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地方労働行政運営方針とは?2026年度の方針や行政対応リスクのポイント

掲載日2026年7月10日

最終更新日2026年7月10日

地方労働行政運営方針とは?2026年度の方針や行政対応リスクのポイント

目次

企業課題が見える 13の人事キーワード

人事領域で注目される13のキーワードを、概要・背景・企業事例とともにわかりやすく解説します。

企業課題が見える 13の人事キーワード

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地方労働行政運営方針は、厚生労働省が毎年度策定する全国的な労働行政の運営方針であり、各都道府県労働局はこれを踏まえて、管内事情に応じた重点課題や対策を盛り込んだ行政運営方針を策定します。

毎年、厚生労働省や各都道府県労働局が公表しているこの方針には、その年度に企業が特に注意すべき労務管理のポイントが詰まっています。

本記事では、地方労働行政運営方針の基本的な仕組みや2026年度の方針を4つの観点で整理して解説します。また。行政対応リスクの観点で企業が押さえておきたいポイントも紹介します。

地方労働行政運営方針とは?制度の仕組みと目的

地方労働行政運営方針とは?制度の仕組みと目的

ここでは、地方労働行政運営方針の基本情報や制度の仕組み・目的について解説します。

  • 地方労働行政運営方針とは
  • 企業実務との関係

地方労働行政運営方針とは

地方労働行政運営方針とは、各都道府県の労働局が地域の雇用情勢や特有の課題を考慮して策定する、行政運営の全体的な計画です。

厚生労働省が国としての全国共通のベースとなる指針を作り、そこに各地域の労働局が独自の事情をプラスして作成しています。

そして、以下の4つの行政分野を労働局長の下で一体的に運営します。

  • 労働基準
  • 職業安定
  • 雇用環境・均等
  • 人材開発

これら4つの分野について、労働局、労働基準監督署、ハローワークが連携しながら、地域のニーズにあわせた重点課題や対策を計画的に進めていくための指針が、地方労働行政運営方針です。

企業実務との関係

地方労働行政運営方針に記載された重点テーマは、その年度の監督指導、周知啓発、相談対応などで重点的に扱われる可能性があります。

そのため、企業が方針を事前に確認しておくと、労基署調査や是正勧告、報告徴収といった行政対応への備えとして役立ちます。

さらに、企業の実務において以下のような活用が可能です。

  • 法改正の対応における優先順位を決める際の判断材料として活用
  • 年間のコンプライアンス点検を計画する際にも、行政の関心が高い分野を重点的にチェックするために活用 など

このように、地方労働行政運営方針は企業がリスクを先読みし、計画的に労務管理を進めるための実用的なツールとして活用できます。

令和8年度の大きな軸は「賃上げ」「人手不足」「多様な人材活用」「安全・健康」

令和8年度の大きな軸は「賃上げ」「人手不足」「多様な人材活用」「安全・健康」

令和8年度の方針では、物価の上昇をしっかりと上回る賃上げの実現と、深刻化する人手不足への対策が、特に重要な軸として設定されています。

行政が重点的に取り組む4つのテーマと、それぞれの具体的な目的や指導内容は以下の通りです。

目的 関連するテーマ
賃上げ・非正規雇用支援 最低賃金引き上げと賃上げ支援
  • 最低賃金の履行確保
  • 同一労働同一賃金
  • 無期転換ルール
  • 派遣社員の処遇
人手不足 人手不足分野への支援強化
  • 医療、介護、保育分野の人材確保支援
  • 建設、運輸、警備分野の雇用改善支援
  • 高年齢者雇用
  • 外国人雇用
  • 求人充足支援
多様な人材活用 多様な人材の活躍推進
  • 障害者雇用率
  • 女性活躍推進法
安全・健康 安全で健康な職場づくり
  • ハラスメント防止
  • 長時間労働正式

参照:厚生労働省|「令和8年度地方労働行政運営方針」の策定について 外部リンク

令和8年(2026年)度と以前の地方労働行政運営方針との違い

令和8年(2026年)度と以前の地方労働行政運営方針との違い

令和8年度において、企業が新たに対応を迫られる具体的な重要課題としては、主に以下の3つのポイントが挙げられます。

  1. カスタマーハラスメント対策や求職者等へのセクハラ対策が新たな実務課題として重要になる
  2. 女性活躍推進法の情報公表義務の対象拡大により、中堅企業も対応が必要になる
  3. 障害者雇用率の引き上げにより、未達成企業への指導が強まる可能性がある

