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労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(以下、労働施策総合推進法)とは、働く人が能力を十分に発揮し、安心して働ける環境を国と企業が協力して実現するための法律です。
本法律は企業に対して職場のパワーハラスメント防止措置を義務付けており、人事・労務の現場では「パワハラ防止法」などの通称で知られています。
パワハラ防止への対応期限は企業規模によって段階的に設定されており、大企業では2020年6月1日から、中小企業は2022年4月1日から対応が義務化されています。

ここでは、労働施策総合推進法にて企業に課せられている義務について解説します。
労働施策総合推進法第30条によりすべての事業主に対し、職場のパワーハラスメントを防止するための雇用管理上の措置を講じる義務があります。
企業が講じるべき主な措置は次のとおりです。
これらの措置は一度整備して終わりではなく、実際に機能しているかを定期的に見直し、継続的に運用する必要があります。
労働施策総合推進法では、常時雇用している従業員が301人以上の大企業は、直近3事業年度の正規雇用労働者における中途採用の比率を公表する義務が課されています。
おおむね1年に1回の頻度で、公表した日付を明確にしたうえで、求職者がいつでも簡単に閲覧できる方法で情報を提供しなければなりません。
具体的には、自社のホームページやインターネットの求人サイトを利用や、事業所の目立つ場所に書類を備え付けるなどして公表します
この取り組みにより、求職者がさまざまな働き方やキャリアの選択肢を検討しやすくなり、労働市場全体の活性化につながると期待されています。
参考:常時雇用する労働者数が301人以上の企業において正規雇用労働者の中途採用比率の公表が義務化されます|厚生労働省(PDF)
労働施策総合推進法第28条により、特別永住者等を除く外国人労働者を雇い入れた、または離職させた場合には、すべての事業主に対し、ハローワークへの届出が法律で義務付けられています。
届出の際には、以下の労働者に関する情報を確認・記録したうえで報告する必要があります。
届出を怠った、あるいは虚偽の内容で届け出た場合には、30万円以下の罰金が科される可能性があるため、事業者は適切な対応が必要です。ただし、雇用保険の被保険者となる外国人を雇用する場合には、被保険者資格取得届や喪失届の提出をもって、外国人雇用状況の届出を行ったことになります。
外国人が日本で適正に働き、不法就労などのトラブルを未然に防ぐうえでも、国が雇用状況を正確に把握するための大切なルールです。
参考:外国人雇用は ルールを守って適正に|厚生労働省(PDF)
労働施策総合推進法27条等により事業の縮小などの理由により、1か月以内に30人以上の従業員が離職する場合、企業はハローワークへ「大量離職届」を提出する義務があります。
なお、従業員が希望して辞める「自己都合退職」の場合は、大量離職のカウントの対象外となる点には注意しましょう。
提出の期限は、対象となる最後の従業員が離職する日の少なくとも1か月前までと定められており、計画的な手続きが求められます。
突発的な事業縮小などに備え、大量離職届の提出フローや社内の連絡体制をあらかじめ整備しておきましょう。
参考:「再就職援助計画」と「大量離職届・大量離職通知書」 |厚生労働省
2026年4月1日より、従業員が病気の治療を受けながら働き続けられるよう、企業に必要な配慮を求める努力義務が新たに課されました。
企業に求められる具体的な取り組みは次のとおりです。
また、実際の運用では、企業と労働者だけで進めるのではなく、産業医や主治医の意見も踏まえたうえで就業継続の可否や条件を判断するフローを整えることが重要です。

近年、顧客や取引先からの過度な要求・暴言などの、いわゆるカスタマーハラスメント(以下、カスハラ)が深刻化しています。その結果、従業員の心身への悪影響や離職率の上昇など、企業経営に対する被害が増えているのが現状です。
こうした社会的背景を受け、2026年10月1日施行の改正労働施策総合推進法では、顧客の理不尽な要求や悪質なクレームなどによるカスハラから従業員を守るための措置が、すべての企業に義務付けられます。
前提として、厚生労働省の資料では、カスハラは次の要素で定義されています
電話やSNS等を通じたオンライン上の言動も含まれる点に注意が必要です。
企業が必ず講じなければならない措置は以下のとおりです。
顧客に対して適切なサービスを提供しつつも、理不尽な暴力や暴言から従業員の心身の安全を守り抜く組織の仕組みづくりが求められます。
参考:令和8年10月1日から、カスタマーハラスメント対策、求職者等に対するセクシュアルハラスメント対策が義務化されます!|厚生労働省(PDF)
組織改革を成功させるカギは管理職にあり?
カスタマーハラスメント対策は、現場に対応力を求めるだけでは機能しません。
重要なのは、従業員が疲弊する前に兆候を捉え、組織として支える仕組みを構築することです。
そのためには、現場を支える管理職の関わり方が重要になります。

