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雇用安定措置とは?派遣先に求められる対応

掲載日2025年12月 4日

最終更新日2025年12月 5日

雇用安定措置とは?派遣先に求められる対応

目次

派遣会社は、派遣社員の雇用を守るための「雇用安定措置」の対応が法律で義務付けられています。

一方で、派遣会社から雇用安定措置の相談を受けたものの、派遣先として具体的に何をすべきか分からず、対応に悩んでいませんか?

本記事では、雇用安定措置の具体的な内容と、派遣先として求められる対応を分かりやすく解説します。コンプライアンス違反や「雇用安定措置逃れ」のリスクをゼロにし、派遣社員本人も納得する円満な手続きを実現しましょう。

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雇用安定措置とは?

雇用安定措置とは?

雇用安定措置とは、同じ派遣先で継続して3年間派遣される見込みのある派遣社員に対し、派遣会社が契約終了後の雇用を継続させるための措置です。

2015年に改正された労働者派遣法により、派遣社員が同じ職場で働ける期間が原則3年までと定められたことを受け、派遣社員の働き口を守る目的で導入されました。

厚生労働省は以下の4つの選択肢を定めており、派遣会社は派遣社員の希望を聴取して、いずれかを実施しなければなりません。

①派遣先への直接雇用の依頼

②新たな派遣先の提供 (※能力、経験等に照らして合理的なものに限る)

③派遣元での無期雇用

④その他安定した雇用の継続を図るために必要な措置(有給の教育訓練、紹介予定派遣など)

※ ①を講じた場合に、直接雇用されなかったときは、②から④までのいずれかを講ずるものとする。

引用:雇用安定措置について|厚生労働省 外部リンク

この章では、「雇用安定措置」の基本的な考え方と、発動する条件について紹介します。

雇用安定措置の対象となる派遣社員

雇用安定措置の対象となる人の条件は以下のとおりです。

  • 派遣就業見込みが3年であること
  • 有期雇用の派遣社員であること
  • 本人が継続して就業を希望していること

上記の条件に当てはまる派遣社員がいる場合、派遣会社には雇用安定措置の実施が法的な義務として課せられます。

また、就業見込みが1年以上3年未満の場合、または派遣会社に雇用されてから通算で1年以上経過した場合は努力義務として措置を講じる必要があります。

雇用安定措置対象外の条件

雇用安定措置には、対象とならない条件も定められています。対象外の例は以下のとおりです。

  • 無期雇用で派遣会社に雇用されている派遣社員
  • 年齢が満60歳以上の派遣社員
  • ご本人が就業の継続を望まない場合

雇用安定措置は、有期雇用で働く派遣社員の雇用を安定させることを目的としているため無期雇用の方は対象外となります。

また、60歳以上の派遣社員も対象外です。これは、「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」(高年齢者雇用安定法)が別に存在するためです。

さらに、雇用安定措置は、本人の意思が尊重されるため継続就業への意思がない場合は対象となりません。

派遣会社が実施する雇用安定措置の4つの選択肢

派遣会社が実施する雇用安定措置の4つの選択肢

ここでは、派遣会社が実施する雇用安定措置の4つの選択肢について解説します。

  1. 派遣先への直接雇用の依頼
  2. 新しい派遣先の提供
  3. 派遣会社での無期雇用化
  4. その他の雇用の安定を図る措置

1.派遣先への直接雇用

派遣社員が同じ職場で働くことを希望した場合、派遣会社は派遣先に対して直接雇用するよう依頼する義務が発生します。

派遣先としては、依頼を受けた際に自社の人員計画や予算、当該派遣労働者の適性などを総合的に判断して対応を決定できます。労働者派遣法第40条の4により、派遣先は優先雇用の努力義務が発生しますが、必ず受け入れなければならないといった強制力はありません。

もし派遣先での直接雇用が実現しなかった場合、派遣会社は、次に説明する2〜4の対応を取る必要があります。

2.新しい派遣先の提供

派遣先での直接雇用が実現しなかった場合、派遣会社は次の選択肢として、対象の派遣社員に対して新しい派遣先を提供します。

これは、派遣社員のキャリアが途切れることなく、継続して就業できる機会を確保するための重要な対応です。派遣会社は、本人の能力や経験、希望する勤務条件などを考慮して合理的な派遣先を提供する必要があります。