令和元年以降の変遷

年度 主な行政のテーマ 時代背景
令和元〜3年度 長時間労働の是正、雇用維持 働き方改革関連法の施行、コロナ禍対応
令和4〜6年度 賃上げ、労働移動、2024年問題 新しい資本主義、物流・建設の規制強化
令和7〜8年度 物価高を超える賃上げ、深刻な人手不足 人口減少の加速、ジョブ型雇用の推進

令和8年度方針で企業が注視すべき重点テーマ

令和8年度方針で企業が注視すべき重点テーマ

令和8年度の方針の中で、企業の人事労務担当者が実務上すぐに確認し、対応を進めるべき重点テーマは多岐にわたるため、注意が必要です。

ここでは、企業が最優先で注視すべき8つの重点テーマについて、行政の視点と対応策をセットにして詳しく解説します。

長時間労働・過重労働への対応

行政は、月80時間を超える時間外労働や休日労働が疑われる事業場に対して、監督指導を徹底する方針を示しています。

過労死等が発生した場合、従来から再発防止に向けた指導が行われており、状況に応じて全社的な改善計画の策定が求められるケースもあります。2026年度においても、こうした対応が引き続き重視される方針です。

このような状況に備えて、企業が確認すべき資料や制度に関するポイントは以下の3つです。

  • 36協定の締結内容と届出状況の確認
  • 実際の労働時間と勤怠記録にズレが発生していないかの確認
  • 管理職、裁量労働制、固定残業代の運用に問題がないかの点検

賃上げ・最低賃金への対応

行政は、労働市場全体の賃上げを後押しするため、支援に関する助成金パッケージについて、企業への周知や情報提供を積極的に進める方針を示しています。

企業に求められる対応としては、自社の賃金体系が最低賃金を下回っていないかを毎年確認する必要があります。

具体的な確認ポイントは以下の通りです。

  1. 最低賃金の引き上げにより、基本給や時給単価が下回っていないか確認する
  2. 月給者、パート、アルバイト、契約社員も対象に含めて点検する
  3. 最低賃金に算入できる賃金・できない賃金を区別する
  4. 固定残業代を除いた基礎賃金が最低賃金を下回っていないか確認する

なお、最低賃金の履行確保に問題があると考えられる業種等については、労働基準監督署による重点的な監督指導が実施される可能性があるとされています。

最低賃金に関する詳しい改正内容については、関連記事もあわせてご参照ください。

同一労働同一賃金:非正規雇用・派遣社員の処遇改善

同一労働同一賃金や非正規雇用労働者の処遇改善は、重点テーマとして位置づけられました。行政としては、監督を効率的に実施し、是正指導の実効性を高めていく方針を明言しています。

具体的には、労働局と各地の労働基準監督署が連携し、定期監督等を通じて、各企業における同一労働同一賃金の対応状況を確認していきます。

以下の2つのポイントを押さえておきましょう。

  1. 正社員とパート・有期社員・派遣社員との待遇差について、合理的に説明できる状態にしておく
  2. 基本給、賞与、手当、休暇、福利厚生について、待遇差の理由を整理する

基本給や賞与について、正社員との待遇差に関する説明が不十分な企業は、行政からの点検要請がおこなわれる可能性がある点には注意が必要です。

「非正規社員だから」という理由だけで一律に低待遇とする運用は、不合理な待遇差と判断され、法令上問題となる可能性があり、早急な制度見直しが求められます。

ハラスメント対策・カスタマーハラスメント対応

近年、職場におけるパワハラやセクハラなどの相談件数が増加している背景を受け、国はあらゆるハラスメント対策のさらなる強化に努めています。

具体的には、パワーハラスメントやセクシュアルハラスメントの防止措置を講じていない事業主に対しては、厳正な是正指導をおこない、その実施を徹底させる方針が示されています。

さらに、令和8年10月から職場内だけでなく、求職者へのセクシャルハラスメントにも防止措置が義務付けられるため企業には採用活動における行動ルールの明確化や相談対応体制の整備など、より一層の対策が求められます。

