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「採用に使えるコスト・リソースが限られており、求める人材の採用ができない……」
そんな悩みを抱える中小企業の採用担当者は少なくありません。限られた予算の中でも成果を出すためには、コストを抑えつつも、効果的な採用手法の選択が鍵となります。本記事では、採用コストを抑えた実践可能な採用手法と、成功させるためのポイントを解説していきます。
中小企業の採用活動では、限られた予算や人手の中で成果を出さなければならないという現実があります。
これらの課題を踏まえ、自社の現状を整理したうえで戦略的な採用体制を構築することが欠かせません。
「採用コスト」とは、新たな人材を採用するためにかかる、すべての費用を指します。
具体的には、求人広告の掲載料、採用担当者の人件費、面接や選考にかかる時間的コスト、移動交通費などが挙げられます。
令和3年度厚生労働省委託調査「採用における人材サービスの利用に関するアンケート調査 報告書(PDF)」 によれば、正社員1名を採用する際にかかる採用コストの平均は次のとおりです。
採用手法 | |
求人情報サイト | 平均28.5万円 |
求人情報誌・チラシ | 平均11.3万円 |
新聞広告・屋外広告 | 平均7.1万円 |
リファラル採用 | 平均4.4万円 |
自社ホームページからの直接応募 | 平均2.8万円 |
SNSリクルーティング | 平均0.9万円 |
このように、採用手法の選択によってコスト構造は大きく変動するため、企業の採用戦略においては、費用対効果を考慮しながら手法を使い分けることが求められます。また、同じ採用手法であっても、求人広告などは媒体やプラン、掲載期間でかかる費用の幅が大きいことには、注意が必要です。
また、目に見えにくいコストも多く発生します。例えば、応募者情報の管理や日程調整を効率化する採用管理システム(ATS)の導入費、面接や説明会で社外会場を利用する際の会議室費用や備品使用料、採用担当者や面接官の人件費などもその一部です。
特にSNSリクルーティングは、採用単価は比較的安く見えますが、実際の運用には工数がかかり、人件費が高くなることもあります。さらに運用を外注化した場合は上記平均コスト以上に費用が発生します。
こうした「隠れたコスト」も積み重なると無視できない負担となります。特に中小企業では、限られた予算のなかでこれらの支出が重くのしかかることもあるため、費用対効果を見極めつつ、成果につながる採用の進め方を計画的に考えることが重要です。
採用コストを抑えながら成果を上げるには、求める人物像に合わせたチャネルを選択が重要です。ターゲットとする層や採用目的が明確になれば、無駄なコストをかけずに、状況に応じた最適な手法を選ぶことができます。
特に、求める人材像と相性の良いチャネルを見極めることが、費用対効果を高めるポイントとなります。すべての採用手法がすべてのターゲットに効果的とは限らず、それぞれのチャネルには効果が出やすいターゲットと、届きにくい層があります。
たとえば、若年層の採用にはSNSリクルーティングの効果が出やすく、企業をまだ知らないターゲット層への認知拡大に繋がります。
一方で、専門性の高い職種や管理職の採用であれば、リファラル採用やオウンドメディアリクルーティングが適しています。こうした人材には、自社の魅力や職場環境をしっかりと伝えることで、質の高いマッチングが期待できます。
このように、「若年層には初期接点」「専門人材には深い理解の場」といったように、チャネルの特性と人材ターゲットの特性を踏まえた向き・不向きを理解し、使い分けることが、コストを抑えつつ成果を上げる採用活動のポイントとなります。
次に、比較的コストを抑えながらも取り組みやすく、目的に応じた活用ができる採用手法について、紹介します。
ハローワークは、厚生労働省が運営する公共の職業紹介サービスであり、求人情報を無料で掲載することができます。コストをかけずに人材募集を行いたい中小企業にとって、非常に有用な手段のひとつです。
Indeedや求人ボックスなど、企業が運営する無料の求人サイトを活用した採用手法です。掲載費をかけずに求人情報を多くの求職者に届けることが可能です。
・無料で使える範囲の中で、どれだけ「伝わる表現」を工夫できるかが重要
オウンドメディアリクルーティングとは、自社が運営するホームページや採用サイトなどを活用して、求人情報を発信する採用手法です。人材紹介会社や求人媒体を介さずに採用活動を行うことができます。
関連記事:オウンドメディアリクルーティングとは?導入すべき3つの理由
SNSリクルーティングとは、Instagram、X(旧Twitter)、TikTokなどのソーシャルメディアを活用して採用活動を行う採用手法です。アカウントを開設すれば無料で運用ができ、広告費をかけずに情報を発信することが可能です。
関連記事:新卒採用で利用できるSNS採用(ソーシャルリクルーティング)とは?SNSの種類や活用方法、事例を紹介
SNSを活用した場合、認知を得たあとの「導線設計」も重要です。
