合でも、業務の継続性がある場合は、抵触日のリセットが認められない可能性があります。
業務の実態に明確な変化がないと、以前と同じ組織単位で働き続けているとみなされる可能性が高くなるためです。
派遣法が定める期間制限の3年ルールは、業務の継続性や一体性を基準にして、組織単位が同じかで判断します。
そのため、指揮命令者だけの変更などの理由だけでは、原則として期間制限の抵触日をリセットできません。
組織の名称変更や単なる区分の変更だけで、業務内容や指揮命令系統に実質的な変化がない場合は、異動とは認められません。そのため、抵触日のカウントはリセットされず継続します。
ただし、派遣契約書に記載される就業部署名が変わるため、実態にあわせて派遣契約書の変更、または契約の再締結が必要です。
契約書に記載された就業部署名と、実際に働いている部署名が異なる状態を放置するのはコンプライアンス上好ましくないため、迅速に対応しましょう。
派遣契約の期間中に、派遣先の都合で一方的な部署異動や業務内容の変更は命じられません。もし変更が必要な場合は、派遣会社および派遣社員との合意が必要です。
派遣契約には、以下のような条件が明記されており、異動は契約条件の変更にあたります。
派遣社員の受け入れにあたり、派遣先企業が講ずべき措置について「13の指針」として整理した実務ガイドです。法令で求められる対応や、職場での適切な運用についてわかりやすく解説しています。
<この資料でわかること>
・ 派遣先が守るべき13の指針の概要
・ 各指針ごとの具体的な対応内容
・ 法令違反を防ぐためのポイント
派遣社員の部署異動は、派遣先が一方的に決定できるものではなく、派遣会社および派遣社員との三者合意が必要です。
前提として、派遣社員の雇用主は派遣会社であり、派遣先が持つのは業務上の指揮命令権のみのため、就業条件を直接変更する権限はありません。
部署異動を実施する際には、派遣会社を通じた正式な手続きを踏み、派遣社員本人への丁寧な説明と同意の取得が重要です。
3年ルールを回避するための形式的な異動は違法行為となるため、実質的な組織単位の変更があるかを慎重に確認してください。
適法かつ円滑な部署異動を実現するために、本記事で解説したポイントを参考に、派遣会社と連携しながら適切な手続きを進めましょう。
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