企業としてハラスメントへの対応において、確認・実施すべきポイントは以下の4つです。

  1. パワハラ、セクハラ、マタハラ等の防止措置が整備されているか確認する
  2. 相談窓口、調査フロー、再発防止策、プライバシー保護を点検する
  3. 令和8年10月施行のカスハラ防止措置に備え、社内方針を整備する
  4. 令和8年10月施行の求職者に対するセクシャルハラスメント防止措置の整備
  5. 顧客対応マニュアル、従業員保護、対応記録のルールを整備

上記の対応を進めることで、社内のハラスメント窓口に従業員が相談しやすい環境が整うとともに、行政からの指導リスクの低減にもつながります。

安全衛生・メンタルヘルス対策

多様な人材が安全かつ安心して働き続けられる環境を整備するため、令和8年4月に施行される改正安全衛生法などを中心に、対応を進めていく方針が示されています。

安全衛生・メンタルヘルス対策において確認すべきポイントは以下の通りです。

  1. 高年齢労働者の転倒、腰痛などの労災リスクを点検し、作業環境や作業方法の見直しを行う
  2. 熱中症のおそれがある職場では、報告体制や重篤化防止の手順を整備しているか確認する
  3. 化学物質を扱う事業場では、リスクアセスメント、SDSの確認、保護具の使用、ばく露防止措置など、自律的管理の体制を整備する
  4. ストレスチェック、メンタルヘルス相談、医師による面接指導、産業医面談の実施体制を確認する
  5. 労働者数50人未満の事業場についても、ストレスチェック義務化を見据えて、実施方法や外部機関の活用を検討する

2026年7月現在、従業員が50人未満の小規模事業場において、ストレスチェックや産業医の選定は努力義務となっています。しかし、将来的な制度対応や健康経営の観点を見据え、早期に計画的な準備を進めることが大切です。

また、現在治療を受けながら働いている従業員に対する、仕事との両立支援についても、企業の努力義務として位置づけられているため、あらためて認識して労働環境を整えましょう。

女性活躍への対応

女性の就業率は全体として高まっている一方で、結婚や出産を理由に非正規雇用の割合が増える傾向が見られます。

また、国際的に見ても、日本における女性管理職の割合は低い水準にあるという課題があります。

こうした状況を受けて、行政は、男女雇用機会均等法などの法律改正を通じて、各ステージにおける性別による差別をなくすための取り組みを進める方針を示しました。

企業として確認すべきポイントは、以下の4つです。

  1. 自社が「常時雇用する労働者数101人以上の事業主」に該当するか確認する
  2. 男女間賃金差異と女性管理職比率を算出・公表できる体制を整える
  3. 賃金台帳、人事データ、役職者データなど、集計に必要な情報を整理する
  4. 数値公表だけで終わらせず、男女間賃金差異や女性管理職比率の要因分析、採用・配置・昇進・育成の見直しにつなげる

男女ともに仕事と育児を両立しやすい柔軟な環境を整備するとともに、採用や配置において無意識の偏見がないかを客観的に点検することも重要です。

障がい者雇用への対応

民間企業における障がい者の雇用数は約70万人に達しており、国はさらなる社会参加を後押しするため、就労支援の施策を今後も継続していく方針です。

令和8年7月には、障がい者の法定雇用率が2.5%から2.7%へと引き上げられることが決まっています。

行政は、法定雇用率を達成していない企業や、除外率が設定されている業種に対して、指導や計画的な雇い入れ支援をおこなっていく方針です。

企業が対応すべきポイントは、2つあります。

  1. 自社の雇用率を早めに試算する
  2. 不足人数がある場合は採用計画を立てる

注意すべきは、障がい者雇用は単に採用するだけで完結するものではないという点です。

採用後の職場定着、業務内容や働き方に関する合理的配慮、担当してもらう仕事の設計といった部分まで含めて、初めて適切な障がい者雇用といえます。

関連資料:障がい者雇用支援 サービスラインアップ

フリーランスの労働環境整備

行政は、フリーランスとして働く人が安心して業務に取り組める環境を整えるため、フリーランス・事業者間取引適正化等法の履行を、引き続き図っていく方針を示しています。

企業が注意すべきなのは、「雇用契約ではないから労働行政とは関係がない」とは言えない点です。

フリーランスとの取引条件の明示や、ハラスメント防止についても、行政の関心事項となっています。

企業として確認しておくべきポイントは、2つです。

取引条件の明示

フリーランスとの取引において、以下の項目を契約書等で明確にしておく必要があります。

  1. 発注事業者とフリーランスの名称
  2. 業務委託の合意日
  3. 業務内容
  4. 納品日または役務提供日
  5. 納品場所または作業場所
  6. 検査完了日(※検査を行う場合)
  7. 報酬額および支払期日
  8. 支払方法(※金銭以外で報酬を支払う場合)

