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【罰則あり】有給休暇の5日取得義務|対象は誰か、対応策を解説

掲載日2021年12月 7日

最終更新日2024年5月 1日

【罰則あり】有給休暇の5日取得義務|対象は誰か、対応策を解説

目次

有給休暇の取得ルールが変更され、2019年4月から年に5日以上の有給休暇の取得が義務化されました。違反をした場合は罰則が科せられる可能性があるため、もし、まだ対応ができていない会社は早急に対処しなければなりません。

今回は、有給休暇取得義務化の内容、年5日の数え方、違反した場合の罰則などについておさらいします。年5日の有給休暇取得を徹底するための、具体的な施策も紹介しています。

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有給休暇取得の義務化とは

有給休暇の取得義務化とは、年に10日間以上の有給休暇を付与されている社員に対し、会社から働きかけを行い、少なくとも5日間を取得させなければならないことをいいます。

義務化になった背景

昨今では、国が推進する「ワーク・ライフ・バランス」や「働き方改革」の流れを受け、多くの会社が時短勤務やフレックスタイム制などを採用し、社員の働き方が多様化しています。今後も在宅勤務の浸透など、さらに多くの選択肢が加わるものと予想されます。

一方で、会社での有給休暇の取得率が政府の期待するとおりに上昇していない現状があります。

その原因としては、有給休暇を取りづらい社内風土である、業務が忙しく休暇を取る余裕がない、同僚や部下に対して気兼ねしてしまうなどが挙げられます。本来ならば社員の心身をリフレッシュさせるための有給休暇でありながら活かしきれていない会社が多く、対応策が求められていました。

このような流れを受けて、2019年に「働き方改革」に関する法律が改正され、有給休暇の取得が義務化されました。

労働にまつわる法律が改正される場合、まずは大企業を対象に先行して施行され、経過措置期間を経た上で、徐々に中小企業に適用していく方法が取られるケースが通例とされています。しかし、有給休暇の義務化に関する法改正については、会社の規模に関係なくすべての会社が適用対象となった点に特徴があります。これは、有給休暇の取得率上昇を目指すにあたり、早急に対応をしなければならないと国が判断したためだといえるでしょう。

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有給休暇義務化の対象となる労働者

有給休暇の義務化を適用しなければならない対象は、年間で10日以上の有給休暇が付与される労働者す。

対象者は、有給休暇を付与するための「入社後6ヵ月間に継続勤務を行い、全労働日の8割以上を出勤する」という要件を満たしている必要があります。残業時間や休憩、休日の付与義務対象外となる管理監督者も有給休暇義務化の対象となるため、注意しましょう。

なお、年間10日以上というのは、あくまでも年間で発生する有給休暇の付与日数です。したがって、前年度の未消化分となる有給休暇と合算して10日を超えるケースなどは対象に含まれません。

パート・アルバイトはどうなる?所定労働日数が週3日以上は対象内

所定労働日数がフルタイム勤務者より少ない労働者の場合、労働日数に応じて付与される有給休暇の日数に差が生じます。

例えば、週に4日働くパート・アルバイトの場合、入社後半年後に取得できる有給休暇の日数は7日で、有給休暇取得義務化の対象とはなりません。3年半以上の間継続して働き続けると10日分の有給休暇が発生するようになり、その時点で有給休暇取得義務化の対象となります。

週3日勤務の場合も同様で、5年半以上継続して働き続ければ、10日分の有給休暇が発生し、その時点で有給休暇取得義務化の対象となります。

一方、週2日勤務の場合は、継続して働き続けたとしても、発生する有給休暇日数の最大値は7日となるため、有給休暇取得義務化の対象外です。

つまり、週に3日以上働く労働者であれば、勤続期間によっては有給休暇取得義務化の対象になります。したがって、パートタイム労働者・アルバイト・契約社員・有期雇用者・嘱託社員など、雇用形態を問わず、年間10日以上の有給休暇を付与されていれば対象になるということです。

派遣労働者に有給休暇を付与するのは派遣元

派遣労働者の場合は、派遣先ではなく派遣元の会社に雇用されている労働者であるため、有給休暇を付与するのは派遣元会社です同じく有給休暇の義務化についても派遣元のルールに従うことになるので、確認が必要です。ただし、派遣労働者が有給休暇を取得するためには、派遣先の職場での理解が必要であることから、派遣元・派遣先の双方が協力体制を敷くことが重要となります。