ここでは2026年10月の労働施策総合推進法の改正に向けて、企業が優先的に取り組むべき実務対応のポイントを解説します。
2026年10月の改正にあたって、経営のトップは「企業としてのあらゆるハラスメントを自社では許容しない」などの方針を明確に定めましょう。
策定した方針は、ハラスメント防止規程等の社内文書に明記するだけでなく、社内報・イントラネット・ポータルサイト等を通じて継続的に社内外に周知するのが重要です。
また、顧客に対してもカスハラを許容しない旨を公式ホームページ等で明示し、自社の方針を外部へ示すと、組織全体としての姿勢が伝わります。
労働施策総合推進法のパワハラやカスハラの対策に伴い、業務プロセスを見直す必要があります。
具体的には、営業や窓口対応など外部の顧客や取引先と接点をもつ業務では、カスハラ被害の可能性が高まるため、録音をして即座に対応ができる状態にしておくことなどが考えられます。
各業務プロセスの対外的な接点を洗い出し、ハラスメントリスクが高い場面を特定したうえで、具体的な改善策を講じましょう。
従業員がトラブルに巻き込まれた際に、相談したことを理由とした不利益な取扱いが生じないよう、いつでも安心して相談できる窓口を設置しましょう。
また、相談窓口が機能するよう相談を受けた後の対応フローも明確に定めておく必要があります。
具体的には、以下の一連の流れを社内規程として文書化し、担当者が迷わず対応できる状態にしましょう。
相談窓口の担当者には、各ハラスメントの定義や判断基準、カスハラの対応などの必要な知識・スキルをあらかじめ習得させ、制度が形骸化しないよう会社として運用しましょう。
新たな法改正の内容や自社で決定したハラスメント防止の基本方針に基づいて、経営層から一般従業員まで階層別の研修を定期的に実施します。
とくに、部下をもつ管理職や相談窓口の担当者には、ハラスメントの正しい判断基準や、初期段階での適切な対応方法を理解させる必要があります。
具体的には、カスハラが発生した際の実務的な対応マニュアルや、求職者に対する禁止事項などを盛り込んだ実践的な教育が効果的です。
誰もが加害者にも被害者にもならないよう、研修を通じて全従業員の意識を高めていきましょう。

労働施策総合推進法の定めに違反した場合、項目によっては法的な罰則が科されたり、企業名が公表されたりする重大なリスクが存在します。
具体的な罰則・社会的リスクは以下のとおりです。
| 義務の内容 | 違反した場合のペナルティ |
| 外国人雇用状況の届出 | 30万円以下の罰金(未届・虚偽の届出) |
| 大量離職届の提出 | 30万円以下の罰金(未届・虚偽の届出) |
一方、以下の項目は違反しても直接的な罰則はありませんが、行政対応の対象となりうる義務です。
もし、対応が不十分と判断された際は、厚生労働省による助言・指導・勧告の対象となる可能性があり、勧告に従わない場合には企業名が公表されるリスクがあります。
企業名の公表は、取引先からの信頼低下・求職者の敬遠・ブランドイメージの毀損などのリスクもあるため、会社として適切に対応しましょう。