単に投稿を発信するだけで終わらせず、関心を持った人がスムーズに次のアクションへ進めるよう、あらかじめ情報の流れを設計しておくことが求められます。
たとえば、Instagramの投稿で社内の雰囲気や社員の働き方を紹介した場合、プロフィール欄にLINE公式アカウントや採用ページへのリンクを設置し、関心を持った人がすぐに詳細情報にアクセスできるようにしておくと良いでしょう。
さらに、LINEを通じて気軽な相談やカジュアルな面談の予約ができるようにしておくことで、「とりあえず話を聞いてみたい」と感じた層を離脱させず、応募前の不安や疑問を解消する機会をつくることができ、応募へのハードルを下げることができます。
事前に気楽な質問や情報収集ができる場を用意することで、エントリー率向上が期待できます。
SNSを活用する場合は、投稿して完了ではなく、LINEなどを介して興味を育て、応募へと導くまでの情報の流れを段階的に整備することで、認知から応募への動線を確保することができます。関心が一過性で終わらないようにするためにも、こうした「導線設計」は、今後ますます重要になるでしょう。
社員紹介(リファラル採用)とは、現在働いている社員が知人や友人を紹介し、その人材を採用候補として検討する採用手法です。求人媒体や人材紹介会社を介さないため、外部コストを抑えることが可能です。
関連記事:リファラル採用とは?メリット・デメリットと導入のポイントを解説
合同企業説明会は、複数の企業が一堂に会し、求職者と直接コミュニケーションをとることができるイベント型の採用チャネルです。会場での対話を通じて企業の魅力や雰囲気を伝えることができ、特にまだ企業を知らない求職者層に対して効果的です。
また、ハローワークや自治体、大学などが主催する合同企業説明会や就職フェアも、有効な採用チャネルの一つです。
アルムナイ採用とは、かつて自社で働いていた元社員を再び迎え入れる採用手法です。
企業文化や業務内容を熟知した社員からの紹介なので、教育やオンボーディングにかかるコストを削減することが可能です。
関連記事:即戦力がほしい企業は検討すべきアルムナイ採用|導入企業は約3割
再就職支援とは、大手企業の早期退職支援や事業再編などで転職を余儀なくされた人材が、専門の再就職支援会社(アウトプレースメントファーム)のサポートを受けて新しい勤務先を探す仕組みです。中小企業側から見ると、こうした再就職支援会社と連携し、登録者を受け入れることで、経験豊富な人材を短期間で確保できる採用手法となります。
採用コストを抑えるためには、実行可能な採用手法を選ぶことはもちろん重要ですが、それだけでは十分とは言えません。限られたリソースの中で成果を上げるためには、採用フロー自体を見直し、効率的かつ戦略的に運用していくことが欠かせません。
説明会や面接をオンラインで実施し、会場準備や移動にかかる時間・費用を削減し採用活動を効率化させることができます。
関連記事:オンライン面接を成功させるには?メリットと注意点を解説
応募者との接点で、自社の魅力をどれだけ明確な言葉で伝えられるかが、応募の動機に大きく影響するので、求人要件や自社の魅力を明確にして発信をします。
関連記事:【徹底解説】採用ブランディングとは?進め方と展開方法、導入事例
応募から選考、内定までのスピードを意識して高めることで、他社に先を越されるリスクを回避することができます。
近年では、CXと呼ばれる候補者体験(Candidate Experience)が重視され、選考過程の接点の中での印象が企業イメージに直結すると言われています。
即戦力だけを求めるのではなく、将来性や意欲を重視する「ポテンシャル採用」を実施することや、応募条件の緩和をすることでターゲット層が広がります。
応募者の特性やスキルを活かして当初予定していなかったポジションへの配置の検討する柔軟さも、採用成功につながる重要な視点です。
採用活動を“予算勝負”と捉えるのではなく、応募者との関わり方という視点で“工夫と見直しによる仕組みづくり”として捉えることが、結果的にコストパフォーマンスの高い採用へとつながっていきます。
人材派遣、人材紹介、採用代行など様々なサービスを提供しています。
採用や人材についてお悩みがございましたら、下記よりお気軽にお問い合わせください。
最適な採用方法で適切な人材を提案いたします。
中小企業にとって、限られた予算とリソースの中で採用活動を進めるには、「コストを抑える工夫」と「採用の質を高める工夫」の両立が欠かせません。コストをかけなくても活用できる手法は数多く存在しますが、重要なのはそれぞれの特性を理解し、目的に応じて使い分けることです。
また、「どれだけお金をかけるか」ではなく、「自社の魅力をどう伝えるか」「適切な採用プロセスをどう整備するか」という視点が成果を左右します。だからこそ、求人票や発信チャネルの見直しによる情報発信力の強化や、採用フローの見直しなど、日々の工夫と継続的な改善が、結果として良い人材の確保につながります。
中小企業における持続可能な採用活動においては、予算が限られているからこそ、視点を変え、計画的に動くことが大切です。
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