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従業員の退職手続きの流れを解説│保険や退職金はどうする?

掲載日2021年9月28日

最終更新日2021年10月26日

目次

    従業員が会社を退職する際には、それに伴って複数の事務手続きが発生します。会社側は退職手続きを正しく行う必要がありますが、会社によっては手続きの一部失念や、間違った記載内容の書類を官公庁に提出したことにより、後に退職者との間でトラブルに発展することがあります。そこで従業員の退職の手続きについてどのように行えば良いか、その流れや項目、注意点を解説します。

    そもそも退職とは?

    「退職」とは、それまで勤めていた会社を辞めることであり、会社側から見ると「会社と従業員の間で結んでいた雇用契約が終了すること」です。ちなみにこの雇用契約について、会社が従業員の合意なく一方的に解消する扱いを「解雇」といいます。

    退職の種類

    退職の種類には大きく分けると「自己都合退職」と「会社都合退職」があります。

    自己都合退職とは、一般的に「従業員が会社に自ら退職を申し入れ、会社がそれを認めた場合のこと」を指します。その他、従業員が会社に自ら退職を申し入れたが、会社がそれを認めずに(要するに辞めさせてもらえない)最終的に会社の承諾を得られないまま退職する場合も自己都合退職になります。

    一方「会社都合退職」とは、会社側の事情により従業員に退職を促し退職させることをいいます。会社都合の例は、「会社の倒産や規模の縮小」「リストラ」などがあります。

    また「辞職」は「退職」と同じ意味ですが、一般の会社では役員以上の役職の人が会社を辞める場合に使われます。

    従業員の退職に関する会社側の手続きや主な流れ

    従業員の退職に関して会社が行う手続きやそれに伴う書類の作成は、大きく分けると「従業員の退職日までに行うもの」と「従業員の退職後に行うもの」の2つがあります。それぞれ順を追って説明します。

    従業員の退職日までに会社側で必要な手続き・書類

    従業員の退職日までに会社側で必要な手続きや書類は次のとおりです。

    従業員の退職の意思表示から退職願提出

    ■ 従業員の退職の意思表示

    民法第627条によると、従業員が会社に対して退職の意思表示をした日から2週間後には退職ができるとされています。ただし、会社の就業規則などで退職の意思表示を行う時期が明記されている場合は、その会社の決まりが優先されます。

    例えば、就業規則で「従業員が退職をしようとするときは2ヵ月前までに退職願を会社に提出する」といった記述があれば、原則2ヵ月前までに退職の意思表示を行う必要があります。

    出典:民法│e-Gov法令検索

    退職の意思表示日について就業規則の規程が無い場合や、退職願を提出したのにもかかわらず会社が受理しなかった場合は民法の定めによります。

    ■ 退職日の決定

    退職日を決定する際には、本人の希望日もしくは会社で指定する(月末・給与の締め日など)ことが多いです。しかし、特に業務の引き継ぎや代わりの従業員を雇用するための相応な時間が必要な場合、職場の事情を勘案の上、事前に従業員と会社との間で調整を行った後に退職日を決定するケースもあります。

    会社側で健康保険任意継続や住民税徴収方法の確認

    ■ 退職後の健康保険加入

    会社退職後の健康保険の加入方法は、「会社の健康保険任意継続制度に加入する」「従業員の住所地の国民健康保険に加入する」「家族の健康保険の被扶養者になる」の3通りがあります。

    その中の「健康保険任意継続制度」は、退職日(被保険者の資格喪失日の前日)までに継続して2ヵ月以上の被保険者期間がある場合、退職日の翌日(資格喪失日)から20日以内に、「任意継続被保険者資格取得申出書」を提出することで、最長2年間会社で加入していた健康保険を継続することができる制度です。ただし任意継続を利用する場合、これまで会社と従業員が折半していた社会保険料は全額従業員負担となります。

    従業員には退職後の健康保険についてどの制度に加入するかの意思確認をとり、任意継続制度を選択した場合は手続き方法などについて説明を行います。任意継続の手続きは従業員が自ら資格喪失日である退職日の翌日から20日以内に、会社で加入していた健康保険組合に加入申請をします。