これらの条件があいまいなまま取引をおこなうと、将来的なトラブルにつながるおそれがあります。

労働者性に関するリスクの確認

フリーランスとの契約であっても、実態として企業の指揮命令のもとで働いている場合には、労働者性が問題になる可能性があります。

労働者性とは、契約形態にかかわらず、実質的に労働基準法等で保護される労働者に該当するかを判断する考え方です。

特に、以下のような実態がある場合には注意が必要です。

確認の視点 具体的な状況の例
勤務時間・勤務場所の指定 勤務時間や勤務場所を細かく指定している
業務遂行方法の指示 業務の進め方を具体的に指示している
報酬の支払い方法 報酬が時間給的な形で支払われている

労働局としては、フリーランスからの相談に対して、労働者性の有無も含めて確認していく方針を示しています。

その際に実態が業務委託ではなく労働者に該当すると判断された場合には、労働基準法や最低賃金法、労災保険などに関する各種法律上の問題につながる可能性があります。

人手不足対策に関する方針

人手不足対策に関する方針

人手不足は、現在多くの企業にとって共通の課題となっており、令和8年度の方針でも、さまざまな角度から対策が示されています。

方針 概要
高年齢者雇用
  • 70歳まで働ける環境を作るための施策や周知啓発に取り組むとともに、65歳から70歳までの高年齢者就業確保措置については企業の努力義務である
外国人雇用
  • 国として外国人労働者が働きやすいように就職支援や相談支援などを実施することを表明
  • 企業に対しても働きやすい環境を整えるための指針をもとに指導をする
医療・介護・保育分野の求人充足プロジェクト
  • 国として医療・介護・保育分野における人材確保への支援に積極的に取り組む
  • 企業は、職業紹介事業者において就業実績や離職状況、職種ごとの平均手数料率の公表が義務化されている点に留意する

自社が関連する分野については、行政の支援策や義務化されている内容を、あらためて確認しておくとよいでしょう。

リスキリング・労働移動に関する行政支援

リスキリング・労働移動に関する行政支援

令和8年度の地方労働行政運営方針では、教育訓練給付や人材開発支援助成金といった支援策について、企業や労働者への周知と活用促進を進めていく方針を示しています。

具体的な取り組みとしては、以下の2つの方向性が示されています。

方針 概要
リスキリングによる能力向上
  • 「教育訓練給付金」の給付率の引き上げ
  • リスキリングの理解や活用を増やすための周知を実施する など
ジョブ型人事
  • 職務給等に関するヒアリング調査を通じた支援ツールの周知
  • 「ジョブ型人事指針」の周知

リスキリングとは、新しい仕事や役割に対応するために、新たな知識やスキルを学び直すことです。

自社の人材育成方針と行政の支援策を組み合わせることで、効果的な戦略を立てられます。

関連資料:【調査資料】日本企業におけるリスキリング・アンラーニング

有期契約労働者・パート社員への対応

有期契約労働者・パート社員への対応

ここでは、有期契約労働者・パート社員への対応について解説します。

  • 無期転換ルールへの対応
  • 労働条件明示事項の確認

無期転換ルールへの対応

無期転換ルールとは、有期労働契約が更新されて通算契約期間が5年を超えた場合に、労働者からの申込みによって、無期労働契約に転換できる制度です。

令和6年4月からは、契約更新時に労働条件として明示すべき事項に、新たに「無期転換申込機会」と「無期転換後の労働条件」が追加されました。

行政としては、このルールについて、企業と労働者の双方への周知をさらに徹底していく方針を示しています。

対策のポイントは、以下の5つです。

  1. 通算契約期間が5年を超える有期契約労働者を把握する
  2. 無期契約への転換申込権が発生する労働者に対し、契約更新時に「無期転換申込機会」を明示する
  3. 無期転換後の労働条件を事前に整理し、通知できる状態にする
  4. 無期転換後の労働条件が有期契約時と異なる場合は、その理由を説明できるようにする
  5. 無期転換を避ける目的の不自然な雇止めと受け取られないよう、適切な更新手続きや面談記録を整備する