ここでは、労働施策総合推進法に関するよくある質問について解説します。
厚生労働省の指針では、職場におけるパワーハラスメントに当てはまる条件は、以下の3つをすべて満たすものと定めています。
つまり、上司の業務上の指示や指導が適切な範囲内であればパワハラには当たりません。
パワハラに該当するのは、対象の言動が業務上の必要性を超えており、かつ相手の就業環境に悪影響を与える場合です。
なお、パワハラには代表的な6つの行為類型があります。
詳しくはこちらの記事でも解説しているため、あわせてご覧ください。
2026年10月1日から施行される「カスハラ対策」の義務化は、大企業・中小企業の区別なく、すべての企業に適用されます。
経営者や担当者が1人であっても、施行日までに相談窓口の設置・社内規程の整備・周知徹底を完了させておく必要があります。
準備が遅れるほど行政対応リスクが高まるため、今すぐ自社の対応状況を確認し、優先順位をつけて整備を進めましょう。
派遣社員は、労働者派遣法の規定により、派遣会社だけでなく、派遣先もハラスメント防止措置を講じる義務を負います。
自社の直接雇用ではないといって対応が不要になるわけではなく、自社の職場で働く方を守る体制が整備されているかが大切です。
一方、フリーランスや業務委託者は、現行の法的義務の直接の適用対象外とされていますが、厚生労働省の指針では同様の配慮が推奨されています。
厚生労働省の指針では、既存のパワハラ・セクハラ等の相談窓口をカスハラ対応と兼用することは認められています。
一方で、窓口を兼用する場合、担当者がカスハラ特有の判断基準や対処法を正しく理解し、適切に対応できる実効性のある運用体制を整える必要があります。
また、既存の窓口でカスハラの相談も受け付ける旨を、事前にお知らせなどで全従業員へ明確に告知しましょう。
法令および厚生労働省の指針では、ハラスメント対策のために専任の担当者の配置までは義務付けられていません。
企業規模や実情に応じた柔軟な対応が認められており、次のような対応も可能です。
労働施策総合推進法や関連する厚生労働省の指針では、ハラスメント研修の実施頻度に「年1回以上」などの具体的な回数は定められていません。
一方で、企業は従業員に対して常に周知・啓発に努めることが求められており、一度実施すれば十分という考え方は適切ではありません。
人員の入れ替わり・法改正・社内トラブルの発生など、必要なタイミングに応じた継続的な研修の実施が、制度を維持するうえで重要です。
従業員がハラスメントの相談・通報をした事実を理由とした、企業の解雇・降格・配置転換などの不利益な扱いは、法律により明確に禁じられています。
一方で、事実確認の結果として「悪意をもって他者を陥れる目的の明らかな虚偽通報」であったと客観的に認定できる場合には、就業規則等に基づいて適切に対処する余地があります。
注意すべきは、「証拠が不十分でハラスメントと認定されなかった」などの理由だけで虚偽とみなして不利益を与えると、法律違反となる点です。
事実確認は客観的かつ慎重なプロセスで実施し、通報者保護と公正な対応が企業に求められます。
自社のハラスメント対策や法令への理解度を確認するために、以下の〇×テストを活用してください。
回答後、解説を読んで理解を深めていただく構成です。管理職研修や社内勉強会の素材としてご活用ください。
答:〇
法令では専任の担当者の配置までは義務付けられていません。企業規模に応じた柔軟な対応が認められています。
答:×
兼用する際には、従業員への事前周知と、各ハラスメントに対応できる運用体制の整備が必須です。
答:×
認定されなかったなどの理由だけで虚偽通報とみなして処分するのは適切ではありません。悪意ある虚偽と客観的に認定できる場合のみ、例外的に対処の余地があります。
答:×
労働者派遣法の規定により、派遣先企業もハラスメント防止措置の義務を負います。
答:〇
厚生労働省では、カスハラに該当するケースとして3つの要素をすべて満たす必要があると定めています。
答:×
法令に具体的な回数の規定はありません。ただし、状況の変化に応じた継続的な実施が求められます。
答:×
企業規模を問わず一斉に義務化されます。中小企業への猶予期間は設けられていません。
答:〇
労働施策総合推進法に基づき、301人以上の企業に公表義務があります。
答:×
原則として事業主都合による離職を対象としており、自己都合退職は通常含まれません。あくまで会社都合や定年退職、雇用期間の満了による離職者がカウントの対象となります。
答:〇
ただし努力義務であるため、対応しないと直ちに違法になるわけではありません。産業医・主治医の意見を踏まえた運用フローの整備が推奨されています。
労働施策総合推進法は、さまざまな背景をもつ人材が心身ともに安心して能力を発揮できる職場環境を実現するため、企業にさまざまな措置を義務付けている法律です。
とくに、2026年10月の法改正によって、顧客からのカスハラ対策が新たに義務化され、企業には早急な対応が求められます。
相談体制の整備や業務プロセスの見直しなどを通じて、法的なリスク管理と働きやすい職場づくりを早期に進めていくことが、企業の持続的な成長につながるでしょう。
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