    なお、従業員から「任意継続制度」と「国民健康保険」とでは、どちらの保険料が安くすみますか?」と質問されるケースがあります。その場合は、国民健康保険の保険料は自らが役所で調べることが可能であることを伝え、その上で比較検討してもらうよう案内しましょう。

    ■ 住民税の徴収方法の確認

    住民税は、1月から12月までの所得により1年分の住民税額を計算し、翌年の6月以降に徴収する後払い方式です。住民税の徴収方法は、本人が納付書、口座振替などで支払いを行う「普通徴収」と、会社の給与から天引きする「特別徴収」の2つの方法があります。

    会社が特別徴収を行っている場合は、前年の住民税額を翌年6月から翌々年の5月までの期間で徴収します。従業員が退職する場合、住民税の徴収は次のように取り扱います。

    • 1月1日から4月30日までに退職する場合は、最後の給与もしくは退職金から残額を一括で徴収する
    • 5月中に退職する場合は、通常どおり当月分を徴収する
    • 6月1日から12月31日の退職の場合は、「退職する本人が最後の給与もしくは退職金から一括徴収する」もしくは「退職後、普通徴収で納付する」のいずれかを従業員が選択する

    従業員の貸与品の返却

    従業員が退職する際には、名札、社員証、携帯電話や備品など会社が貸与したものと、業務に必要な電磁データ、業務マニュアルといった社内情報に関する資料類、本人と被扶養者の健康保険証を回収します(従業員が健康保険の任意継続制度に加入する場合も回収)。

    任意継続制度を利用する場合は手続き終了後に新たな健康保険証が発行され、従業員の住所に郵送されます。

    返却物が多い場合、回収漏れを防ぐためにあらかじめチェックリストを作成し、返却の有無を確認しながら回収作業を進めていくとよいでしょう。

    退職金支給および退職証明書などの準備

    ■ 退職金の支給

    退職する従業員が就業規則の定めにより退職金の支給対象になっている場合は、退職金を支払う義務があります。退職金の額は就業規則の規程によって決められた方法で計算し、金額と支払い予定日を本人に提示するとともに、決められた日に支払うための準備をします。また退職金に関する規程がない会社でも、慣例として退職金の支給を行っている場合は支払いの義務が生じる可能性があります。支払い義務が生じた場合の支給額はこれまでの慣例額を参考に計算します。

    ■ 退職金に関する注意点

    退職金の支払い期日が経営状態の悪化など会社の都合により分割払いや遅配になるケースでは、あらかじめ従業員に事情を説明し了承を得る必要があります。

    また、退職金額の計算方法も特に慣例で支給している場合は、従業員側の想定額と会社側の提示額に相違があることがあり、トラブルになりやすいので根拠のある説明が必要です。

    ■ 退職証明書の発行

    「退職証明書」とは会社が従業員の退職を証明するために発行する書類のことで、法律などで定められた書式はなく、会社が独自の書式で作成します。従業員にとって退職証明書が必要になるケースは退職後に国民健康保険に加入する場合、ハローワークで失業保険の手続きをする場合、転職先の会社から提出を求められる場合があります。退職したすべての従業員が必ず使うとは限らないため、会社によっては退職時に従業員に確認し、必要な人にのみ発行する場合もあります。

    ■ 年次有給休暇を取得する意思の確認

    退職者の年次有給休暇に取得残日数がある場合、退職者に取得の意思を確認します。年次有給休暇を消化するほかに、業務の都合で未消化の日が発生し、退職者から退職日までの分で買い取りを求められた場合は、双方で協議して検討します(本来、年次有給休暇の買い取りは不可ですが、退職の場合は例外的に可能)。

    従業員の退職後に会社側で必要な手続き・書類

    従業員の退職後に会社側で行う必要な手続きや書類は次のとおりです。

    社会保険資格喪失手続き

    ■ 社会保険(健康保険・厚生年金保険)の喪失

    社会保険の喪失は、退職後5日以内に日本年金機構(管轄の年金事務所や事務センター)、または会社が協会けんぽ以外の健康保険組合に加入している場合は該当の健康保険組合に、「被保険者資格喪失届」と本人(被扶養者がいる場合は全員分)の健康保険証を提出します。健康保険証の全部もしくは一部が紛失などの理由で回収できないときは「健康保険被保険者証回収不能届」も一緒に提出します。