労働条件明示事項の確認

令和6年4月からは、有期契約労働者との契約締結時および契約更新時に、就業場所および業務の変更範囲、更新上限の有無および内容を労働条件として明示することが求められるようになりました。また、無期転換申込権が発生する契約更新時には、無期転換に関する事項も明示することが必要です。

企業として確認すべきポイントは、以下の4つです。

  1. 有期契約労働者について、更新上限の有無・内容を明示しているか確認する
  2. 労働条件通知書、雇用契約書、更新時の通知書式を見直す
  3. パート、アルバイト、契約社員など雇用形態ごとに書式の抜け漏れがないか確認する
  4. 口頭説明だけで済ませず、紙や電子データで確認できる状態にする

特に、就業場所や業務の変更範囲、更新上限の有無と内容、無期転換に関する事項については、これまで明示が義務付けられていなかったため、書式の見直しを優先的に対応しましょう。

派遣社員に関して企業が確認すべきポイント

派遣社員に関して企業が確認すべきポイント

ここでは、派遣社員に関して企業が確認すべきポイントについて解説します。

  1. 派遣先が確認すべき事項
  2. 派遣社員の労働時間・安全衛生・ハラスメント対応

派遣先が確認すべき事項

派遣先に求められる重要な実務対応の一つが、同一労働同一賃金の観点から、自社の待遇情報を派遣会社に対して適切に提供することです。

派遣社員の賃金を適正に決定するため、派遣先は自社で同じような業務をおこなっている労働者の給与や待遇に関する情報を、派遣会社に提供する義務があります。

また、派遣先が自社の従業員向けに設置している食堂、休憩室、更衣室については、派遣社員に対しても正社員と同様に利用の機会を与えなければなりません。また、これら以外の福利厚生施設についても利用の機会を与えるよう配慮することが必要です。

派遣社員でも福利厚生の利用を不合理に制限するのは法律で禁じられているため、社内のルールや施設運用の実態が適正かを見直しましょう。

関連資料:派遣先の講ずべき措置とは? 13の指針について解説

派遣社員の労働時間・安全衛生・ハラスメント対応

派遣社員の雇用契約は派遣会社と結ばれていますが、日々の業務に関する具体的な指揮命令は、派遣先がおこないます。

このため、派遣社員の日々の労働環境についても、派遣先が整備する必要があります。

特に注意が必要なのは、派遣社員に対して残業や休日労働を命じる場合です。

この場合、以下の3つの書類に整合性が取れているかを確認する必要があります。

  • 派遣契約の内容
  • 派遣会社が締結している36協定
  • 就業条件明示書

また、職場の安全衛生やハラスメント防止に関する対応についても、派遣先に実務上の役割が求められます。

派遣社員が、職場で何らかのトラブルや悩みを感じた際に、相談窓口を利用できる体制を整えておくことも、派遣先の重要な役割です。

万が一、派遣社員にかかわる労務トラブルや労働災害が発生した際に迅速に対応できるよう、派遣会社と派遣先の間で、事前の連絡フローを決めておきましょう。

「派遣先の講ずべき措置」の解説と派遣先がすべきことが一冊に

派遣社員の受け入れにあたり、派遣先企業が講ずべき措置について「13の指針」として整理した実務ガイドです。法令で求められる対応や、職場での適切な運用についてわかりやすく解説しています。

<この資料でわかること>
・ 派遣先が守るべき13の指針の概要
・ 各指針ごとの具体的な対応内容
・ 法令違反を防ぐためのポイント

派遣先の講ずべき措置とは? 13の指針について解説

令和8年度方針を踏まえた企業の実務対応チェックリスト

令和8年度方針を踏まえた企業の実務対応チェックリスト

これまで解説してきた内容を踏まえ、ここでは企業が実際に社内点検をおこなう際に活用できる、実務対応チェックリストを紹介します。

就業規則・雇用契約書・労働条件通知書の見直し

就業規則や各種契約書については、以下の項目を中心に見直しましょう。

  • 労働条件通知書・雇用契約書に、就業場所・業務の変更範囲が明示されているか
  • 有期契約労働者について、更新上限の有無・内容が明示されているか
  • 無期転換申込権が発生する有期契約労働者に対し、契約更新時に無期転換申込機会と無期転換後の労働条件を明示しているか
  • カスハラへの対応方針、相談窓口、悪質事案への対応フローが整備され、労働者に周知されているか
  • 育児・介護休業法の改正内容が、育児・介護休業規程などの社内規程に反映されているか
  • 有期社員・パート社員向けの労働条件通知書、雇用契約書、更新時の通知書式は問題ないか