派遣社員の管理法のポイント 不要なトラブル回避へ

派遣社員の雇用主は派遣会社ですが、派遣先企業には有給休暇以外にも派遣社員の受け入れるにあたってのルールがあります。下記資料では知っておきたいポイントやよくある質問などもご紹介しています。

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違反した際の罰則は

有給休暇の取得義務化は労働関係の法律で定められた内容となるため、違反をした場合は罰則が科せられる可能性があります。30万円以下の罰金刑に処せられることがあるため、気をつけなければなりません。

「年5日」の期間の数え方

義務化が必要とされる有給休暇のカウント方法について説明をします。会社によって、有給休暇を付与する時期が異なる場合がありますので、自分の会社がどのケースに当てはまるか考えながら確認をしてください。

入社の半年後に有給休暇を付与した場合

法律で定められたとおり、入社してから半年後に有給休暇を10日付与する場合は、入社から半年を経過した時点で有給休暇の取得義務が発生します。

4月1日に入社をした社員を例に挙げると、通常どおり勤務を続け、出勤率などの有給休暇付与要件をクリアした場合、10月1日に10日分の有給休暇の付与と、5日分の取得義務が発生します。つまり、10月1日から翌年9月30日までの間に、5日分の有給休暇を取得させる必要があるのです。

入社と同時に有給休暇を付与した場合

会社によっては、入社した時点ですでに10日分の有給休暇を付与する場合があります。このような場合は、入社時点で5日分の有給休暇取得義務が発生することになります。

4月1日に入社した社員に10日分の有給休暇を付与する場合は、入社日となる4月1日から翌年3月31日の間に、5日分の有給休暇を取得させる必要があることを覚えておきましょう。

有給休暇の付与日が異なる場合

有給休暇をより分かりやすく管理をするために、入社初年度のみ半年後に付与し、その後は入社日を基準日として、重複して有給休暇を付与する場合があります。

例えば、2021年4月1日に入社した社員に対し、その年の10月1日に有給休暇を10日付与する会社の場合、通常であれば翌年は2022年の10月1日に11日分の有給休暇を付与することになりますが、これを半年分前倒しし、入社日を基準日とした2022年の4月1日に11日分を付与するというケースです。

この方法ならば、「入社日=有給休暇の基準日」となるため、会社にとっては付与のタイミングや取得状況の管理が容易になるというメリットがあります。

その一方で、付与日を前倒しした場合は、有給休暇の付与義務のカウント時期が重複するという事態も生じます。

前述の例の場合は、10日の付与が行われた2021年10月1日から2022年9月30日までの間に5日分の取得義務が発生し、なおかつ2022年4月1日から2023年3月31日の間にも5日分の取得義務が発生します。おのおのの期間ごとに義務となる5日分を消化させなければならず、管理が複雑になります。

このようなケースに対応するため、有給休暇の取得義務化では「比例按分」というシステムが認められています。

比例按分とは、前述のとおり付与義務のカウント時期が重複する場合に、重複時期を合算し、その期間内で按分した数の取得義務日を算出することです。

前述のケースに比例按分を適用した場合、10日分の付与が行われた「2021年10月1日」から、11日分の付与が行われた日より1年後となる「2023年3月31日」の1年半の比例按分を計算します。具体的な計算式は、

「対象となる18ヵ月÷12ヵ月(1年)×5日(付与義務日)=7.5日」となります。

つまり、この例では、2021年10月1日から2023年3月31日の1年半の間に付与が義務づけられている有給休暇は、半日単位の有給休暇を認めている場合は7.5日、それ以外の場合は8日となります。

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年5日の有給休暇取得を徹底するための方法

有給休暇の取得義務化を会社に適用していくために取るべき対応法について、解説します。

年次有給休暇取得計画表で管理する

会社には、勤務年数が異なる社員が働いており、付与する有給休暇の日数も社員ごとに異なります。会社が社員に有給休暇を確実に取得してもらうためには、社員一人ひとりの有給休暇の残日数や取得日が確認できるような計画表を作成し、配布する方法が有効です。作成には、勤怠管理システムやクラウドサービスの機能を活用すると、より効率良く管理を行うことができるでしょう。

具体的な方法としては、まず、会社が社員一人ひとりに対し、前年度までの残日数・本年度の付与日数が記載された計画表を配布します。その後、社員に希望する有給休暇取得日を記載してもらった計画表を回収します。その計画表をもとに、社員全員分の年間の有給休暇取得計画表を作成し、管理を行います。