    ■ 介護保険料について

    40歳から64歳までの健康保険の加入者は「介護保険第2号被保険者」となり、健康保険料の中に介護保険分を含んで徴収されています。健康保険を喪失したときに介護保険も一緒に喪失しますので、個別の手続きは必要ありません。

    ■年金手帳

    従業員の入社時に年金手帳を預かっている場合は本人に返却します。以前は会社が手帳に厚生年金の加入期間などを記入していましたが、現在は日本年金機構でデータ管理されているので記入する必要はありません。

    退職時の社会保険料控除に関する注意点

    従業員が負担する社会保険料は、被保険者資格を取得した月から、退職日の翌日(被保険者資格喪失日)が属する月の前月までの分です。通常、会社は従業員の給与から前月分の社会保険料を控除します。

    ただし、従業員が退職した場合は、退職の2つのタイミングにより社会保険料の控除方法が変わります。

    • 月の途中で退職した場合......退職した月の給与から退職した月の前月の保険料を控除する
    • 月末退職の場合......退職月の給与から退職月の前月および退職月の2ヵ月分の保険料を控除する

    例えば8月30日で退職する場合は、喪失日は8月31日なので8月分の給与から7月分の保険料を控除します(8月分の保険料は控除されません)。しかし、8月31日退職の場合、喪失日は9月1日なので、8月分の給与から7月分と8月分の保険料を控除することになります。

    雇用保険資格喪失手続き

    雇用保険は、従業員の退職日の翌日から10日以内に「資格喪失届」と「離職証明書」を管轄のハローワークに提出します。離職証明書は従業員がすでに転職先が決まっているなどの理由で必要ないとの意思表示があれは作成不要です。その場合は資格喪失届のみを提出します(ただし離職日において59歳以上である被保険者は、本人が離職票の交付を希望しない場合でも離職証明書の交付が必要)。

    手続き終了後ハローワークから渡される書類のうち、以下3点は退職者宛てに送付します。

    • 資格喪失確認通知書(被保険者通知用)
    • 離職票-1(本人用)
    • 離職票-2

    この手続きがされないと、退職者が転職先で雇用保険に加入する場合やハローワークで失業給付を受けるための手続きができないので、すみやかに行うようにしましょう。

    退職時の雇用保険資格喪失手続きに関する注意点

    離職証明書には離職理由を記載することになっていますが、この記載内容によって退職者の失業給付の開始日と給付日数が決まります。離職理由で退職者と会社の認識に違いがあると、トラブルに進展する可能性があります。認識の違いの一例としては、退職者側は会社都合退職と思っているが、離職証明書には自己都合退職の記載がある場合です。退職理由については、退職者と会社とで認識を同じにすることが大切です。

    所得税・住民税に関する手続き

    住民税について特別徴収を行っていた場合には、「給与支払報告・特別徴収に係る給与所得者異動届書」を退職者が居住する市区町村に、退職後に会社がすみやかに提出します。

    源泉徴収票発行

    退職した年の1月から退職月までの給与や賞与の支払額や控除した社会保険料額、源泉徴収している所得税を記載した源泉徴収票を退職後1ヵ月以内に発行し、退職者に交付します。

    退職金の源泉徴収

    退職金の支給がある場合には所得税の源泉徴収を行います。

    あらかじめ従業員から「退職所得の受給に関する申告書」の提出を受けている場合には、退職金の源泉徴収額は退職所得控除を適用した額となります。申告書の提出がない場合は退職金の額に20.42%を乗じた金額を徴収します。

    給与や賞与の源泉徴収票とは別に退職金専用の源泉徴収票を発行・交付します。

    従業員の退職時に気をつけたいケース

    従業員の退職の際に注意すべき2つのケースを解説します。

    休職から退職となったケース

    従業員が病気やけがなどの理由で休職し、休職期間満了までに復職できない場合、就業規則の定めがあれば「退職」もしくは「解雇」という形式で雇用関係を終了することになります。この場合の手続きについての注意点は次のようになります。

