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「今の若者は......」という言葉が昔から繰り返し使われているように、いつの時代もジェネレーションギャップは生じるものです。特に最近は多様化が進み、同年代間でも価値観はさまざまで、個々のギャップも顕著にみられます。さまざまなギャップの中には、業務や職場関係に支障をきたすものもあるため、管理者や教育担当者は普段から若手社員との関わり方に注意をする必要があります。
ここでは、ジェネレーションギャップのある若手社員とコミュニケーションをとるためのポイントをお伝えします。
よくある職場でのジェネレーションギャップの例を3つ挙げてみましょう。
固定電話が苦手という若手社員は増えてきています。20代は友人とのやり取りでもSNSなどの文字ツールが主流で、固定電話の使用経験が少ない年代です。子どものころ家庭にあったとしても防犯上などの理由から電話対応の経験がほとんどないことから使用方法がわからない人もいるので、基本的なことから教えなければいけません。
このように固定電話を使用する機会が少なかった背景から、電話に出ること、電話に出ようとすることに苦痛を感じる若手社員が増えています。固定電話が苦手な人の中には、体が震えてしまうほどに電話に対する拒否反応が強い人もいます。そのような状態では、業務の初期段階で失敗しやすく、さらに苦手意識になって電話を避けるようになります。まずは、社内連絡などのやり取りに通話ツールを取り入れてトレーニングする、伝える内容をテキストにしてマニュアル化するなど、電話に慣れてもらう指導が必要です。
マンパワーグループが2022年1月、入社2年目までの正社員を対象に実施した調査では、7割以上が電話することに「抵抗があった」と回答しています。
筆者は、若手社員が「残業をしたり、無理をしたりするくらいなら、給料はそこそこでいい」「役職はいらないから、趣味など自分の時間を確保したい」と訴える場面をよく見てきました。
しかし、よくよく話を聞いてみると、最初から昇進や昇格に興味がないのではなく、職場や周りに自分にとってのロールモデルがおらず自分の将来が見えないという理由が多くあります。「能力向上に結び付くような研修体制が整っていない」「懸命に努力しても結果に結びつかずに疲れはてている上司を見ている」などのことから、そのような心情に陥ってしまうようです。
筆者は毎年、新入社員研修を担当していますが、ここ数年の新入社員は自己主張や意見を言わない傾向が増えています。「あえてしない」「どうしてよいかわからない」「したくてもできない」「意見することで相手からどう思われるか不安」と理由はさまざまです。後述しますが、自己主張や意見をしないことで若手社員が抱える問題が表面化しづらくなってきています。
管理者や教育担当者が当たり前だと思っていることができないと、「そんなこともわからないの?」「いつになれば覚えられる?」「また?」というような発言につながりがちです。そうすると、若手社員も自信がなくなったり、質問したくてもできない心理状況に陥ったり、仕事がなかなか身に付かなかったりしてしまいます。さらにはミスを誘引するなど、負のスパイラルに陥ることがあります。
また、管理者や教育担当者が「若手社員はプライベートを重視しているから職場の人間関係を希薄にしか考えていないだろう」と初めから距離を置いてしまうことも問題です。そういった考えからますます分かり合えず、信頼関係を築けないケースも散見されます。
さらに、ハラスメント防止法が施行され、会社は「ハラスメント」「○○ハラ」という言葉に敏感になってきています。若手社員に余計な関わりをして「ハラスメント」と言われたくないため、管理者や教育担当者が当たりさわりのない指導しかしない傾向もあります。若手社員にとっては、受け入れてもらえないという失望からモチベーションが下がり、ひいては早期の離職にも結びついています。
育ってきた環境や時代に伴う価値観の違いは、当然あります。そのうえで、組織として指示命令系統を確立する必要があります。そのためには、信頼関係の構築が必須です。どうせ相容れないからと、押し付けたり、強引に従わせたりするのではなく、お互いの認識を伝え合って理解を深めるプロセスが重要になります。
それにより、若手社員にとっても職場が「自分の意見を受け入れてもらえる場」「精神的な居場所」となり、組織の一員としての自覚が生まれます。さらに、自己実現や組織に貢献したいという共同体感覚につながり、個人や組織の成長を実現できるようになります。
マンパワーグループが2019年6月に入社2年目までの若手社員を対象に仕事にどんなやりがいを感じているかを調査した結果、「仕事の成果を認められる」「仕事をやり遂げる」「自分の成長を感じる」がトップ3にあげられました
まずは、積極的な関わりが望まれます。「若い人は会社の人間と飲みに行ったりしたくないだろう」と考えがちですが、実は違います。
筆者が入社1年未満の社員対象に行うカウンセリングの中で、「上司と飲みに行きたいか」と尋ねると、多くの人が「行きたい」と答えました。業務の中ではじっくりと話ができないので、「経験談や社内風土をもっと知りたい」「自分のこともわかって欲しい」「じっくり話す時間がもてたら嬉しい」と言うのです。ただし、大勢でワイワイ騒ぐ飲み会ではなく、少人数でゆっくり話をしたいという意向が強く感じられました。
対面で話すことが難しい昨今の状況では、オンライン会議ツールなどを使い、少人数もしくは1on1で雑談の時間を設けることをおすすめします。
雑談をする際には、聴き方にも注意しましょう。「質問しても、『特にありません』で終わってしまう」「話が続かない」と管理者からよく相談を受けます。その場合、質問が「困っていることはある?」「できる?できない?」のようなYESかNOで答えられる質問(クローズドクエスチョン)であることが多いです。クローズドクエスチョンをしてもよいのですが、立て続けに行うと尋問を受けているような感覚になってしまいます。
「○○についてはどう思う?」「△△についての意見を聞きたいのだけど」など、YESかNOで答えられない質問(オープンクエスチョン)を取り入れましょう。相手からの返答もきちんと受け止め、伝え返すことができるだけでも会話は深まります。
部下と接する際には、信頼される聴き方を身につけることで、マネジメント能力が格段にアップします。
自己主張をしない若手社員が多いとお伝えしましたが、「質問や相談がこないから問題は起こっていない」と考えていたら、その認識を改める必要があります。質問や相談はこないことを前提にして、自ら積極的に関わりをもつことが大切です。話し合いを設ける場合は、自身の意向をわかりやすく伝える場、相手の思いをしっかりと受け止める場と捉えましょう。
希望を聞き入れられるかどうかは別として、まずは理解し合うことが望まれます。若手社員が「自分の気持ちを聞いてもらえた(受け止めてもらえた)」と思えれば信頼につながります。そのためにはスキルももちろんですが、管理者・教育担当者自身に余裕がないと難しい場合があります。
自分自身がストレスマネジメントをできていないと、部下のフォローは至難の業です。教育は部下指導に目が行きがちですが、管理者・教育担当者自身のセルフコントロールにも気を配りましょう。
ジェネレーションギャップに関わらず、個人の感覚だけでもさまざまな価値観やとらえ方が存在します。企業にはそれぞれ独自の考え方や基準があり、皆がその方向性に従ってエネルギーを注ぐことが企業の利益や組織の成長には欠かせません。しかし、それを受け入れてもらうためには、一方的な押し付けではなく、お互いに話ができる風通しの良い職場を形成することが大切です。
ジェネレーションギャップで相容れない部分があったとしても、お互いが自分の意向を安心して伝えられることができれば信頼関係を築くことができ、多少のことでトラブルが起こることもありません。現場で感じるお互いの違いを知るために、安心して話のできる場があることが問題解決の一歩となります。
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