これらの書類は、労働者にとって労働条件を把握するための基本的な資料となるため、最新の法令内容が反映されているかを、優先的に確認する必要があります。

賃金台帳・勤怠管理・36協定の確認

賃金や勤怠に関する資料については、以下の項目を確認しましょう。

  • 賃金台帳と最新の地域別最低賃金表を照合し、最低賃金を下回る従業員がいないか確認しているか
  • 複数の都道府県に事業場がある場合、事業場ごとの所在地に応じた地域別最低賃金で確認しているか
  • パート、アルバイト、契約社員、月給者、固定残業代の対象者についても、時間単価に換算して最低賃金を確認しているか
  • 賃金台帳と勤怠記録を照合し、固定残業代の計算方法や実労働時間の管理に問題がないか確認しているか
  • 36協定の届出控えに記載された上限時間と、実際の時間外・休日労働時間に乖離がないか確認しているか
  • 組織図や職務記述書をもとに、管理監督者として扱っている従業員の職務内容・権限・勤務実態を点検しているか
  • 勤怠記録に基づき、長時間労働者への医師による面接指導や健康確保措置の対象者を把握し、必要な対応を行っているか

ハラスメント相談窓口・研修・社内規程の整備

ハラスメント対策に関する社内体制については、以下の項目を確認しましょう。

  • パワハラ、セクハラ、マタハラ、カスハラなどを対象としたハラスメント防止規程や社内ルールが整備されているか
  • カスハラへの対応方針、相談窓口、悪質事案への対応フローが整備され、労働者に周知されているか
  • 社内掲示板、社内ポータル、社内文書などを用いて、相談窓口の周知が適切に行われているか
  • 対応マニュアルを整備し、相談窓口の担当者向けに初動対応、事実確認、再発防止までの対応フローが明確になっているか
  • 年度計画に基づき、管理職研修、一般社員研修、採用担当者向け研修を実施しているか
  • 相談者、行為者、第三者のプライバシー保護や、相談を理由とした不利益取扱いの禁止について、社内規程やマニュアルで明確にしているか

派遣契約・業務実態・待遇情報提供の確認

派遣社員に関する事項については、以下の項目を確認しましょう。

  • 派遣契約書の記載内容と実際の業務や勤務状況に乖離はないか
  • 派遣先管理台帳が整備、更新されているか
  • 比較対象労働者の待遇情報を派遣会社へ適切に提供しているか
  • 適切な指揮命令がされているか
  • 社内周知文書を更新し、派遣社員もハラスメント相談窓口を利用できる体制か

行政調査・労基署対応に備えた社内資料の整理

行政調査や労働基準監督署の調査に備えて、以下の項目を確認しましょう。

  • 労働者名簿、賃金台帳、勤怠記録などの法定帳簿に加え、就業規則、36協定の届出控え、労働条件通知書・雇用契約書を整理し、必要に応じて速やかに確認・提示できる状態にしているか
  • 安全衛生委員会の議事録、ストレスチェック関連資料、長時間労働者への医師面接指導に関する記録など、安全衛生関係の資料を確認しているか
  • ハラスメント相談窓口の相談記録、対応履歴、研修の受講記録などを整理し、対応状況を確認できる状態にしているか
  • 障がい者雇用状況報告、女性活躍推進法に基づく公表内容、一般事業主行動計画など、行政報告・公表資料の控えや最新状況を確認しているか
  • 行政から問い合わせや調査連絡があった場合に備え、担当部署、確認すべき資料、社内承認・回答フローをあらかじめ決めているか

資料を日頃から整理しておくと、行政調査が実施された際にも、落ち着いて対応できるでしょう。

まとめ

地方労働行政運営方針は、企業が年度に注意すべき労務リスクを、事前に把握するための重要な資料です。

令和8年度の方針においては、賃上げ、非正規雇用労働者の処遇改善、人手不足対策、ハラスメント対策、安全衛生といったテーマが、特に重要な位置づけとなっています。

企業としては、労働基準監督署の調査や行政指導を受けてから対応を始めるのではなく、毎年度方針が公表される段階で、社内体制を整備する姿勢が大切です。

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