厚生労働省の調査によると、雇用安定措置として新しい派遣先を提供するケースが全体の66.9%を占めており、最も多く選択されている方法です。

参考:雇用安定措置について|厚生労働省 外部リンク

3.派遣会社での無期雇用化

派遣会社での無期雇用化とは、派遣会社と派遣社員の契約を期間の定めのない雇用に切り替える方法です。派遣先での直接雇用や、新しい派遣先の提供が難しい場合に選択されることが一般的です。

この措置は、専門的なスキルや豊富な経験を持つ派遣社員に対して、派遣会社が自社の貴重な人材として確保し続けたいと考える場合に取られます。

派遣社員にとっては、雇用が安定し、昇給や賞与、福利厚生などの面で待遇が改善される可能性があるというメリットがあります。

4.雇用の安定を図る措置

これまで挙げた3つの選択肢が全て難しいと判断された場合、派遣社員との雇用関係は維持しつつ、安定した雇用を継続するための環境を提供する措置が認められています。

具体的には、将来のキャリアアップにつながる有給の教育訓練の実施や、直接雇用を前提とした紹介予定派遣への切り替えなどが該当します。

この措置は柔軟性が高く、派遣社員の個別の状況やキャリア希望に応じて最適な支援を提供できる点が特徴です。

派遣先がやるべき対応

派遣先がやるべき対応

派遣先にも、法律で定められた義務があります。

まず、派遣会社から直接雇用の依頼があった場合、雇用するための努力義務が課せられています。法的な強制力はありませんが、要望に対して検討し、誠実に対応しなければなりません。

また、自社で正社員などを募集する際には、1年以上勤務している派遣社員に対して声をかけるなどをして情報を提供する必要があります。

これらの義務を適切に果たすためには、日頃から派遣会社と密に連携して、どなたが対象になりそうかを事前に把握しておくことが重要です。

派遣社員を直接雇用として受け入れる際に考慮するべきポイント

派遣社員を直接雇用として受け入れる際に考慮するべきポイント

ここでは、派遣社員を直接雇用として受け入れる際に考慮するべきポイントについて解説します。

派遣社員と会社の適性を確認する

直接雇用を検討する際には、派遣社員のスキルや経験を適切に評価し、自社への適性があるか確認しましょう。

派遣社員と会社の適性を評価する際に以下のポイントを押さえておくことで入社後のミスマッチを防げます。

  • 派遣期間中の業務スキル
  • 人柄
  • コミュニケーション能力
  • 企業文化との相性

派遣社員としてすでに一定期間就業しているため、即戦力としての活躍が期待できる点はメリットです。また、職場環境や業務内容をすでに理解している人材を採用することで、定着率の向上も期待できます。

派遣社員から断られる場合がある

雇用安定措置は派遣社員の意思が最も尊重されるため、派遣先が直接雇用を考えていても本人から断られる場合がある点には注意しましょう。

派遣社員の中には、ライフスタイルにあわせて勤務地や時間を選びたいなどさまざまな理由から、あえて派遣という働き方を選択している人も少なくありません。そのため、直接雇用の打診を行う前に、まずは本人にその意思があるかを丁寧に確認することが重要です。

ただし、直接確認を行うのではなく、派遣会社を通じて派遣社員の意思確認を行うようにしましょう。

もし、派遣社員が派遣先への直接雇用を求めない場合は、派遣会社は別の措置を提供する必要があります。派遣社員の意思を確認して、臨機応変に雇用安定措置の対応を進めましょう。

派遣会社との合意を得る

派遣社員を直接雇用に切り替える際には、必ず現在契約している派遣会社と事前に協議し、正式な合意を得る必要があります。

派遣契約期間中に派遣先が独自の判断で派遣社員を直接雇用することは、派遣契約違反となる恐れがあるためです。最悪の場合、損害賠償などのトラブルに発展するケースも考えられます。

円満に直接雇用へ移行するためにも、まずは派遣会社の担当者に意向を伝え、契約内容を確認したうえで、三者間の合意を進めましょう。

派遣先が知っておきたい派遣法とは

派遣法では、雇用安定措置をはじめ、人材派遣サービスの適正に運営するための多くのルールが定められています。これらを遵守するためには、派遣先と派遣会社の連携が不可欠です。