    1.離職証明書を作成するとき

    離職証明書の離職理由記載欄は、休職の理由を文章で記入し、休職期間満了による退職とします。

    2.退職金の計算

    退職金の額を計算する際に、「休職期間を勤務年数に含むか」「退職理由を自己都合か会社都合とするか」によって退職金の額が変わります。詳細を就業規則で確認しましょう。

    3.不当解雇になる可能性がある場合

    医師が復職可能であると判断したにもかかわらず復職させなかったケースや、過重労働やハラスメントなど、休職の原因が会社にある場合、休職期間満了後に退職、解雇すると不当解雇で訴えを起こされる可能性があります。

    4.解雇予告手当が発生する場合

    会社の就業規則に「休職期間満了までに復職できない場合は解雇する」と明記されている場合、従業員の解雇にあたっては解雇の30日前までに復職できなければ解雇になることを通知するか、通知しない場合は解雇予告手当を支給しなければなりません。

    退職者が3、4にあてはまる場合は、専門家に相談するなどして対処するのもひとつの方法です。

    5.通知書の発行

    休職期間満了後、従業員に対して下記の通知書を発行します。

    文言は、

    「貴殿の休職期間は令和〇年〇月〇日に満了しました。よって就業規則第〇条〇項により、〇月〇日付で退職扱い(もしくは解雇)としますので、通知します。」

    という内容になります。

    6.休職期間前の書面交付

    休職しようとする従業員に対しては、休職理由の確認だけでなく休職期間や満了日について事前に説明を行い、内容を書面にして交付することでトラブルを防ぐことが可能です。

    急な退職となったケース

    従業員が急に「きょうで会社を辞めます」と退職を申し出た場合、その後に会社で行う対処方法を説明します。

    1.従業員から退職願を提出してもらう

    退職の意思表示は口頭でも成立しますが、後日「やっぱり退職しません」「退職するとは言っていません」など退職の有無に関するトラブルを避けるために、必ず書面で退職願を提出させるようにしましょう。

    退職願は本人で作成する他、書式を会社で作成した上で本人に送付し、本人から署名、捺印をして返送してもらう形式でもかまいません。

    また、数回催促しても退職願の提出がない場合は本人より口頭で退職の申し出がされた日を退職日として処理します。

    2.健康保険証が回収できない場合

    退職者は健康保険証を会社に返却しなければなりませんが、急な退職で健康保険証が回収できない場合は、「被保険者資格喪失届」と一緒に回収できない理由を記した「回収不能届」を添付します。

    3.離職証明書の発行について

    離職証明書は本来、会社が記載した内容について退職者が確認の上押印することで有効となります。しかし、連絡が取れないなどの理由で退職者に捺印してもらうのが不可能な場合は本人の代わりに事業主印を押印して提出することが可能です。

    4.未払い給与や退職金の精算を行う

    退職者に未払い給与や退職金があった場合は、計算の上所定期日に支払うように手続きをします。

    5.後任の人材確保を行う

    退職者の後任が必要な場合、社内の他従業員が担当するか、新たに従業員を雇うかを早急に検討します。しかし、求人募集をしても即座に適任者が見つかるとは限らないため、人材派遣を活用する方法も考えられます。

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    まとめ

    従業員が退職する際の諸手続きは、社会保険や雇用保険の喪失、税金関係の書類提出など、あらかじめ提出期限が決められているものが多くあります。そのため退職後は速やかに処理を進めることが重要です。ただし、ほとんどが定型業務のため、対応する項目や手順、必要書類の種類やその作成方法などをマニュアル化し、それに従って進めることでスムーズに処理ができるでしょう。退職者の後任が社内や求人でなかなか見つからない場合は、人材派遣も検討してよいでしょう。

    著者プロフィール

    木村 政美(社会保険労務士)

    2004年社会保険労務士・行政書士・FP事務所きむらオフィス開業。企業の労務管理を得意分野とし、顧問先や各種相談会での相談業務、セミナー講師、執筆活動等を幅広く行っている。2020年度より厚生労働省働き方改革推進支援センター派遣専門家受嘱。

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