休暇の取得予定日が前もって把握されていれば、有給休暇を取得する社員が行っていた業務の分担がしやすくなり、社員が休暇を取ることに対して罪悪感を抱きにくくなる効果が期待できるでしょう。

計画年休制度を導入する

社員に有給休暇を確実に取得してもらうため、「計画年休制度(計画的付与制度)」を導入する方法もあります。計画年休制度とは、あらかじめ労使協定を結んだ上で、会社内の業務に比較的余裕のある閑散期やGW、お盆、年末年始など、まとまった休みを取りやすい時期などを指定して、有給休暇を取得してもらう方法です。ただし、入社間もないために年間で5日分の有給休暇取得義務がない者や産前産後・育児休業を取得する者、定年間近で退職が決まっている者などは制度の対象外となるため、事前に確認する必要があります。

前もって休暇を取ってもらう日を指定しておくことで、社員が抵抗なく有給休暇を取得できます。

なお、計画有給制度を実施する場合は、あらかじめ就業規則で制度の内容を定める必要があります。その上で、労使間の合意の上で制度を実施するものとして、前述の労使協定を締結しなければなりません。

有給取得について、就業規則の変更や追記を行う

有給休暇の取得義務化にあたり、休暇に関する制度を新設・変更した場合は、その内容を必ず就業規則に盛り込む必要があります。10人以上の労働者を雇用する会社の場合は、変更・追記をした就業規則を労働基準監督署へ届け出ましょう。また、就業規則は常に社員が確認できる場所へ保管し、制度内容を周知できるようにしなければなりません。

年5日の有給を未消化の社員へ取得を促す

前もって休暇の取得を予定していた日であっても、業務の忙しさに追われて社員が取得を忘れてしまうケースがあります。

このような状況への対応のため、会社側は年次有給休暇取得計画表の内容をこまめに確認し、休暇が未消化の社員に対して取得を促すのが有効です。

会社側が積極的に有給休暇の取得について働きかけを行うことで、社員は有給休暇を安心して取得でき、会社に対する信頼感も増す効果もねらえるでしょう。

会社側から時季指定を行う

なかなか有給休暇の取得率がアップしない社員には、個別に声をかけ、有給休暇の時季指定を行う方法も有効です。

時季指定とは、会社が社員から意見を聴いた上で、「〇月〇日ごろに有給休暇を取得してください」と日にちや時季を指定して休ませる方法です。

有給休暇の取得時季の指定は一方的に行うものではなく、あくまでも社員の意見を尊重することがポイントです。

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有給休暇の取得を会社が促すメリット

社員に有給休暇の取得を積極的に促した場合の会社側の効果について紹介します。

生産性の向上

有給休暇の目的は、社員が日々の業務から離れ、心と体をリフレッシュさせることです。しっかりと睡眠を取った人間が元気を取り戻すように、社員が有給休暇の取得によりプライベートの時間を満喫したなら、仕事へ復帰した際に集中力がアップし、生産性の向上へつながる効果が考えられます。

定着率の向上や採用力アップ

依然として有給休暇の取得率低迷が取りざたされている中、有給休暇の取得に積極的な取り組みを実施することは、会社の対外的なアピールポイントになります。

「しっかり休みを取らせてくれる会社」ということで、既存の社員の離職率は低下し、採用時に求職者側が安心して応募できる可能性も高まるでしょう。

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有給休暇の取得を会社が促すデメリット

社員が有給休暇を取得した場合の業務分担体制が整っていない会社の場合、仕事の進捗に影響が生じ、人件費に対する売上額に影響が生じる恐れがあります。

普段から業務フローやマニュアルを整備しておくなどの方法で、休んだ社員の穴埋めが即座にできる体制づくりが急務となるでしょう。

まとめ

有給休暇の取得促進は社員の心身の健康増進やモチベーションアップなどの効果も期待されています。まずは自社の状況に沿った形で、計画的に有給休暇が消化できるような対応策を検討してみましょう。

著者プロフィール

加藤知美(社会保険労務士)

加藤知美(社会保険労務士)

愛知県社会保険労務士会所属。総合商社、会計事務所、社労士事務所の勤務経験を経て、2014年に「エスプリーメ社労士事務所」を設立。 総合商社時では秘書・経理・総務が一体化した管理部署で指揮を執り、人事部と連携した数々の社員面接にも同席。会計事務所、社労士事務所勤務では顧問先の労務管理に加えセミナー講師としても活動。

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