派遣先の担当者が押さえておきたいポイントとまとめた「派遣法の基礎知識 知っておくべき12項目」のガイドブックをご用意しています。

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雇用安定措置についてよくある質問

雇用安定措置についてよくある質問

雇用安定措置に関して、多く寄せられる質問とその回答をまとめました。

雇用安定措置逃れとはなんですか

雇用安定措置逃れとは、派遣会社が、本来であれば講じるべき雇用安定措置の義務を意図的に回避する違法行為です。

具体的には、派遣社員が同じ組織で3年以上継続して就業することを防ぐ目的で、合理的な理由なく派遣契約の期間を3年未満に設定したり、3年が経過する直前で派遣先を変更させたりするケースが該当します。

もし、雇用安定措置逃れが発覚した場合、派遣会社は事業許可の取り消しといった重い行政処分を受けるリスクがあり、派遣先にも影響が及ぶ可能性があるため、注意が必要です。

派遣会社が雇用安定措置を実施しない場合、派遣先に責任はあるのか

派遣会社が法律で定められた雇用安定措置を適切に実施しない場合、その直接的な責任は派遣会社にあり、行政指導や罰則の対象となります。

したがって原則として、派遣先に法的な責任が直接及ぶことはありません。

一方で、派遣先が派遣会社からの直接雇用の依頼を不当に拒否した場合や、法律で定められた募集情報の周知義務を怠った場合は、派遣先の責任が問われる可能性があります

また、派遣先が派遣会社と共謀して雇用安定措置逃れを行った場合は、両者とも法令違反として行政指導や処分の対象となる恐れがあるため注意しましょう。

派遣社員本人から直接雇用を希望されたらどうすべき?

派遣社員本人から直接雇用の希望を受けた場合、まずは派遣会社に連絡し、正式な手続きを通じて対応することが必要です。

派遣会社は派遣先に対して直接雇用の依頼交渉を行い、派遣先は依頼を受けて雇用できるよう努力する義務が生じます。

また、直接雇用を実現する場合、双方が同意すれば正社員だけでなく、有期雇用契約での受け入れも法律上は認められています。正しい手順を踏むことで派遣社員、派遣会社、派遣先の三者が納得のいく形で話を進められるでしょう。

派遣会社から直接雇用の打診があった場合、必ず採用を検討しないといけない?

派遣会社から直接雇用の依頼を受けた場合、派遣先には努力義務が生じますが、必ず採用しなければならない法的義務はありません。努力義務とは、可能な範囲で雇用に向けて前向きに検討し、実現に向けた努力をすることが求められるという意味です。

派遣先の企業は以下の観点から総合的に判断して直接雇用を決めましょう。

  • 企業の経営状況
  • 人員計画
  • 対象となる派遣社員の能力評価

一方で、明確な根拠なく拒否する行為は、努力義務の趣旨に反すると判断される可能性があります。

もし、直接雇用が難しい場合は、合理的な理由を派遣会社に丁寧に説明するなど誠実な対応をしましょう。

採用試験を実施してもいいのか

派遣会社から直接雇用の打診があった派遣社員に対して、他の応募者と同様に、採用試験や面接を実施することは問題ありません

派遣期間中の勤務実績は重要な判断材料となりますが、直接雇用後の業務内容や責任範囲が異なる場合、改めて適性を確認することは合理的だと判断されるためです。

選考を行う場合は、事前に派遣会社および派遣社員本人に伝え、理解を得ておくと、スムーズに進行できるでしょう。

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<この資料でわかること>
・ 派遣先が押さえておきたい項目
・ 派遣法の概要と注意事項
・ 派遣先がすべきこと

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まとめ

雇用安定措置は、派遣社員のキャリアアップと雇用の安定を目指す重要な制度です。

派遣会社は、対象となる派遣社員の希望を聴いたうえで、状況にあわせて4つの選択肢から最適な対応を選択し、実施する義務があります。

また、派遣先としても、直接雇用の依頼を受けた際の努力義務や募集情報の周知義務を正しく理解し、派遣会社と連携しながら誠実に対応することが求められます。

本記事を参考に、派遣社員一人ひとりのキャリアに寄り添い、最適な選択肢を考え、実行しましょう。

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